LPG定置式燃料電池のモニター試験開始・写真報告
 弊社瑞穂LPガス供給センターの複合施設でモニター試験を開始しました

あなたは燃料電池関連企画の 番目(up時35600)のお客様です。 2004/6/9 19:00 NO4
6月8日火曜日、それは私どもにとって誠に記念すべき日となりました。
それはこのHPで何度もご紹介して来た燃料電池のモニター試験をスタートさせて戴くことが出来ました。
数多くの候補会社から当社をご選定戴いたことに改めて感謝申し上げると共に、東京都のLPガス供給
エリアにおいて初めてという意味も大きいのではないでしょうか。今月は、そのご報告をさせて戴きます。
尚、本HPの内容や写真の 無断転載は固くお断りします。業界新聞様の取材等のご要請は、新日本
石油さまとご相談の上対応させて頂きますので、予めご了承下さい。
2003/10月-燃料電池車の実力はどこまで来たか NO3
2002/01月-燃料電池車の実力はどこまで来たか NO2
2001/01月-燃料電池とは何か、21世紀のグローバルエネルギーを考える
2000/10月-エコカーの実力は NO1 も是非ご覧下さい。 文責 垣見 裕司 お問い合わせはこちらから

瑞穂LPガス供給センターの施設概要

まず燃料電池を設置した瑞穂LPガス供給センターをご紹介します。
開所は1975年。LPガスを50kg等の容器に充填する工場です。
当初の設備は、30tタンク3本、12連、10連の二基の回転充填機を
要した国内最大級のLPガス充填工場でした。
そして20年を経た 1996年に全面改装しました。
日本車輌の工場完成品としては、国内最大級の70t地下タンクX2基
(株)クボタさんと完成させた12連全自動充填機(ワンマン監視型)の第1号機と2号機です。
その充填能力は、通常操業時間内で月間3000t。これは、内陸の充填基地としては、恐らく
国内最大級の施設でしょう。

しかし業界以外の方にとって月間3000t と申し上げても、その規模がご想像戴けないでしょう。
仮に一般のLPガスご利用家庭の平均的な消費量を30kg(15m3)とすれば10万軒です。
東京ガスや大阪ガスとは比べものになりませんが、供給軒数1万軒という地方都市ガスは、
珍しくないので、小規模な地方都市ガス並みと言えます。従って、我々は私的民間企業では
ありますが、公共企業に準じる安定供給が我々の使命であると考え、万一の災害や故障等が
あっても必要最低限の操業が出来るよう万全を尽くしました。

その基本コンセプトが「ダブルシステム」です。すなわち、ローリーの受入設備設備を2系統
にしたのを始め、70tの地下タンクも二基、液中ポンプはそれぞれの地下タンク内に2台ずつ
計4台、ガスコンプレッサー2台、そして12連式の全自動回転充填機も2台設置しました。
更に万が一の大災害にも対応出来るよう、本来は地震停電時の散水用のLPガスエンジンを
常時使用出来るレベルにUPして、LPガスエンジンによる自家発電設備も備えました。

そして1997年に隣接地を購入、総敷地面積10600m2に拡張し、この地域の系列を超えた
LPガスの総合的な物流拠点としての条件をクリアーしてきました。
以下、航空写真風にてその全容をご紹介します。
(右下に見える容器は、新品もしくは容器再検査済みでLPガスは入っておりません)



新事務所棟には、大会議室(研修室)を

本年4月、この瑞穂LPガス供給センターに新たなる事務所棟を建築、この程完成しました。
弊社LPガス部とLPガスの直売子会社である多摩液化ガスが入室します。
そしてここには、中小企業の一部門としては極めて大きい50名収容の研修室を作りました。
その目的は、本HPでもご紹介している「社内研修」を始め、そして当センター開所以来、
恐らく延べ人数で1000名様を超えたであろうと思いますが、
「ご見学者の応接室」、
そしてお取引販売店様をお招きしての「各種研修会」用です。そしてこれから1年間は、
燃料電池の「見学会」という新たなニーズも発生しますので、この「研修室」は多いに活躍
してくれることと思います。

では、弊社LPガス部が使用していた旧事務所は、何に使用するのでしょうか。
実はこちらも全面改装を行い、弊社のLPガスを配送担っている「多摩荷役株式会社」の
本社が西東京市(旧田無市)から移転し、5月より営業を開始しました。
また川崎等LPガスの沿岸基地と我々内陸基地を結ぶ輸送は、すべてタンクローリーが担って
おりますが、この瑞穂には従来東村山(現在安楽亭に賃貸中)にあったタンクローリー基地
(13.5tのタンクトレーラー2台、7.5タンクローリー8台、ミニバルクローリー4台)
更にLPガス容器を末端お客様に配送する40台の3tトラックの配送基地でもあります。

