発表 出光、昭和シェル株式RDシェルから取得
2014年度業界販売と元売決算データ比較 NO24
あなたは元売決算で 番目、LPガス関連で目のお客様です。
今月は、石油業界の販売数量と、元売決算報告に加え、LPガス元売の簡易分析です。
                                        文責 垣見裕司

出光、 昭和シェル株式取得 遂に発表 
8月企画を書いていた7月30日午後、待ちに待ったニュースが飛び込んで来ました。
一部には「もう無くなった」とまで言われた、出光によるロイヤルダッチシェル(正確には
その子会社SPCO)からの昭和シェル株の取得の話です。まずは当時の弊社HP
2014年12月企画出光による昭和シェルの買収報道
 業界再編の歴史、製油所能力と配置、売上規模SS数から分かること

をご覧下さい。その時は両社ともに否定。その事実はあったかとは思いますが、
正式契約前のすっぱ抜きであったため株価が急騰。当然出光の取得資金が
増えてしまったことや、昭和シェル特約店販売店の反発が、予想以上に多かった
ことなどから、その買収話はなりを潜めてしまいました。しかし私は「RDシェルが
昭和シェル株を売りたい事実には変わりはない」ことは確信し、その動向に注目
していました。そして今回の発表です。その内容の要約は以下の通りです。
1 RDシェルの子会社SPCOは、出光に昭和シェルの株式33.24%を売却する
2 価格は1691億円。一株当たり1350円。7月30日終値1170円に対し15%の増額
3 売却時期は、公正取引委員会等の審査を経て 2016年上半期の予定
4 出光は、昭和シェルに対し、対等の精神で経営統合を目指す。
  以下 正式コメント
出光  
   http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/150730.pdf
昭和シェル http://www.showa-shell.co.jp/press_release/pr2015/0730.pdf

何故この時期だったのか 真相は、 サウジの真意は 

では何故この時期だったのか。以下私の勝手な推測ですが、まずは株価でしょう。
昨年末の新聞報道で、昭和シェルの株価は、1000円から一時1300円に急騰。直ぐに
1150円から1200円レベルに戻るものの、そこからは下落しませんでした。
4月に一時1100円を割るも再び上昇。7月に入り、ギリシャや中国上海市場下落等で
1100円を切ったことは、一つの理由でしょう。
順番から言えば、RDシェルと出光との株式譲渡契約の締結が先のような気がします。
それをRDシェルが7月30日に本国で発表する。これだがRDシェルと出光から発表
されるとある意味 昭和シェルの顔をつぶすことになるので「対等的経営統合」と
セットでの合意に至り、今回の発表記者会見になったのだと思います。

             昭和シェル 過去1年間の 日足   
東京証券取引所

その他の要点は  私はこう思う 
ちなみに今回の売却後もRDシェルの別子会社ASPCOには1.8%の株式が残ります。
何故全株ではなかったのか。1/3を超える場合は、TOB(株式公開買付)にしなくては
ならない条項に引っかかるだめだと思います。尚、15%を持つサウジは、出光の取得
を歓迎しているそうです。記者会見によれば、製油所の統廃合は行わないとのこと。
確かに、出光は徳山を、昭和シェルも東亜や富士石を大幅削減しているからです。
その他箇条書きで、要点の感想を申し上げると、、、
@当面は昭和シェルのブランドを残します⇒「当面は」ということは将来は??
  それ相応のブランド使用料は、RDシェルにとられるかもしれません。
A出光は昭和シェルを子会社することも出来るのに「対等的な統合」は本当か?
  合併等経営統合すれば自社株となり、仮に自社株買いをした昭和シェルと合併
  するのと会計上は同じかもしれませんが、意思決定権は大幅に少ないでしょう。
BRDシェルは7月30日の本国会見で、ガス等への投資にシフトすると発表。経営を
  シンプルにするとの理由。資産売却総額は200億$。その意味では1691億は
  大した割合ではないがむしろ象徴。迷う昭和シェルの最後の一押しでしょう。
でもこれはまだ始まりです。昨年末には大反対をした昭和シェル特約店軍団が、
この正式発表をどうご判断されるのか、見守りたいと思います。

業界販売データ 元売決算編  過去データは下記からご覧下さい

14/8.NO23.2013年度決算編、13/8.NO22.2012年度決算編、12/8.NO21.2011年度決算編
11/8.NO20.2010年度決算編、10/8.NO19.2009年度決算編、09/8.NO18.2008年度決算編

08/8.NO17.2007年度決算編、07/8
.NO16.2006年度決算編06/8.NO15.2005年度決算編
05/8.NO14.2004年度決算編、04/8.NO13.2003年度決算編、03/8.NO12.2002年度決算編
02/8.NO11.2001年度決算編、01/8.NO10.2000年度決算編、0/11.NO9.原油処理設備編

石油製品別国内販売実績一覧表 2014年度(2015年3月末期)

