2010年度業界販売と元売決算データ比較 NO20
石油製品の需要動向、SS数、運転人口と高齢化、ハイオク提言他
元売決算関連企画の 番目のお客様です。 2011/7/31 146,000開始
また需要や輸出、輸入、そしてSS数減少関連データについてもご報告させて頂きます。
過去企画は、以下の通りです。       文責 垣見裕司

10/8.NO19.2009年度決算編、09/8.NO18.2008年度決算編
08/8.NO17.2007年度決算編
07/8
.NO16.2006年度決算編06/8.NO15.2005年度決算編、05/8.NO14.2004年度決算編
04/8.NO13.2003年度決算編、03/8.NO12.2002年度決算編、02/8.NO11.2001年度決算編
01/8.NO10.2000年度決算編、0/11.NO9.原油処理設備問題、00/8.NO8.1999年度決算編
00/4.NO7.どこまで下がる石油株、99/8.NO6.1998年度決算編、99/2.NO5.経費削減リストラ編
98/8.NO4.1997年度決算編、97/8.NO3.1996年度決算,販売,SS数

石油製品別国内販売実績一覧表 2010年度(2011年3月末期)

まず業界環境がどのように変化しているのか、国内販売数量を見てみます。
ガソリンは前年比101.3%とまずまずでしたが、需要は下げ止まったのでしょうか。
私はの答えはNOだと思います。2010年夏は猛暑で2010年7月のガソリンは前年比
107%等でしたからこの猛暑効果が相当量あると思います。この猛暑は、全ての油種
に影響し、結果として10年度は前年比100.5%と久しぶりに前年割れを免れました。

 
2010年度 各油種の国内販売数量、資源エネルギー庁発表 
ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2007年度 59,042 48,533 5,916 22,666 35,586 21,369 25,354 46,723 218,464
2008年度 57,428 42,861 5,676 20,249 33,728 17,890 23,159 41,049 200,991
2009年度 57,464 47,320 5,283 20,056 32,388 16,043 16,434 32,477 194,988
2010年度 58,197 46,668 5,154 20,332 32,864 15,404 17,330 32,735 195,948
伸び率% 101.3 98.6 97.6 101.4 101.5 96.0 105.5 100.8 100.5

2011年度以降の需要も、私は極めて悲観的に見ています。
ガソリンは、震災以降節約や自粛ムードであまり回復しません。軽油等は復興需要
があるようですが、全体としての景気低迷による減も大きいでしょう。
原発停止により代替火力も期待されますが、その殆どがLNGのようなので石油火力は
7月企画の通り限定的なのではないでしょうか。

更に日本の人口減少とその年齢構成もガソリン減に影響すると思われます。
人口は、2005年12777万人から2030年の11522万人へ緩やかに減少すると言われ
65歳以上の割合も2005年の20.1%から、2030年には31.8%に上昇するそうです。
しかし、もっと直接的な数字を発見しましたのでご紹介します。

2010年末の運転免許保有者は8101万人で前年比100.2%と横ばいだったのですが
その年齢構成比は、1993年の24歳以下1052万人、65歳以上は394万人に対し、
2010年は、24歳以下が631万人、そして65歳以上が何と1275万人となっています。
そうなのです。若者が400万人減り、65才以上の高齢者が880万人増えたのです。
これは昨年9月企画で記載した2009年末よりも更に高齢化が進んでいます。
仮に運転可能世代の上限を70-75歳以下とすれば、日本全体の人口減に先んじて
運転可能世代の減少が、加速度的に進むことを意味しています。よって今後の
ガソリン需要見通は、エコカー要因とともに間違いなく減少すると思います。
2010年の製品輸出・輸入数量実績
元売の業績や販売を考える時、以前は、国内数字だけ見ればよかったのですが、
2005年度からは石油製品輸出が急増してきました。(但しジェット燃料やC重油が
多いように見えますが、例年ご説明している通り、外国籍等の飛行機や船への
給油は免税扱いで貿易統計上は輸出なのですが、一般感覚的には国内販売です)
さてご注目頂きたいのは、近年その数量を大幅に伸ばして来た「軽油」です。
A重油等の中間3品の国内での需要縮小に困っていた元売は、海外製品高に着目、
輸出設備を増強し、2007年度から輸出を本格化させました。その結果、04年度比
05年度2.7倍、06年度3.2倍、07年度5.9倍、08年度は8.5倍にまで拡大しました。
製品輸出は、海外製品市況が高ければ、元売にとって臨時収入になりましたが、
反面、国内需要の地道な喚起、例えば省エネ型の高効率ボイラー等の販売努力を
怠たり、A重油等のLNGへの燃料転換が進み、今、価格が下がっても、その需要は
戻っては来ませんでした。

ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2004年度 112 26 5,888 155 1,525 161 7,770 7,931 15,637
2005年度 521 - 6,689 383 4,087 168 9,867 10,035 21,715
2006年度 317 23 7,955 499 4,950 165 9,409 9,575 23,319
2007年度 536 12 9,277 644 9,027 350 9,183 9,533 29,029
2008年度 710 38 10,080 444 13,050 561 9,269 9,830 34,153
2009年度 1,552 - 8,321 357 11,319 608 7,774 8,382 29,932
2010年度 2,198 - 8,936 198 11,045 733 7,172 7,905 30,281
前年比% 141.6 107.4 55.4 97.6 120.5 92.3 94.3 101.2

一方、輸入は下記の通りですが、ナフサ輸入大国であることが分かります。
精製元売にとってはね国内の卸市況をあげれば、利益の出ること間違いなし
ですが、78円という空前の円高を考えれば、精製元売が余り爪を伸ばし過ぎると
商社等が海外から安い製品を輸入してくるものと思います。今年度は輸入数量から
目が離せないでしょう。

輸入 ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2009年度 854 25,838 - 459 317 76 2,257 2,332 29,799
2010年度 1,098 27,215 43 1,053 444 192 3,023 3,215 33,067
前年比% 128.6 105.3 229.6 140.1 253.1 134.0 137.8 110.0
主要元売6グループの2010年12月末 2011年3月末の連結決算数字
当期の特に3月末決算の元売の状況を一言で申し上げれば、JXホールディングの
1260億円等の震災災害特損を計上しているにも関わらず、3117億円という巨額の
利益をあげたことは、誠に頼もしい限りです。これが例えば経営統合の結果の
経費削減やシナジー効果なら、我々参加特約店も多いに賞賛したいと思います。

しかし、石油製品のマージン回復による利益貢献も相当額あると思います。
所謂新仕切り体系のブランド料とか販売コストと言われるものを、ある意味
一方的に2円値上げした訳ですから、利益の出るのは当然のことと思います。
特約店や販売店等系列元売傘下のSSもそれなりの利益が出ていれば
共に喜べるのですが、末端SSの経営状況は惨憺たるものです。

この新仕切り体系のブランド料等の値上げによる利益効果はどのくらいあった
のでしょうか。これは全くの私見ですが、業界全体の売上数量約2億KLの内、
新仕切り体系に準拠した価格決定方式で決まるものが、ガソリンや中間留分等
ですが、これを全体のずばり半分とすると約1億KL。その2円/Lを特約店の
心からの同意なく値上げした訳ですから、元売全体で、ずばり2000億円分が、
特約店と販売店の血と汗と涙の利益だと言えると思います。


