2010年石油業界弊社重大ニュース
 JX誕生、EM撤退報道、新新仕切改訂他、今年も色々ありました
あなたは12月企画の 番目のお客様です。  2010/12/1 掲載時 0スタート
今年も業界は激動の1年。これを振り返る10大ニュースをアラカルト的に解説します。
その順番ですが、業界にとっての重大度というよりは、私にとっての衝撃度や皆様に
是非お伝えしたいという要素の方が強いかもしれませんので、自己責任でご判断下さい。
今年も1年ありがとうございました。そして来年もよろしくお願いします。 文責 垣見裕司

1.JX誕生じわり利くその効果
 今年の業界最大の出来事はやはりJXの誕生でしょう。発表は前年以前なので、
衝撃度は少ないのですが、4月に親会社となるJXホールディングが、7月には、
我々にとっての取引先であるJX日鉱日石エネルギーが誕生しましたが、私は
じわりとその効果を感じております。
まず、業界内外を問わず、皆様からお伺いするのは「街中によくエネオスマークを
見かけるようになった」という話です。
今の日本国内のSS数は、4万弱。その内の約1万がPBSSなので、約3万の系列
元売SSを印象度合の分母とすれば、統合後のエネオスマーク数の約1万2千の
系列元売内シェア―は42%。これはやはり圧倒的と言えるでしょう。
 しかし経営統合の本当の目的は恐らく「SSの数の多さ」ではなく、精製設備面や
物流面のの効率化、そして他の元売の力を借りることなく、ほぼ日本全国での製品
供給網を確立したことでしょう。 
 では、その圧倒的な優位性を獲得した結果として、我々JX系列特約店としての
「効果」は出ているのでしょうか。後にご説明する新新仕切りの改訂で、下限値のみ
ならず、ブランド費と称する経費や運賃までもが一部値上げとなってしまったので
「効果はない」という声も確かに聞きます。
しかし私は重大ニュースの二番目以降も、実はJX誕生と無縁ではなく、むしろ本当
の効果であると思っています。

2.エクソン日本撤退報道
「エクソン国内GS撤退」系列4000店営業権順次売却へ」10月1日の読売新聞朝刊
一面は衝撃的でした。もちろんエクソンモービルは、その日の夕方に否定しましたが
大新聞の1面ですから業界内外に与える影響は極めて大きいでしょう。
同日夕刊の産経新聞や日経新聞の情報を総合すると「まず九州で4百店舗、伊藤忠
商事系や三菱商事系、更には地元資本の石油販売会社も興味を示している」と
具体的な名前が出ていましたが、業界人なら、想定の範囲内の内容でしょう。
何故ならEMは2年前に米国でSSを売却していますし、北海道からも軸足を移して
いるのは、既に周知の事実です。従って今回も何故九州なのかの理由については、
ずばりJXの影響と言えるでしょう。
 恐らくEMとの長期バーター契約が期間満了となり、その後の延長は合意に至らず
EMとしては今までの様な条件で九州の系列SSに供給が出来なくなったのでしょう。
 ところでSSの資産売却だけなら地元資本の中小会社でも良いはずですが、何故、
商社系なのでしょうか。それはEMが京浜地区等に持つ製油所の稼働率を考えた
からだと思います。
JXはEMと直接的なバーター取引はしないとしても、商社がJXの大分から購入し、
独自ブランドやEMのマークで販売することは可能でしょう。
一方、商社が全国各地の独自プランドSSで販売している製品については、長期契約
でもないかぎり、基本的にはどこから買っても良いでしょうから、九州でJXからの購入
した数量相当を、京浜地区のJXの購入分から減らし、その分をEMからの購入量を
増やせば、数量的にはバーターしたのと同じ効果があります。
しかし「見直し」とか「効率化」の美名を使っても、SS不動産等の資産を売却、現金化
して本国に送り、東南アジア等で再投資する訳ですから、少なくとも九州からは
「撤退」と言われても文句は言えないでしょう。さりとてこの九州の事例をもって京浜
等競争力ある地区も含めて日本撤退という報道は、やや無理があると思います。
但し、過去LPGの小売りからは、突然撤退したEM。LPGの業界は広くないので、
弊社レベルでもEM徹退による影響(恩恵)を受けた程ですから、EM関係者にとって
「何が起こってもおかしくはない」という覚悟は必要かもしれません。

