燃料電池車&エコカーの実力はどこまで来たかNO2
モーターショー見学報告と今後10年ガソリン需要に及ぼす影響を考える

新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。
さて年始にあたり 2000年1月の燃料電池車&エコカーの実力は?の評判が大変よかったものですから、
今後10年、石油業界に及ぼすエコカーや省燃費車の影響について、冷静にそして長期的視野に立ち、
昨年秋の東京モーターショウ見学報告も含めて、再挑戦してみたいと思います。
今回の企画も専門外ですので、文中に誤りがありましたら是非ご指導下さい。
あなたはエコカー及び今月企画の 番目のお客様です。文責 垣見裕司 2001/12/25.NO1

燃料電池車の実力はどこまで来たか

米国カリフォルニア州では、世界の自動車メーカーや燃料電池開発会社が集結して、燃料電池自動車の共同開発と実証試験が2000年11月からスタートしています。当初はダイムラークライスラーのNecar4-5が一歩リードと思われましたが、ホンダが投入したFCX-V3(仕様、4人乗、電池はカナダのバラード社製で出力62kw、燃料は250気圧の高圧水素で容量100L、最高時速130km/h、航続距離180km)も好調のようです。
また日本でも2001年2月、日石三菱が協力して横浜で公道走行試験が行われたのに続き、(この時まともに走ったのはNecar5だけとのことでした)トヨタも、昨年7月FCHV4で公道走行許可を5台取得し、ダイムラークライスラーマツダ、トヨタ、そしてホンダが出揃い、いよいよ燃料電池車開発も第三コーナーに差し掛かったという感じです。
さて前回企画ではダイムラーCのNECARをまとめましたので今回は、
独自で燃料電池スタックを開発しているトヨタに敬意を表し、トヨタの開発過程をまとめました。


発表年 名称 車体 M出力 燃料 E出力 走行距離 最高時速 乗員
2001年 FCHV5 4.74x1.82x1.69 超脱硫クリーンガソリン
2001年 FCHV4 4.74x1.82x1.69 80kw 高圧水素2.6kg250MPa 90kw 300km 150km/h 5名
1997年 FCHV3 4.69x1.83x1.72 80kw 水素吸蔵合金 90kw 400km 120km/h 2名
1996年 FCHV2 3.98x1.70x1.64 50kw メタノール ----- 500km ---- 5名
1994年 FCHV1 3.98x1.70x1.64 --kw 高圧水素 ----- ----- ---- -名

燃料電池車の最大の課題は、コストとインフラ?

しかし燃料電池車の最後の課題はなんといってもそのコストでしょう。
「商品化時点での価格は1000万円は切りたい」というトヨタ社長のお言葉にも現れるように、まだ商業ベースに達していないというか、ガソリン車との競争というレベルではないようです。
従って商品化の時期に対する各社のコメントも、トヨタの2003年半ば、ホンダの2003年目標、日産の2005年以降、そして外国勢もダイムラーCとフォードが2004年、GMが世界初の量産化を目指すという微妙な表現に留まっています。
従って5年前に実用化レベルのハイブリットカーを発表、ブリウスを発売し世界を驚かせたトヨタでも、燃料電池車に関しては、まだまだ先になるようです。

一方燃料供給インフラについては技術面とは違った意味でその問題はかなり深いようです。各社とも究極には純水素の直接供給が望ましいと考えておられるようですが、当然インフラが整いませんし、メタノールもその毒性や腐食性、安全性を考えると今一歩です。従って現在では、既存ガソリンスタンドというインフラをほぼそのまま使える「超脱硫クリーンガソリン」に落ち着きそうな感じがします。その意味ではトヨタのFCHV5が脱硫クリーンガソリンの改質方式で検討して頂いていることはSS業界の一員として大変嬉しく思っております。
以上のことから、燃料電池車の普及というか、少なくとも既存のガソリン需要に影響を及ぼし始めるのは、少なくとも2010年以降であると思っています。

