元売会社徹底比較 NO6.興亜石油TOB関連
98年度末販売実績、SS数、収支決算編


あなたは8月企画始め、元売決算関連企画の 番目のお客様です。
 今月は当社HPの人気企画、元売会社徹底比較のNO6ですが、当社は事実としての
データ提供と最小限の解説につとめ、その判断はご覧の皆さん自身にお任せします。
 関連企画 99/2.NO5.元売経費削減リストラ編 98/8.4.98/3月末決算,販売,SS数
ご参照下さい97/11.3.決算、金融収支、株価 97/4.1.ガソリン販売.2.元売カード

元売別石油製品国内販売実績一覧表 1998年度


ガソリンは3.6%と不況下にもかかわらず安定して伸びていますね。
また灯油等と比較して季節要因、気温要因に左右されにくいのも手伝って、
ガソリン独歩高の価格体系維持してきた過去の方針も分かるような気がします。
さてガソリンで今年度注目すべき事は、やはりある1社の極端な伸びでしょう。
次表の通りSS数は減っていることから、すべて自社系列のSSだけで伸ばした
とは言えないでしょう。また安値の卸価格が系列外に?という話もありましたが、
これが内外からの天の声を反映して5月頃より急速に収束し、現在の市況是正が
順調に推移している一つの要因だと言う人もいます。
灯油の減少は暖冬?要因より、その低コストにもかかわらず暖房エネルギーの
ニーズ変化があるのでしょうか。
 粗油問題で本来の需要が期待された軽油ですが、ガソリンとの価格差が縮小、
たことで軽油の経済的メリットが薄れ、乗用車のディーゼルエンジン搭載比率が
低下していることからガソリンへの需要シフトが起きているように思います。
 そして不景気の影響を受けた重油も低迷し今年も燃料油全体は前年割れでした。


ガソリン販売とSS数  品確法に基づく3月末固定式SS数は
推定 54,540前年比約-1610の減少です
一方元売傘下のSS数は三井と一部農協
込みで約 51,071という数字が出ます。
(日石三菱とJOMOのJA除きを修正)
 従って独自ブランドは約3千、休眠
5百ぐらいでしょうか。
 ちなみに最大のノンブランドは農協
で全国 4,850SSあります。内分けは
出光1,347,日石三菱 735,JOMO 693,
コスモ 433 他ですがJAマークのみが
1,516SSもあり比率にして31.2%です。
 またエッソやゼネラルの1SS当
りの販売は本当に効率的な数字です。
 尚系列外販売が多いと言われるT社
JAのPB向け販売量が多いI社、三井
石油販売分を含むM社はその分嵩上げ
されているのかも知れません。
平成11年3月末、ガソリン販売とSS数、単位千KL
昭シ、モービル、エッソ、ゼネ石はH10年12月末
元売会社販売数量3月末SS数前年比1SS当KL
日石三菱13,39413,793-54481.2
出光興産 8,072 7,032-61895.7
昭和シェル 6,931 6,495-22288.9
コスモ石油 6,381 6,278-29584.7
Jエナジー 5,917 5,217-86294.5
モービル 4,734 3,319 -66118.9
エッソ 3,837 2,177-126146.9
ゼネラル 2,960 2,174 -51113.5
キグナス 1,248 882 -98118.0
九州石油 938 825 -41 94.8
太陽石油 1,167 489 -19199.0
元売合計55,58448,627-2,94295.3
三井石油 ?,??? 1,016 -53???.?
全農JA系 ?,??? 4,580 -44???.?
決算数字が現すもの

 さて元売11社合計でもついに赤字という事実は、売上額12兆円からも、
他のエネルギー業界からも、そして世界の企業から見ても誠に憂慮すべきです。
 収支での注目は営業利益黒字と金融収支赤字が極端に多い会社がある事です。
非上場会社なので詳細は不明ですが、借入金は連結ベースで2兆円とも言われ、
雑誌等でも銀行の要注意債権として掲載されたり、M社の格付けで話題になり
ましたが、業界の信用回復と安定化の為、早急な情報開示を期待したいものです。
 また7/20の日経新聞にJomoと伊藤忠燃料との間に、本来一致すべき、
売掛金買掛金の差が55億円あると報じました。以前から言われていた事ですが
単なる未決着月の建値請求書と実勢価格の差にしてはあまりにも大きいのですが、
今後は誤解を招く恐れがあるものは指摘される前に改める必要があると思います。




税効果会計って何?

