元売2004年度、収支徹底比較 NO14
 収支報告、SS数の他、LPガス元売再編問題を考える

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04/8.NO13.2003年度決算編
03/8.NO12.2002年度決算編02/8.NO11.2001年度決算編
01/8.NO10.2000年度決算編、 0/11.NO9.原油処理設備問題00/8.NO08.1999年度決算編
00/4.NO7.どこまで下がる石油株、99/8.NO06.1998年度決算編、99/2.NO5.経費削減リストラ編
98/8.NO4.97年度決算,販売,SS数他です。文責 垣見裕司 05/7/29 NO2 UP時 68,000

 元売別石油製品別国内販売実績一覧表 2004年度(2005年3月末期)

まず今年は悲しいお知らせから始めなくていけません。例年石油連盟に加盟している元売の
販売数量は、間接的ながらそのデータを入手していたのですが、今年からは、誠に残念ながら
それが困難になりました。実は以前から、元売間の転売品や融通玉の数量は、両方の元売で
重複してカウントされることなく、ちゃんと調整されているのか等の疑問が残るところではあり
ましたが、正しくないからと言って全く発表しないのは、業界人としてはやや寂しい気がします。
自動車販売業界の方は、陸運局の登録する必要があるからなのかもしれませんが、前月に
新車登録された台数を翌月上旬、メーカー別、車種別に発表しておりますので、元売各社に
おかれては色々なご事情はあるのでしょうが、個人情報以外は、むしろ開示の時代ですので、
早期に再開される事を一業界人として願っております。
つきましては今回は、資源エネルギー庁発表のデータを加工して、各油種の国内販売数量と
その前年対比伸率を掲載することでお許し頂ければと思います。尚、前年まで当社HPで発表
してきた数量と年度合計数量が若干異なり単純比較が出来ませんので、その比較は、今年
掲載したものをご参照下さい。

       
2004年度 各油種の国内販売数量、資源エネルギー庁発表 単位1000KL


ガソリン、灯油、軽油他の販売数量について

まずガソリンですが全体で1.5%伸びています。主力商品が一貫して伸び続けている業界は
あまりないので、これで利益が出せないとしたら、如何にも残念です。夏の猛暑等が、かなり
増販に寄与したのではないでしょうか。
価格が乱高下し苦労した灯油は、前年比−3.9%。勝負が決まった後の2月、3月は前年を
大幅に上回りましたが、一年間の売れ行き不振を補う程ではありませんでした。
一方軽油は、久しぶりに前年比 100%をクリヤーしました。しかし、景気回復や実需の伸長
というよりは、「不正(脱税)軽油の取締強化の効果だ」と称する業界人もいます。

ところで今回は元売別数量を掲載出来なくなった代わりに、月別数量を記載させて頂きました。
これは、度重なる値上げが続いているSS業界ですが、ともすると数量が前年割れなのは
自分のSSだけではないか?、それは「値上げ」が原因なのではないか?、とついつい疑心暗鬼
になる経営者や店長も少なくないでしょう。
発表はどうしても遅れますが、エネ庁集計の毎月のデータが、例えば5月数量なら、7月6日に
石油連盟の 石油統計情報の 統計資料リストの 2 石油製品バランス から見られますので
ご参考にされて見ては如何でしょうか。
 ちなみに、ガソリンですと、2005年4月は、4,958千KLで 前年比102.57%と伸びていますが、
5月は逆に4,887千KLで、95.36%と、6月値下げの買い控えが、如実に出ています。
その意味では、7月、8月は大幅値上げでしたので、6月仮需が、どの位の数量増になって
現れるか、私も注目しています
決算数字が現すもの
今期の決算を一言で申し上げれば、石油業界として史上最高の好決算と言えるのでしょう。
単独決算では、新日石のように販売元売のみのところや、コスモ石油のように精製部門を
持つ会社もありますので、一概には言えませんが、一番大きな要因は、設備廃棄が順調に
進み設備稼働率が向上、その結果業転価格が安定し、系列価格に近づき、商社や大特約店
向けの価格においても、そこそこの利益が出るようになり、全体として安定した利幅が確保
出来たからでないかと思います。
 もちろん、その業転価格の安定には、精製設備廃棄だけでなく、海外製品市況の高騰や
サルファーフリーという世界最高水準規格のために事実上海外からの製品輸入が止まった
だけでなく、業転価格が緩んだ時には逆に輸出したり、高度な精製設備によって付加価値の
高いものに分解加工することが、可能となったためだと思います。
そしてその一方で、効率化の追求等による、大幅なコスト削減効果が大きいと思います。



