近来自動車は燃料電池車FCEVか
 東京モーターショー報告と水素スタンドを作る方法
新年があけました。本年もどうぞよろしくお願いします。2014/1/6 再更新 Ver2
あなたは近未来自動車で番目、水素で番目のお客様です。

新年あけましておめでとうございます。今年の石油業界は何か激動の年になりそうです。
最もご紹介したいことは、東燃の三井石油買収、そして東燃、昭和シェル、コスモ石油、そして
住友商事のLPガス部門共同会社設立。そしてコスモ石油の開発部門の子会社化。分社化と
言った方がいいかもしれません。それは何のためなのか。そこから波及することは何か。
年末年始に色々な方にお会いし、HPには書けない話もありますが、どこまでならいいか。
1月企画の追加にするか 2月までお待ち頂くか 思案中ですのでしばしお時間下さい。

さて当初予定していた企画は、東京モーターショー2013へ行って感じたことです。
一言で言えば、2015年の燃料電池自動車(FCEV)の販売がいよいよ迫って来たこと。
エコカー(省燃費車)が、益々主流になり、結果としてガソリン需要の減少が加速すること。
LPガスタクシーから撤退をほのめかしていたトヨタが、何故LPガスタクシーを展示したのか。
そして1000坪スタンドを運営する元売子会社SSではなく、自己資本特約店系のSSが、
250坪程度のSSに、本当に水素スタンドをつくれるのかも、検証してみたいと思います。

以下過去企画もご覧下さい。
2012年1月近未来自動車NO7
2011年7月近未来自動車NO6
2010年2月2009年東京モーターショー報告NO5

2009年7月近未来自動車No4
2009年2月 No3
2007年7月の近未来自動車の主流は何かNO1

2007年11月企画 東京モーターショ-写真報告
2007年6月企画後半の マニアックなバッテリーの話

2003/10月-燃料電池車の実力はNO3 
2002/01月-NO2 2000/10月-エコカーの実力はどこまで来たか NO1 文責 垣見裕司

燃料電池自動車(FCEV)もトヨタは市販車展示

今回のモーターショーの最大の目玉は、各社が2015年の発売を宣言している
燃料電池自動車(通称FCEV)でしょう。その代表は、やはりトヨタです。
大きな展示スペースで車を移動させ、劇場のような雰囲気で紹介をしていました。
水をイメージしたのか水色に包まれた車体。配布された資料は映画TOYOTAUN
のパンフレットを思わせました。それはそれでいいのですが、データ等の表記は、
一回 約3分の満タン充填で約700km走るということだけ。あとは、
「水素ステーション等の充実やコスト削減という課題が残る」との説明だけでした。
ペンギンさんは可愛いのですが、理工学部の私としては、エンジンならぬモーター
の出力や水素貯蔵タンク容量など、基本諸元の記述や説明は、最低限必要だと
思います。




 写真はトヨタ燃料電池自動車 ほぼ市販車モデル 右写真は同車の車体下部面

ホンダと日産の最新のFCEVの展示はなし

ホンダと日産のFCEVは  一方ホンダのブースには、最新型のFCEVの展示は
ありませんでした。ではやる気がないのかというと、そうではなく、11月20日に公開
されたロサンゼルス自動車ショーで、最新型のFCEVを公開したそうです。
2015年に日本と米国で発売する車のベースだそうです。
  また2020年には米ゼネラルモータースと提携し量産型を投入するそうです。
私は、ホンダも日本のメーカーなのですから、せめて東京でも実車を展示して
ほしかったと思います。 また「2020年に量産型」という表現も、2015年に出すのは
プロトタイプという逆説的な意味となり、インフラ側の私としてはちょっと心配です。
一方日産ですが、残念ながらFCEVの展示はありません。そもそも自動車各社で
決めたはずの2015年の投入約束を、いつの間にか2017年に延期したのは、
やはり遺憾に思います。