元売各社のSS数とセルフSS、元売社有SS数比較表
元売の傾向を分析する際、系列SS数を調べるとそれなりに見えるものがあります。
まず本年3月末のエネ庁集計のSS数は、前年比1,580箇所減の38,777SSでした。
しかしこの中には、東日本大震災で被災して、今後復興出来ないだろうSSの数は
含まれていませんので、現実はもう少し、少ないのではないかと思います。
一方元売の系列SSは29,001SSで前年比-1337。従って現在約25%のPBが存在
することになります。全農や商社系列をPBと呼ぶのは失礼かと存じますが、少なく
とも非元売系列と言える訳ですから、元売系列の保守本流に属する私としては、PB
から羨ましがられるくらいの経営内容や仕切り価格体系であってほしいと思います。
残念ながら現在は、その逆なのが大変辛いところです。
また元売全体の社有比率は、昨年の23.4%に対し本年は21.4%に下がりました。
これは特約店や販売店所有のSS同様、元売所有のSSも不採算な物件は、粛々
と閉鎖していると言えるのではないかと思います。

今回注目されることは、ついにセルフSSの増加が止まったことです。
前年比こそ+153SSですが、2010年12月末日の8452箇所からは、何とマイナス3個所
ですので、その意味は大きいでしょう。
また2010年度は、新規参入が296個所と過去の1000件ペースから大幅に落ちただけ
でなく、撤退数が143所とそれなりの数字であったことも注目です。
元売系列のセルフ数は、6935個所。元売系列におけるセルフ率は23.9%です。
一般にセルフSSは、フルサービスSSの3倍売ると言われていますから、「全数量
の半分以上を、既にセルフSSで販売している」と言ってもよいのかもしれません。

        元売別系列SS数 セルフSS数    2011年3月末、社有=元売所有物件

元売会社 3月末数 前年比 社有 前年比 社有比 セルフ数 前年比 セルフ率 セ社有 社有比
JXエネルギ 12,149 -538 2,701 -192 22.2 2,385 +7 19.6% 1215 50.9
出光興産 4,148 -190 1,177 -73 28.4 890 -1 21.5% 575 64.6
昭和シェル 3,922 -180 939 -25 23.9 959 +8 24.5% 482 50.3
コスモ石油 3,609 -159 783 -53 21.7 1,003 -1 27.8% 576 57.4
EMG 3,979 -220 762 -56 19.2 1,219 +13 30.6% 459 37.7
キグナス 540 -22 99 -1 18.3 203 +4 37.6% 76 37.4
太陽石油 374 -7 128 -3 34.2 145 +1 38.8% 91 62.8
三井石油 280 -21 102 -3 36.4 131 -2 46.8% 78 59.5
元売合計 29,001 -1,337 6,691 -406 23.1 6,935 +29 23.9% 3,552 51.2
全登録SS計 38,777 -1,580 8,449 +153 21.7%
  本表は、燃料油脂、油業報知、ぜんせき、石油タイムス等の業界新聞、各元売HPより集計

SS絶対数とセルフSS推移から分かること

次に日本全体のSS数とセルフSS数の推移について調べてみました。
過去、年間2000個所以上の廃止があった年度は、表にない1995年度の2005個所と
下記の99年度、2007-2010年度の計5回ですが、分母が毎年低くなっているので、
減少率としては、むしろ増加しています。

各年3月末 1999 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
SS数の推移 56,444 52,592 51,294 50,067 48,672 47,584 45,792 44,057 42,090 40,357 38,777
対前年比較 -1,819 -1,112 -1,298 -1,227 -1,395 -1,088 -1,792 -1,735 -1,967 -1,733 -1580
新設 447 337 340 471 459 423 609 457 416 308 153
廃止 2,266 1,449 1,638 1,698 1,854 1,511 2,401 2,192 2,383 2,041 1,733
全体セルフ数 85 1,353 2,523 3,423 4,104 4,956 6,162 7,023 7,774 8,296 8,449
対前年増加数 85 931 1,170 900 681 852 1,206 861 751 522 153
元売系列セルフ 2000-2001年は
昨年同月HP参照
空白部はデータ無
1,084 2,161 2,938 4,257 5,316 6,009 6,565 6,906 6,935
対前年増加数 1,077 777 1,319 1,059 693 556 341 29
EMGセルフ数 810 930 1,092 1,161 1,197 1,206 1,219
対前年増加数 120 162 69 36 9 13

