日本のSS数はどこまで減るか
 
過去を学び、未来に影響を及ぼしそうな大要因を考える
あなたは、97/9月以来SS数企画の 番目のお客様です。2007/5/31 更新時 8500よりスタート
先月に資源エネルギー庁より、2006年度末(2007/3月末)のSS数が発表されました。今月はこの全国の
SS数と、それが今後5年10年でどうなっていくのか。色々考えてみたいと思います。 文責 垣見裕司

減少率は過去最高、絶対数でも過去二番目となる大幅減少

2007年3月末のSS数は 45792SSで、前年比1792箇所、率にして3.8%もの大幅減少です。
減少数では、自由化2年目セルフ解禁年の98年1819減の続く二番目、減少率としては、
今回が最大となりました。


項 目 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度 7年度 8年度 9年度
全国SS数 58,285 58,614 58,825 59,224 59,773 60,421 59,990 59,615 58,263
前年比増減 -126 +329 +211 +399 +509 +688 -431 -375 -1,352
10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度
全国SS数 56,444 55,153 53,704 52,592 51,294 50,067 48,672 47,584 45,792
前年比増減 -1,819 -1,291 -1,449 -1,112 -1,298 -1,227 -1,395 -1,088 -1,792
セルフSS数 191 420 617 1,353 2,523 3,423 4,103 4,957 6,001
前年比増減 106 229 197 736 1170 900 680 854 1,044

数の中には、可搬式、通称ポータブルと言われるSSが、含まれています。この数は昨年が
1213SS、今年は、1088SSで、マイナス125。従って、3月末の固定式数は、約44704SSと
推定出来ると思います。

 しかし現場にいる我々としては、実態はもう少し少ないのではないかと思います。例えば
運営者が採算割れ等で元売に返上したものの、その後の引き受け手が見つからず、限りなく
廃止に近い休止SSや、廃業というよりは「倒産」で、廃止届出すら、正規に出す余裕のない
ケースは、その廃止カウントが、かなり遅れます。これらを考慮すると、現在運営をしている
SSは、更に500か、最大1千箇所は少ない と言えるかもしれません。

元売系列SS数とその割合は、全体のSS数以上に減っている

今度は、上記表に元売が発表している自身の系列SS数を入れてみましょう。
ここで注意の必要があるのは、商社系や全農SSでも元売マークを上げているものがあり
それは、元売の方では系列SSとしてカウントしています。その一方、商社や全農等は、元売
マーク掲載に関わらずすべて自系列SSと発表していますから、単純に元売系列SS数と商社
や全農等が発表するSS数を、元売発表のSS数に加えると多くの重複が発生します。
従って下記表では、全体のSS数から元売発表の系列SS数を、全体から差し引いた数を
元売マークを上げていない、いわゆるプライベートブランド(PB)とさせて頂きました。

10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度
全国SS数 56,444 55,153 53,704 52,592 51,294 50,067 48,672 47,584 45,792
元売固定式 49,254 46,714 44,485 42,464 40,920 39,479 38,158 37,033 35,486
PBや全農 7,190 8,439 9,219 10,128 10,374 10,588 10,514 10,551 10,306
前年比 12.7 15.3 17.2 19.3 20.2 21.1 21.6 22.2 22.5

一目で分かるのは、元売系列SSの市場占有率は、確実に少なくなっているということです。
その一方、「順調」という表現は正しいかは別として、SS絶対数が大幅減少する中、その数を
伸ばして来たPBグループも、18年度は前年対比245箇所減少したことは、意味深いでしょう。
但し、PBを語る時、声を大にして申し上げたいのは、大昔は、元売と取引してもらえず、業者
間転売品を買っている人たちというマイナスイメージであった時も確かにありましたが、今では、
小規模業者と言えども、品確法を遵守し、立派に経営されている方が多数いらっしゃることは、
改めてご紹介しておきたいと思います。

増えたのはセルフSSの数でセルフ率は 14% しかし販売量比率はもっと多い!