一方、連結レベルで見ると、原油やLNG等開発部門の貢献、原油在庫評価による好影響
中国経済好調等の影響で石油化学原料が高騰したことによる石油化学原料部門の貢献
そして、従来はどちらかと言えば足を引っ張っていたはずの、販売子会社が、何んとか自立
出来るまでに実力をつけて来たことによる貢献等が上げられるのではないかと思います。
一部の特約店や販売店の中には、元売が卸価格を吊り上げたことによる利益だ、との声も
聞かれなくはありませんが、私個人的には、上記のような評価をしています。
ちなみに新日本石油の場合は、連結経常利益で 前期比 1550億円も改善していますが
その内訳としては、@原油高による在庫評価益 +850億円、Aコスト削減効果 +350億円
B石油及び天然ガス開発 +60億円、C数量増及び石化原料のマージン改善 +300億円
であるとお伺いしています。但し在庫評価益が一過性であることは、言うまでもありません。



ガソリン販売とSS数
前述の通り今年からは元売個別の販売数量が分からなくなってしまったので、元売別の
SS平均販売数量は算出出来なくなってしまいましたが、各元売が発表した2005年3月末
現在のSS数は、記録してありますので、ご紹介しましょう。
ちなみに、品質確保法に基づく平成17年3月末のSS数は、約48,800SS 。この内可搬式や
閉鎖を届けていないSSもあるので実質48,000箇所と思ってよいでしょう。従って約1万SSは
元売のブランドを全く掲げていないPB(プライベートブランド)であることが分かります。

元売各社のSS数とセルフSS、元売社有SS数比較表
  平成17年3月末、単位千KL / KL  社有=元売所有物件
元売会社 3月末数 前年比 社有 社有比 セルフ数 セルフ率 社有 社有比
新日本石油 11,059 -274 2,518 22.8 651 5.9% 378 58.1
出光興産 5,358 -150 1,466 27.4 400 7.5% 314 78.5
昭和シェル 4,808 -160 1,116 23.3 312 6.5% 192 61.5
コスモ石油 4,709 -217 899 19.1 483 10.3% 327 67.7
Jエナジー 4,023 -127 1,172 29.1 440 10.9% 297 67.5
EMG 6,075 -186 1,187 19.5 810 13.3% 399 49.3
キグナス 626 -17 108 17.3 130 20.8% 58 44.6
九州石油 699 -10 86 12.3 96 13.7% 35 36.5
太陽石油 394 -18 114 28.9 85 21.6% 59 69.4
三井石油 407 -65 131 32.2 86 21.1% 55 64.0
元売合計 38,158 -1,224 8,797 23.1 3,493 9.2% 2,114 60.5
単独JA系 2,??? -?? ???.? ???? ????
6商社系PB 単独803 +11 ???.? 436
全農系は4,652 SS。全農マークのみで元売マークをあげていないものが2,907SS。
商社系セルフの436SSは、元売マークを含む4,488SSの内数。802Sの内数は不明。
本表は、石油業界新聞等より各元売が発表した記事等を参考に弊社が再編集した

今回は元売がそのSSを所有している通称「社有SS」数も記載しましたが、セルフにおける
元売所有率が如何に高いかお分かり頂けると思います。その構造上大型物件がセルフに
適しているからか、改造に多大なる投資が必要だからか、それともセルフが事実上元売の
直売方式だからか等の理由は分かりませんが、何かを物語っていることは間違いありません。


石油元売のトピックとしては、LPG元売の再編加速だ

今期の元売レベルで注目すべきことは、やはり元売の子会社や関連会社等で急速に動き
始めたLPガス元売の再編加速だと思います。
具体的には2005年4月、新日本石油が子会社新日本石油ガスの統合を発表、僅か3ヶ月後の
7月にそれを完了させてしまいました。新日本石油ガスは、2003年に興亜石油ガスと合併し
16%というLPガス業界のトップシェアーであったが、万全を期した感があります。
一方その対極的な統合は、出光興産の子会社 出光ガスアンドライフと三菱商事のLPG部門
が合併し、2006年の4月には、シェア21%のトップ企業が誕生する予定です。こちらは、水平
統合と言えるでしょう。この他、日商LPガスは、2001年に大阪ガスの傘下に入り、その経営
基盤を強化する一方、更に伊藤忠商事のLPG部門と業務提携で合意したと発表しています。