トヨタが斬新なデザインのLPガスタクシーをコンセプト展示

今回の東京モーターショーで私が一番驚いた
のは、トヨタが撤退をほのめかしているLPガス
仕様のタクシー車のコンセプトカーを出品し
ことです。わざわざLPガスを使用して、ハイ
ブリッドは勿論としても、ロンドンタクシーを
思わせる斬新なデザインや日本ならでは
の「おもてなし」を表現し高い天井と乗り降り
しやすい、そして車としては大型車ではない
のに広い空間と開口部です。
私はアルファードというワンボックスに乗って
いますが、レクサス等もいいのですか後ろに
乗るなら、仕事も出来るスペースのあるこの
ような車がいいと思っています。
 実は私もLPガス業者です。弊社の瑞穂LPガス供給センターには、30数台の
LPガス配送車に自家用ですが、LPガスを供給するオートスタンド業者です。
 今、オートスタンド業者の最大の関心事は、トヨタが近い将来LPガス仕様の
タクシー車の製造を中止してしまうのではないかということです。
心配というより「これからも作り続けます」と明言しないトヨタに疑いを持っています。
その微妙な時期にあって、LPガスを使うハイブリッドタクシーの出展は、発売こそ
確約してはいませんが、誠に嬉しい話です。 しかしもう一つ深い理由があると
想像するのは私だけでしょうか。私見は最後に記述します。

ホンダが開発した水素発生装置 コンプレッサーなしで35MPaでの充填が可能だが

ところで読者の皆様はホンダの太陽光パネルと
水素ディスペンサーを見たことがありますか。
太陽光の方ではなく水素製造方法と昇圧方法が
画期的です。
水電解システムを高圧でも耐えられるよう密閉し、
水の電気分解時の圧力をそのまま利用し、
35MPaまで高め、コンプレッサーを使用すること
なく直接車に充填するのです。
 水素発生量は8時間で0.5kgと少なく実用化は
遠いのですが、容量が16倍となり、また圧力も
80MPaまで上がれば、正に画期的な夢の水素
発生装置です。
写真は左が水素充填機、右の洗濯機のような
のが水素製造装置です。

狭い200坪クラスのSSらは、コンテナ型ではなく分散設置が現実的ではないか

2013年10月にご紹介の通り、神奈川県海老名市にSS敷地内にガソリンや軽油の
アイランドと併設して水素ディスペンサーを設置した水素スタンドが完成しました。
設備容量がまだ少ないことを除けば、ある意味完成形で評価に値します。

しかしこのSSや名古屋市神の倉SSの敷地面積は約千坪。 FCEVの普及開始時
もっとも必要な、例えば都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)に千坪スタンドは
ありません。現実的には200坪でも設置可能な簡易型の水素スタンドが必要です。

そのイメージは2012年1月企画でご紹介したドイツのリンデ社のものです。
実際のイメージとしては、太陽日酸素社の移動式の水素スタンド下(写真)や
天然ガスのエコスタンド用に開発された中型パッケージタイプに近いでしょう。
しかしこれを200坪級のSSにどう設置するのか。現状ではまだ大きく圧迫感が
あり、改良の余地があります。

下記の写真左と中央は、大陽日酸株式会社の移動式水素ステーションです
写真右が、天然ガスエコステーション用 中型のパッケージシステムです。
移動式水素ステーションの概要は以下の通り 
圧縮設備 能力29Nm3/h 、充填圧力 35MPa・70MPa
第1バンク(CFRP) 205L(35MPa)×4本、第2バンク(CFRP) 36L(70MPa)×3本
第3バンク(鋼製容器)100L(83MPa)×3本 3バンク方式
主要構成機器 圧縮機、蓄圧器、CFRP容器、プレクール設備、ディスペンサー


垣見油化八王子SSでの具体例

そこで私が提案したいのは、このハーフコンテナ内の
設備を大きく3つに分け、軽い貯蔵タンク部、圧縮する
加圧部(コンプレッサー)。そして最後の水素ディスペン
サー部に分けて設置するのです。 これを筆者の会社の
八王子SS(250坪)でどの様に設置するか具体例です。
まず一番重いコンプレッサーは、洗車機のスペースです。
但し洗車機をどかしてくれという話ではなく、堅牢なアン
グルを組んで、洗車機の上の上部空間を使うのです。
消防法の屋根面積割合規制緩和で可能だと思います。