3.根岸製油所の閉鎖検討報道
 EMの記事と同様に10月6日の読売新聞夕刊1面に「根岸製油所の閉鎖検討」と
これまた大きく報道されました。しかし業界人が冷静に読めば、何も新しいことは
書いてありません。おまけに2020年度までという10年も先の話ですから、読売新聞
の意図が良く分かりません。JX側のコメントも「あらゆる選択肢を排除せず検討中
だが、まだ何も決まっていない」としか言いようがないでしょう。
 根岸製油所の規模なら従業員数は数百人。家族も含めて考えれば千人単位です。
従って組合対策とか雇用対策、更には地元自治体もその税収の多くを根岸製油所
に依存していでしょうから、関係者にとっては恐らく大騒動だったでしょう。
 報道の自由と言えばそれまでですが「10年後の撤退を検討」と大報道をして業界を
混乱させ、従業員や自治体の不安を煽っただけの様な気がしますが、この報道に
違和感を感じたのは、私だけではないでしょう。

 弊社HPファンからの情報では、記事を書いたのはWさんとのこと。機会があれば
一度ゆっくりお話してみたいと思います。
4.エネルギー高度化法施行
資源エネルギー庁が7月5日告示した「エネルギー供給構造高度化法」は、石油
精製業界にとっては非常に重大な話です。「上流の元売精製部門の話だから我々
SS業者は関係ない」と思ったら大間違い。この通称「高度化法」は、価格が相対的
に安い重質原油を効率的に精製出来る体制を整え、国内の精製業の国際競争率を
高めるのが目的とされていますが、本当は、競争力のない精製設備の廃棄を強く
促すだけでなく、投資余力のない精製元売に統合や撤退を促すことと私は勝手に
解釈しています。その判断基準を
(重質油分解装置の処理能力)÷(トッパ―処理能力)=重質油分解装置の装備率
とし、現状約10%の装備率を2013年に13%に引き上げる目標を掲げると供に、
精製業者に対し、現状10%未満なら45%以上 また13%以上なら15%の改善を
罰則付きで義務付けました。でも私は、現状僅か3%の違いだけで、対策後15%
で良いころが、45%以上を義務づけてしまう事に法律的根拠が本当にあるのか、
私にはわかりません。
 精製元売は分解装置を装備すれば良さそうなものですが、このコストは数百億
規模になるため、現実的には分母であるトッパ―能力を減らして、基準をクリヤー
するしか無さそうです。改善は2013年までですが、計画書提出はこの10月末が
期限でした。元売別に現状能力や現在発表済みの廃止削減見込みをいれて
4.2%の東燃ゼネラルとコスモの4.5%は大変厳しそうです。
「罰金を払った方が投資するより安い」という計算もあるようですが、それは銀座
の駐車場代が高いので、月2-3回なら駐車違反の罰金の方が安いという話なので
コンプライアンス的には問題でしょう。各社が提出した計画は、公には発表されない
そうですが、期限までには各元売から順次発表があるでしょうから、今後もこの
問題は注視していきたいと思います。
5.新仕切り価格体系また改訂
2008年10月から始まった、コスト積み上げから方式から市場価格に連動する方式
となった新仕切体系は、本年4月にはコスモ、6月からは、新日石とJomoが見直
をして新新仕切りとなり、それが10月からまた再改定となりました。
JXを例にとれば、6月から後決めとなり、10月から再び先決めとなりました。
しかし買う側の特約店にとって一番問題なのが下限価格とブランド料と称する経費
のダブル値上げです。元売の仕入値である輸入原油CIF価格から自家用燃料分等
の精製コストが上乗せされた下限価格の大幅UPは、元売の存続がかかっている
ので、百歩譲れば、まあ仕方がないにしても、そのCIF価格から十分に精製マージン
が確保出来ている時ですら、ブランド料と称する販売経費と運賃が2円以上も値上げ
されたことは問題だと思います。
普通の対等なビジネスなら、元売の存続のために下限価格の値上げを了承する
代わりに、CIFからの利幅が十分に取れている時は、ブランド料等は、値引きします
というのが普通だと思います。また今回の改訂を「系列対PB」という括りで見ると、
その仕入れ格差は明らかに広がり、系列SSのPBSSに対する競争力は、間違い
なく2円前後、弱まったと言えるでしょう。 
 元売が単に系列の卸コストだけを上げるなら、傘下系列SSの競争力を弱める
「タコが自分の足を食べて生き残る危険な方法」だと思います。タコは、頭部にある
口から生存に必要な栄養を取っていますから足が一本短くても問題ありませんが、
SS業界はタコの足に相当する末端SSで販売するガソリン等から元売の栄養を
確保して行いるのです。
 ではこの新仕切り体系は、一体どのように見直せばよいのでしょうか。系列SS
の皆さんも、下限の時は、元売がコスト割れなっているのは十分承知しているので
系列仕入価格と業転価格の格差さえ広がらなければ、需給を締めた結果として
業転価格が上っても文句は言わないでしょう。要するに業転と系列格差が縮まれば
よいのです。系列SSの弱体化は、系列元売の弱体化を意味しますので、早期の改善
を期待しています。