冒頭でご紹介した表で、 非常に明確な特徴を示すのは、セルフ数の増加でしょう。
解禁初年度は、わずか85SSでスタートし、平成13年度までの増加は、予想の範囲でした。
そして14年度の前年比+1170SSをピークに15年度は+900SS、16年度は+680SSと対前年
増加数が、減少して来ましたので、いよいよセルフも収束かなと思っていましたが、17年度
の+854SS、更に18年度の+1044SSの増加は、正直私の想定の範囲を超えてしまいました。
従って日本におけるセルフSS率は、6001SS÷45,792SS = 13.1% まで増加しました。

ちょっと待った? 1SS平均販売量の算出方法

では、ここで1SS当りの月間平均販売量を計算してみましょう。
SS数がピークの平成6年度の、全国のガソリン総需要は 50,353千KLでしたから、1SSでは
   
50,353千KL ÷ 60421 ÷ 12ヶ月 = 69.4KL/月 となります。
同様に平成18年度のガソリン総需要は、60,484千KLなので、1SS当りの月間販売量は
   
60,484千KL ÷ 45792 ÷ 12ヶ月 = 105.5KL/月 となります。
従って1SSあたり販売量は、随分増販して効率がUPしたように見えます。
しかし現在のセルフSSは、「フルサービスSSの3倍販売している」と言われています。
仮にこの説が正しいとして、平成18年度のSS平均販売量を、フルとセルフに分けると
60,484千KL÷(45,792 + 6001 X 2倍)÷12ヶ月=84.3KL/月 フル
           84.3KL X 3倍       = 252.9KL/月 セルフ

この1SSあた月間84KL/という数字は、上記表の平成11年度の数字
57251千KL ÷ 55153 ÷ 12ヶ月 = 86.5 KL/月 に近いので、フルサービスSSに限って
言えば、平成11年度以降、増販していないと言っても良いのかもしれません。
ちなみに、末端販売価格から税金と原油輸入CIF価格を引いた業界総粗利は、
平成11年度が、弊社推定27円、平成18年度は20円以下ですから、SS業界がどれ程
苦しいかお分かり頂けると思います。

激減する「事業者数」に現れる業界の窮状

しかし業界の厳しさを表している数字は、何もSS数だけではありません。
下記の通り
事業者数の減少こそ、それを物語っているのかもしれません。

項 目 元年度 2年度 3年度 4年度 5年度 6年度 7年度 8年度 9年度
事業者 32,835 32,642 32,413 32,060 31,766 31,559 30,465 30,032 29,239
 新規 487 610 529 564 532 536 437 502 339
 撤退 950 803 758 917 826 743 1,531 935 1,132
増減数 -463 -193 -229 -353 -294 -207 -1,094 -433 -793
項 目 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度
事業者 28,427 27,794 27,157 26,475 25,807 25,204 24,521 23,923 22,952
 新規 330 288 265 304 260 253
 撤退 -1,142 -921 -887 -986 -858 -1224
増減数 -812 -633 -637 -682 -668 -603 -683 -598 -971
  調査は各年度末、撤退は、総登録事業者数と新規事業者数からの逆算で算出

 今年度の撤退は1224社と、業界の自由化元年前夜といわれた平成7年度の1500社

撤退に次ぐ大幅減少です。これは1社1SSの零細販売店の廃業に加え、合併や
広域
特約店への営業権譲渡や運営移管等が進んでいるのではないとか思います。

 また2006年の2月のSS跡地利用調査委員会の報告でも申し上げましたが、全国では、
約30%の減少率に留まっているものの、東京都に限ってみれば、昭和54年の2355社から
平成18年度末では1000件(推定)で、その減少率は58%、に達し、更に支部別では、
世田谷支部で、52年度の111社が、平成16年度末では23社と79%となっております。
これは、所謂米屋、酒屋のそれを大きく上回る深刻な問題なのではないでしょうか。
SS過疎問題同様、SS業界から中小業者がいなくなる?という問題も深刻化してくるでしょう。
海外でもSS数は大幅減少となっている
国 名 過去最大 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 ピーク比
西 暦 SS数/年 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 ピーク年
日 本 60,421 53,704 52,592 51,294 50,067 48,672 47,584 45,792 75.8%/1994
アメリカ 226,459 171,169 170,678 167,571 167,346 168,987 調査中 調査中 74.6%/1972
イギリス 37,129 13,043 12,201 11,425 10,535 10,351 調査中 調査中 27.8%/1970
フランス 46,000 16,230 15,600 14,950 14,530 13,823 調査中 調査中 30.1%/1973
ドイツ 46,859 16,324 16,068 15,971 15,770 15,428 調査中 調査中 32.9%/1968

