新日石・新日鉱の経営統合詳細発表他から分かること
どうなるどうする元売&SS業界2010 気になる新仕切り体系変更も
新年あけましておめでとうございます。あなたは新年企画の番目のお客様です。
さて新年は「2009のモーターショウから分かる近未来自動車とSSの姿」を企画していました。
を企画していました。しかし最近の社会の変化、そして業界の変化は、10年前に比較しすごい
速さで激変していおり、その変化も多様で、年末時点でも、皆様にご紹介し一緒に考えてみたい
ことが山積です。よって新年はまず新日石と新日鉱の経営統合詳細発表の行間を私になりに
読み解き、今や最大の関心事の新仕切体系の見直しについて、考えてみたいと思います。
本年もどうぞ よろしくお願いします。2009/12/28 1/8更新 Ver2 文責 垣見裕司

T 新日石とJomoの経営統合の詳細発表から

1.新統合会社のSSブランドについて
12月25日の金曜日、新日石と新日鉱HDの経営統合の詳細内容が
発表されました。まずに注目したいのは、SSブランドが「エネオス」に
決まったことです。一般的に1万弱と3千の店舗を統合するなら、両社のブランド
イメージにに余程の差がない限り多い方のブランド合わせるのが一般的でしょう。
私も最初はそう聞いていましたが途中から少し雲行きが変わり、
「対等性を強調する意味でも新ブランドにすべきだ」等の声も聞こえてきました。
しかしもし新ブランドを立ち上げた時のコストを考えてみましょう。例えばSSの塗り替え
費用だけでも1SS最低100万円として、1万2千か所なら120億円。更にそれを周知
撤退させるための普及・広報コストとでもいいましょうか。日石三菱が、エネオスブランド
を立ち上げた時を考えて見ても、莫大なコストが掛かってしまうでしょう。こうなると
儲かるのは、広告代理店や塗装や看板業界だけなので、今回の「エネオスブランドへ
統一」という発表を聞いて、メンツ拘り、余計な経営統合コストがかからなかったことを
嬉しく思います。これは、弊社が仮にJomoの特約店だったとしても、私は間違いなく
納得すると思います。もっとも社名が「日石日鉱」ではなく「日鉱日石」に決まった段階で
社名は譲って、SSブランドはエネオスとなったという説もあります
2. 製油所の精製廃棄について
さてSSのブランドは、我々当事者以外の方にとって感心が低いのかもしれませんが、
業界にとって最も重要なのは、やはり精製設備廃棄の問題でしょう。「40万BDを削減」
と昨年発表されていたのですが、どこを閉鎖するかは、水島製油所の一体操業以外
「今後検討する」等の内容だったと思います。もし今回も政治でいう沖縄の普天間基地
のように具体的な削減案が示されなければ、ガソリン等の業転価格は、全く改善
されないだろうと心配していました。
しかし蓋を開けてみると、室蘭、仙台、麻里布以外は、すべて削減という踏み込んだ
内容で、注目すべきは、新日石側にとって象徴的な存在である根岸製油所の廃棄
(第2トッパー7万BD)が発表されたことです。私が業界に入った頃は「根岸は日本一
いや東洋一」と何度も聞かされていたので、その根岸に削減のメスが入ったことは
新日石そしてJomoにとっても「背水の陣」の覚悟を表れではないかと思います。
精製設備の廃棄なくして、元売もSSも経営の健全化はありえません。もちろん、
根岸の第2トッパー廃止が発表されたからと言って、直ちに業転価格が上がる訳では
ありませんが、全く発表されず、単に結論が先送りになった状況と比較すれば、この
英断を高く評価したいと思います。そして「2015年までに更に20万BDの削減」も含め
私の妄想ですが、「これで元売設備廃棄や再編は更に加速するでしょう」という評論家
的抽象論ではなく、具体的イメージが出来上がったよう思います。
3.新仕切り体系見直しについて
この問題は、今回の新日石とJomoの経営統合の発表には関係ないように思うかも
しれませんが、私は大ありだと思います。新仕切り体系は、原油価格が上がっている
にも関わらず、ガソリン等の業転市況は上がらず、灯油やA重油より安い価格になって
いるだけでなく、原油CIF価格+税金+αのいわゆる下限値に、コスモのみならず
新日石も到達し、精製元売として全く利益の出ない価格レベルとなってしまいました。
また末端SSでも、その安い業転を大手ショッピングセンター併設SSが仕入れ、業界
最安値で販売し、近隣市場がそれに勝算なく追随するという安値収斂状態になり、
その結果、誰も儲からない業界を生みだしてしまいました。
そこでこの問題の改善の為、元売、小売、双方から新仕切体系の見直し論が、
囁かれ始めている訳ですが、ここで注意する必要があるのは、元売が言う見直しは
自家燃料等のコストを上乗せする「実質値上げ」であるのに対し、SS側の見直しは、
系列価格と業転品との格差縮小なので、その内容は相反するということです。
 もし元売の打ち出す改定が、単なる系列コストの値上げなら、公取の指導等により
元売と特約店等の特約販売契約の見直しで、元売と特約店とは、対等な関係に
なったはずなので、その交渉は簡単にはいかないでしょう。他の元売りが4月から
始めたとしても 新日石とJomoは、結局経営統合待ちということで、その結論が
7月までずれこんでしますような気がします。
4. 大切なのは、「体系の見直し」ではなく「利益を出す仕組み」を作ること
では、この新仕切り体系は、一体どのように見直せばよいのでしょうか。実は、私は
この問い自体に危険が潜んでいると思います。体系の見直しが目的なのではなく、
お互いが利益の出る仕組みにすることが目的のはずです。
ではどのようにすれば利益が出るのでしょうか。 石油製品を原油から製造し、もしくは
製品を輸入し、我々国内業者に販売しているのは、元売及び一握りの輸入商社です。
よってその一握り業者で、皆さんが儲かるような需給調整をすればよいだけの話です。
系列SSの皆さんも、元売がコスト割れなっているのは十分承知していますので、系列
仕入れ価格と業転価格の格差さえ広がらなければ、業転価格が上がっても文句は
言わないでしょう。 もし元売が成果の上がる需給対策をせず、業転市場の安値を
放置したまま、単に系列の卸コストだけを、1-2円上げるなら、これは自らの系列の
競争力を弱める、正にタコが自分の足を食べて生き残ろうとする危険な方法です。
ただタコは本体の口からエネルギー補給をしているのに対し、SS業界はタコの足から
販売するガソリンから本体を支えるエネルギー源であることを忘れてはいけません。
単なるブランドコストの値上げは、大手ショッピングセンターやPBSSと、系列SSとの
仕入れ格差の拡大を意味し、系列SSの競争力は弱体化し、廃業は相対的に増え
その結果、系列元売も儲からないことになってしまいます。
ここまでお話すると、前項の設備廃棄が、如何に重要かがお分かり頂けるでしょう。
そして今回の新日石とJOMOが多大なる内部ストレスを乗り越えて具体案を発表した
後は、今度はそのエネルギーは他系列への交渉力としてものを言うでしょう。それが
系列内のみへ使用されないことを祈るばかりです。 読者の皆さまには、業界として
あるべき価格決定方式を取引先とご相談頂ければと思います。 この新仕切体系は
本来系列元売のために考えられた制度なので、系列外SSに属する読者の方が、もし
ご不快に思われた場合は、深くお詫びするしだいです。
写真は根岸製油所2005-11撮影