6.メキシコ湾原油流出事故
本年4月20日、メキシコ湾でBPが開発中の深海油田から原油が流出するという
業界史上最悪の事故が発生しました。そして事故から3カ月後の7月中旬、封じ込め
に成功しました。その間1日最大で約1万klの原油が流出。被害は甚大で、メキシコ湾
の環境破壊、その復元費用、流出原油回収費用、漁業補償等への賠償としてBPは
約2兆円の基金を積み立てることを余儀なくされました。
 これはBPにとっても大変な負担で、それを懸念した市場は、BPの時価総額を
16百億$から6百億$へ低下し、ある機関のBPの格付けも一時AA+からBBBになる
など、深刻な問題となりました。
 さて今回の事故で中長期的には原油の産出量の減少は間違いないのですが、
不思議な事に、原油価格が乱高下することはありませんでした。
一般には、世界経済の回復が遅れ、原油の絶対需要が伸びていないからとの説が
有力ですが、私は少し違う見方をしました。商品相場は分からないので開発業者の
株価で考えてみます。
 近い将来の原油産出量は、間違いなく減少する→価格高騰→開発業者の利益
という株価の上げ要因ですが、一方深海油田開発に関しては、無限大とも言える
リスクが伴うという下げ要因も明確となり、これが交錯して投機筋も見極めきれな
かったのではないかと思います。また原油価格が高騰すれば、今後新エネルギー
への転換が、益々進むとの思惑も働いたかもしれません。少なくとも今回のことで
「脱石油」とまでは言わないものの水素社会の到来が、それなりに早まったことは、
間違いないと思います。

7.地下タンク消防法改正
本年6月末に交付された消防法改正で40年、50年を超えたタンクは、タンクを
入れ替えるかタンク内部をFRP加工等の対策をしなければならなくなりました。
来年2月が期限ですが、2年の猶予期間が与えられました。
 対象SS数は「腐食の恐れが高い」が約4千。「特に高い」は約4百あり、合計
約44百です。全石連が行った意識調査によれば「まだ分からないが」35%、
「これを期にSSをやめる」が22%もあるので、この法改正の施行により対象となる
約44百SSの3割近くが、止めても不思議はないと心配しています。
8.SS数4万、セルフも上限か
 本年3月末で40357前年比マイナス1733です。
しかしその後発表された6月末のセルフ数は、8325件で3月末比、僅か29箇所
の増加にとどまりました。内訳は、増加は86件に対し、閉鎖が57件もあるのです。
セルフ該当物件が、ほぼ出尽くしただけでなく、既存セルフでも赤字撤退が、
今後多くなることを予想しています。
 この結果、日本のセルフの上限は、1万箇所はおろか9千かもしれませんか。
 セルフ解禁から12年。これはオープン後10年を超えるセルフが急速に増えて
来るので、この10年を期に不採算セルフを廃止しようと思う経営者も、少なく
ないでしょう。私はセルフも減少し始める日が、そう遠くない時期に来ると思います。
 ちなみに日経新聞の10月21日22日に掲載された「ガソリンスタンド止まらぬ淘汰」
の記事。今回は消費者が読んでも、勿論SS業界の経営者が読んでも納得の記事
ではないでしょうか。地下タンク問題も大変。地方のみならず、都心でも過疎が発生。
 そして国民もこれ以上のSS減少を望んではいないと言う締めになっています。
弊社HPや本誌に書いて来たことが、日経にも伝わり嬉しく思っています。

