2012年度業界販売と元売決算データ比較 NO22
 公正取引委員会の正式報告書の解説と今後の対応を考える
元売決算で 番目、公取関連で番目のお客様です。
また石油需要やSS数減少関連データをご報告させて頂きます。実は元売決算等は周知の
事実なので、辞めようかと思いましたが、米国や韓国在住の方より「海外では業界紙までは
読めないので是非継続してほしいとご依頼を頂きましたので、もう少し継続することにします。
その一方、7月企画で取り上げた公正取引委員会の正式報告書が出ましたが、この件の
解説希望も非常に多いので、今月は2本だてでお送りします。  文 責 垣見 裕司
                 アクセス数 2013/7/31 160,000 41,000より掲載開始
12/8.NO21.2011年度決算編、11/8.NO20.2010年度決算編、10/8.NO19.2009年度決算編
09/8.NO18.2008年度決算編
08/8.NO17.2007年度決算編、07/8.NO16.2006年度決算編
06/8.NO15.2005年度決算編、05/8.NO14.2004年度決算編、04/8.NO13.2003年度決算編
03/8.NO12.2002年度決算編、02/8.NO11.2001年度決算編、01/8.NO10.2000年度決算編
0/11.NO9.原油処理設備問題、00/8.NO8.1999年度決算編、00/4.NO7.どこまで下がる石油株、
99/8.NO6.1998年度決算編、99/2.NO5.経費削減リストラ編、98/8.NO4.97年度決算編
97/8.NO3.96年度決算,販売,SS数

石油製品別国内販売実績一覧表 2012年度(2013年3月末期)

まず業界環境がどのように変化しているのか、国内販売数量を見てみます。
2011年度は震災の影響をまともに受けた年ですから、その前の2010年度と2011年度
そして2012年度の比較は非常に重要だと思いまする
    
  2012年度 各油種の国内販売数量、資源エネルギー庁発表 単位千KL
ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2007年度 59,042 48,533 5,916 22,666 35,586 21,369 25,354 46,723 218,464
2008年度 57,428 42,861 5,676 20,249 33,728 17,890 23,159 41,049 200,991
2009年度 57,464 47,320 5,283 20,056 32,388 16,043 16,434 32,477 194,988
2010年度 58,159 46,698 5,153 20,348 32,891 15,425 17,343 32,768 196,018
2011年度 57,213 43,728 4,204 19,619 32,866 14,680 23,743 38,423 196,055
2012年度 56,447 43,172 3,965 18,991 33,443 13,759 27,742 41,501 197,519
伸率% 98.7 98.7 94.3 96.8 101.8 93.7 136.9 108.0 100.7

まずガソリン需要は、マイナス1.3%減の5645万KLですが、個人的には減少率が
よくこの程度で収まったなという感じです。ナフサ需要も前年比では減っていますが、
下記の輸入表と合わせて考えて、その割合は非常に多いです。但し、石油元売から
化学メーカーへの販売価格は、輸入ナフサ価格+3円程度と聞いていますので、
石油元売にとってはガソリンと違って全く利益のない商品と聞いています。
灯油は長期低落傾向が続いていますが、軽油は東北の復興需要で伸びたそうです。
A重油も長期低落傾向が続いています。景気低迷による廃業や規模縮小、省エネ、
天然ガス等への燃料転換等の複合要因だと思います。
BC重油の伸びは、電力用C重油だと思われます。但し電力の月別使用量から見ると
電気事業連合会発表の通り 火力用の原油や重油の使用量のピークは過ぎました
ので、2013年度からは下がるものと思います。

以上、燃料油全体としては100.7%と微増したものの、多くが発電用なので、石油業界
として全く余談を許さないはずなのですが、業界改革は進んでいないのが現状です。
2012年度の製品輸出数量実績
2008年度当時、1300万KLという軽油の輸出量には当時は本当に驚きましたが、
それ以降は海外市況も低迷し、日本からの石油製品輸出は安定してきました。
逆に言えば輸出で利益を稼ぐということが難しくなってきたとも言えるでしょう。

         2012年度の日本の石油製品輸出   
単位千KL
輸出 千KL ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2008年度 710 38 10,080 444 13,050 561 9,269 9,830 34,153
2009年度 1,552 - 8,321 357 11,319 608 7,774 8,382 29,932
2010年度 2,198 - 8,936 198 11,045 733 7,172 7,905 30,281
2011年度 1,253 51 8,693 600 7,619 342 6,792 7,134 25,352
2012年度 1,148 57 9,056 144 6,109 787 7,145 7,935 24,751
前年比% 91.7 112.8 104.2 303.5 84.1 230.0 46.5 111.2 97.6
2012年度の製品輸入数量実績
一方輸入は下記の通りで、ガソリンは減少ではなく高止まりと言っていいでしょう。
それが安い時だけ入って来て、国内の時給バランスを狂わせるというのは、元売
にとっては本当に辛いことだと思います。また電力用急増の余波でしょうか。
BC重油の輸入も増えていますが、京浜等の電力用は0.18%以下の硫黄分と
聞いています。海外品でそんな低硫黄のスペックがあるのが実は私は存じ上げて
いませんので直接的なな電力用ではないと思います。(文責除外)