 平成11年4月開始年度から株式公開会社には税効果会計が適用されます。
この税効果会計とは、企業会計における収益または費用と法人税法における
益金または損金の認識時期の差によって生じる税金の「前払い」や「繰延べ」
を決算書に繁栄させる会計処理です。
 この税効果会計が適用されることで明らかになるのは、退職引当金や退職
年金過去勤務債務の要引当額と実際の引当額との差や、過去に税金を支払って
処理してきた費用などが明確になり(これらは財務上の含み損益といえます)
各年度の売上と費用との関係が現状よりは実態に近くなるはずです。
 ちなみに、日石は財務上の含み益を相当額もっていたため、期間損益が赤字
になった97年度以降も黒字決算を維持できたと考えられますが、一方もし
合併相手に含み損があれば、その分は相殺されてしまいます。

より強化される連結決算重視の開示基準

 しかし今回の会計処理方針の変更で、税効果会計の適用以上に大きな影響を
与える可能性があるのは、国際会計基準に合わせるため、連結決算重視の開示
基準に変わることでしょう。企業の本来の体質を見るには単独決算ではなく
連結決算を見ろと言われる由縁がここにありますが、では上場会社にとって
どのような会社が連結対象子会社になるのでしょうか。それは
 1.議決権の過半数を所有されている会社。
 2.議決権の40%を所有され、取締役の過半数が親会社の役員、従業員
   OBである会社等です。
しかしこれは法律でいう最低限のレベルですので、事実上傘下、管理下にある
子会社は、税務当局の指導方針によってはその対象は更に広がるので、非連結
子会社を使って、決算を調整してきた会社は苦しくなります。

 ここで心配なのは石油元売が、色々な面で面倒を見ている連結決算の
対象になっている出資特約店の範囲が拡大し、一般特約店がその負担を背負わ
される可能性が増えることでしょう。

それでも分からない子会社決算

 しかし、上記のような会計処理方針が変更されたとしても、情報開示の発想が
親会社になければ、我々一般庶民が有価証券報告書を見ても、子会社特約店の
実態は、やはりつかめないでしょう。
 一方我々が身近な例として感じることは、かなり運営力がある特約店でさえ、
あるSSの運営がうまく行かず、元売にそれを返上した多くのケースにおいて
元売子会社特約店がそのまま運営を継続しているという事実があります。
 元売の話によれば「家賃等について前特約店と変更はない」とのことですが、
ガソリン販売はまだしも油外収益はむしろ落ちている実態が数多く報告されて
いるので、元売の支援がなければ、かなりの赤字を背負い込んでいるはずです。
 全体として販売数量が伸び、1L当たりの本社共通費等が薄められたとしても
絶対赤字額が多くなるのは必然ですから、装置産業ゆえに少しでも多く販売した
いのは分かりますが、特約店レベルではやはり、税引前利益の方が重要です。

 原油価格上昇で我々特約店の仕入価格が毎月の様に上昇する昨今。その通常
仕切より遥かに安く、元売にとって直接変動経費の限界であるはずのRIM価格
でも黒字が出ないSSや元売子会社においては、抜本的な改善を期待すると供に
我々プロパー特約店に対し、良き目標となるような、モデルSSモデル特約店の
実収支等の情報を公開をして頂ければと思う次第です。 文 責 
垣見 裕司
               1999/7/29 NO3