まず業界環境がどのように変化しているのか。震災前の2010年度からの比較は
重要です。特に発電用と思われる重油計の増加とその後の減少は 象徴的です。
2014年度の前年比を見る場合は、4月から消費税増税を忘れてはいけません。
ガソリン需要は、前年比マイナス4.5%まで拡大。2014年3月の増税前特需とその
後数か月続いた需要減少が、重なって、近年では大幅な落ち込みになりました。
軽油も好調だった前年に続き、増加となりました。一般車の軽油ではなく、東北の
復興需要等や国立競技場に代表されるオリンピック関連も少しはあるでしょう。
灯油については、シーズン前から価格は大幅下落したので、需要がどこまで回復
するか楽しみにしていたのですが、北海道の平均気温が非常に高かったようです。
今年も釧路と帯広で講演のご依頼を頂いたので事前に調べて驚きました。
例えば札幌の平均気温とその前年比は、1月-1.5度(前年比+2.6度)、2月-0.8度
(前年比+2.7度)、3月+3.8度(前年比+3.3度)とのことです。一般に気温が1度違うと
灯油需要は約5%違うと言われていますので、約30%も値上がりした北海道電力の
電気暖房に需要を奪われたのではなく、あくまで気温が高かったのだと思います。
A重油も長期低落傾向が続いています。景気低迷による廃業や規模縮小、省エネ
天然ガス等への燃料転換等の複合要因だと思います。BC重油の減少は、電力用
C重油の減だと思われます。以上燃料油全体としては94.5%は実力だと思います。
    
  2014年度 各油種の国内販売数量、資源エネルギー庁発表 単位千KL
ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2010年度 58,159 46,698 5,153 20,348 32,891 15,425 17,343 32,768 196,018
2011年度 57,213 43,728 4,204 19,619 32,866 14,680 23,743 38,423 196,055
2012年度 56,447 43,172 3,965 18,991 33,443 13,759 27,742 41,501 197,519
2013年度 55,419 45,748 5,053 17,893 34,079 13,437 21,890 35,328 193,520
2014年度 52,975 43,922 5,339 16,662 33,582 12,360 18,109 30,468 182,851
前年比% 95.5 96.0 105.7 93.0 98.5 92.0 82.7 94.5
2014年度の製品輸出数量実績
輸出は、日本の元売各社にとって、もはや重要な販売先です。国内の特に海上品の
卸市況維持に、間接的ではありますが、多いに役にたっていると思います。
2008年度当時、1300万KLという軽油の輸出量には本当に驚きましたが、それ以降
は海外市況と国内市況の均衡もあり、石油製品の輸出数量は安定していますが、
2014年度のガソリン輸出の大幅増は、正に国内の卸市況維持が目的でしょう。
また為替の円安も、輸出数量の維持に貢献しているかもしれません。

         2014年度の日本の石油製品輸出   
単位千KL
輸出 千KL ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2008年度 710 38 10,080 444 13,050 561 9,269 9,830 34,153
2009年度 1,552 - 8,321 357 11,319 608 7,774 8,382 29,932
2010年度 2,198 - 8,936 198 11,045 733 7,172 7,905 30,281
2011年度 1,253 51 8,693 600 7,619 342 6,792 7,134 25,352
2012年度 1,148 57 9,056 144 6,109 787 7,145 7,935 24,751
2013年度 1,747 17 10,456 760 10,405 558 6,053 6,611 29,998
2014年度 3,116 13 10,030 711 8,443 676 5,446 6,122 28,431
前年比% 178.0 79.0 95.9 97.2 81.6 121.1 90.0 95.1
2014年度の製品輸入数量実績
一方輸入は、元売ではなく、商社等が輸入することも多いので、輸出に比べれば
元売がその数量をコントロールするのはより難しいと思いますが、概ね想定の範囲
内で収まったのではないでしょうか。尚、海外と国内海上品の価格比較を示したい
ところですが紙面の関係で省略させて頂きます。

       2014年度の日本の石油製品輸入      
単位千KL
輸入千KL ガソリン ナフサ ジェット 灯油 軽油 A重 B・C重 重油計 燃料油計
2008年度 651 23,105 2 497 293 125 4644 4,769 29,315
2009年度 854 25,838 - 459 317 76 2,257 2,332 29,799
2010年度 1,098 27,215 43 1,053 444 192 3,023 3,215 33,067
2011年度 2,909 24,867 - 1,490 875 89 7,146 7,235 37,377
2012年度 2,883 25,275 94 1,250 582 88 8,742 8,829 38,915
2013年度 1,659 25,926 77 911 253 54 6,781 6,835 35,661
2014年度 1,502 26,820 101 1,369 452 91 5,321 5,413 35,083
前年比% 90.6 103.5 130.7 150.3 222.5 169.3 68.4 98.4

