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環境に優しい近未来自動車の主流は何になるのか HP開設11周年記念企画、その衝撃の思考実験結果とは |
燃料電池自動車時代は本当に来るのか当社HPでは、過去何度となく、燃料電池や燃料電池車についてご紹介させて頂きました。
2004/06月-LPG定置式燃料電池のモニター試験開始・写真報告
2003/10月-燃料電池車の実力はどこまで来たか NO3 2002/01月-同 NO2
2001/01月-燃料電池とは何か、21世紀のグローバルエネルギーを考える
2000/10月-エコカーの実力はどこまで来たか NO1
特に2003年10月企画は、トヨタの燃料電池車に乗せて頂いた感動もあって、4-5年後には、
すなわち当時から見れば今年あたりには、1000万円くらいのプロトタイプの燃料電池自動車が
発売されるのではないかと思っておりました。しかし、実際は皆様ご承知の通りです。
実際各自動車メーカーの開発費は、燃料電池よりは、例えばディーゼルエンジンとか、ディー
ゼルハイブリッド等の方が何倍も多いことをお伺いしました。では、燃料電池車の将来は、、?
水素は、電気と同じ2次エネルギー エネルギー密度も低く、取り扱いも難しい地球表面の7割は海。水は、H2Oだから水素は無尽蔵にある。石油は勿論、天然ガスや
日本近海の海底に沢山眠ると言われているメタンハイドレードにも水素は含まれているから
将来は、水素エネルギー社会が一番良い。しかしこれはまだ私の思い込みでした。
自然界に水素分子は、まず存在しません。地球誕生時には沢山あったそうですが、軽いので
宇宙空間に放出されてしまったそうです。自然界にないなら作れば良さそうですが、例えば
前述の水から取り出そうものなら、石油を燃やして電気を作り、電気分解すると、投入エネ
ルギーの約1/3の水素しか取れないそうです。
現在、水素を大量にローコストで作るとしたら、石油業界の製油所プラントが最適の様です。
これは灯台元暗し。しかし製油所で水素を作っても、水素はマイナス253度という極低温でしか
液化しないため、貯蔵や輸送が、極めてむずかしいとのことです。
またLPガスは、空気との混合率が2-9.5%の範囲でしか燃焼しないのに対し、水素は4-75%と
非常に広い燃焼範囲を持つので、それだけ危険と言えます。次表は、1L当りの密度と発熱量
ですが、水素を学べば学ぶ程、石油が如何に優れたエネルギーなのかが、良く分かります。
種類 ガソリン 軽油 天然ガス
200気圧LNG 水 素
200気圧液体水素
極低温エタノール メタノール 密度kg/L 0.75 0.84 0.16 0.45 0.018 0.070 0.789 0.793 発熱kcal/L 7,800 8,500 1,900 5,300 514 1,990 5,050 3,740
その他沢山ある燃料電池自動車が厳しい理由水素の貯蔵が難しければ、ガソリン等から改質して使えば良いではないか。確かに改質の
研究は進められ、装置もかなり進歩しました。定置式では、LPGに加え、脱硫灯油からの改質
にも成功し、プロトタイプですが、市販も始まっています。一般に原燃料を考える場合、例えば
車に搭載されるガソリンタンクの容量である60Lと仮定すると、その量から取れる水素の量は、
ガソリンからの改質がトップで約20kg。LPGで約16kg、メタノールで9kg、そして圧縮水素で1kg
ですから、原燃料として使うなら、やはりガソリンなのかもしれません。しかし現実は、改質機の
スペースや信頼性、負荷追随性等から総合判断して、高圧充填タンクでの直接搭載方式です。
下記表は、2000年1月当時にご紹介しましたが、7年経った今、それなりの技術革新はあった
ものの、根本を解決するには、至っていないようです。
最終発電システムであるセルスタックの信頼性は、かなり向上し、それは定置式燃料電池の
信頼性が、初期モデルより10倍くらい安定したという話を聞いています。ただ、負荷追随性を
考えると、セルでの発電量を細かく変えるよりは、バッテリーやキャパシタで調整するのがよい
のでしょう。しかし最終的に一番辛いのは、定置式燃料電池が、電気と熱(お湯)を利用し、発電
については35%程度に留まる効率を、熱の利用により総合で75-80%まで上げるところに長所が
あります。それでも定置式のハード価格を更に1/10まで下げないと、ガス給湯器や電気等の
ヒートポンプ機に対抗出来ない訳です。一方「自動車」の場合は、冬場で熱を若干暖房に使った
としても、走行のための電気エネルギーしか使わず、あとの熱は大気放出するしかなく、従って
定置式の半分しか使えないのが、根本的な最大の問題と言えるでしょう。
燃料の種類 積載方法 積載
安全走行
距離水素
抽出燃料
費用イン
フラ発電
効率CO2 その他克服すべき課題 最終
選択純 水 素 吸蔵合金 O △ 不要 X X ◎ なし 小型軽量化が最大の問題 ? 純 水 素 低温液体化 X O 不要 X X ◎ なし 極低温超高圧の安全性 ? 純 水 素 高圧充填 △ X 不要 X X ◎ なし 液化難しく容量不足 ? メタノール 従来タンク ○ O ○ △ △ O O 燃料の毒性とインフラ ? 天然ガス 高圧充填 △ △ △ O △ O O LPGとともに期待大? ? ガソリン類 従来タンク ◎ ○ △ O ◎ O O 脱硫他不純物除去が必要 ?