水素ディスペンサーをどこに置くか。 規制緩和が実現すれば可能です

3つ目は水素ディスペンサーをどこに置くか。
垣見油化の八王子SSは、ガソリン等燃料
油等は200KL程度しか売っていないので、
当初4か所あった計量器は、今3カ所に削減
しました。従って1か所分のスペースは幸い
空いているのです。
左写真でいうとのぼり旗を立てているところに
撤去したガソリンと軽油の計量器がありました。
従って後は既存のガソリン計量器との離隔
距離の緩和が、実現すれば 既存の250坪
クラスのSSに水素ディスペンサーを置くのは十分可能です。

水素スタンドの建設費用はどうするのか

現在建築されている戦艦大和型の水素スタンドは、オンサイトかオフサイトかにも
よりますが、3-5円というところでしょう。元売や大手都市ガス、或は岩谷産業等が
善戦して、2015年3月末までに20数箇所までは行くと思います。しかしそこからは
候補となる大型SSがなく、2015年度末、すなわち2016年3月末までの全国で100
カ所という目標数の達成は極めて厳しいかもしれません。

しかしそこからが我々特約店等が持つSSの出番です。SS業界の経営者の皆様
は水素スタンドの建設費を心配されていると思いますが、私が各種の委員会等で
ご当局や自動車会社の方にお願いしている案の投資金額は限りなくゼロです。

仮に2017-19年の簡易な水素スタンドの設備費が、規制緩和で9千万円まで
下がったとしましょう。今聞いている話では、国や自治体等が2/3までは出して
くれる予定なので、あとの3千万円は、どうするのか。実は自動車会社等、水素
スタンドというインフラを先に作ってほしい会社がお金を出資して、水素スタンド
普及投資組合等を作るでしょうから、そこがお金を出してくれるのです。
1SSあたり3000万円として、1000カ所で300億円です。石油業界の常識から
言えば非常に高額ですが、1兆円も純利益を出す企業にとっては僅か3%です。
それも一度にだしてという話ではなく、2016、17、18、19、20年度等5年間
に分けて出してもらえばいいので、十分可能な額だと思います。
 逆に自動車業界側が、そこのまでの覚悟をしなければ、SS業界としては、
投資出来ませんし、またリスクを冒して投資をする必要もないと思います。

FCEVと水素スタンド普及の起爆剤は タクシーではないか

前項の話が上手く行って、都心にも10カ所水素スタンドが出来たとしましょう。
しかしFCEVが普及しなくては、水素スタンドも宝の持ち腐れです。
そんな時もっとも投資効率が良い最初の起爆剤は、思い切って都心のタクシー
にFCEVを使って頂くことでしょう。ご存じの通りLPGタクシー車は安く約200万円。
ガソリン車の個人タクシーで約300万円としましょう。そしてFCEVの価格が、
500万円とすれば、個人タクシーとの差額200万円を前述の投資組合が負担し
最初の普及の起爆剤とするので、水素スタンド1カ所当たり、50台のタクシーに
投資するとして、200万円x50台=1億円程度の話です。やはり1兆円企業なら
十分ありうる話です。

 では何故タクシーなのか。やはり走行距離が一般車と断然違います。
最低年間6万kmとすれば月5000km。一日200kmというところでしょうか。
FCVの航続距離は500km超と長いのですが、それでも安心のために、
ほぼ毎日水素を充填しに来て頂けるでしょう。
1回の充填で、水素スタンド側に仮に500円の粗利があったとして、1日40台来店
すれば1日2万円。月60万円となります。あとは水素の昇圧の為のコンプレッサ
ーを動かす電気代次第です。お客様であるタクシーからは、ガソリン価格相当が
上限とすれば、水素スタンド普及投資組合とSS側での相談ということになって
くるでしょう。

さて最後にトヨタが、東京モーターショーでLPタクシーを出品した理由です。
あくまで私の穿った見方ですが、ずばり、タクシー業界にLPガスを供給する
オートスタンド業者に水素スタンドを検討してほしいからではないでしょうか。
そして LPガスタクシーもつくりますがFCEVタクシーも作りますのでよろしく。
ということだと 私は勝手に思っています。本年もよろしくお願いします。
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