そしてLPガスは容器での配送という宿命を負っておりますので、すべてのユーザー1軒1軒の
需要予測をし、その最適配送日を計算し、各配送車が持つハンディーターミナルとの入出力を
始め総合的な配送管理を行う「配送センター」、更に末端ユーザー様の保安点検業務を行う
「認定保安センター」そして小規模ながら夜間警備も兼ねた「社員寮施設」もあります。
以上から、この瑞穂の機能が、単なるLPガスの充填工場だけではなく、LPガスの物流や
保安に関するあらゆる機能を持ち合わせていることがお分かり戴けると思います。




 1kW級 LPG定置燃料電池システムの基本スペック

では本題の燃料電池システムに話を進めましょう。下記は
新日本石油より1年限定で提供されるシステムのスペックです。
大変貴重かつ高価なものなので、お借りしているというよりは
お預かりしているか、逆に言えば実験施設を提供する心境です。

1kW級 LPG定置式燃料電池システム仕様
 ◎ 燃料電池種類 固体高分子形(PEFC) 燃料 LPG
 ◎ 発電出力 1kW級
 ◎ 発電効率 33%(目標)
 ◎ 排熱回収効率 40%(目標)
 ◎ システム構造 パッケージ型(屋外仕様)
 ◎ 構成ユニット 燃料電池ユニット W900mm

大きい方に貯湯槽の他、電力を系統連系するための必要な機器等が入っております。
本来は屋外用なので、燃料電池を覆っている雨よけの囲いは必要はないのですが、
雨天時のメンテナンスのことを考え、今回は設置させて頂きました。



こだわった床暖房用循環回路

さて今回私どもが一番拘ったのは、床暖房です。要するにお湯だけ
でなく、その熱を使う実験をしてみたかったということです。
今までの燃料電池システムから、出力として電気とお湯が出ますが
熱を取り出すシステム回路まではなかったのではないでしょうか。
今回私どもは、独自に熱を取り出す循環回路を組み込まさせて頂き
ました。と申し上げても、循環回路をもつ2管式の汎用給湯器の
温度制御システム等を拝借し、床暖房用の温水を循環させる回路を
組み込んだだけですからあまり偉そうなことは言えません。
しかし、将来普及版が出る頃までには、追い炊き用の給湯器のガスバーナ使用量は、
大幅に少なくなることは間違いないでしょう。

ちなみに床暖房のイニシャルコストは、決して安価ではありませんでした。家庭用はかなり
安くなって来たのですが、重たい什器も置かなくてはいけないことと、設置面積がそれなりに
広いので、イニシャルコスト的には、とても自慢の「ベストミックス」とは行きませんでしたが、
LPG式燃料電池+床暖房の実用実験はまだされてないと思いますので、「将来のお客様の
笑顔」の為に当社がその実験費を寄付させて戴く所存です。

右上写真は、配管です。一番上の青→が水道水供給、二番目の赤←はお湯の出力。
三番目は、熱を利用するためのお湯の循環回路です。
この中には不凍液が入っているので通常の回路とは絶対混ざらないようになつています。

進む規制緩和。残る関門は電力会社との相対契約という高い壁

今回の実験で予想外だったのは、東京消防庁の対応です。
当社は、前例がないから、最も厳しい基準を求められるのではないか等
相当覚悟をしていたのですが、燃料電池を想定した法律が無いので
消防としては、特に禁止や制限も出来ないということなのでしょうか。
資料は、是非提出してほしいとの仰せで心配していた離隔距離の問題は
クリヤー出来ました。但し今回はメンテナンスも考え建物から4m離しました。

一方東京電力の方は、太陽光発電の系統連系工事がかなり先までに入っているので、
2ヶ月程待ってほしいと言われてしまいました。当初3月中の設置を予定していたのですが
このお陰で、東電検査は5/20となり、本稼動が今日までずれ込みました。
しかし検査そのものは、系統連系機の試験をするだけだったので、こちらも難なくパスしました。

また2004年4月より電気事業法が緩和となり、燃料電池システム停止時の窒素等不活性ガス
による水素の置換義務も緩和されました。でも「空気で置換」でよいという訳にはいきません。
空気内の「酸素」や「不純物」は、セル本体等の性能や耐久性の低下を招く恐れがあります。
そんな訳で、今回の私どもは、間に合いませんでしたが、数年後の普及機においては、皆様が
これを見ることはないでしょう。

