元売2003年度、販売、収支徹底比較 NO13
 販売、収支、SS数他、サウジアラムコの日本進出、ampm問題を考える

あなたは8月企画始め、元売決算関連企画の 番目のお客様です。無断転載禁止、過去の企画は
03/8.NO11.2002年度決算編
02/8.NO10.2001年度決算編01/8.NO9.2000年度決算編
00/8.NO8.1999年度決算編00/4.NO7.どこまで下がる石油株 99/8.NO6.98年度決算編
99/2.NO5.経費削減リストラ編
98/8.NO4.97年度決算,販売,SS数 他です。文責 垣見裕司 04/7/29 NO1

 元売別石油製品別国内販売実績一覧表 2003年度(2004年3月末期)


上記は石油連盟に加盟している元売10社他の販売数量です。あくまで弊社推計です。
当然元売ではない輸入業者の販売分は当然入っておりませんので、正確なデータが必要な方は、
8月下旬発売の経済産業省監修の石油資料等、正式な「消費数量」をご参照下さい。
ところで元売間の転売品や融通玉の数量は、両方の元売で重複してカウントされることなく、
石油連盟でちゃんと調整されているのでしょうか。関係者にお伺いしても、明確な答えは返って
来ないので、売り手買い手双方でダブルカウントされた分が、含まれていると考えいますが、
それが率にしてどのくらいあるのかは分りませんが、信頼性が低くなるのは残念です。
更に、2004年度からは、各社の諸事情によりその発表すら止めるという話もお伺いしました。
自動車業界の方は、前月に新車登録された台数を翌月上旬、メーカー別車種別に発表して
いますので、色々な事情はあるでしょうが、情報開示の時代に逆行しないことを願っております。


ガソリン、灯油、軽油の販売数量について

まずガソリンですが全体で2.7%伸びています。主力商品が一貫して伸び続けている業界は
あまりないので、これで利益が出せないとしたら、如何にも残念です。
個別元売では、三井石油、太陽石油が伸び率で大きくなっています。増販数量では、昭和
シェルの8.1%、65万KL増が脅威的ですが、この数字は傘下の系列SSの増販だけでなく
元売間や商社等転売品も含まれていると考えることが自然でしょう。
またハイオクガソリンの販売比率は18.2%で、前年比マイナス0.6%となりましたが、その中で
昭和シェルはハイオク比率19.1%と好調を維持、サルファーフリー(10ppm)ハイオク、シェル
ピューラの効果でしょう。新日石もエネオスヴィーゴの全国展開で巻き返しを図っています。
灯油は、前年比−4.9%と昨年の厳冬の反動が出ました。
軽油も前年比 −1.2%と長期下落傾向に歯止めが掛かりません。
重油は2003年度まで原発トラブル隠し問題の影響を受け、伸びた数字になっていますが
各原発も順次稼動していますので、2004年度については、マイナスに転じるでしょう。

決算数字が現すもの

3月期決算会社5社の経常利益は、出光とJomoが増益、新日石、コスモ、九石が減収です。
税引利益で見ると新日石が大幅な赤字を計上しましたが、これは、新聞等でも発表の通り
バブル時に買った土地を時価評価したとこによる特別損失です。現金支出を伴わない経費算入
ですから、戻ってくる税金等を考えるとキャッシュフロー的にはむしろ+です。法律での期限を
前倒しした実施であることもあり発表後の株価は、市場は評価していると言ってよいでしょう。