U 世界経済 日本経済から SS業界を考える
1.世界経済、米国掲載、日本経済はどうなる
私のような中小企業の一経営者が、テレビや新聞以上の情報は持ち合わせていま
せんが、新年なので考えてみたいと思います。まず米国経済は、下げ止まりして
回復基調に入ったのか。私は自動車産業、すなわちGMの再生に注目しています。
金融や保険なら赤字部門を切り捨てれば再生出来ますが、自動車メーカとして
魅力あるエコカーや売れて儲かるEVをそんなに早く作れるのか。また全米自動車
労組の年金問題も、1963年は現役40万人で退職者3万人を支えていたのが、
今は現役9万人で49万人の退職者を支えているそうなので相当深刻なようです。
またGMの世界販売は年間1000万台でしたが、昨今の不景気で、今の実力は
年700万台とします。仮にトヨタの新型プリウスがGMにあったとしても、その生産
能力は、せいぜい年30万台。すなわち300万台も減ってしまった総販売台数の
落ち込みを、超人気車のプリウスがあったとしても、全体の落ち込みをカバー
するのは無理なのです。むしろ、販売ディーラーを半分にするとか、不採算車種を
リストラした結果、倒産を余儀なくされる下請け関連会社等のマイナス要因の方が、
米国経済に及ぼす影響は、大きいでしょう。
一方、中国やインドは大底を脱したように思います。やはり人口の多さは圧倒的な
パワーで、例えば小型自動車の販売台数は前年を大きく上回っており、今年の
世界経済は、米国や欧州ではなく、中国やインドのような新興国が引っ張っていく
のかもしれません。
では日本経済は、どうでしょう。東証の日経平均が、10500円に届いた時は、
「日本経済も回復」等の意見も聞かれましたが、年末のドバイ金融不安等による
更なる下落は心配です。それに業績回復と言われる一部の大企業も、大幅な
リストラやコストカットをして、やっと出した利益で、未だに悪化している失業者数や
求人率や失業率をみれば、国民全体の消費回復はとても望めないでしょう。
 もう一つの心配は、今好調といわれる、洋服の「ユニクロ」にしろ、家具の
「ニトリ」にしろ、「100円マック」にしろ、あるいはお弁当にしろ、その成功企業の
多くが安値志向だということです。ユニクロやニトリは、他者が、品質と価格で
追随出来ないことを前提にしていると思いますが、価格だけなら一時的に他社も
追随出来るのです。しかしそれが業界全体に広がったら、もう業界は持たないでしょう。
以上を総合すると私の結論としては、日本経済は回復どころか、むしろ二番底を
警戒しておく必要があると思います。
2. 今年の原油価格はどうなるのか
現在のWTIは、ギャンブル市場の投機商品なので、私には分かりません。結局、
米国金融当局は、法的規制等、何もしていないに等しいですし、結局金融でしか
米国経済の再生の道がないのかもしれません。米国にとっては仕方がないのかも
しれませんが、我々にとってはいい迷惑。よって今年もWTIの乱高下は続くでしょう。
そして過去に147ドル/Bを経験しているので、その振幅はより大きく、その変化速度も
より早いのではないとか思います。 一方実需で考えるなら、欧米や日本の
「需要減要因」と中国やインドの「需要増要因」のどちらが大きいかで決まります。
短期的には前者で、中長期的には後者でしょう。では、原油価格の本来のあるべき
価格は幾らなのか。原油の代替品になりうるオイルサンド、オイルシェル、オリノコ
タール、また天然ガスやLNGから作るGTL、天然ガスの生産に伴ってとれる
コンデンセート(天然ガス随伴原油)等がありますが、その開発や製造コストは高く
見ても50ドル/Bで、それに 20ドルの利益を見ても70ドル。よって2010年も
「あるべき価格は70ドル」という持論は、今年も変更しなくてよいと思います。
