元売2005年度、収支等徹底比較 NO15
 業界販売数量、収支報告、SS数の他、新日石とJomoの提携を考える

あなたは8月企画及び元売決算関連企画の 番目のお客様です。 06/8/2時 79,700件
05/8.NO14.2004年度決算編、04/8.NO13.2003年度決算編
、、03/8.NO12.2002年度決算編
02/8.NO11.2001年度決算編01/8.NO10.2000年度決算編0/11.NO9.原油処理設備問題
00/8.NO08.1999年度決算編、00/4.NO7.どこまで下がる石油株99/8.NO6.1998年度決算編
99/2.NO5.経費削減リストラ編、98/8.NO4.97年度決算,販売,SS数文責 垣見裕司 Ver 1

 石油製品別国内販売実績一覧表 2005年度(2006年3月末期)

一昨年までは石油連盟加盟元売の販売数量は発表されておりましたが、昨年からその公開を
中止しています。色々ご事情はあると思いますが、個人情報以外は、むしろ開示の時代なので
早期に再開される事を一業界人として願っております。従って今年も資源エネルギー庁の発表
データを加工し、各油種の国内販売数量とその前年対比伸率を掲載します。

       
2005年度 各油種の国内販売数量、資源エネルギー庁発表 単位1000KL

ガソリン、灯油、軽油他の販売数量について

ガソリンは、暦年では何とか100%を維持したものの、年度では、遂に100%を割っています。
その理由として、私は価格高騰による意識的な使用節約も勿論あると思いますが、個人的には
軽自動車の大幅な伸びや省エネカーの普及が大きいと思います。
実は、2006年の3月末現在の自動車登録台数は、5年連続前年比を割っていることは、あまり
SS業界には知られていません。唯一伸びているのが軽自動車で、前年比107%です。
この結果今では、「新車の内3台に1台が軽自動車である」と言う表現が出来るそうです。
さて平均車歴(新車から中古車を経てスクラップになるまで)を10年とし、例えば10年乗って
燃費が悪くなったカローラが、最新のビィッツやフィットやそして軽自動車に代わる時、その
ガソリン使用割合は、場合によっては半分になるのではないかと思います。これだけでも
ガソリン消費量は毎年5%、まあ話半分としても2.5%は、減退する訳です。
更にハイブリッドカーや最も燃費が良いと言われるディーゼルハイブリッドの本格的登場で
年率数%くらいは需要が減退する時代が、すぐそこに来ているのかもしれません。



灯油は、厳冬により前年比101%。一方軽油は、景気回復による需要が期待されましたが、
価格高騰に対する物流効率化や車両の燃費改善効果が上回わった形となり、前年比
97.2%となりました。A重油は、価格高騰による使用減退やLNGへの燃転等で95%と低落
傾向が続いています。B・C重油は、現在の価格では、むしろ善戦と言えるでしょう。



決算数字が現すもの
今期の決算を一言で申し上げれば、石油業界として史上最高の好決算と言えるのでしょう。
主要9社の単独決算では、売上は前年比22%UPの20兆円の大台にのり、税引き利益でも
2627億円という前年比49%UPという好決算です。



一方、連結レベルで見ると、原油やLNG等開発部門の貢献、原油在庫評価による好影響や
中国経済好調等の影響で石油化学原料が高騰したことによる石油化学原料部門の貢献等
により、下記6社グループでなんと4240億円もの税引利益を計上しています。
その一方で「販売部門は赤字、精製部門も総製品数量の5から6%を占める自家燃のコスト
転嫁が出来ず、赤字に近いレベルである」と聞こえてくる元売もあり、その実態はこの好数字
とは、程遠いのかもしれません。






ガソリン販売とSS数
前年から各元売の販売数量が発表されないので、元売別のSS平均販売数量は、算出出来
ませんが、2006年3月末現在のSS数は、各社の発表をHPや新聞情報等から把握済みです。
ちなみに品質確保法に基づく平成18年3月末のSS数は、47,584SSで前年比1088箇所の減、
この内可搬式を除くいわゆる普通のSSである固定式は、46,371SSで前年比995箇所減です。
閉鎖時の混乱等色々なご事情で閉鎖を届けられないSSもあり、一般的なSSである固定式の
実数は、約46,000箇所と思ってよいでしょう。従って約9,000SSは、元売ブランドを全く掲げて
いないプライベートブランド(PB)であると推測出来ます。