       2012年度の日本の石油製品輸入      
単位千KL
輸入千KL ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2009年度 854 25,838 - 459 317 76 2,257 2,332 29,799
2010年度 1,098 27,215 43 1,053 444 192 3,023 3,215 33,067
2011年度 2,909 24,867 - 1,490 875 89 7,146 7,235 37,377
2012年度 2,883 25,275 94 1,250 582 88 8,742 8,829 38,915
前年比% 99.1 101.6 - 83.9 66.5 98.9 122.3 122.0 104.1
主要元売6グループの2012年12月末 2013年3月末期の決算数字
今年度も各元売単体と 総合力を見る連結を共に記載させて頂きました。
各社とも震災の影響を受けた昨年度より、多かれ少なかれ業績が悪化しています。
特にコスモ石油はこれで2年目の大赤字です。震災で停止して千葉製油所は
震災以外にも色々な問題が発覚して、その再稼働には2年かかりました。
現在は勿論可動していますが、国内の業転市況は非常に低迷し、韓国等からの
輸入品より、国内の海上ガソリン価格が安い状況が続きました。
そんな訳で各社、2013年の4-6月四半期の相当業績が悪いと聞いています。

7月からは猛暑で少しは需要が回復してるようですが、それも一時でしょう。
とにかく更なる設備廃棄等抜本的な改革が必要だと思います。


2012年度末 元売各社のSS数とセルフSS、元売社有SS数比較表
元売の傾向を分析する際、系列SS数を調べるとそれなりに見えるものがあります。
まず近年元売の新設もしくは改造したSSはそのほとんどがセルフSSです。
よく講演後に「元売は何故セルフSSしか作らないのですか」し質問されますが、
私は、「セルフしか作らない」のではなく「セルフしか作れない」すなわち販売量が
月間200KL等しか売れないフルサービスSSで本当に口銭7円や激戦区の
3-5円で黒字に出来るビジネスモデルがないのだと思います。
従って最低500KL あわよくば1000KLを売れる新設を作る訳です。
私は新設セルフ等を決して否定する訳ではありませんが、新規出店時のバカ安売り
だけは、その元売ブランドの価値がないことを世間に表明しているようなものなので、
せめて系列元売の最安値と同値以上で販売して頂き、自身の元売やそのSSの
価値を実感して頂ければと思います。
またガソリンの半分以上をセルフSSで販売している実体は変わっていないようです。
3月末の全国のSS数のエネ庁から発表されましので記載します。
系列割合は減りPB割合が増える傾向は今年も変わっていないわようです。
時系列的変化は、昨年ページと比較して下さい。
尚、心配していた40-50年経過タンク問題によるSSの大幅減は、エネ庁の補助金
のお陰で大幅減は避けられたと思います。

        元売別系列SS数 セルフSS数 2013年3月末、社有=元売所有物件

元売会社 3月末数 前年比 社有 前年比 社有比 セルフ数 前年比 セルフ率 セ社有 社有比
JXエネルギ 11,283 -447 2,487 -86 23.0 2,423 +112 22.5% 1268 51.0
出光興産 3,861 -136 1,135 -10 29.4 927 +34 24.0% 584 63.0
昭和シェル 3,555 -205 893 -16 25.1 979 +17 27.5% 490 50.6
コスモ石油 3,325 -173 745 -19 22.4 999 -9 30.0% 569 57.0
E M G 3,475 -298 718 -29 20.7 1,225 +4 35.3% 458 37.4
キグナス 511 -14 96 -1 18.8 215 +5 42.1% 78 36.3
太陽石油 349 -8 127 1 36.4 153 +5 43.8% 93 60.8
三井石油 270 -8 100 1 36.4 139 +3 51.5% 81 58.3
元売合計 26,629 -1,289 6,301 -156 23.6 7,172 +171 25.1% 3,621 50.5
全登録SS計 36,349 -1,394 PBは 9720 26.7% 8,862 +266 24.4%
本表は各元売HP及び燃料油脂、油業報知、ぜんせき等の業界新聞より集計

公正取引委員会から正式発表がありました

ガソリンの取引に関する調査報告書」が7月23日に公表されました。
報告書http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/130723.files/130723honbun.pdf
概 要 http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/jul/130723.files/130723gaiyou.pdf
報告書はA4で43ページ、概要でも9ぺージあります。でも結論は概要の最後です。
 以下肝心な部分のみ引用します。