3.ガソリン需要はどうなるか
根拠のない予想ですが、2010年度は前年度比ガソリンで97%。燃料油全体では
90%まで落ち込むと思います。暫定税率が廃止され、また高速道路が段階的に
安くなったとしても、私は、その減少速度が、一時遅くなるだけで、需要はそう
増えないでしょう。むしろ絶対人口や運転人口の減少、そして若者の車離れという
基礎的な要因に加え、場合によっては二番底もありうるという景気低迷から考えると
需要については、厳しく予想せざるを得ません。更に本年4月、遅くとも2011年
4月からは、温室効果ガス削減税が創設されるでしょうし、車としては、プラグイン
ハイブリッドの一般発売も始まり、「ガソリンを全く使わずに1ヶ月間1000km走った」
等話題が、テレビのバラエティー番組になるのではないかと思います。残念ながら、
「ガソリン需要は 2015-2020年に半減する可能性がある」という持論は、今後
益々現実味を帯びてくると思います。
4. 収益の柱は洗車しかない
実行燃費が20km/Lのプリウス。月間1千km走るユーザーでもガソリンは月50L。
ガソリン粗利が5円/Lなら、プリウス1台からの月間利益は、たったの250円です。
それがプラグインハイブリッドになったら、更に減ることは明白です。しかしハイブリッド
車も電気自動車も汚れるしメンテナンスも必要です。
よって皆様も洗車ステーションやサービスステーションを目指しませんか。
          「洗車だけでも大歓迎。電気自動車もお気兼ねなくSSへ」
弊社は今年から本気で実践しようと思っています。
「急速充電は営利ビジネスにならない」と以前から申し上げて来ましたが、青梅市の
セルフ河辺SSで、国の補助金と新日石のご配慮で実証試験を開始する予定です。
これを機に、弊社の他のSSでも100V、200Vの簡易充電サービスを開始する予定です。
 今、発表されているコンビニ、100円駐車場、郵便局等の充電は、100V-200Vの簡易
充電なので、料金が同じ無料なら、SSがそれらに負けるはずはありません。
 洗車や特殊コーティングを実施している時間を使い、料金は販促費用と考え、洗車は
30分。コーティングなら1時間等の無料充電サービスを実施する予定です。 この30分で
例えば iMiEVへの200V充電なら140km÷7時間÷2 = 10kmも走れるのです。
バッテリー残量が少なくなってSSにやっとたどりついたお客様が、ご自宅に帰りつくまで
の安心料の洗車代と考えれば、ご納得頂けるでしょう。そして電気自動車元年と
言われる今だからこそ大切なのです。設置費用は100Vなら当然無料。200Vなら、
配電盤から整備室に、単相線を引く必要がありますが、費用は約10万円程度です。
5. やっと 量から質の時代が来たかもしれない
残念ながら、現在4万全てのSSが生き残れるビジネスモデルはもうありません。
産油国での戦争勃発による海峡封鎖でもない限り、末端市況が劇的に好転する
ことは、まずないでしょう。では、その生き残り、更に勝ち残りのために、何が必要
なのでしょうか。
私は「山で熊に出会った時の生き残り理論」と申し上げていますが、決して「死んだふり」
ではありません。「君(一緒に山に登った同業者)より早く逃げられればいいんだよ」
というブラックジョークです。 地域で平均以上の運営力、競争力、販売力、CS魅力度が
あるSSになる必要がありますが、200kL等の販売量はあまり関係なく、まず現在黒字か
どうかの方が重要です。もし今赤字なら次年度は口銭が更に悪化しても、黒字に改善
する確かな見込みがあるかです。 同様にSS数や会社規模もそう関係はありません。
50SS持っていても競争力がなければ、吸収合併の対象ですし、1SSでも立派に存続
しているところもあるので、本当に「質の時代」が来たと思います。