元売各社のSS数とセルフSS、元売社有SS数比較表
  平成18年3月末、単位千KL / KL  社有=元売所有物件
元売会社 3月末数 前年比 社有 前年比 社有比 セルフ数 前年比 セルフ率 セ社有 社有比
新日本石油 10,807 -129 2,436 -37 22.5 794 +143 7.3% 455 57.3
出光興産 5,249 -61 1,466 2 27.9 488 +88 9.3% 381 78.1
昭和シェル 4,689 -66 1,076 -25 22.9 431 +119 9.2% 238 55.2
コスモ石油 4,552 -70 886 -8 19.5 626 +143 13.8% 407 65.0
Jエナジー 3,833 -143 1,154 -6 30.1 534 +94 13.9% 347 65.0
EMG 5,837 -125 1,137 -26 19.5 930 +120 15.9% 426 45.8
キグナス 627 -8 107 -3 17.1 144 +14 23.0% 61 42.4
九州石油 685 -7 84 -1 12.3 114 +18 16.6% 36 31.6
太陽石油 385 +6 113 -1 29.4 99 +14 25.7% 66 66.7
三井石油 369 -21 120 -6 32.5 97 +11 26.3% 61 62.9
元売合計 37,033 -624 8,579 -111 23.2 4,257 +764 11.5% 2,478 58.2
単独JA系 2,??? -?? ???.? ???? ????
6商社系PB ??? ??? ???.? ???
全農系はデータは入り次第掲載します。
商社系セルフのデータもはいり次第掲載します。
本表は、石油業界新聞等より各元売が発表した記事等を参考に弊社が再編集しました。

昨年8月HPの通り、一昨年から昨年までの減少数は1200箇所以上も減っていたので、今年度
に限っては、元売系列SSの減少傾向は、やや落ち着いた様に見えますが、6月末までに
既に300箇所以上減少したという話もあり、大幅減少ペースは、続いているのかもしれません。
また元売がハードを所有しているSSを通称「社有SS」と言いいますが、全体のSS数に占める
この社有の割合である「社有率」も、昨年と大差ありません。従って「元売は意識的に特約店
販売店のSSを潰している」というのは、かなり極論の偏った見方であると思います。

一方セルフは、4257SSと昨年比764箇所も増えました。従って元売系列SSの中でセルフの
占める割合である「セルフ率」は、昨年の9.2%に対し、今年は11.5%と2.3%も増えました。
通常セルフは、フルサービスの3倍の量を売ると言われていますので、ガソリンの約3割は、
既にセルフで販売されているのかもしれません。
またセルフにおける「元売社有率」が、58.2%と非常に高い事がお分かり頂けると思いますが
昨年は60.5%もありましたので、この年度のセルフは、特約店や販売店等のプロパー物件を
セルフに改造た事例が、少しずつ増えてきた様に思います。ただ、そのケースのごく一部は、
きちんとしたCSサービスが出来ず、元売のお客様相談センターに、クレームばかり来るので
そういう「運営力のないSSには、セルフに改造させる」という後ろ向きの案件も含まれている
そうです。しかしセルフと言えどももはや、ガソリンだけの販売ではやって行けず、油外収益が
その成功不成功の主要因になっています。
その油外収益を上げられるかの鍵は、やはり人材でしょう。セルフは従業員人数が少ない分
所長や少ない従業員の「資質や能力」、「やる気や満足度」等の人材総合力が、実は、フル
サービス以上に重要なのです。

