元売2001年度、販売、収支徹底比較 NO11
 販売、収支、SS数他、電力C重油激減等への対応能力が明暗を分ける

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 元売別石油製品別国内販売実績一覧表 2001年度


上記は元売11社の販売数量ですが、あくまで弊社推計ですから正確なデータが必要な方は、
8月下旬発売の経済産業省監修の石油資料等、正式な資料をご参照下さい。
 さて本年1月より三井石油が「元売」となり2002年1月以降はその数字が発表されております。
前年は
モービルの数字に内在していましたので、前年比は算出出来ませんでした。


ガソリン販売数量については

まずガソリンですが全体は1.5%伸びています。内訳はレギューラーが+1.7%、前年はマイナス
となったハイオクは今期+0.4%と僅かながら上昇に転じました。日石三菱改め、新日本石油の
昨年7月のエネオスハイオクキャンペーンの効果かと思いますが、全体としては、+10円高の
価格ではハイオクのニーズは弱いような気がします。超低硫黄で環境にやさしいという事でも
アピールしていますが、これは消費者のハイオクニーズというより地球環境全体を考えた
企業理念の問題ですから、そのコスト負担は、企業がすべてのガソリン利用者とともに、
負担していくのが理想かなと思っています。
個別にはJomoと昭和シェルが前年比3%以上の伸びで健闘しています。特に昭和シェルは
2年連続なので大変なことです。しかし同社は確かに頑張ってはおられますが、我々同業者の
印象からすると、その伸びすべてがSS通油で説明するのはむずかしいと思います。
反面モービルや東燃ゼネラルの落ち込みがやや目立つようです。前述の三井分の1/4が
抜けたとしても、この率は数字上は0.5%程度のはずです。これは全くの私見ですが、
昨年来の原油急騰で元売も正に非常事態となり、ガソリンを中心とする業転価格の向上の
ために系列外出荷を大幅に絞ったための「反動」ではないとか思っております。
合併後その下げが止まらなかった日石三菱も、エネオス新ブランド効果でようやく+0.4%伸び、
今年から社名も「新日本石油」として一新し目標25%のシェアーを達成出来るか楽しみです。

電力C重油の大幅落ち込みで、明暗を分ける精製元売

ナフサは景気低迷を顕著に反映して-6.3%、灯油も暖冬と需要の変化で-2.1%、9/11テロで
大幅減となったジェット燃料ですが、国内販売に限ってみれば+1.4%の伸びとなりました。
軽油は景気低迷とともに環境規制の影響を徐々に受け始めていると思います。
代替自動車のある3t以下は、ガソリンやLPGへの燃料転換が加速されてくるでしょう。
A重油も景気低迷と環境問題等で減少していますが、-0.3%止まったのは意外でした。
最も注目されるのはC重油の落ち込みです。見かけ上は-14.8%ですが、電力用に限って
みれば、落ち込みはかなり深刻のようです。すなわち、ベースロード(昼夜一定運転)として
原子力が基準となり、豊水なら水力を使い、環境を考えればLNG、コストなら石炭が選択され
猛暑や渇水等緊急需要でも無い限りはC重油の優先順位は一番低いようです。
昨年は猛暑の7月のみ好調でしたが、8月は冷夏で落ち込み、9月以降は景気低迷による
電力需要減も、C重油の減少で吸収しているようです。
ちなみに直近の4月で前年比50%減、5月は60%減というトンでもない速報数字を聞いています。

さてこの問題への対応は、高効率の分解改質装置を持つことです。RFCC等で分解・改質
すると、装置によって収率は異なりますが、7〜8割は中間留分やナフサ留分に変わります。
分解能力が高い東燃ゼネラル石油・川崎製油所のH2プロセス装置を用いると9割以上は
主に中間留分になるそうですし、中間留分の得率を抑えれば、結果として、ガソリンが
その分増産されることになります。
では、このようにC重油を分解して作たガソリンの精製コストは、かなり高いのでしょうか。
個別の装置の運転コストを評価するのは簡単ではありませんが、販売単価が原油より安い
C重油や残渣から、販売単価の高い製品を製造するわけですからメリットは十分ありそうです。
この「打ち出の小槌」をもってしまったら、生産したくなるは当然のことで、昨今の業転市況の
低迷原因の一端なのかもしれません。またこの分解改質装置やC重油でのIPP発電装置、
そして
環境対応の超脱硫装置まで含めて考えると、数十億から数百億の投資が可能か等
精製元売の総合体力の差は、今後の明暗を分けて行くと、言えるかもしれません。