では何故急にLPG元売の再編が加速したのでしょうか。
これはあくまで私見ですが、LPGの輸入価格の高騰が最後の一押しになったのではないか
と判断しています。もともとガス元売は、LPGという製品をサウジ等から直接買うとともに、
国内においては、原油から精製されたLPGを石油元売から買うという構造で、LPG元売として
の付加価値は、備蓄がメインと言っても過言ではありませんでした。
また物流でも、大手特約店は、自らのLPGタンクローリーを持ち、充填基地を持ち、末端
ユーザーへの配送を行う、ジョバーであるとともに、末端ユーザーの軒先に設置されている
容器にも元売ブランドではなく、その特約店名が表示されている例がほとんどだからです。
そして最後のきっかけが、LPG輸入価格の高騰です。元々年間での価格変動は大きかったの
ですが、簡単に言えば 1トンあたり年平均200ドルが倍の400ドルになったと言えるでしょう。
しかし末端での競争相手は、都市ガス等の天然ガスなので、値上げどころか、コスト削減等
の値下げも一部に見られ、ガソリンのような末端転嫁が、思うように出来ない状態なので、
この2年で1トン当り200ドルの業界利益が丸々吹っ飛んだと言っても過言ではないでしょう。
実は、それなりの競争力を持っていると自負している弊社LPG部門も例外ではありません。
このような状況下での再編なので、急な発表と即実行ではありましたが、新日石の合併は
誠にスムーズに行われました。当社のように石油と兼業の特約店には大歓迎するとともに
ガスのみに口座を持つ取引先も、冷静に歓迎し、今後に期待していたように思います。
さて話を戻しますと石油元売でさえ、新日石-コスモ-出光、EMG、昭和シェル-Jomoの3極内で
提携が進んでいるにも関わらず、付加価値のあまりないはずのLPG元売が、20社もあるのは
単純に考えても多過ぎるでしょう。その集約方法ですが、垂直統合と水平統合どちらに軍配が
上がるか、あるいは両方とも勝ち残れるか、今後時代が証明してくれるでしょう。

我々SS業界が今すべきことは何か

7月7日は、WTIが一時62ドル/Bを突破の後、7月26日現在、59ドル/B台で推移しています。
中東原油も高止まりです。7月8日のオマーンは、56.4ドル/Bと過去最高値となり、WTIとの差は
僅か4ドル/Bまで縮小しました。昨年は14ドル程度の差だったので、相対的に見て中東原油が
いかに値上がりしているかお分かり頂けでしょう。更に昨今は円安が追い討ちをかけ、7月
20日は、113.93円/$と、5月比で何と6円近い円安となっています。
また先日財務省が発表した原油の輸入通関統計では、5月34,088円/KLが、6月33,525円/KL
と僅か563円/KLしか下がりませんでした。6月の元売卸価格の値下げは1.5円でしたが、これに
過剰反応した一部激戦区では、10円/Lも下落させてしまったので、SS業界が如何に無意味な
価格競争をしているかご理解頂けるでしょう。そして8月も3円から3.5円の仕切値上げです。
 またこの値上げを絶対実現させようという元売の思いは、ガソリン現物市場にも出ており、
京浜地区の7月ガソリン価格はじりじり上昇し、7月26日は105.5円という近年の最高値をつけ
月間平均でも104円を突破し、6月の 98.5円より5.5円以上も上昇しました。
 このように原油も、系列仕切も、現物業転価格も、前月比大幅上昇し、更に追い討ちをかける
円安の中で、SS業界は、値上げをさせて頂く以外、生き残る道がないと思いますが、何故
値上げが今一歩なのでしょうか。この原因は、私は前年実績割れと言われているガソリン数量
にあると思います。この減販は、高値による買い控えというよりは、昨年の記録的な猛暑で
一昨年比10%以上も増販したことを忘れてしまい、ついつい弱気になって価格を下げてしまう
のではないでしょうか。元売全体では、過去最高の利益を上げている中、SS業界が赤字では
誠にお恥ずかしいので、少なくとも仕切UP分は自信をもって末端売価に転嫁させて頂くべく
お客様にしっかりご説明を続けていく所存です。