本気?を出したかメジャーの動き
 エクソンは日本独特のSS業界商習慣を打破できるか
皆さんこんにちは、あなたは12月企画の 番目のお客様です。
英国系メジャーのBPがSSの日本進出を大々的に発表する中、エッソとゼネラルが過去の
業務提携を解消する記事が比較的小さく発表されておりました。えっ提携強化じゃないの?
過当競争で元売集約化の中、何故提携解消なのか、親会社エクソンの戦略を考えてみます。

ゼネラル石油を子会社化したエクソン

 日本の石油会社への外国資本の出資は 外為法の規制に加え、精製部門を持つ会社は
日本特有の「行政指導」でその持ち株比率が50%以下に押さえられてきました。
昭和シェル、東燃、興亜石油などの外資の持ち株比率が50%なのもその為です。
 しかしエクソンはゼネラルの持ち株比率を49%から50.1%に引き上げる際
「もし通産が反対するなら日米通商問題に発展させる」と強行に承認を迫りました。
そして通産もこれを認めざるをえず50%の壁はあっさり破られることとなりました。
 またエクソンは、ゼネラル石油に対しても、過去の資本提携時に交わした
「役員の過半数を日本人が占める」との協定を解消し、先に規制緩和を経験した
フランス法人の役員を営業のトップに据えました。
 そしてエクソンの方針は、ゼネラル石油の特約店政策にも既に現れており、
特約店の選別や、請求書までもがエッソ様式に変わったとも伝えられています。

そもそもメジャーとは何か

 我々石油業界で言うメジャーとは、原油の開発、生産、販売までを一貫して手掛け
世界的な規模で経営を行う会社を指し、国際石油資本などと呼んでいます。
 具体的には、エクソン、モービル、テキサコ、シェブロンや(以上アメリカ系)
ロイヤルダッチシェル(英蘭系)ブリティシュペトロリアム(英系)のフランスの
CFPを加えた、メジャー軍団は、永い間、世界の石油市場を支配していました。
 1960年、サウジなどの産油国がOPEC(石油輸出国機構)設立後、
多少その力は衰えましたが、依然その影響力は強大であることに変わりはありません。

メジャーのトップ、エクソンの力はそれ程驚異か

まず過去3年間の公開された営業収支を本国のホームページからみて見ましょう。
 年末 売上額 百万$その他収入販売総経費税引 利益 億円換算利益%1株益
1996131,5432,706122,3337,5109,0125.71$6.02
1995121,8042,116113,4786,4707,7645.31$5.18
1994112,1281,776106,1005,1006,1204.54$4.07
単位百万$、円は120円/$換算
日本元売との単純比較は出来ませんが、正に桁違いですね。
 しかしエクソンの本当の強みは規模や利益以上にその戦略と実効性にあるでしょう。
規制緩和でハイパーとの戦争に失敗したフランスの経験を活かし英国では防戦に成功。
創業から150年国際政治と世界経済を舞台に熾烈な競争を生き抜く中で培った経験。
それは投資効果業務効率化から社員の倫理規定まで、綿密にプログラムされた戦略を
環境変化に応じ、即座に、明確に、実行出来る点ではないでしょうか。
 更に11/5の日経産業によるとエクソンのマニュアルには「業界の将来性に悲観論を
 公表し競争相手を早期にやめさせる」とまで書かれている、と伝えています。

僅か7%のシェアーで日本ガソリン価格を決めるエッソ

エクソンの100%子会社であるエッソは、元売会社徹底比較で解説した通り
日本でのシェアーはたった7%、販売量もトップの日石の半分以下で順位も8位です。
しかし、1SS当たりの販売量はダントツトップ、そして徹底した効率化で、
損益分岐点となるガソリン粗利は業界中もっとも低い10円といわれています。
その競争力と地域最安値という戦略で、安値のプライスリーダーと言われて来ました。
しかしエッソの力は値下げばかりでなく適正価格への値上げも合法的に出来る事です。

 一時期発生した首都圏の神奈川や千葉で80円前後の戦争を解説して見ましょう。
1.エッソグループは効率化を実現した上で戦略をもって価格をさげた。
2.一般のSSは戦略は無かったが、系列元売の支援を期待し、赤字でも追随した。
  しかしこの価格追随は日本独特の業界習慣でエッソ戦略の最大の誤算でしょう。
3.そして地域市況は混乱状態になり一般SS大赤字、さすがのエッソSSも赤字。
4.それを改善すべくエッソは、公正な形で地域の系列SSに対する卸価格を発表。
5.経営にシビアなエッソディーラーは適正価格に値上げした。
6.元々戦略もなく値下げに加わったまわりのSSはこれ幸いと追随した。