脅威の50km/Lの燃費も、もはや可能

また昨年秋の東京モーターショーで出品された車の中に、すばらしい
超低燃費車がありました。
ダイハツのUFEは軽自動車ながら1Lのガソリンでなんと55km(10.15モード)
も走るとのことです。これは軽自動車ではむずかしいとされた、660ccの
ガソリン直噴エンジンを採用、モーターと併用し連続可変バルブタイミング
機構(DVVT)や可変吸気機構、高性能CTV(無断変速機)、その他の
最新技術とアイドルストップシステムなどとあいまって、軽自動車トップクラスのパワー、低燃費、そして超低排ガスレベルを実現したようです。
一方普通小型車ではトヨタのES3(イーエスキュービック)です。こちらも1.4Lの直噴ディーゼルエンジンとモーター、高性能CVT、減速時のエネルギーを回収する回生ブレーキ、そして 700Kgという軽量ボディ空力Cd値0.23という性能を組み合わせた結果、小型車サイズにもかかわらず、47km/L(10.15モード)を実現したそうです。
これらはいずれも参考出品ではありますが、商品化への問題は、技術的というよりは、コストや消費者ニーズの課題のようなので、これらの最新技術は今後商品化し発売される車に、必ずや生かされることでしょう。

各社から次々と本格投入されるのハイブリットカー

しかしSS業界とし本当に覚悟しておかなければならないのは、今後続々
投入されるハイブリット車だと思います。 従来のブリウスは、メーカーに
とってコンセプトカーというか広告宣伝的な意味合いがあり、 一方ユーザー
にとっても価格よりは、環境性等のアピールという意味で、それを所有し
乗車しているということ そのものに意義があったようなです。
しかし昨年から発売されたミニバンタイプで人気のあるトヨタ-エスティマや、
高級乗用車の代名詞でもあるトヨタ-クラウンにマイルドハイブリットカーが設定されました。
またホンダも参考出品していたシビックハイブリットを12/14から発売開始したようです。燃費はプリウスを上回る29.5km/L、価格はブリウスより9万円安いとのことですから、そこそこ売れるでしょう。こうした傾向は、もはやハイブリットカーが一部の人だけの珍しい車ではなく、個人法人を問わず、一般的存在になりつつあることの表れではないでしょうか。そして各社とも200X年には全車種にエコカーをラインナップするとか、200X年には全新車販売台数の?0%をエコカーにする等の発表を続々行っています。

脅威のエスティマハイブリット 試乗車体験報告

エスティマハイブリットは、エンジンに加えフロントとリヤモーターと
高性能 CVTを組み合わせた次世代型のハイブリットシステム
(THS-C)で世界初の電気式4WDシステムE-Fourを実現しています。
発進から停止まで下記の6種類の走行パターンがありますが、
それぞれの走行状況に応じ、
最も効率の良い走り方を選ぶことで、
超低燃費・超低排出ガスを実現しています。
詳しくはトヨタHPへ

 1.停車時はアイドルストップ。
 2.発進は、前後モーターでスタート。
 3.低速走行はフロントモーターのみ。
 4.通常走行は、エンジン使用しフロントモーターで充電。
 5.スリップ感知で後輪モータを駆動し、電動式4WDに早変わり。
 6.減速時はブレーキ回生で、フロント及びリアの両モーターからバッテリーに充電する。

また最大出力やトルクのエンジン車との比較において、エンジン部とフロントモーターとリアモーターの合計値を単純加算してよいものかは別として、発進や通常速度での加速に必要なトルクは、ハイブリット車が40kg.mを超える性能を内在していることは大きな驚きです。
実際東京トヨタさんで試乗させて頂きましたが低中速域からフル加速は満足の行くものでした。
また私のような鉄腕アトム&スーパージャッター大好き世代には嬉しいメーターパネルや、
そしてリアルタイムで走行中の燃費が出るモニターなど、遊び心も誠に満足させてくれます。

   宇宙をイメージさせるフロントパネルと、リアルタイム表示の燃費メーター
     

これらの技術の集大成の結果として 10.15モードでの燃費はなんと18km/Lにもなりました。車両重量が1850kg近くある車としては正に驚異の燃費でそれこそSS業界にとっては脅威です。

