エクソンとモービルは合併出来るのか
史上最大のM&Aと日本の石油業界に及ぼす影響を考える
謹賀新年。あなたは1月企画始めエクソン関連企画番目のお客様です。
業界としても間違い無く自由競争&自己責任時代に入った事だけは確かなようですが、明治
維新に例えればまだ幕末の混乱という処でしょう。犬猿の仲と言われた薩摩と長州でさえ、
土佐を脱藩した坂本竜馬という個人の触媒的活動で提携が実現した訳ですから、一般には
無くなったと言われる某2社の合併も、その竜馬や第3第4の会社を入れると話が復活する
と言うウルトラCもあるかもしれません。と言う訳で今年も斬新?な企画で頑張ります。
前月の日石、三石合併解説NO1.2元売会社徹底比較NO4や97年12月企画の
本気を出したかメジャーの動きも合わせてご覧頂きたくお願いします。

数字で見るエクソンとモービルの合併

昨年の12月、世界第2位のエクソンと同第4位のモービルは、エクソンがモービルを
買収することで合意に達したと発表しました。買収総額は772億ドルで昨年春の米金
融大手のトラベラーズによるシティコープの買収の725億$を上回り正に史上最大の
M&Aの発表となりました。株式交換方式で実施し、モービル1株につきエクソン株
1.32株が割り当てられるとの事。ちなみに両社の株式の時価総額合計は2450億$
売上高は1823億$となり、米自動車大手のGMの売上高1781億$も抜き正に
世界最大の企業が誕生することになります。また従業員総数も122700人。その内
9千人が余剰となり世界各地において99年半ばまでに削減するとも発表しました。
尚、世界の主要石油会社の規模比較表や両社のHP EXXONMOBILには
公式発表がのっておりますので、英語に自信のある方は是非ご覧下さい。

史上最大の合併は実現するのか

「世界最大級の企業の誕生」と騒がれたエクソンとモービルの合併発表。
両社はともに1911年に独禁法違反で分割されたスタンダードオイルが前身ですが、
最近でもマイクロソフトに対する独禁法違反訴訟を検討したり、ロッキードとグラマン
の合併を阻止した当局に、果たしてこの合併は承認されるのでしょうか。
上記の通り売上でも総資産でも、エクソンモービルは正に世界最大の企業となります。
しかし唯一意外なのは、両社が合併してもアメリカ国内のシェアーは決して高くなく、
17%程度といわれています。州によっては40%を超えるところもありますが、その
地域のSSや場合によっては製油所の売却という条件を飲めば十分に可能性はあるとの
事です。またこれは独禁法そのものの運用基準が変わってきたと見るべきでしょう。
国境を超えた大競争時代の中で、米企業が厳しい競争にさらされている場合は合併が、
外国企業や更には産油国等国家レベルにおいて競争力強化に繋がるなら「当局は応援」
という国家戦略が反映し、条件付きながら合併は承認されるのではないでしょうか。

その他の世界レベルでの動きは

昨年8月にBPと準メジャーの米アモコの合併が発表され、この1月に誕生したBP
アモコは、現在第3位。また12月はフランス石油会社トタールが、ベルギーの会社
ペトロフィナを390億$で買収するとの発表もあり、こちらは売上高529億$で
世界第4位のレベルです。一方、欧州における合弁事業が昨年9月に発表されていた
シェルとテキサコは12月に白紙に戻ったと発表しましたが、これはより高い次元で
の合併を目指すため、という話やシェブロンというの名前も挙がっており、メジャー
の再編という世界レベルでも今後の成り行きを注目したいと思います。
しかし税引後利益1兆円を計上するエクソン始めこの様なメジャーが何故それ程危機感
を強めているのでしょうか。原油の採掘権をもつ彼らにとって原油は正に売り物です。
すなわち価格の下落は上流部門の採算悪化であり、この辺は99%原油を仕入れる日本
の感覚と決定的に違うところです。そして原油需要の伸び悩みや開発コストの上昇など
も挙げられますし、下流部門の採算も、石油製品需要の伸び悩み、新規業者の参入、既
存業者間での競争の激化などによって悪化しております。

日本におけるエッソ石油とモービル石油の違いは?

