LPガス業界は、元売から小売まで革命前夜か
LPガス元売の再編最終章、レモンガスと日ガス提携発表の衝撃
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またガス体エネルギー企画としては、 番目のお客様です。
2014年1月16日木曜日、それはLPガス業界にとって、歴史的な日になるかもしれません。
レモンガスグループの新年会で、グループの総帥赤津会長が、日ガスとの「統合も視野」
に入れた包括的な業務提携を電撃的に発表したのです。そして日ガスの和田社長も
壇上にて挨拶しました。弊社は本HPでもお知らせの通り、レモンガス様とは長期の提携が
あるものですから、私もメインの赤津裕次郎社長のテーブルで、間近に拝見しておりました。
折しも上流においては、元売4社のLPガス事業の提携が発表されたばかりです。
そんな訳で今月は、急速に動き出したLPガス業界を解説してみたいと思います。
                         2014年1月30日NO1  文責 垣見裕司 ver1

序章は 東燃ゼネラルの三井石油買収発表から始まった

このニュースが日経新聞から最初に流れたのは、2013年9月19日の記事でした。
見出しは「東燃ゼネラル、三井石油を買収」。その内容は、「石油元売4位の東燃
ゼネラル石油は、2014年中に三井物産子会社で同7位の三井石油を買収する方針
を固めた。来年3月末までの基本合意を目指す。買収額は4百億〜5百億円となる
見通しで、売上高で業界3位のコスモ石油と並ぶ規模となる。ガソリン等内需減が
続く中、業界再編が再び動き出す。以下略。
これに対し東燃は「当社の発表に基づくものではありません。様々な検討を行って
いますが、現時点で申し上げられることはありません」とのお決まりの発表です。
その後、しばらく正式な発表がなかったので、一部の業界通は「没になった話だか
らマスコミに恥をかかせるために漏らしたのかなあ」等の話もささやかれました。

東燃ゼネラルは2013年12月18日に正式発表へ

しかしの日経の記事は本当でした。東燃ゼネラルは年末も押し迫って来た12月18日
三井物産傘下の三井石油を買収すると遂に発表。内容は、三井物産が保有する
三井石油の発行済み株式の約90%に当たる約900万株を249億円で2月4日に取得。
今後は、他の株主と協議し、本年3月末を目途に保有比率を約95%まで高める。
三井物産は米エクソンモービルから東燃ゼネ株の6.4%の36百万株336億円で取得
エクソンに次ぐ第2位株主となり、エクソンの保有率は従来の14%から8%へ低下する
 この発表内容を読者の皆様はどう思いましたか。私は大筋としては大賛成です。
まず三井石油は、元売というより遺伝子は商社です。今商社が石油業界で存在感を
示すのは非常に難しく、伊藤忠エネクスと三菱商事石油以外は事実上撤退したり
規模の縮小あるいは他の資本を受け入れるなどしております。
 逆に一時は東燃が三井石油と折半で持つ極東石油を売る?等の噂も出ましたの
で一番安心したのは三井石油かもしれません。それは三井物産にとっても同様で
米エクソンモービルが日本から資本撤退していく中、三井石油を持ち続けるよりは
三井石油株が、基盤あり規模も大きい東燃ゼネラル株になるなら万々歳でしょう。
 また東燃ゼネラルから見ても、三井石油を傘下に置くことは、メリットがあると
私は申し上げましたが、唯一気になるのは、その取得方法です。
三井物産にとって、三井石油株が、東燃ゼネラル株に適価で代わるのなら、いい
話ですが、東燃ゼネラルにとっては、本来は自社株(金庫株)と交換すべきでしょう。
この方法なら東燃にとって資金は不要で、株価の下落も防げます。
 しかし今回の発表をみれば、三井物産へ東燃株を売るのは東燃自身ではなく、
米エクソンモービルです。従って資金だけをみれば、米エクソンモービルが東燃株
を売って資金を回収。三井物産はその資金を得るため、三井石油を東燃に売った
と言える訳で、東燃として自身の金庫株があるにも拘わらず、また三井石油を買収
しても装置産業として新たな販売先が増えないのに、借金をして三井石油を買わなく
てはいけないのです。その意味では、東燃の一般株主にとって、メリットがあったのか
疑問ですが、1月末現在、その株価を維持していることは高く評価したいと思います。

LPガス元売4社 LPガス部門の一体化発表

そして「東燃ゼネラル、コスモ、昭和シェル、住友商事の4社が、LPガス部門を統合」
という大ニュースが12月24日に飛び込んできました。単なる提携ではありません。
国内の卸売から、物流、出荷基地の運営、輸入・調達、海外トレーディングまでの事
業と書いてありますので、LPガス元売としての機能ほぼ全てと言ってもいいでしょう。
そして「統合元売会社」の設立を検討し、4-6月に基本合意書の締結、そして10-12月
に統合会社の設立及び営業開始としっかり書いてあります。