この表をご覧になれば、SS数の減少は日本だけではないことがお分かり頂けるでしょう。
アメリカの減少率は日本と同じくらいですが、イギリス、フランス、ドイツの減少率は、驚きです。
スーパーマーケット等異業種のSS業界進出で混乱したフランス。外資の乱売で市場が混乱した
イギリス等、それぞれの国の業界知識を多少は存知あげていますが、本当の減少理由は、
そんな簡単な一言で表すことは出来ないと思います。少なくとも日本も、本当に覚悟しなければ
ならない時代に入ったと言えるでしょう。

日本のSSはどこまで減少するのか。

では日本のSSは一体何件まで減少するのでしょうか。当社HPが初めてこの話題への挑戦は
1997年の9月企画、それでも減らない日本のSS。そして翌年もNO2を書いています。
この時のコメントを見るとまだよちよち歩きでお恥ずかしい限りですが、NO1の方で、最大半分
まで減り、最少でも2割減ると幅を持たせて逃げていました。しかし2割とは、6万 X 80%=48千
なので、早くもこのレンジに入ってしまったと言えるでしょう。
 では今、改めてその予想を聞かれれば、年間の1000箇所ペースの減が、しばらく続き、5年後
丁度
4万。その後も多少は、変動するものの、10年かけ、すなわち15年後は、3万にまで
減ると思います。

 但しこれには大前提があります。自動車等輸送用燃料の大半がやはり、石油系であることです。
自動車業界も燃料電池車は一応発売開始はしたものの、コスト割れ等で、本気で売る気はなく
全車両の数%未満。また電気自動車も航続距離やバッテリーの問題で、やはり数%未満で、
石油系燃料を消費するハイブリッド車が、ほとんど占めているであろうことが前提です。

SS数を大幅減少させるような、外的要因

では、例えば2万SSとかになるシナリオというか、激減する場合は要因は、どんな事が考え
られるでしょうか。身近な例は、先月企画でご紹介したような、多額の投資問題です。
例えば、バイオガソリンの取り扱いをめぐって、全てのSSで地下タンクを二重殻にすることが
万一義務化されたとしましょう。その時の我々の心境は「法的猶予期間の限度一杯まで営業し
その後は撤退もやむを得ない」というのが、正直な気持ちであると思います。

 また今後の自動車の主流が、何になるかが、次の大きな要因でしょう。
例えば燃料電池車が本当に普及するのか。その水素を供給する原燃料は何んなのか。
私は、燃料電池車が普及するとしても、その方式は、ガソリン等からの水素を取り出す
「改質機搭載方式」ではなく、水素の直接供給方式だと思います。そうなれば、水素供給
ステーションは必要なので、その使命は、立地特性の良いSS業界が、それを担うことに
なるでしょう。
しかし個人的な全く根拠のない、そしてお叱りを頂きそうな予想としては、石油系燃料の
ハイブリッド車(ディーゼルハイブリッドを含む)時代が長く続いた後は、燃料電池車ではなく
私は、電気自動車の時代が来るのではないかと思っています。

マニアックな話しで恐縮ですが、、、

私ごとの、更に趣味の話で恐縮ですが、私は空物ラジコンをやっております。それも音が煩く
マニア以外の人には恐怖感を与えてしまうエンジン式ではなく、電動モーター式です。
飛行機は、かなり以前から電動式はあり、カタログ性能で10分。実質的には5-6分は飛べた
ように思います。そして、約20年前、電動ヘリコプターなる物が、登場しました。
滑空が出来る飛行機と違い、ヘリコプターは、エネルギーを使い続けながら、ホバーリングを
続けなくてはいけないので、機体、モーター、受信機、ジャイロ等の小型軽量化との戦いです。
1g単位で軽量化し、1秒単位でその飛行(滞空)時間を向上させるべく試行錯誤していました。

 しかし最大の課題は、何と言ってもバッテリーです。その当時は、ニッケル・カドミウムという
金属を使った通称ニッカドバッテリーですが、正に金属ですから、とにかく重いのです。
また最後まで放電をせず、中途半端に使い、また充電してしまうと、使われなかった部分が
徐々に固定化してしてしまい、バッテリーの容量が少なくなってしまうという、いわゆるメモリー
効果問題等にも悩まされておりました。
 しかし時代は進歩し、2年前に最新機種を買いました。その小型化、軽量化の技術革新は、
感動のレベルとなり、本物のヘリの構造や飛行システムとほぼ同じ原理にも関わらず、8畳
程度の室内で、10分程度も連続で、飛ばせるようになりました。

