元売2000年度、販売、収支徹底比較 NO10 販売、収支、SS数データと大疑問販売元売とは何か |
販売数量については
上記は元売11社の販売数量です。あくまで弊社推計ですから正確なデータが必要な方は、
8月下旬発売の経済産業省監修の石油資料等正式資料をご参照下さい。
まずガソリンですが、全体は1.3%伸びています。反面ハイオク比率は減少しています。
ハイオク仕様車は相当割合ありますので、この減少はかなりの意味をもつと思います。
エンジンが高性能化し、ノッキングが起きなくなり、市場=お客様のニーズが減ったのか。
ハイオクに性能に不満があってのハイオク離れなら、性能アップした新ハイオクは正に
お客様のニーズですが、良いものを作ったので売ろうというのでは生産者思考でNGです。
良いものと信じお勧めする一方、押し売りは絶対していけないと思います。
個別には昭和シェルが前年比5.2%という伸びを示していますが、これは大変な数字です。
同社は確かに頑張ってはおられますが、我々現場の同業者の印象からすると、その伸び
すべてが、SS通油であるとは言えないような気も致します。
合併の反動減少もなんとか止まった日石三菱。ゼネラル系のマイナスでEMGK合計も微増。
そのシェアーは僅差で、エネオスVSシナジーというブランド競争も手伝って、両社の競争は
今後益々目が離せなくなるでしょう。
灯油は、2月までは厳冬で特需的な数量でしたが、その後は急減し101.5%に終わりました。
景気を反映するといわれる軽油や重油計は、それぞれ−3.9%、−2.8%と減少しそして
燃料油全体の−2.0%は、省エネや脱石油を勘案していも昨今の日本経済を反映しています。
今年度は各社とも好決算です。これは
1.各社とも不退転の経費削減が効果を表し始めた
2.原油CIFが昨年12月をピークに下落したため仕入れコストが下がった
3.ガソリンが一部の地域を除き、市況転嫁出来、12月くらいまではそれが維持された
4.厳冬で、灯油の好値による販売が出来た。 事などがあげられると思います。
しかしこれは昨年度の話で3月から原油は再び上昇を始め、6月初旬にはボトム比+3円
にもなろうとしています。一方ガソリン末端市況は年末からジリジリの値下がりを続け個人的
印象ではピーク比−3円になっており、元売卸価格が5月以降極めて厳しいのはこの為です。
さて元売のために申し上げるのではありませんが上記元売合計で 540億円という利益は、
一見良い決算のようですが、225百万KLの販売数量からすると僅か0.25円/Lの数字は、
まだ薄利であると言えます。
また金融収支では、、出光の-248億円、コスモの−131億円の計上は、昨年よりやや
減少しているものの、健全な額とは言えません。有利子負債総額の適正レベルへの圧縮は、
極めて早期に実施すべき問題だと思います。
各社の効率化状況 下表は各社の稼働率で、昭和シェルGやエクソンモービルGが良い数字です。 |
各社年度末従業員数
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ところでガソリンの業界粗利が50円もあったときは、何の疑問ももたなかったのですが、
昨今、気に係り始めたことがあります。
現在は、末端が95円として、原油CIF20円と税金を除くと、業界粗利は20円しかありません。
私は「価格」というのは大変重いものだと思います。すなわち業界なりその製品なりそして
流通業者としてのサービスの付加価値が、お客様である市場からどのくらい認められているか
の結果だからと思うからです。
一方IT時代は中抜き現象と言われています。良い悪いは別として、ソニーのPS2のインターネット
直販はM電器の販売店軍団とは対照的な典型例だと思います。
石油業界での究極の元売直売は、ガソリンの自動販売機?的なセルフになるのかもしれません。
ではこの許された?20円で、絶対に必要なものから積み上げて見ました。
ガソリン価格ページをご覧下さい。原油CIF+税金+1路輸送コスト+精製費は何故か限りなく
業転価格に近いのですが、京浜から直送可能な弊社の場合は、これに内陸格差とローリー代と
そして末端SSの付加価値マージンがあれば、なんとか20円でも出来そうです。
それまで、元売と言えば、原油輸入と精製そして販売を担当する会社と思っていましたが、
輸入は商社も出来ますし、精製(他業界ならメーカでしょうか)これは精製元売の担当ですし
そのコストも3円前後とかなりはっきりしています。
では、原油CIF+税金+1路輸送コスト+精製費に近いである業転価格から+8円もの価格を
上乗せして卸価格を示している、販売元売の存続には幾らのコストが必要なのでしょうか。
例えば日石三菱(単体=精製除く)の場合、総経費2150億円を総販売量5200万KLで割ると
4円という数字が出てきますが、C重油やインタンク軽油は、業転価格並みでとても本社の
経費などは出ているといえません。仮に採算油種を半分とすれば、倍の8円となり先ほどの
数字と合ってきます。
前月企画の通り、ご当局の勉強会に参加していますのでお伺いしてみたら、メーカでもない
のに業界内でその地位を築いているのは、他業界にはあまり例がなく、しいて言えば建設
業界のゼネコンのみかもしれないということでした。
では、販売元売の本当の役割や存在価値とはなんでしょうか。例えば原油開発ですか?
これは原油市場がありますから、その役割があったとしても、日本の輸入CIF価格以上
ではないはずです。従って私の考えでは、
POS、ITやEビジネスシステムの構築、ドクタードライブの様な
新販売戦略、或いはSS経営や運営に対する指導サポート、
そしてなにより「エネオス」に代表されるようなブランド価値
ということになるのでしょう。
しかしEビジネスやDDを全くやっていない、また元売からの運営指導を頂かなくても、
独自ノウハウで、元売目標値を既にクリヤーしている優秀な会社にとっては、その
ブランド価格が、選択の余地なくのせられてしまうのは少々納得がいかないところでしょう。
ちなみに最近の業界新聞等でブランド価値は、1円から1.5円ぐらいではないかという記事が
出ていましたが、ブランド価値を含めた価格が市場競争力を有しているかが重要で、
この結論も市場が判断することと思います。 文責 垣見 裕司 2001/7/28 NO2