これが一般の方々に誤解を招くぐらい短期間に安値が合法的に是正された真相で、
エッソの戦略が成功したかどうかは別として、値下げも値上げもエッソ主導?
この出来事は元売も特約店も、改めてエッソの影響力を感じる結果となりました。
(エッソの合法性への追求は価格談合等を厳しく禁止することは勿論、誤解を招くおそれのある
会合への参加そのものを禁止する一方、盆暮れのお中元お歳暮も書面で辞退する徹底ぶりです)

対抗出来るか日本の元売

ではこれらのエクソンエッソの攻勢に他の元売はどう対処しているのでしょうか。
実は昨年、やはりメジャーであるテキサコとシャブロンの子会社カルテックスが、
所有していた日本石油精製の50%の株式全部を日石に売却したことから、
「メジャーは日本撤退か」などと喜んだ時期もありました。
 しかし民族系会社の多くは戦後、通産指導の保護政策の温室で育てられました。
国策により作られた共同石油、そして日本鉱業と合併してジャパンエナジーへ。
或いは大協と丸善の合併も通産指導と言っても過言ではないでしょう。
日債銀、拓銀、三洋、山一、株価というのは多かれ少なかれその会社の将来を
暗示?しているので、対抗出来る元売りは限られているような気がします。
財務体質の良いはずの我らが日石、しかし系列特約店の当社からひいき目に見ても
今一つ明確な戦略が打ち出されず、勝ち残りへのシナリオが見えてきません。

エッソの特約店VS例えば垣見油化はどうか

 さてここまでは今月企画の性格上、エクソンエッソを良く解説してきましたが、
そんなにいい元売ならエッソ系列へ、SSの移籍が増えても良さそうですね?。
 しかしエッソは元売りの中で一番方針が明確なだけに、勝ち残る為の系列指導も
非常ーに厳しいと聞いております。日石系列にいた特約店販売店がエッソに移籍
した例もありますが、必ずしもうまくいっていない事の方が多いようです。
(逆にエッソの特約店からは日石と当社の関係は案外うらやましがられている?)
結論は出ませんが、エッソディーラーと例えば当社を勝手に比較してみると
1SS当たりの販売量や1L当たりのコスト競争力では負けても企業としての
総合力は決して負けない覚悟でやっております。

過去の提携解消はエクソンの宣戦布告!、そして最大の敵は

エッソとゼネラルの提携解消!これは自由化前の通産管理下の提携からの決別で
エクソンの日本市場における勝ち残りを賭けた競争へ「宣戦布告」でしょう。
 エッソとゼネラルの最も分かり易い「合併」という形も十分あるでしょう。
しかし今のエクソンにとってはそれはいつでも出来ることであり、むしろ合併までの
公正取引委員会や証券市場等への対処、系列調整やユーザー問題など決して低くはない
ハードルを考えると、それは意外にコストと時間が、かかるのかも知れません。
むしろエッソとともにゼネラルの会社もブランドも残し、即戦力として強化する。
その方が遙かにローコストで本当の効率化を短期で図れると考えた方が良いでしょう。
 さて本気を出したエクソンはその実力を発揮して規制緩和戦争に参戦する訳ですが、
その本当の敵は、欧米人には難解な日本独特のSS業界の商習慣なのかもしれません。
 文中に誤りがありましたら訂正しますので、ご連絡下さい。
今年は本企画をもって終了です。一年間どうもありがとうございました。文責 垣見裕司
元売会社徹底比較NO1.2はこちら 先頭ページへ戻る

参考、各メジャーの日本石油元売、精製会社への出資状況
エクソンはエッソに100%、ゼネラルには47.5%、東燃に25%の出資。
 またエッソがゼネラルに1.5%の出資(従ってゼネラルは49%)
モービルはモービル石油に100%、東燃に25%に出資しています。
 この会社は石油精製会社ですが、この東燃もキグナス石油に50%出資しているので
エッソ、モービル、ゼネラル、キグナスは東燃グループとも呼ばれています。
この他ロイヤルダッチシェルは、昭和シェル石油に50%出資しています。