 そのバッテリーは、何だと思いますか。もはやニッカドではなく、ニッケル水素と答えられた方は
十分合格ですが、マニアの答えは、実は携帯電話の中にヒントがあります。
今の携帯電話のバッテリーは、そうリチウムイオンなのです。小型で軽量、メモリー効果も少なく
夢のような電池です。更に電動ヘリコプターのマニアの世界では、より大容量を取り出せる
リチウムポリマー電池等が発売されてます。これはあくまで私の感想ですが、従来のニッカドに
比べると、重さ1/3、体積1/2、容量2倍という感じです。下記の左写真をご覧下さい。
赤いのは、ニッカドバッテリーで 電圧7.2V 容量 600mAh そして重量 約130gです。
右上のアルミ色は、リチウムポリマーで、電圧7.4V 容量 1000mAh そして重量は約50gです。
 風船等を天井にも床に接することなく平衡を保つとき、正確な1gである一円玉をつけただけで
すーっと下がってしまいます。従ってこのヘリがホバーリングする時、この80gの差が、如何に
大きいのか、ご理解頂けると思います。

 しかし、リチウムイオンや更にこのマニアックなリチウムポリマーバッテリーの難点は、非常に
取り扱いが難しいということです。例えば、その能力以上に放電させてしまうと、電池寿命は、
即終わり。また過充電は、何と「発火」してしまうなど、正にマニアしか使えません。超大手の
優良企業でさえ、パソコンバッテリーの発火問題で大量回収を余儀なくされた事は、皆様の
記憶に新しいと思います。ある会で、大手のラジコンメーカーのトップにお会いした際、お話を
お伺いすることが出来たのですが、「まだまだ完全ではなく、最悪発火事故等が心配だ。
リチウムポリマーは、専用充電機とセットにして、その充填機でしか充電出来ないような
「ユニット式」で対応して行く」とおっしゃっていました。 ご要望によりヘリ動画の掲載を検討中。


バッテリーの技術が革新的に進歩すると、電気自動車が主流となる

このリチウムポリマー等、バッテリーの革命的な技術革新が進むと、業界人には怒られそう
ですが、私は燃料電池車ではなく、電気自動車の時代が来るのではないかと思います。
ガソリンそのものや水素を取り出す改質装置、水素で発電するスタック装置等の代わりに、
全部小型軽量高容量のリチウムイオンバッテリーを積めるので、航続距離もかなり伸びる
のではないかと思います。

 その電気の補給方法ですが、一般家庭の駐車場で、深夜電力を使い充電するシステムなら
原発の夜間ベース電力の需要対策にも良い訳で、ベストミックスだと思います。
 折しも経済産業省は、「CO2を排出しない電気自動車の普及について、製造コストの削減と
走行距離の延長を課題とし、現在は1台約1千万円の価格を2030年までに3百万円に引き下げ
1回の充電で走行可能な距離も、現在の約100kmから500kmとガソリン車並みに伸ばす。そして
「充電スタンド確保」のための制度整備も進める」 と発表しました。
 しかし家庭用の軽自動車等のニーズなら、充電スタンド等のインフラは、もはや不要でしょう。
ホテルでもレストランでも、デパートの駐車場でも、有料とはなるでしょうが、充電場所を選ばない
と思います。

では、自動車はすべて電気になってしまうのでしょうか。いやそんなことはありません。
モーターはトルクはあっても馬力は辛いですから、トラックや大型車等は、軽油を燃料とする
ディーゼルハイブリッドが最適と思います。このニーズにおいては、石油系燃料のニーズは、
長く続くでしょう。要するに一つの方法だけで、環境問題を全て解決しようとするのではなく、
それぞれシステムの適正やコストを最大限活用した「ベストミックス」が良いのだと思います。

2030年。SSは数はいくつになっているのでしょうか。それは、30年前に、2010年のLPレコード
ショップの数を予想するのに似ているのかもしれません。LPレコードは確かに一部の愛好家の
ものになったのかもしれませんが、レコードは、CDに変わり、また当時では考えなれなかった
レンタルという新しい業態も生まれました。
 従ってSSも従来型の石油系燃料の供給という定義ではなく、天然ガス、水素、そして電気等
広義のエネルギー供給ステーションとして考えるのがよいと思います。
 長文お読み頂きありがとうございました。  Ver3 2007/6/18 更新