日石三菱による興亜石油へのTOBに関するコメント

 さて新聞発表で既に皆様ご存知の通り、日石三菱は7月28日、東証1部上場の
石油精製専業会社である興亜石油を買収し、子会社化すると発表しました。
 その方法としては、同社の50%の株式を保有するカルテックス社の
持ち株全株を、一株360円(額面50円)総額261億円を公開買付(TOB)
方式で取得する内容で基本合意したものです。詳細は、
日石三菱のプレス発表参照
 本件に日経BP社様始め、マスコミ数社からコメントを求められましたので、
恐縮ではありますが、ここに掲載させて頂きます。

Q1、事前に知っていなのか、驚いたか、どう思うか
A1、もちろん知りませんでした。
   しかし株式こそ5.8%の所有ですが、製品引取契約も2006年まで
   ありますし、やはり最初にCAL社から日石に相談があったはずです。
   従って外資や日石三菱以外の資本が買ったのなら大ニュースですが、
   予想出来る選択肢の1つだったので特に驚きはありません。
   日石三菱傘下特約店として、歓迎するとともに高く評価しています。

Q2、購入価格が高いのではないか
A2、少なくとも日本石油精製の持ち株買取価格2000億円に比較すれば、
   (1995年12月6日発表で翌年1999年3月末までに20億ドル)
   比較的割安だと思います。同社は精製元売10数社の中でもT社K社に並ぶ
   高効率精製会社であり、IPP(電力卸供給事業)装置等収益性の高い設備を
   考えると決して高くなく、よい投資だと思います。

Q3、何故今なのか、
A3、一言で申し上げれば、諸事情あるCAL社の求めに日石三菱が応じたと
   考えるべきで、日石三菱からすれば今でなくても良いのかもしれません。
   しかし時期について外野が結果論で色々言うのは簡単ですが、もし半年遅れ
   前述の通り日石三菱以外の資本(それこそ新たなる外資B社S社)等へ売却
   された場合の混乱への保険と考えれば、早過ぎることは無かったと思います。
   もっとも外資のねらいは精製会社ではなく、破綻証券Y社を超格安で購入
   したような外資M証券会社的日本進出だとすれば、販売元売のはずです。
   また米国で近年、廃棄同然の製油所等を格安で購入して利益をあげている、
   T社のケースもなくはありませんが、同社は日本にはまだ興味を示して
   おらず、仮に購入意思があるとしても価格は1/10以下のレベルでしょう。
   でも一番安いときに買うというのはなかなか難しいのは常ですから、
   「まだはもうなり、もうはまだなり」適切な時期と考えるべきでしょう。

Q4、旧三菱石油、川崎製油所の様に購入後の廃止はあるのか。
A4、前述の通り興亜石油は人員削減も順調に進み、高効率精製会社と思います。
   (むしろ日石三菱精製の方がリストラとしてはやや遅れている?)
   麻里府127千BD、大阪102千BDは、日石三菱精製の水島230BD
   とともに比較的大規模製油所なので、上記3製油所の廃棄はないでしょう。
   以前から話のある、和歌山石精の50千BDも含めグループ全体で効率化を
   より推進すれば、十分投資効果はあると思います。

Q5、日石三菱精製との合併はあるのか。
A5、1月企画でも書きましたが、上場会社(興亜石油)と非上場会社
   (日石三菱精製)の合併は何かとコストのかかるものです。特に存続会社が
   非上場会社の場合、その株式価格をみなし評価され、課税の可能性がある
   など、合併によるメリットよりはデメリットの方が多くなるでしょう。
    エッソとゼネラルは合併なき強固な提携を、別姓結婚と称したそうですが、
   今回は規模の違いもあり、結婚というより養子にしたというところでしょう。
   従って当面は(吸収)合併やその必要性、更にはメリットもないと思います。
       1999/7/30 NO4     文 責 垣見 裕司