今回の調査では元売が系列特約店、特に一般特約店にとって相対的に高い仕切価格を設定し
その仕切価格の設定に当たり十分な情報の開示や交渉が行われていない場合がみられた。
また元売は自社が精製したガソリンを商社に販売し、それが安価な業転玉としてPBSSに供給
されている一方で系列特約店に対しては業転玉の購入販売を制限していることが認められた。
 これらの行為は一般的にみて、取引上優越した立場にある元売が、一般特約店に対し、
一方的に競争上不利な取引条件を課しているおそれのあるものであり、ガソリンの流通市場に
おける公正な競争環境を整備するという観点からみて不適切であると考えられる。
 ついては、公正取引委員会としては、これらの行為について元売各社に対し、改善を求め、
その動向を注視するとともに、仮に元売が自己の取引上の地位が一般特約店に優越している
ことを利用して、取引の条件について、正常な商慣習に照らして不当に一般特約店に不利益を
与えるなどの独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合には、厳正に対処
することとする。また事業所管省庁にあってもガソリンの流通市場における公正な競争環境の
整備という観点から、まずは関係者間での適切な対応を促す必要があると考えられる。

7月24日の 全石連幹部、自民党議連幹部、公取幹部、エネ庁の幹部会議では

発表翌日の業界は、朝からのこの話でもちきりでした。業界人の感想は色々です。
まずは否定的な何も変わらないという意見の方は、「上記の最後の「まずは関係者
間での適切な対応を施す」という表現から結局は、元売と特約店でよく話しなさいと
投げただけ。このような時、特約店と胸襟を開いて話すべきなのに、元売が最初に
相談するのは弁護士。そして方針を出したら今度は公取にお伺いを立てて、公取の
OKが出たらそれを印籠に特約店に一方的に通知するだけだから、結局は何も
変わらない」という感じです。

しかし私は今回、公取としてかなり突っ込んだ表現をしたのではないとか思います。
実は発表の翌日の24日に重要な会議が行われました。出席者は、全石連、公取、
エネ庁の各幹部、そして自民党議連の野田会長他役員です。
公取が前日の公表内容を改めて説明した訳ですが、野田会長や他の議員から
「現在の状態が既にイエローカード。このまま続けばレッドカードを出してもらう」や
「公取が不適切と言った以上、民民の問題ではない。エネ庁も期限を切って、ルール
を設定して元売にしっかり指導をすべき」とのかなり強い口調での発言がありました。
これに対してエネ庁も「より突っ込んだ元売ヒアリングを実施。緊急かつ3か月
に1回と頻度を上げて、元売の改善の取り組みを聞き、問題があれば指導する」
と返答したそうのなで、かなり具体的だと思います。

少なくとも過去の公取の指導で、ここまでの表現や与党のそれも大幹部議員の
後押しがあった例はありませんから、元売も何らかの対応を迫られるでしょう。

待たれる元売の発表と今後の対応

6月28日に日経1面台風が襲来してから早くも1か月経ちますが、実は元売側の
正式なコメントはありません。強いて申し上げれば6月29日の日経に載ったJX
高橋常務の「他社買を禁止している訳ではないが、エネオスマークの元でそれを
販売することは認められない」の発言です。(但しご本人がそう話したか不明です。
私もよく取材を受けますが、私自身がびっくりするような記事や内容になることが、
少なからずあるのは本当に遺憾です。)
その一方、元売の他社外SSに対する締め付け策は、ガソリン分析軽減認定の
取消しくらいでしょう。でもこれは締め付けというよりは、法に基づくものですので
やむを得ないと思います。

従って「系列外購入がそんなに多いならサインポールを返して下さい」との意向を、
特約店を通じて申し入れを最初は口頭、その後は文書での告知。
でもそれ以上裁判に訴えるというのは、もう難しいのでしょう。元売POSの使用禁止
クレジットカード決済機能の拒否等は、公取がまだガイドラインや具体的事例を
示していない中で、恰好の判断事例になってしまうので、元売の打てる戦闘モード
での次の一手は、かなり限られいるのだと思います。

でも逆に言えば、今他社買いをしているSSは、高くても元売系列に属して来た
元売ファンなのですから、平和路線なら打てる手は沢山あります。ブランド料や
系列コストの値下げや、もし値下げが無理なら、原油CIF価格から業転価格でも
十分マージンが取れている時の値下げ等、系列SSの競争力を増す方法なら
幾らでもあると思います。万が一でも負ける裁判のリスクを犯すよりは、まずは
需給を締め、業転価格を上げて元売も利益をだし、その余力でブランドコストを
下げればいい話だと思いますが、如何でしょうか。

石油&SS業界の方へ 是非月刊ガソリンスタンドの連載もお目通し下さい

さてSS業界最大の月刊誌である月刊ガソリンスタンドにも連載コーナーでこの話題を
書いています。ご購読されている方は、積読ではなく、是非、熟読して頂ければ
と思います。尚、月刊ガソリンスタンド社のご厚意で許可を頂いた月は掲載中です