また忘れてはいけないのが、ハイブリットエスティマには、100Vの通常交流電源にして15Aの電源を使用出来る機能があります。アウトドア派にとって行った先でテレビや電気炊飯器等が必要かどうかは分かりませんが、何かのときに大変重宝することは確かでしょう。
例えば弊社石油ガス部でも小規模なガス配管工事等を行っていますが、コンクリートへの穴あけ等は、やはりAC100ボルトの振動ドリル等が必要なので、電源のない工事現場などでは大変重宝するでしょう。従って電気、ガス、水道工事店のみならず、工務店系の商用ニーズも、今後はかなり出てくるように思います。

関係者によれば、トヨタが当初予想した個人ユーザーも然ることながら、低公害車をアピールしたい官公庁からの注文が1割もあるとともに、広報車、公害測定車、緊急車、救急車等に使えないかというという問い合わせも多数あるとこのことです。

競争力あるエスティマハイブリットの価格設定

エスティマガソリン車には、2.4L、2WD、グレートJ、本体価格230万円の安価タイプがありますが、ハイブリット車が高性能の電気式4WD機能を持ち、内装グレードも二番目のタイプのXに近いことから、4WDのXタイプ8人乗で比較してみました。

エスティマ 本体
価格
形式  最大出力 最大トルク 燃費
ガス
自動車
税軽減
取得税
5→2.3%
ガソリン車 274万円 4WD、2.4L-X 118kw 22.5kg.m/rpm 10.2km/L GL 約13% 123,000
ガソリン車 298万円 4WD、3.0L-X 162kw 31.0kg.m/rpm 8.6km/L GL 約13% 133,800
ハイブリット 335万円 2.4L+FM+RM 96+13+18=127? 19.4+11.2+11=41.6? 18.0km/L UL 50% 84,400
(排ガスグリーン化税制、H12年度基準値に対して25%低減G-LEV、50%低減E-LEV、75%低減U-LEVに分類
 Gレベルは13%、Eは25%、Uは75%の自動車税が減額となる)

車両価格は、2.4L車と比べれば、61万円も差はありますが、3L車との比較では僅か37万円。
取得税が軽減されるといってもご覧の通り約5万円程度。自動車税も年間、3L車で51,000円。
2.4L車で45,000円ですから、37%の差として年2万円弱、2年間でも4万円程度です。
しかし37万円のイニシャルコストの差は28万円に近づきました。

そして次に、低燃費によるランニングコスト低減効果を考えます。
平均的なファミリー族が仮に年間6000Km走るとして、3L車の実用燃費が6km/Lと仮定すると
年間1000L、5年間で5kLとなり100円/Lとすれば50万円です。
もしこの燃費が倍の性能、すなわち半分の費用になるとすれば25万円ですむことになります。
従って月間500km程度しか走らないファミリー層でも、4WDの3L車を買いたいと思う方で、
5年間で3万kmの走行される場合においては、十分元が取れるかもしれません。
但し5年後や10万Km時に予想される電池交換費用は考慮にいれておりません。

さて新聞によれば、月間製造能力は1000台とのことですが、12月に注文しても、2002年の5月連休前に納車が間に合うかどうか、とのディーラーのコメントでしたから、生産能力に対して実需は数倍あることは間違いないでしょう。恐らくトヨタさんとしては嬉しい誤算でしょう。



クラウンに搭載されたマイルドハイブリットとは何か

トヨタでは現在三種類のハイブリットシステムシステムを提供しています。
第一はプリウスのTHS、TOYOTA Hybrid Systemの略ですが、エンジンとモーターが一体となったパワーユニットを前輪上部に搭載している前輪駆動車でスタンダードな存在です。
第二は前述のエスティマでTHS-Cと称し、エンジンにフロントとリヤの二つのモーター、高性能CVTも含めて電子式4WDも加えた最強のハイブリットシステムといえるでしょう。
第三は昨年ラインナップされたTHS-Mで、マイルドハイブリッドシステムと称しています。
ジェネレーター(発電機)と初動アシスト用モーターを一体化させ搭載しています。これにより、停車中はアイドリングをストップし、スタート直後はこのモーターで走りその後の通常走行はエンジンに切り替え、通常時とブレーキ時はそれを利用して36Vのバッテリーに充電しています。こちらは東京トヨペット様で試乗させて頂きましたが、ブレーキから足を離した途端のスムースなエンジンスタートにはただ驚くばかりです。そして初動時のモーターアシストを体感したかったのですが、アクセルを踏み始める時は、既にエンジンがかかっているので、こちらは実感することは出来ませんでした。