決算数字が現すもの

まず3月期決算会社5社は、下記の通り減収減益となりました。
5社合計で売上げ高は5%減。営業利益-51%、経常利益-38%、税引利益で-53%です。
また九州石油以外の会社の連結決算では、日石三菱が改善しているように見えますが
これは後術する在庫評価変更方法の違いですから、実質的には連結においても業績は、
悪化していると言わざるを得ないでしょう。

一方12月決算各社の業績は比較的好調です。これは2001/1月から3月の業界環境が
その明暗を分けたと思います。昨年冬は、久しぶりの厳冬で灯油等を各社大増産しました。
当然需給はタイトとなり、業転市況は比較的好値圏で推移する中、元売の仕入である
原油価格は下落したので各社とも高収益を上げることが出来ました。
 しかし今年の冬は反対でした。暖冬の影響で需要が落ち業転価格が下落しましたが、
原油は高騰し、折からの円安も手伝って、CIFは上昇し、収益環境は誠に厳しくなりました。
今現在は業転市況は再び安値低迷、末端市況もじり安を続けています。しかし今回は
エクソングループが先頭を切って下げている訳ではないので、この辺の今年の冬の厳しい
決算が影響しているのかもしれません。



在庫評価変更の影響は

在庫評価方式の変更は、各社の決算に少なからず影響を与えています。
2000年12月期は昭和シェル、2001年3月期はコスモとJOMO、2002年3月期に日石三菱が
棚卸資産の評価方法を「後入れ先出し」から「総平均法」に変更しました。その結果
初年度は、
昭和シェル+171億円、コスモ石油+138億円、Jomo138億円、今期の日石も
+166億円の効果となりましたです。
しかし2001年度は原油価格が下落したため、利益の圧縮となり、昭和シェル-111億円、
コスモ石油、-90億円、Jomo-135億円のように多大なる影響を与えています。
従って前期今期比較においては、上記の合計額が、決算に影響した訳です。
時価会計は時代のニーズではありますが、本来の会社の実力を見るときは、この在庫評価の
影響を十分考慮する必要があります。

ガソリン販売とSS数
品質確保法に基づく3月末の固定式SSは 50,500SS前年比-1,500の減少です。
しかし実際は廃業手続きをしていないSSが相当数あるので、実質は5万SSに近いでしょう。
下記元売SS数は各社発表数ですが、あくまで当社調査の推定数です。
SS数は決して多くないエッソの1SS当たりの月間販売量163KLは、系列外販売が多いと
言われるT社を除けば群を抜いており、競争力に現れているといわれています。
三井石油への販売分を含んでいた、モービルも来年からはその実力が明らかに、
全農へのインタンク分も含むと思われるI社J社はそれを勘案する必要がありそうです。
またプライベートブランドが増えてきました。伊藤忠エネクスの忠ボーイが有名ですが、
数の多さから言えばやはり全農(JA)です。
尚、昨今各社ともセルフが急増しています。3月末のセルフ数を入手しましたので
各社のセルフ率とともに記載しております。

元売各社のガソリン販売数量とSS数、従業員人数の推移
EMGは平成13年12月末、?は不明  平成14年3月末、単位千KL
元売会社 販売数量 3月末数 前年比 KL/SS セルフ数 セルフ率 H14年 H13年 H12年 増減
日石三菱 13,396 11,987 -682 93.1 142 1.18% 2,483 2,585 2,809 -102
出光興産 8,325 5,896 -218 117.7 88 1.49% 3,430 3,652 3,867 -222
昭和シェル 7,716 5,402 -240 119.0 110 2.04% 1,105 1,047 1,440 +58
コスモ石油 6,664 5,373 -227 103.3 109 2.03% 1,892 1,968 2,062 -76
Jエナジー 6,194 4,476 -170 115.3 164 3.66% 1,558 1,600 1,950 -42
モービル 5,154 3,000 -119 143.2 89 2.97% ? 534 606
エッソ 3,985 2,032 -48 163.4 124 6.10% ? 467 530
ゼネラル 2,845 1,796 -158 132.0 108 6.01% 1,922 2,248 2,415 -326
キグナス 1,418 708 -37 166.9 53 7.49% 153 141 173
九州石油 1,136 703 -18 134.6 27 3.84% ?
太陽石油 1,425 412 -55 288.2 31 7.52% ?
三井石油 ???? 622 -107 ???? 39 6.27% ?
元売合計 58,501 42,407 -2,079 115.0 1084 2.56% ? 15,422 17,066
単独JA系 ?,??? 2,754 -84 ???.? ???? ????
商社系PB ?,??? 608 +204 ???.? 165 3.79%
商社系セルフ数165は、商社系全体の4,348SSの内数で、608SSの内数ではない。