石油元売のトピックとしては、新日石とJomoの提携か

今期の元売レベルで注目すべきことは、やはり6月20日に発表された、新日石とJomoの
提携発表でしょう。上流、精製、物流、燃料電池、技術開発と5部門に及ぶので、むしろ
販売以外は全部と言った方が早いかもしれません。しかしこの提携発表をマスコミは、
提携という言葉が安売りされる国内石油業界」(日経産業)等あまり評価していません。
確かに両社には、98年契約の「室蘭-鹿島バーター(年37万KL・10年自動更新)」や、
99年締結の「仙台-鹿島バーター(年8万KL、10年自動更新)」等があるからです。
また日石からみれば、コスモ石油や出光ともかなり突っ込んだ提携をしているので、正に
「安売り」と言われても仕方がないのかもしれません。また株式市場も、その発表でも
大きく反応しませんでした。しかし、私は下記の3つ点で非常に評価しています。

1.直ぐに実益が期待出来る両社の水島製油所一体操業
 既に両製油所には、「RING」で建設した地下パイプラインがあり、石油石化製品や
 原料等の 相互融通だけでも年間数億円レベルにはなるでしょう。そして今後は、
 両社の投資総額にもよりますが、数十億円から場合によっては数百億円単位の
 経営効率化が可能ではないかと 予想しています。
2.民族系大連合精製グループ誕生の意味合いもある
 新日石はコスモ石油と99年11月より仕入・精製・物流・潤滑油分野で提携しており、その
 効果は両社で90億円と言われています。また出光とも物流提携・精製提携(出光兵庫
 閉鎖で4万BDの製品供給)を行っており、その効果は両社で150億円と言われています。
 今回これにJomoが加わった事は、大きいでしょう。Jomoにとって70%の資本をもつ、鹿島
 石油はあるものの、本尊である水島を新日石と一体操行するということは、それなりの
 「覚悟」はあったように思います。更に業転市場の需給調整等は、直接改善利益として
 算出しにくいものまで含めれば、民族系精製会社の大連合、大日本石油精製グループ
 のスタート台なのかもしれません。一方Jomoは昭和シェルと提携していますが、「今回の
 新日石のとの提携による直接的な影響はない」とのコメントに留めています。
 Jomoから見た場合、他社との年間バーター数量740万KLの内、昭和シェルは230万KLを
 占める関係ではありますが、出光110万KL、コスモ110万KL、キグナス100万KL、新日石
 60万KLの顔ぶれとその数量からみれば、最も多い元売と言うだけなのかもしれません。
3.政府主導の石油開発水平統合に一石を投じたか
 経産省が5月末にまとめた「新国家エネルギー戦略」によれば、「自主開発原油の比率」
 を現在の15%から2030年までに、40%へ引き上げるという数値目標が掲げられました。
 その具体的方法までには触れていませんが、欧米メジャーに対抗出来る「中核会社」の
 育成をあげています。しかしこの中核会社のイメージは、32万BDをもつ国際石油開発と
 5万BDの帝国石油との経営統合を推進した国の方針と、上流から下流まで一貫して
 手がける「垂直型」を志向する新日石方針との間には、微妙な違いがあるようです。
 産油国は、利益は勿論ですが、精製設備やその技術、そしてそこに派生する「雇用」まで
 望んでいる様なので新日石戦略が有利だと思いますが、皆様のご判断は如何でしょうか。

我々SS業界が今すべきことは何か

さて元売の好決算の一方、我々SS業界は、非常に窮地に陥っています。詳しくは5月企画で
申し上げた通りですが、要約すると、2005年1月比で
 1.輸入原油のCIF価格は、25円から本年6月の48円まで 23円上がった。
 2.ガソリン業転価格も同時期で、89円から121円まで、+32円上がった。
 3.元売系列仕切りも 26円(新日石コストUP発表)上がった。
 4.元売からSSへの卸価格(資源エネルギー庁石油情報センター調査)も23円上がった。
 5.しかし末端価格は、117円から135円まで18円しか上がっていない。
 6.故に我々SS業界は、大幅なマージン低下にさらされ、経営は困窮している。

これを打破するには、「値上げしかない」と思います。元売全体では、過去最高の利益を
上げている中、SS業界が大赤字では、来るべきアルコール3%燃料や ETBE時代への
対応にむけた、タンクの二重殻や設備更新のための再投資が全く出来きません。
それは、あと数年での業界破綻を意味しています。せめて業界としての必要不可欠な
再投資と企業存続が出来るレベルまでの値上げにご理解を頂きたいと思います。