この10年で一番進歩したのは、バッテリー性能かもしれない。先月企画で、ニッカドバッテリーがリチウム水素になり、これからはリチウムイオン(ポリマー)だと
電動ヘリコプターというマニアックな世界からの感想をご報告させて頂きましたが、エネ庁の
検討会で発表されていた資料の中によいグラフがありましたので、ご紹介します。
「次世代自動車・燃料イニシアティブ」2007年1月24日に甘利経済産業大臣、 張日本自動車工業
会会長、渡石油連盟会長による三者懇談会を立ち上げ、本イニシアティブの具体化の検討。
担当 : 資源エネルギー庁 燃料政策企画室 公表日 : 平成19年5月28日(月)
上記表は、1Lの容積のバッテリーが、1975年は、68Wの電球を1時間しか点灯出来なかったが
今では100Wの電球を6.2個点灯出来るようになったことを物語っています。
従って仮にモーターが同じ性能でも、走行距離は、1.8X5.2=9倍に伸びたと言ってよいでしょう。
報告書の第1章の第1節で言い切っている事とは(前略)、中でも電気自動車や燃料電池自動車は、ガソリン車と比べて、二酸化炭素排出量が
約1/3から1/4 エネルギー効率が1/3と極めて優れた性能を持つ上に、(中略)石油依存度低減
にもつながる 究極の自動車である。このエネルギー効率も井戸元から最終利用まですべて
換算した所謂Well to Wheel での算出なので、異論は少ないでしょう。そしてこれはどこぞの大学
教授が発表したのではなく、張自動車工業会会長と渡石油連盟会長が同席の懇談会で発表
された内容だけに、完全にご納得されているかどうかは別として、非常に意味深いものでしょう。
この報告書では、過去2度、電気自動車が研究されたと紹介しています。
一度目は、1970年代前半、米国でマスキー法の導入きっかけに環境意識が高まった時。
二度目は、1990年に米国カリフォルニア州の所謂ゼロエミッション法が導入された時でした。
いずれの時も当時としては最高水準の電気自動車が、1970年は官手動、1990年は民手動で
製作されたものの、ガソリン車の圧倒的なクリーン化と燃費性能の向上で、コストと性能面で
劣った電気自動車が、結局日の目を見なかったことは、皆さんもご承知の通りです。
三度目の正直?、今度は本物になるか電気自動車しかし、電池性能がそれこそ9倍になった今を報告書は、「3度目の正直」!と表現しています。
少なくとも走る地域が限定されている用途の車なら電気自動車で、十分ではないでしょうか。
リチウムイオン電池や急速充電の高性能化、急速充電システムの開発が進んだことを背景に
富士重工や三菱自動車工業、日産自動車が、軽自動車タイプの電気自動車を2010年頃に
市場投入することを発表しています。開発コストが膨大にかかっているだろうハイブリッド車や
燃料電池自動車が、トヨタのホンダの事実上2社に限られたのに対し、電気自動車は、多くの
自動車メーカーが参入していることは、大変意味深い現象です。
実はメール頂いたある方によれば、自動車会社はエンジン製作が命と思っているのだそうです。
例えば BMWの社名の由来は、 バイエルンの (飛行機)エンジン製造会社ですし、F1でも、
シャシー等の空力性能も確かに重要ですが、エンジンサプライヤーの方が、より重く見られて
いるのではないでしょうか。
また別な有識者の方は、車両価格が極めて安いであろうタクシーのクラウンと一般のクラウン
の一番違うところはどこだと思いますか?というクイズを頂きました。「内装」と思いきや、そんな
のはせいぜい数十万円で、やはり一番違うのは、エンジンだそうです。要するに利益の源となる
付加価値は、エンジンというかトランスミッションも含めたパワーユニット系にあるのだそうです。
その意味では、トヨタは、ハイブリッド車ながら、モーターでも車が十分走ることを証明したことを
称して、「トヨタはパンドラの箱を開けてしまった」と表現した方もいました。
近距離走行なら、ガソリンは減らないプラグイン機能って何??今の第二世代のプリウスには、EV走行モードという走り方があります。これは深夜の住宅街等
とにかく静かに走ることを目的とした走行モードで、バッテリーがなくならない限り、モーターのみ
で走るという走り方です。では、満充電で何kmくらい走れるのか?という疑問が起きます。
カタログには書いてありませんが、残念ながらまだ数kmだそうです。
しかし、電池をそっくりリチウムポリマーに変えれば、走行距離は倍に伸びるでしょうし、容積
も小さくなるので、更にその分の容量を増やすとどうなるか。このような私の思考実験を、車が
「命」の国アメリカには、既にやってしまった会社があるそうです。
カリフォルニア州のあるベンチャー企業は、プリウスのニッケル水素バッテリーを全部取り除き
リチウムイオン電池に積み替えただけでなく、プラグイン機能まで搭載。この改造により、EV
モードの走行距離は、何と80kmまで伸び、最高時速も110kmになったそうです。