各社の効率化状況
右表は各社の稼働率です。
昨年は発表されていたのですが、
今年はまだ入手出来ていません。
昨年来の業転市場の環境整備で
稼働率がどのくらい変化しているのか
興味があるので公開を期待しています。
精製コストは、低い会社で2.5円/L
高くても3.7円/L以下、(自家燃料費含)
だそうです。
各社グループ別製油所稼働率
元売会社 13年度 12年度 11年度
日石三菱 ? 76.3 73.3
出光興産 ? 78.0 72.2
昭和シェル ? 89.0 88.8
コスモ石油 ? 74.8 72.9
Jエナジー ? 71.9 72.0
エクソンG
? 86.0 83.3
元売合計 ? 79.2 76.8




急減した業界マージンは石油業界で本当に憂慮される事態です

昨年12月の76.5円をボトムに本年3月まで、元売間や大手業者間で取引される業転価格が
誠に憂慮すべき低水準になっていました。原因としては、色々考えられますが、
 1.以前より一部の元売がその系列販売能力に見合わない原油処理をしていたこと。
 2.テロ以降ジェット燃料の需要急落や前年比50%減とも言われる電力用C重油の減少で
  原油から取れる各製品の割合である得率バランスと需給バランスがくずれたこと
 3.記録的な暖冬で灯油需要が低迷したこと。
 4.一部の元売が、余剰製品を市場へ大量に放出した、等が重なったのだと思います。

しかしこれは一時の価格下落というよりは、元売がもはや業転市場すら、その価格影響力を
失ってしまったことを意味していると思います。というのも2月以降の原油の値上がりを受け、
各社とも2月に2-3円、3月も1-3円程度の値上げを発表しましたが事実上不発に終わりました。
更に続く原油の値上がりに対応し、元売は4月の3円、5月の3円の値上げを発表。
その時は本当に不退転の決意で環境整備、すなわち業転市場の正常化に取り組み12月には
バージで76.5円程度だったガソリンが、5月上旬には、86円まで10円もの急上昇をみせました。

しかしその後はじりじり下落し、現在では82.5円にまで下落しました。そしてこれと連動するように
末端市況も6月中旬から軟化し、各地とも2-5円程度値下がりしたのではないかと思います。
しかし原油は下がってはいません。むしろ若干の上昇分を円高で相殺しているという程度です。

さて昨年のこの企画で原油輸入から末端まで含めて業界粗利は20円しかないと説明しました。
現在はどうでしょう。東京都下を例にとれば、末端価格は92円、セルフは90円です。
原油CIFを20.7円、関税等2.25円、ガソリン税53.8円とすると業界全体のマージンが、15円まで
下落したことが分かります。

今後はどうなるのか

私は「価格」というのは大変重いものだと思います。すなわち業界なりその製品なりそして
流通業者としてのサービスの付加価値が、お客様である市場からどのくらい認められているか
その結果と思うからです。

では現在この許された15円で、絶対に必要なものを、積み上げて見ました。
7月原油CIFを仮に 21円として+税金 2.25円、1次輸送コストと精製費で5円でしょう。
これに海陸ロット格差(タンクチャージ等)とローリー代が2円、ガソリン税を加えると約84円です。
これは正に現在のSS届けの業転価格のレベルです。
末端価格が92円なら、SSとして許される付加価値マージンが8円で、合計15円になりました。


現在のSS業界の損益分岐点ガソリン粗利、いわゆるV指数T指数と言われる指標は、
平均となるとやはり8円から10円くらいでしょう。従ってSSとして残された8円は全額ほしい。
しかし昨年企画で説明の通り、販売元売としても 最低でも約4円、赤字油種では、経費負担
は出来ませんから、6円から8円必要と考えられるかもしれません。

今の状況は、正にSS業界と元売軍団がこの8円を取り合っているようにも思えます。
販売元売の言い値を受け入れていれば、SS運営会社は撤退か倒産を待つことになる?。
これはブランド料や経営サポート料を認めるとか認めないという机の上の段階ではなく、
来月の支払いのため、そしてSSの会社の存続のために、選択の余地のない系列外購入が
急増するかもしれません。

しかし
すべてのSSが系列から離脱し、業転品や東工取のJIS規格品を購入すれば、今度は
販売元売が存続出来なくなることも明らかです。
末端価格がもう少しあがればと願うことは簡単ですが、末端価格は、市場が決めるものです。
元売そして各販売業者が、集団自殺にならないよう、自己責任による早期の経営判断が
必要だと思います。