その意味では、最後の砦は東京電力への売電、すなわち余剰電力の販売問題でしょう。
法的には、販売は可能ですが、相対の自由契約なので、どうしても買ってくれとお願いすると
購入価格23円/kWhのより遥かに安い、2から4円/kWhだそうです。ご存知の通り太陽光発電の
販売価格は、購入価格と同じなので、納得がいかないところですが、太陽光発電は、化石燃料
を全く使わず自然のエネルギーだからだそうです。
さて今回の燃料電池で残念なのは、東京電力との系統連系と契約の関係で、東電の停電時に
このシステムも止めなくてはならないのです。通常1kWクラスの燃料電池は電力会社の系統に
接続して使用しますが、この時には系統連系ガイドラインに則って 協議する必要があります。
この系統連系協議は少なからず電気に関する知識がなければ出来ませんし、かつ折衝には
最低一ヶ月近く を要するのが現状です。また、逆潮流については電力会社によってはまだまだ
認めないというのも現実であります。 災害に強いエネルギーを自負するLPガスとしては、とても
辛いところですがある意味では電力会社がそれだけ脅威に感じていることかもしれません。


運転開始の感想は

6月8日から稼動したのでなんとも言えませんが、今のところ問題なく動いています。
現在は出力750Wの定格運転ですが、商品機では、負荷追随するインバーター方式になる
予定です。起動や停止については、本システムは一度完全に止めてしまうと改質器等を
作動温度まで上昇させるのに多少立ち上げ時間がかかるので、基本的には24時間の
連続運転が良いようです。もっとも新日本石油の監視センターが、24時間ISDNの常時接続
で監視して戴いているので、夏場に向けて週末の完全停止(WSS)実験もしていけるでしょう。
使用した感想としては、それまでと全く変わらない生活なので「快適です」と申し上げるよりは
「気がつきません」とか「燃料電池発電をしていることが分かりません」という方が正確です。
あえて「燃料電池を使用している」という事を実感するには、少し技がいります。まず新事務の
すべての照明用のスイッチをすべてONにし、それ以外の電気を使用する機器をOFFにします。
その時、東京電力のメーターは、燃料電池の能力を超えた分が、少し回っている状態です。
それを確認しながら、部屋の電気を徐々に消して行くと、東電のメーターの動きが徐々に
遅くなり、最後には、ほんの少しだけ逆転してから止まります。今は無料ですが、これは
東京電力へ電気が流れている「逆潮流状態」であることを意味します。

6月8日の見学研修会は大盛況

6月8日午前に行った燃料電池引渡式にはお忙しい中、新日本石油新エネルギー本部の
松村取締役様と松尾FC1部長様が、ご本社から駆けつけて頂きました。
また午後からは弊社取引先や販売店の皆様をお招きしての研修会を開催しましたところ
50名収容可能なはずの研修室が一杯になるという盛況ぶりでした。まだ先と思っていた
燃料電池が、正にすぐそこに来ていることを実感されてのことですが、私どもが「熱い思い」
お伝えする前に、ご参加された皆様から「熱い思い」を頂いたのは、我々のほうでした。


 左写真は燃料電池の普及を誓う固い握手、右から松尾部長、松村取締役、垣見社長、私
 中央写真は、お世話になった新日本石油FC関係者の方々。右写真は大盛況の第4回FC研修会

見学研修会のご要望について

現在1kW級LPG定置式燃料電池システムの見学が出来る場所は、私が知る範囲では、
新日本石油の横浜製油所内にある実験住宅か、新日石ガスの社員寮等ごく一部です。
昨年から開始されたモニター機もその多くが、OO特約店専務宅等見学に適しません。
その点、私どもは1975年の開所の時も、そして1996年の全面改装の時も、クボタ殿と
試行錯誤して作りあげた全自動回転充填機の1号機だったこともあり、その後1年間、
クボタさんの東京ショールーム?として恐らく1000名様を超える見学者を受け入れました。
今回も新日本石油の了解が得られる範囲内ですが「横浜は遠いが瑞穂なら見に行きたい」
販売店様が「取引先の工務店に見せたい」等、環境対策や電力の安定供給とローコスト化
の切り札として「燃料電池による分散型発電を推進していこう」という方針に共感頂いた方は
大歓迎ですので是非お越し下さい。

弊社はメーカーではなくいち流通業者ですが、来るべき燃料電池時代のために、他社に
先駆けて燃料電池システムのモニターテストを行い、お客様の立場にたった、ベストミックス
エネルギーを提供できるよう、最大限の努力をしてゆく所存ですのでよろしくお願いします。
ご見学のお問い合わせは、こちらから必要事項を記入して送信下さい