9.エコカー減税&EV元年
エコカー減税でプリウスが自動車販売台数で第一位、またiMievも一般販売、更に
12月は日産リーフも販売開始です。EV車は、まだ絶対台数が少ないので、ガソリン
需要に及ぼす影響は微々たるものですが、私は大都市圏のセカンドカーかつコン
パクトカーの相当割合はEVに代わってもおかしくないと思っています。
2009年度は前年比100.4%のガソリン需要。2010年度上半期は、102.7%ですが、
これは猛暑効果であり、下げ止まったのではなく、私はまた下期から減少が始まる
のではないかと思っています。
10.CO2の25%削減等環境問題
やはりCO2の25%削減等環境問題でしょうか。鳩山前首相が国際公約してしまい、
菅首相がそれを引き継いでしまったようですが、25%削減は、実は現実的ではなく、
日本の国力を結果として削いでしまいます。
その結果喜ぶのは、極めて効率の悪い使い方をしている国です。その相手に無償に
近い形で技術や物資を提供し、日本だけが損するような状況だけにはしてほしくない
と思います。
 その意味では、5月企画の後半で解説した、1Lのガソリンからのどの位のCO2が
出るのか。またカローラとプリウスとの比較に於いて、CO2の削減コストの解説も
ある意味大反響でした。実は、この私でさえ、環境問題が声高にさけばれるまで
ガソリン1L当たりから排出されるCO2の量を覚えていな程ですから、私も偉そうな
事は言えません。ましてそのCO2を削減するためのコストシミュレーションは、初の
経験でしたので、本HPや皆様からの知りたいという欲求に感謝しております。
番外編 弊社の重大ニュース 新日石覆面による顧客満足度調査 全国第1位
旧新日石が企画している全国特約店SS表彰にて、弊社オートジョイ八王子長沼が
CS(顧客満足)部門で全国第1位となり、表彰式では、全国の新日石SSを代表して
新日石の西尾社長様から直接賞状を頂くという栄によくすることとなりました。
また他の直営SSが全て全国表彰基準を達成したのも快挙と言えるでしょう。
改めて、各SSの所長や全社員スタッフに感謝し、その栄誉を讃えるとともに、
このように素晴らしいスタッフと一緒に仕事が出来ることを嬉しく思います。

新日石西尾社長と握手する坂本所長、左から私、垣見社長、坂本、西尾社長、福、田中
弊社NO2 レンタカー絶好調も 事故、盗難苦労多し 
格安SSレンタカーの詳細は、過去企画 NO1   を是非ご覧下さい。
売上は、絶好調。同じ都心で始められた同業者と比較して、他社ブランド及び自社
PBで始められた方との、手前みそ的判断ではありますが、昨年の南田無のオープン
からは、販促費ゼロでも、車両登録のその日から予約が入るので売上対比10%代の
ブランド関連費は、決して高くないと思います。反面、バンパーを擦った傷つけたは
日常茶飯事、外注修理に出していたら、休業補償だけでは会いません。事故や出先
で動けなくなる故障2回。内一台廃車を含む合計4台の廃車は、想定の倍でした。
 盗難事件は1件。覚悟していたよりは早く体験出来ました。また故意もしくは
重大な過失による関係者同士の不信な事故で、保険会社が支払審査中が1件と
本当に色々な事が次々に起きて、弊社の対応能力を試されているような感じです。
 従って、レンタカー事業は、各所長の十分な資質と能力、そしてやる気や満足度
そして本社の物理的、時間的、精神的応援が不可欠な事業だと思っております。
弊社NO3 水素スタンドビジネスモデル検討委員会参加
 某自動車会社の子会社にあたる調査研究会社主催の水素スタンドビジネスモデル
検討委員会
に参加し、燃料電池自動車や水素の可能性を、石油村以外の視点から
再認識出来たのは、私にとっても良い勉強となりました。勉強内容はの通りですが、
 5月企画後半、委員会招聘  6月企画 7月企画水素スタンドは普及するのか
元売関係者筋によれば、この12月中にも水素関連法規の大幅規制緩和に向けた
ロードマップが時間軸付きで、年内にも示されるとの事なので楽しみにしております。
もし間に合えば、来年1月企画で発表したいと思いますので、お楽しみにして下さい。
弊社NO4 検索サイトも絶好調  身の引き締まる思いです 12月1日現在
検索語 ガソリン価格 原油価格 SS業界 石油業界 近未来自動車 SS跡地
Yahoo 4位/81万 5位/116万 1-2位/115万 4-7位/30万 1-2-4/139万 1-2位/56万
Google 5位/82万 5位/113万 1-2位/155万 4-7位/30万 1-2-4/139万 1-2位/56万
最近は絶対アクセス件数もですが、上記をより嬉しく思います。
両サイトとも分母が同じページ数なのは、検索ソフトが習熟してきたからでしょうか。
 本年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いします。
       気愛を入れ ご縁を大切に 感謝こそすべて     垣見 裕司