クラウン
ロイヤルS
本体
価格
形式  最大出力 最大トルク 燃費
10.15モード

ガス
取得税
軽減後
ガソリン車 382万円 3000D-4 162kw 30.0kg.m/rpm 11.4km/L GL 156,900
ハイブリット 397万円 3000D-4+1GM 147kw 30.0kg.m/rpm 13.0km/L UL 100,000

価格差は15万円程ありますが、自家用の税金は57000円安いので差は10万円以下。燃費差は1.6km/Lですが、ハイブリット車アイドリングストップ機能は、渋滞走行が多いの場合は、より大きな性能差を発揮するのではないかと思います。仮に実用燃費がガソリン車は60%の6.8km ハイブリット車は70%の9.1km、年間走行を12000kmとすると、ガソリン単価100円で176,500円と131,900円になり、その差は44,600円。従って税金後のイニシヤルコスト差は、2年程で回収出来ることになります。但し渋滞のない場所を走る場合や高速走行が多い場合は、車体重量がハイブリット車は80Kg近く重いそうなので、燃費は変わらないか、場合によっては落ちることもあるとのことなので、ご自分の走行パターンを考慮して購入する必要はありそうです。

究極を極めつつある、普通ガソリンエンジン車

またモーターショー出品車で既に市販されている普通ガソリン車としては、
ホンダのFIT(フィット)が今風の売れそうな車かなと思いました。
それまでのトヨタの売れ筋、ヴィッツと比較して見ましょう。
フィットの特徴はまずその燃費の良さで、23km/Lを誇ります。しかし
ヴィッツより全長は20cmも長く、小型車ながらもミニバン風のデザインや、
サーフボードや自転車なども詰める応用性のある室内空間は第二の魅力です。これは従来燃料タンクは後部座席の下という常識を覆し、前席下に動かすことで後部座席の多彩なシート配列や移動が可能となったことです。
実は私は今ヴィッツにも乗っておりその性能には大変満足していましたが、唯一の不満はその荷室空間でした。14インチの子供自転車が1台やっと入りますが、それでおしまいなのが残念に思っておりました。その点フィットは、燃費もよく価格も安く、そして室内空間も広いとあれば、私が申し上げるまでもなく、フィットはヒット間違いなしというところでしょう。
一方新聞によれば日産自動車もブルーバードシルフィーに搭載されたゼロエミッションエンジンをスポーツカーの代名詞でもあるスカイラインに3.5L車で新設定するとともに、国内乗用車販売台数に占める超-低排出ガス車の割合を2003年3月末には80%に高める計画があるとのことでした。またヴィッツも1000ccで新型の超-低公害車を発表し巻き返しに入りましたので、ハイブリット車でなくても環境性能と省燃費性能は今後益々向上されていくでしょう。

項 目 売筋価格 全長 全幅 全高 排気量  最大出力 最大トルク 燃費
10.15モード
フィット 114万円 3,830 1,675 1,525 1339cc 63kw、86hp 12.1kg.m/rpm 23km/L
ヴィッツ 138万円 3,635 1,660 1,500 1298cc 65kw、88hp 12.5kg.m/rpm 18km/L