LPガス元売の再編の流れを図にしてみる

業界で使われている「LPガス元売」との表現は、法律での定義ではありません。
本家の石油元売の場合も、精製設備を有するだけでなく、末端に認知された自社
ブランドの販売網を持っている会社とされており、精製専業会社や商社等の輸入
業者(備蓄義務を含む)は、元売とは呼びません。
更にLPガス業界の場合は、製品を輸入しているので精製設備もなく、また顧客まで
元売ブランドが浸透しているとも言えません。従ってLPガス業界でいう、LPガス元売
とは、もう少し広い意味で「LPガスを輸入し法的に定められた備蓄能力を持っている
会社」を指し、具体的には、石油元売会社およびそのLPガス専門子会社や輸入専門
会社、そして法的な備蓄能力を持つ商社等です。 
下記図は、著書「よくわかるガスエネルギー業界」の175ページに記載したLPガス
元売の再編の歴史です。 何年前を基準にとるかにもよりますが、一昔前、30数社
あったLPガス元売ですが、LPガス元売の団体である「日本LPガス協会」に加盟する
会社は、本年1月末現在で、14社にまで減りました。

LPガス元売の再編の流れ よくわかるガスエネルギーより



今回の4社の提携を上記図にオレンジ色の枠で示しました。この4社連合が実現
すれば、LPガス元売は、資本的に近い、ENEOSグローブとジャパンガスエナジー。
そして出光系のアストモスグループ、という3グループに集約されたと言えるでしょう。
LPガスの元売の事業は、収益源として、石油元売にある、「精製」という付加価値
がないので、利益をあげるのが大変な業態です。
また今回のLPガス連合は、今後の石油元売の再編の組み合わせをも暗示している
のかもしれません。
実はコスモ石油は、2010年に統合した原油開発部門のコスモ石油開発を、再び分社
化すると発表しました。コスモは今期こそ絶対黒字を出さなくてはいけない会社です。
利益を出すのが難しいLPガス部門を切り離し、ある意味利益のある開発部門を何故
今分社化する必要があったのか。コスモの今後の動静に注目したいと思います。

四社連合で輸入シェアー 販売シェアーはどうなる

では、この4社連合で、元売のシェアーはどう変わるのでしょうか。
実は、各元売がどのくらいに輸入しているのか、どのくらい販売しているのかは、
一般には公開されていません。よって各社HP及び、一般紙、業界新聞情報を総合
しての筆者推定です。(よって本円グラフは、文責除外として下さい)
  2012年度 輸入総数量 1320万トン   2012年度 販売総数量 1660万トン

昭和シェル+住友商事=エネサンスとした JXと旧出光石油化学の石油化学用は除外

レモンガスグルーブの新年会で 日ガスとの提携を発表

こうして、LPガス業界の元売=上流部門が効率化されて行く中、2014年1月16日(木)
のレモンガスグループの新年会で電撃的な発表がなされました。
レモンガスグループの総帥赤津会長が、日ガスとの統合も視野にいれた包括的な
業務提携を発表したのです。そして日ガスの和田社長もそれに答え壇上に登壇、
それを受ける形で挨拶しました。約400人近く入っていた会場は静まりました。
当社もレモンガスとは2007年10月HPの通りお取引があるので、赤津裕次郎社長と
同じテーブルから、その光景を間近で拝見していました。
内容は、2016年の電力の自由化や関連して予想される都市ガスの自由化に向け
高止まりするLPガス価格を都市ガスと競合出来る価格にしなければならない。
その為には日ガスと共同戦線を張って業界再編の旗頭となり、新しい価値と価格
体系を作り、5年先10年先に残るLPガス業界の先達を務めたい。更にはガス事業
や宅配水事業や電気(発電)事業、情報事業も構築して行くと熱く語ったのです。

日ガスは、資本金70億円、都市ガスも含め需要家は推定100万軒。
レモンガスは卸売を含め30万軒ですので、両社が完全にタッグを組めば、よくわかる
ガス業界本の第7章でも解説した通り、流通と小売価格に「革命」が起きるかもしれ
ません。その後レモンガスの赤津欣也社長にお会いしましたが、詳細はまだ決まって
いないとのこと。今後もこの2社の動向を注視していきたいと思います。

垣見油化は どうするのか

LPガス業界の最後の砦は何でしょう。いくらネット社会が普及してもLPガスや都市
ガスをネットで、買い宅配便で運んでもらう事は出来ません。要するに地域NO1の
圧倒的競争力を誇る物流体制を構築する一方、系列を超えた提携の強化による
物流、流通、商流の一層の効率化を図ることが大切だと思います。その為に弊社
垣見油化は、建設時点でも東京都でNO1の規模を誇る瑞穂LPガス供給センターを
昨年夏、国の災害対応施設としての「中核充填所」となるべく改造し、完成しました。
その拡張部分は、下記図の黄色で示したプラットホーム部分です。
これにより実質的な月間充填可能量は、飛躍的に向上したのです。

下記は、黄色の拡張部分を右上方向から撮影した写真です。3トン配送車の大きさ
からその規模が分かると思います。更にこの増設したプラットホームの屋根上には
東京都の充填所としては第一号となる太陽光パネルの設置を検討しております。
また革命という意味では、個人的な夢ですが、都市ガスエリアに、まずは非常用、
自由化後は、顧客が自由に選択して使えるP13Aを販売したいと思っております。
  (P13Aとは、プロパンガスに空気を混ぜて作る疑似的な都市ガスのこと)

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