在庫評価方式を確認しておくと

さてこれだけ原油が上がり、その変動が大きい時には、在庫評価方式の差による決算への
+−の影響は、非常に大きくなりますので、前年と比較しながら確認しておきたいと思います。
ちなみに弊社は「先入先出法」ですが、SSのガソリンタンク容量は、平均では30KL以下。
値下がり時期などは、最少の在庫で月を越しますので、販売数量を150KLとすれば、月間
在庫回転数は最低でも5回以上となります。民間備蓄を90日も持つ元売と違って、在庫評価
方法の違いによる決算への影響は、我々SS業の場合は、あまりないと言えます。
総平均法に基く原価法
 新日本石油、コスモ石油、Jomo、九州石油が採用しています。 原油が上昇していく場合、
 割安な過去の在庫から払い出し原価を下げるため、結果として利益はかさ上げされます。
 一方在庫の単価は、徐々に上昇します。また在庫は「原価法」の名のとおり、仕入れ原価の
 総平均で評価しますので、価格が上昇基調の時は含み益となりますが、決算数字としては
 表面には出てきません。逆に原油価格が下落時は含み損となり、時価が大幅に下がり
 原価の1/2を下回わった時、評価損を表面化させます。
後入先出法に基く低価法
 出光興産等が採用している後入先出法では、直近に購入した高い原油から先に払い出す
 ため、原価が押し上られ利益が圧縮されます。しかし、在庫は安い時期の在庫が残るので
 含み益となります。更に「創業当時の在庫評価をそのまま引き継いでいる」ケースも理論的
 には考えられます。「低価法」の名の通り、評価額は原価と時価の低い方を採用します。
  右の表は各社の原油価格の
  変動に伴う要因による
  決算への影響です。
            単位 億円
元売名/億円 前年比 2003年度 2002年度
新日本石油 −723 −242 +481
コスモ石油 −268 −95 +268
Jomo −163 −20 +143
ガソリン販売とSS数
前月企画でご報告した通り、品質確保法に基づく平成16年3月末のSS数は、 50,067SS
前年比 1,227の減少と発表されました。そして一昨年から可搬式が区別されなくなったこと。
廃業しているのに、廃止届けすら出す余裕のないSSも、相当数あることを加味すると、
従来で言う固定式の数は、既に47000ヶ所台だと言えるでしょう。下記表は当社推定です。

元売各社のガソリン販売数量とSS数、平均販売量比較表
  平成16年3月末、単位千KL / KL
元売会社 販売数量 3月末数 前年比 月KL/SS セルフ数 セルフ率 増減
新日本石油 14,086 11,333 -361 103.6 520 4.6% 178
出光興産 8,578 5,508 -116 129.8 322 5.8% 104
昭和シェル 8,739 4,968 -185 146.6 274 5.5% 68
コスモ石油 6,843 4,926 -226 115.8 398 8.1% 113
Jエナジー 6,327 4,150 -146 127.0 385 9.3% 63
EMG 11,874 6,261 -334 158.0 709 11.3% 163
キグナス 1,447 643 -40 187.5 109 17.0% 21
九州石油 1,200 709 +7 141.0 76 10.7% 22
太陽石油 1,523 412 +12 308.1 66 16.0% 24
三井石油 1,331 471 -68 235.5 79 16.7% 13
元売合計 62,004 39,382 -1,457 131.2 2,938 7.5% 769
単独JA系 ?,??? 2,907 -82 ???.? ???? ????
6商社系PB ?,??? 単独792 +63 ???.? 376 6.24% 97
全農系は4,652 SS。全農マークのみで元売マークをあげていないものが2,907SS。
商社系セルフの376SSは、元売マークを含む4,550SSの内数。792Sの内数は不明。

系列外販売が多いと言われている2社を除けば、キグナスやエクソンモービルの1SS
当りの月間販売量158KLは、数量的競争力には優れていると言えると思います。
全農へのインタンク分も含むと思われる、I社、J社はそれを勘案する必要がありそうです。
また元売各社が系列SSを減らす中、商社系のプライベートブランドは、まだ伸びています。
3月末のセルフ数も記載しましたが、その伸びは明らかに減速していると言って良いでしょう。

中東マネーがいよいよ日本市場進出か

7/6は石油業界に衝撃的なニュースがありました。昭和シェルが、サウジアラビアの国営会社
サウジアラムコからの出資を受け入れると発表しました。昭和シェルの親会社であるロイヤル
ダッチシェルの持つ同社の50%の株式の内、15%をアラムコに売却すると言うものです。
金額は発表されていませんが、7/6の新聞によれば、総額500億円という記載がありました。
この件に付き業界関係者や日経新聞からもコメントを求められらましたので、会社の統一見解
ではなく、あくまで一業界人の私見ですが、以下のようにお答えさせて戴きました。

Q1、サウジアラムコの日本への直接投資についてどう思うか。
A1、20年前にも、10年前にも、「日・サ プロジェクト」なるものが検討されましたので、決して
   寝耳に水という話しではありません。中国に抜かれ世界で第3位となりましたが、大消費国
   であることに代わりはありません。そして資源の無い日本としては、産油国から直接投資は
   基本的には、歓迎して良いのではないでしょうか。