欧米では保守的なエクソンに対し開放的なMOBILと言われる程、同じ会社から分離
した割には社風が違う両社ですが、日本のエッソとモービルの違いはどうでしょうか。
一般にはEMGKとか東燃グループとか言われる両社ですが、前月企画でも触れた様に
世間が簡単に考える程、両社は同じではないと思いますが、その最も大きな違いは、
特約店政策でしょう。SS数1−5程度の比較的小規模な特約店が多いエッソに、いわ
ゆる超大手特約店という会社は思い浮かびませんが、モービルは意外に大特約店主義で
必ずしも単独取引ではありませんが三愛石油G(SS数732)一光(233)住商G
(287)相光石油(182)南国殖産(130)ヤナセG(90)などが有名です。
その意味でも双方のマークを暫く残す必要があるのかも知れません。
また、石油製品の供給面でも、東燃をメインとするエッソと、極東石油工業を三井石油
とともに傘下に持つモービルとでは、微妙な違いがあることも否定出来ません。
尚、資本関係と石油製品の主な供給ルートを相関図にしましたのでご覧下さい。

ドラスティックな外資の決断?

ところで、一昨年の12月企画本気を出したかメジャーの動きでも書きましたが、
既にエッソGはゼネラル株の51%を取得していますが何故合併しないのでしょうか。
これは一般論ですが、買収の場合、時価評価と買収価格との間に差額が発生した場合は
課税対象となり商標統一も含め100億以上の税金や経費がかかると言われています。
これを回避する策としては、上場会社の方に全株を譲渡し、形式買収する会社を子会社
にしたのち吸収合併し、社名を買収会社に変えると方法や買収される会社に対しTOB
(公開市場買い付け)をかけ持ち株比率を大幅に引き上げて上場廃止。そして優良資産
営業権、更には人材も含め存続会社に売却し、会社は清算等荒っぽい方法もあります。
しかし上記の話はあくまで方法論としての可能性で、特定の会社を想定したものでは
ありませんので、くれぐれも誤解のないようにお願いします。

自分の運命は自分で決めよう。

ある業界元売のトップの方が「核融合(合併)は常温では起きない。今はまだ常温だ」
と言われたそうです。しかし私は常温というより、既に爆発寸前のような気がします。
通常変化速度というのは一定ではなく、時間にすると最初や最後の一瞬に大きな変化が
一気に起こる事も多いようですし、ガソリン価格を見ても長年の自由化で暴落?も最後
の2年です。従ってその温度計の認識も実験室のビーカーをのんびり眺めるのではなく
その実験室は実はスペースシャトル中にあって、窓がいつ割れてもおかしくない?。
そういう既成概念に捕らわれない発想で考える必要がありそうです。外圧や当局、銀行
指導で合併を迫られるのではなく、自らの責任あるタイムリーなご決断で会社を救って
頂く様、お祈りしております。文責 垣見裕司12/25.NO2

BPアモコの合併承認、99/1/6 追加

米連邦取引委員会(通称FTC)は、昨年12月30日付けで、両社の合併を条件付
で承認した。これは6ヶ月以内に134SSの売却をするというもので両社ともこの
案に同意したとの事。欧州側の欧州委員会も既に合併を承認している。
後書き?。HPで情報を掲載しておりますと、色々な方からお声を掛けて頂きます。
お叱りを頂くのかなあと思いますとその逆で、例えばその方の所属する元売の話なのに
「何々の話は本当か?」等色々な質問を頂きます。しかし多くの情報を総合して行くと、
オボロゲながら見えてくるものもあります。当たらずしも遠からず?。本年もよろしく。