2014年度末 元売各社のSS数とセルフSS、元売社有SS数比較表

元売の傾向を分析の際、系列SS数を調べると見えて来るものがあります。
時系列的変化は、一昨年ページ と 昨年ページ と比較してご覧下さい。
今回も、昨年に引き続き「幽霊SS」が職権によって369件(昨年は281件)削除され
ました。2年連続で合計650件の削除なので、実体に近づいて来たと思います。
従ってPB比率も24.6%まで下がってきました。

以下表は、各元売から発表されたその元売のサインポールを上げているSS数です。
系列元売SS数は25275。エネ庁の33510との差がPBのSS数と考えられます。但し
当たらずしも遠からずの精度だと思います。元売によってセルフ比率に大きな差が
あり、その元売の販売戦略を物語っているのだと思います。

元売別系列SS数 セルフSS数 
2015年3月末、社有=元売所有物件
元売会社 3月末数 前年比 社有 前年比 社有比 セルフ数 前年比 セルフ率 セ社有 社有比
JXエネルギ 10,783 -234 2,404 -29 22.3 2,752 +98 25.5% 1393 50.6
出光興産 3,725 -61 1,149 13 30.8 1,059 +79 28.4% 677 63.9
昭和シェル 3,317 -125 851 -28 25.7 991 -3 29.9% 501 50.6
コスモ石油 3,113 -95 722 -12 23.0 1031 +20 32.9% 578 56.1
E M G 3,481 -156 804 -16 23.1 1,264 +147 40.5% 575 40.8
キグナス 490 -4 91 -2 18.6 214 +3 43.7% 75 35.0
太陽石油 346 +2 131 +3 37.9 164 +2 47.4% 101 61.6
元売合計 25,275 -673 6,152 -71 24.3 7,622 +207 30.2% 3,900 51.2
全登録SS計 33,510 -1,196 PBは 8,235 PB比24.6% 9,600 +325 25.5% 推定
本表は各元売HP及び燃料油脂、油業報知、ぜんせき等の業界新聞より集計
主要元売6グループの2014年12月末 2015年3月末期の決算数字です
この表は毎年恒例の元売決算比較表で、伊藤敏憲先生からのご提供です。
一言で申し上げれば、各社とも大赤字です。石油連盟の発表でも3月末期決算
の8社合計で当期純損失は、5565億円だとしています。その最大要因は、やはり
原油価格の大幅下落による在庫評価損を計上したことでしょう。
では業界全体で幾らになるのか。期初の原油価格が、109ドル 102円/$ 70円/L
期末が 54.7ドル 120円 41円/Lとして、年間販売数量  1億8千万KL x 1.05
(自家燃分)x 約30円/L÷12か月x 民間備蓄3か月=14000億円が業界全体の
在庫評価損と言えるでしょう。

LPガス業界 主要4元売概況報告

皆様、グーグルで「LPガス業界」を検索して下さい。大変嬉しいことに弊社HPが
恐れ多くも日本LPガス協会様とともに、第1位〜5位を競っているのです。
一つのヒットは、2014年2月のLPガス業界は、元売から小売まで革命前夜ですが
もう一つは、伊藤敏憲先生のLPG業界の現状と今後の展望 2009年2月企画でした。
早速、伊藤先生にご報告したところ、最新版を頂戴しました。下記からご覧下さい。
 
LPガス・エネルギー産業の現状と今後の展望 2015年7月版 
そんな訳で今年はLPガス主要4元売の比較表も作成しました。ENEOSグローブと
アストモスは、同社の提携発表資料です。本年4月誕生のジクシスとジャパンガス
エナジーは、新聞発表他からの筆者推定です。決算はENEOSグローブしか公開して
いませんので、他社は官報等です。販売数量は、ジクシスがNO1ですが一般的に
合併会社は、双方への販売が重複しているので、合併後はかなり下がるでしょう。
社名 ENEOSグローブ アストモスエネルギー ジクシス ジャパンガスエナジー
設立 2011年3月1日 2006年4月1日 2015年4月1日 2009年4月1日
資本金 20億円 100億円 110億円 35億円
純資産 387億円 358億円 非公開 非公開
株主 JX50% 三井物産
30% 丸紅20%
出光51%三菱商事49% コスモ 昭シ、住友
商事、東燃各25%
JX51% 日商LP29%
伊藤忠エネクス20%
社員数 約300人 約350人 非公開 約90人
グルーブ 約2100人 約1800人 非公開 グループ無し
国内販売 341万t(22%) 354万t(23%) 約370万t(25%) 約180万t(12%)
輸入数量 304万t(26%) 317万t(28%) 約247万t(22%) 約141万t(12%)
輸入基地 97万t 103万t 約100万t 約59万t
売上高 4057億円(14年度) 9396億円 約4500億円 1961億円
税引利益 ▲120億円(14年度) ▲78億円 データ無し ▲35億円
下記図は2015年6月20日増刷改訂の「よくわかるガスエネルギー業界」175頁です。
LPガス元売も今回ENEOSグローブとアストモスの提携が発表されましたが、JGEの
JXの持ち株まで含めて考えると、JX主導の業界再編が始まったようにも見えます。