さてセルフですが、出店ペースは最初は様子見でしたが、2001年度から爆発的に増え
ピークは2006年度の+1206個所。その後は減少し2010年度は、153個所となりましたが
実は新規296個所に対し、撤退がこの1年だけで143個所、累計撤退数は、680個所も
あるのです。(累計出店数9,129、累計撤退数680、結果、現存数っているのが8,449)
セルフブームも去り、セルフに適した候補地もなくなり、淘汰が始まったのでしょうか。
その傾向は元売系列SSも同様で、増加のピークは、2005年度に既に終わっており、
それ以降は大幅に減少しています。
今元売自身が社有で新規投資や改造は、ほとんどセルフ物件と言ってよいでしょう。
よってその元売のSSの投資やその意欲は、その元売のセルフSS数の伸びを
見ればよいのですが、注目して頂きたいのは、セルフ率のトップのEM系列です。
2006年度の+162以降減り続け、一昨年は+9、昨年は+13しか増やしていません。
国内販売市況が余りにも酷いので、良い意味での新設自粛なのか、それとも
日本での投資はせず、某新聞記事の通り国内撤退なのか。そのご判断は読者の
皆様にお任せしたいと思います。

業界としてハイオク販売を考える時期ではないか

下記表は、ガソリン販売量に占めるハイオク比率です。ご覧の通り、年々低下
しているのが、分かります。要するにハイオクガソリンが相対的に売れなくなった
訳ですが、その原因は色々考えられると思います。

1 価格が1Lあたり約10円から11円高い。
2 燃費は2-3%で良いと言われるが、使用環境で異なるので元売は保証していない
3 加速体感が良いとい言われるが、その価値は人によってさまざまである
4 近年新車におけるハイオク仕様車の割合が減っている。
  近年その割合が増えているエコカーは、ほぼレギュラー車である。
  ハイオク仕様車にレギュラーをいれても性能は若干落ちるがトラブルなく走る。
5 近年のセルフの増加で、ハイオクをお勧めするということがない
6 近年ハイオクキャンペーンが余り行われていない。
7 販売するSSにとっては、仕切価格差もレギュラー比10円なのでメリットがない

年月 単位% 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
2010-11年 13.3 13.4 13.0 12.9 13.2 13.0 13.0 12.9 12.6 12.5 12.2 12.1
2009-10年 14.2 14.7 13.9 13.8 14.4 13.8 14.4 13.8 13.4 13.5 12.7 12.9
2008-09年 15.7 14.5 13.6 13.7 13.6 14.1 14.5 14.7 14.8 14.8 13.8 13.8
2007-08年 15.8 15.7 15.0 15.2 15.0 15.4 15.2 14.7 14.5 14.9 14.1 14.0
2006-07年 16.3 16.5 15.5 15.8 15.6 15.0 16.0 15.8 15.6 15.8 15.7 15.6

私は思いきって中オクタン価レギュラーガソリンへの一本化を提唱したいと思います。
燃費もよくなり 環境にもよく、自動車業界も望んでおり、SS側のコストも、タンクが
1本減るだけでなく、計量機も有効に使えますので、個人的には大歓迎です。
元売にとっては、ハイオクガソリンの10円の利益が喪失しそうですが、ハイオクは、
バーター等に関わらず、多くの会社が自社製造品を運んでおり、全国的にみれば、
レギュラーに比べプラス2円くらいの配送経費が余計に掛っているのではないか。
一方ハイオクの製造コストも添加剤等の混入調整等があるので、レギュラーより
仮に2円高いとすれば賞味利益は6円。割合は既に12%まで低下しているので、
レギュラーガソリンの利益幅を70銭あげれば、よいだけの話です。
更に全国シェアーNO1のJXが真っ先にこれを実現すれば、圧倒的な競争力になる
と思います。読者の皆様。エネオスのガソリンは0.7円高いが、燃費は2%良い。環境
にもよいのでこれたらヒット商品になること間違いないと思いますが如何でしょう。

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