6. 今 SSがすべきことは何か
講演等の質疑応答で、販売店はどうやって生き残ったら良いかと聞かれますが、
販売店の皆様には、是非、元売や特約店より、販売店が強いところはどこかを
考えて頂ければと思います。例えば、弊社もセブンイレブンの運営を検討しましたが
弊社社員で24時間営業することは、社員管理的にもコスト的にも合わず、弊社では
運営能力ない断念し、本部を通じて物件を貸与する方式にしました。
要するに、販売店様的な柔軟な経営体質でないとやっていけないのです。一時は
「親の葬式にも行けない」と批評されたセブンイレブンが、結果として、浮気もなく
業界NO1ブランドとして成功している事実は大きいと思います。

 新仕切体系で卸価格の差が3-4円差まで縮まるなら、本当のCS競争やビジネス
モデルでのアイデア勝負となるでしょう。地域NO1からオンリー1のCSを目指し、その
実現はESすなわち従業員満足の向上と「コーチング」による「気づき」によって行う
のです。仕事は「やらせる」のではなく、自ら「やりたくなる」仕組みを作ることが肝心。
またこれからのビジネスは、感動がキーワードと思います。
残念ながらガソリンや車検に「感動」はありません。お客様は、ガソリンが無くなった
ので、いやいや来ていたのです。しかし洗車やコーティングには「感動」があります。

そして昨年より始めた格安レンタカーは、何故かお客様に「ありがとう」と言って頂ける
ビジネスです。格安レンタカーは、SSとのマッチングが良く、安易に参入してくる
異業種にも、絶対勝てるでしょう。但し地域の世帯当たりの車両保有率の低さと、
需要の核となるような空港、駅、マンション、団地(車保有率が低い)、商業地、大学、
大学寮、既存レンタカー店等があることが必須条件です。
フランチャイズか、自社でやるかは悩むかもしれませんが、オープン後10月たった
弊社のセルフ河辺SSでさえ、予約の約半分は、レンタカー本部のネットから入って
来る事実を考えると、勝ち組ブランドに乗る必要はありそうです。その収益は、現場の
SSに帰属するので、SSの現場も本社の私も、うきうきしながら楽しくやっているのが
成功の秘訣かもしれません。本年もどうぞよろしくお願いします。


V 鳩山総理 来年度予算案閣議決定記者発表から
ガソリン税暫定税率 実質維持に対する皆さんのお考えは?
12月25日 鳩山総理の会見を聞いて残念に思った方も少なくないと思います。
あれだけ選挙公約した「ガソリン税暫定税率廃止」が、一般財源のまま、現状の税率
維持だそうで、あっさり公約違反となりました。私は、25円下げてとは、申しませんが
せめて5円下げて、鳩山民主党政権として、その信頼を国民から得た方が、夏の
参議院戦を考えるならよかったと思います。しかしその税率維持発表後の世論調査に
おいて、国民の皆様があまりご立腹していない数字(半々くらい)が出ているのを見て、
私は日本国民の寛容さに改めて驚いております。
一方、母親からの資金提供にたいする説明不足により支持率が大幅に低下したので
夏の参院選挙は、自民党の揺り戻しが予想されます。当HPは、特定政党を応援する
もではありませんが、何も決まらなくなる、衆参ねじれ状態だけは、何とか回避して
ほしいのと思います。
      *************************
12/28の一部業界紙によれば、SS廃業・倒産時のタンク放置対策と、SS過疎地の
事業継続支援の一環としてタンク入替やFRPライニング補助が新たら検討されて
いるようなので、嬉しく思います。今後、決定しだいご報告していきたいと思います。
ご意見ご要望ご感想はこちらから           垣見 裕司  更新 Ver-2