2001年11月自動車新車登録から分かること

さてここで日本自動車販売協会連合会発表の新車登録台数を分析してみます。
2001年1-12月の累計で、乗用車は3016千台で、前年比+1.3%の伸びを示めしています。
しかしその内訳は普通車が741千台で-3.7%なのに対し小型車は2275千台で3.0%も伸びで、
単なる経費削減に加えて、環境や燃費性能までも十分考慮しての傾向だと思います。
一方乗用車系の車名別販売ランキングも見てみます。1-11月累計ではトヨタカローラが独走の一位で、ヴィッツ、そして3位に本田のツーリングワゴン系のストリームと続きます。しかし、10月単月を見ると、1位カローラ18934台、2位フィット16,203台と好調フィットがカローラに肉薄し、3位のヴィッツ10,174台を抜き、11月では下記の通りカローラまで抜き、堂々の1位となりました。
そしてあのエスティマの3位ですし、5位まではいずれも低燃費車ですから、普通車から小型車への移行傾向との省燃費効果でガソリン需要の伸びは急速に低下して来るでしょう。
また4輪車の全保有台数は、92年から96年の各年末で、前年比約102.8%、97年101.7%、98-00年は101.3%程度と、昨今極めて低くなっていますから、保有台数の伸びによるガソリン需要増も、これからはほとんど期待出来なくなるでしょう。
2001年1〜11月
順位 車名 メーカー 台数
1 カローラ ト ヨ タ 221,713
2 ヴィッツ ト ヨ タ 130,856
3 ストリーム 本   田 112,633
4 エスティマ ト ヨ タ 110,393
5 ステップワゴン 本   田 102,086
6 フィット 本   田 86,843
7 クラウン ト ヨ タ 78,104
8 キューブ 日   産 70,059
9 マークU ト ヨ タ 65,454
10 ファンカーゴ ト ヨ タ 64,992
11 オデッセイ 本   田 64,249
12 bB ト ヨ タ 61,365
13 レガシィ 富士重工 54,897
14 デミオ マ ツ ダ 53,717
15 イプサム ト ヨ タ 53,677
16 マーチ 日   産 52,982
?17 サニー 日   産 ?47,827
?18 セレナワゴン 日   産 ?47,469
?19 MPV マ ツ ダ ?33,391
11月
順位 車 名 メーカー 台 数
1 フィット 本   田 19,772
2 カローラ ト ヨ タ 19,127
3 エスティマ ト ヨ タ 10,285
4 ヴィッツ ト ヨ タ 9,183
5 ストリーム 本  田 7,217
6 ステップワゴン 本  田 6,762
7 クラウン ト ヨ タ 6,404
7 ウィングロード 日  産 6,404
9 ファンカーゴ ト ヨ タ 5,968
10 イプサム ト ヨ タ 5,677
11 キューブ 日  産 5,424
12 マークU ト ヨ タ 4,838
13 マーチ 日   産 4,651
14 ステージア 日   産 4,472
15 レガシィ 富士重工 4,315
16 bB ト ヨ タ 4,260
17 オデッセイ 本  田 3,856
18 MPV マ ツ ダ 3,651
19 CR−V 本  田 3,604
20 デミオ マ ツ ダ 3,568

ガソリン需要のピークはもう来ているのかもしれない

では肝心のガソリン需要は一体どうなっているのでしょうか。
バブル崩壊後10年。下記の通り重油等を含む燃料油合計が前年比100%割れでも、ガソリンだけは102-103%前後伸びてきました。しかし12年度は101.6%と明らかに鈍化しています。

平成 年度 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年予想
ガソリン前年比 103.1 102.2 102.3 104.4 102.6 102.7 102.5 102.6 102.5 101.6 101.8
燃料油前年比 102.1 102.4 99.6 105.4 101.2 101.9 98.1 97.8 100.2 100.9 100.6
2001年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 4-9 10 11月 11ヶ月計
ガソリン前年比 104.1 98.6 101.5 105.0 101.3 102.1 102.7 97.5 96.1 100.7 103.5 104.3 101.5