ここまで行くと、エンジンは万一のバッテリー切れのために積んでいるようなものです。
従って今のハイブリッド車の設計が、「エンジンがメインでモーターはアシスト」であるのに対し
次世代ハイブリッドは、モーターがメインで、エンジンはアシストで走る。そして一日100km以下
なら、もうガソリンは使わず自宅に帰って、車庫でコンセントに一晩繋いでおけば、翌日また
100km走れる。実際、トヨタの幹部もプラグインハイブリッド車の可能性に言及したそうなので、
ガソリンの減らないプラグインハイブリッド車が登場するのは、時間の問題でしょう。
更に効率を追求するとどうなるのかたまにしかエンジン走行をしないプラグインハイブリッドに乗ったとします。或いは、車が2台
あって、一台は軽自動車かビィッツやフィット等の小型車で買い物等の近距離専用だったら。
そしてガソリンスタンドだけでなく、ホテルやレストラン、デパートの駐車場やコインパーキング
でも充電出来るようになったら、、、。もう万が一のガス欠ならぬバッテリー切れの為に、重たい
金属製のエンジンを残そうと思うでしょうか。むしろエンジンやトランスミッション(CVT)等の
スペースにまで、効率化されたリチウムポリマー電池を積んで軽量化し、走行距離をますます
伸ばそうとするでしょう。第一モーターオンリーの方が安いことは間違いありません。
そうなると、最終世代の電気自動車は、正に電気オンリーで走るものと思います。
報告書では2030年となっていましたが、私はもっともっと早く、電気オンリー自動車が市販され
首都圏のセカンドカーのニーズとして最適な車になる気がします。現在それに最も近いのが
三菱自動車の「i MiEV」で一説によるとトヨタのプラグインハイブリッと化を本気にさせたそうです。
1回5時間のフル充電で、300kmも走るエリーカって何?、脅威は1km=1円のローコスト最後にスゴイ車をご紹介します。テレビでも放映されたのでご存知の方もいると思いますが、
慶応大学電気自動車研究室がプロジェクトを立ち上げて、それに多くの企業が後押しをして
いるスーパーエコカー「Eliica」プロジェクトです。版権上イラストでご紹介しますが、展覧会等に
行く機会があったら是非実物を撮影してご紹介したいと思います。ずばりエコカーというよりは、
モンスターカーです。あの元F1ドライバーの片山右京が、サーキットで試乗したそうですが、
加速はポルシェ911より早く、正にF1並。8つのタイヤの中に内臓されたモーターの総出力は、
なんと800馬力。一輪あたり100馬力のトンでもない出力です。
最高時速は370km、不便を我慢するエコカーではなく、もっと快適でエコロジーをというコンセプト
で作られた車だけあって、とんでもない性能を有しています。HPによれば、最初の200台は、
2007年のクリスマスに3000万円で発売されるとのことなので楽しみです。
さてこの車で驚くのは一回のフル充電で走れる300kmという航続距離ではありません。自宅の
駐車場等のコンセントから充電するプラグイン機能を搭載し、5時間のフル充電でも深夜電力を
利用すれば価格は、たったの300円。従って1kmあたり燃費は、わずか1円/kmとなります。
一般のカローラが10km/L走ったとして、140円/Lのガソリンなら 14円/kmなので、14分の1
と言えます。10・15モードの燃費までは出ていませんが、どちらにしても非常に安いようです。
逆に言えば、ガソリンには1Lあたり60円の税金がかけられていますので、電気自動車の燃料
である電気が無税なのは不公平。税収に悩む国は、その時はきっと揮発油税相当の電気
自動車道路走行税が新設されるのではないかと思うのは、私だけでしょうか。
以下に、エリーカの推定スペックを掲載します。一部弊社推定
全長 - 5100mm 全幅 - 1900mm 全高 - 1365mm,(1415mm) 重量 - 2400kg 定員 - 5人
電源 - リチウムイオン 容量 - 31kWhから55kWh 電圧 330V 一回の充電走行距離 - 300km
最大速度- 370km/h, 最大加速度 - 0.8G 0→400m加速時間 - 11.3sec
但し上記は、最速挑戦仕様と最加速挑戦仕様のベストデータ
以上は、皆様から寄せられた先月企画のご感想やご意見に、手元資料やネットで調べた事を
ベースに思考実験をして得られた一つの結論で、石油業界に取っては衝撃の結果となりました。
正しいかどうか、当たるかどうかは分かりません。いずれにしろガソリン数量がピークアウトした
今、ガソリンのみの収益に頼るSSビジネスは、そう長く続かないことだけは確かでしょう。
ガソリンと軽油に加え、水素や燃料電池で発電した電気を売る電気ステーション。そしてカーケア。
SS業界としてどうすればよいのか。私どもも、皆様と一緒に考えて行きたいと思います。
ご感想等はこちらからどうぞ。但し必ずお返事出来るとは限りませんので予めご了承下さい