Q2、将来は、アラムコの独自のマークを上げる可能性はあると思うか。
A2、まず無いでしょう。現在のリテールや小売の業界マージンに、魅力があるとは思えません。
   BPでも事実上の撤退を余儀なくされたので、以前話のあったクェートによる「Q8」の様な
   新しいマークの個別販売元売として事業活動を行う可能性は、極めて低いと思いますし、
   「ラクダマーク」(アラムコの商標)は展開しないと、石連会長が確認したという話もあります。

Q3、それでは、サウジの日本進出の目的は何か
A3、新聞等では「原油の販売先を確保したい」とありますが、有限である原油という商品の
   売り先に困る事は、将来に亘ってないと思います。しかし価格が10台$/B等に下落
   することはあるでしょう。よって本当に欲しいのは、安定した「付加価値」だと思います。
   それは、昨今のガソリン等の業転市場を見ても分るとおり、精製設備の過剰感が解消
   されつつある日本の精製マージンは、大変魅力的に見えると思います。
   例えば、現在のガソリン業転価格を94円として、原油代26円、税を56円とすれば、
   粗利は、12円/L。これを1バレルに換算すれば、17$/Bとなります。
   今でこそ原油は、30$/B以上の価格ですが、「投機筋によって作られた価格で、
   いつ暴落してもおかしくない」という発言からも分る通り、原油のままの販売ではなく、
   製品として安定した付加価値をつけて販売したいというのが本音だと思います。
   また元売会社でなく、製油所単位でも投資や購入を検討したと、私は思います。
   しかし他の元売が「余剰製油所の切り売りによる精製業界の秩序をなんとか守った」
   という見方も出来ると思います。

Q4、何故、昭和シェルだったのか
A4、昭和シェルは「高配当の見込める優良企業だから」とコメントしていますが、系列特約店
   のご苦労やその疲弊振りを感じる私にとって、将来に亘りそれが正しいとは思えません。
   よって語弊をお許し戴ければ元売としては「消去法」だったのではないでしょうか。
   新聞等では、原油の可採年数の度重なる減少を発表し、株主からの信頼を失っている
   親会社のロイヤルダッチシェル側の事情とあります。否定はしませんが、推定500億円
   で納得するほど、欧米の投資家は、優しくないと思いますが、如何でしょうか。

Q5、株式の売却は、ロイヤルダッチシェルの日本撤退の第一歩なのか
A5、「撤退の第一歩」かどうかは、皆さんのご判断にお任せします。しかしカルテックスやBP
   が撤退したという事実、昨今のサルファーフリー設備への投資意欲、大手コンビニチェーン
   との提携の形態からは、「日本が将来も魅力ある市場と思っている」としても、その「想い」
   のレベルは、時系列的な比較や世界的視野での相対的判断として、間違いなく低下した
   ことは、間違いないと思います。


「牛角」で有名な「外食」産業のレインズインターナショナルが コンビニ ampm を買収へ

さて、もう一つの驚きは、「牛角」等で有名な外食チェーン、レインズインターナショナルが、
増資を引き受ける形で、ampm を事実上買収すると発表したことです。
ampmと言えば、コンビニ業界35180店舗(大手10社2003年度)の中では、1149店と
数では第8位になりますが、その出店は首都圏、特に都心部に集中しているという意味で
独自の特色をもつ中堅コンビニ会社です。
以前石油業界の株価が低迷して各元売に経営不安説が出たときも、当時の親会社であった
Jomoは、「推定400億円と評価されるampmがあるから大丈夫」と言われた程の優良企業
でした。しかし昨今のコンビニ戦争で、本年3月期の決算は、23億円の経常赤字、そして
24億円の債務超過に陥っていたそうです。
新日興ホールディングにとっては「売却」ではないので、直接的なキャッシュを得ることなく、
出資比率が90%から33.7%に下がりますので、新聞等で色々書かれているメリットや
デメリット両方あると思いますが、ampmとしては「良かった」のではないかと私は思います。

実は弊社は5月より、ampm様と直接ご縁が出来ました。
麹町本社ビルの1階で「ampm麹町3丁目店」をオープン
して戴いたのです。それ以降私の「昼食」は、ampmの
「中食」になったことは、申し上げるまでもありません。

今回の増資は、171億円。これで債務超過を解消し、
「外食」の勇であるレインズさんと、「中食」を供給する
ampmが本当の意味で相乗効果によって、都心型の
コンビニとして、数は中堅でも、その存在感を発揮して
頂ければ幸いです。