2001年の月別では上記の通り前年割れが発生し初めました。もちろん個別には、値上げ、曜日、猛暑等と、96.1-105%まで幅が大きくなっていますが、平成13年度上期である4-9月が100.7%と12年度の伸びより更に1%低くなっている事実は、深刻に受け止めた方がよいと思います。
理由としては景気低迷によるコスト削減が主要因でしょうが、低燃費車や小型車への乗り換えによる需要低減も、相当量あるのではないかと思います。では一昨年企画でもやりましたが、改めてシュミレーションをしてみます。
条件1、平均使用年数(新車登録から完全廃車まで)を10年とすると毎年10%ずつ入れ替わる。
条件2、その10年使用後の車と、新車の実用燃費差を仮に40%とする。
ちなみに私はH5年式のカタログ値7.1km/L(10.15モード)の車にのっておりますが、もし今回のMハイブリットクラウン(13km/L)なり、エスティマ(18km/L)に乗り換えたら使用量は半分になるでしょうし、現状車も7年の使用でカタログ値より性能は落ちているでしょうから、40%というのはかなり堅い数字だと思います。すると10%x40%=4%の需要は間違いなく、車両入替と燃費改善効果でガソリン需要は減っていく事になります。
資源エネルギー庁作成の石油供給計画では、平成17年度まで101.7%前後の伸びと見ているようですが、個人的には、今後1両年で間違いなくガソリン需要はピークを打ち、それ以降は徐々に下降し、そして普通のガソリンエンジンが、ハイブリット車等のエコカーにかわり、U-LEVの超低燃費車が、新販売台数の相当割合を占めるようになるであろう数年後以降は、既存ガソリンは徐々に下落を始めることでしょう。

今こそSS業界がすべきことは

新年早々SSには厳しい話となりましたが12月企画でも申し上げたように、ガソリンの販売やその利益を期待出来なくなる時代は間違いなく来るのです。それは、元売が悪い、商社が悪いといっても、自己責任の原則において今から自分で対策をたてておかなくてはなりません。では、SSはどうすればよいのでしょうか。よく「一体誰に食わせてもらっているのか」という表現があります。ワンマン経営者なら「俺が食わせてやっている」のでしょうが、答えは勿論「お客様」です。しかしSS業界は長年元売や仕入先ばかりを見て、肝心なお客様を見ていなかったような気がします。その自己反省も含め、お客様がSSに何を求め何を期待しているのかを考える前に、お客様が本音ではSSをどう見ているのか、一番厳しい見方で自問自答してみました。

 1.出来れば行きたくないところ。ガソリンが無くなったから仕方なく行く。
 2.だから行っても早く帰りたいし、出来れば車からも降りたくない。
 3.給油だけ手早くして欲しいのに、SS側はあれこれ買わせたがるので、ちょっといやだ。
 4.手持ちがないので本当は10Lでいいのにに「満タンでよろしいですね」は脅迫に聞こえる。
 5.それがいやで、本当は自分で給油したくないのに、セルフで給油している。
 6.勝手にボンネットを開けられるのはいやだ。俺の愛車を勝手に触らないでほしい。
 7.勝手に窓ガラスを拭かないでほしい。汚いタオルだとかえって汚れてしまう。
 8.勝手に人の車に乗らないでほしい。動かすなら一言断って綺麗な服で乗ってほしい。
 9.「洗車だけでも大歓迎」と書いてあるのに、全て計量機に誘導されてしまう。
10.SSは汚い。油臭い。トイレは正に便所で、化粧室にはほど遠い。その他多数。

これらは誇張したもので、魅力あるSSも多々ありますが、読者の皆様も思い浮かぶことがあることでしょう。ですから今こそご自分のSSがお客様を見つめ対話するとともに、地域の皆様から何を求められているのか、そして地域社会の一員としてどのような社会的役割や貢献、更には奉仕が出来るのかを今一度考えてみては如何でしょう。そしてもう隣のSSと比べるのではなく、サービスやスパークルを近くのコンビニや外食産業等サービス業と比較し、本当にSSにしか出来ないニーズとは何かを考えていく。以前よりHPでも申し上げていますが、私は生き残るSSが3万件あれば、3万通りの生き方があると思います。仮にガソリン需要が半分になっても、車が無くなる訳ではないので、カーケアビジネスは残ります。でも車検は規制緩和されたら需要は減りますし、整備もハイブリット車となるとSSではなかなか手が出せなくなるでしょう。でも弊社で成功しているLPGタクシーのお客様が、深夜に「洗車とご休憩」の目的でご来店頂いたり、併設店舗への買物のついでに「灯油と洗車」のという注文でご来店頂く事は、元売マニュアルにはない、ひとつの例のような気がしますし、特別企画でご提案している あずかロッカーサービス もコンビニには出来ないこれからのSSに求められるひとつのサービスだと思いますが、皆さんは如何お考えでしょうか。新年早々厳しい話ですが、自己反省も含まれているということでお許し頂ければと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。