21世紀のグローバルエネルギーを考える
燃料電池とは何か、いつ頃普及か、ガソリンエンジンの巻き返しは
謹賀新年。あなたは1月及び 燃料電池企画 番目のお客様です。
さて21世紀のエネルギーは何か、と聞かれれば、水素、それを燃料電池システムにより
供給される電気とお湯と答えたいと思います。 そしてその水素供給燃料が何になるのかが
、目下の最大の関心事です。また燃料電池というと自動車を連想される方が多いのですが、
それはメジャーな自動車業界発表のニュースが大きく取り上げられているだけで、現実的には
定置式で電気とともに お湯を利用出来る家庭用や業務用の方が3-5年程早いのではないかと
思います。 という訳で21世紀の始めは燃料電池を考えてみます。文責 垣見裕司 12/27NO2

燃料電池とは何か、その根本原理は水の電気分解

燃料電池は、水の電気分解と逆の原理により水素と酸素を反応させ
電気と水を作りだします。水素と酸素の反応から直接電気を得る為
従来のエンジン発電機の20-30%に比較し、40%という発電効率です。
右上図は懐かしい理科の実験の水の電気分解イメージ図ですが、
この電極を平らにして水素や酸素が通る溝をいれ、ビーカーの電解液に
相当する電解質をはさみ込み、セパレーターで包んだものがセルです。
そしてそのセルを何十にも何百にも重ねたものをセルスタックと言います。

燃料電池にはどんな種類があるのか。その特徴は?

燃料電池の長所は、発電効率が高く、純水素を供給するなら
水しか出さない超低公害、そして低騒音という事です。
種類別の特徴は以下の通りですが、共通の特徴として
作動温度が低ければ装置は小さく出来る。
そして立上げ(作動時間)も早くなるが、その分効率は落ちる。
高温作動の場合は、装置は大きくなり、連続運転向きである
といえます。
共通の欠点としては、まだまだ高コスト、耐久性や信頼性が低い事でしょう。
燃料種類 固体高分子型
PEFC
リン酸型
PAFC
固体電解質型
SOFC
溶解炭酸塩型
MCFC
アルカリ型
AFC
電解質の種類 イオン交換膜 リン酸 ジルコニア 炭酸カリウム 水酸化カリウム
作動温度 常温−90度 200度 900-1000度 650-700度 100度
発電効率 40-45% 40-45% 50-60% 45-60% 60%
特徴 小型、立上げ早い 中型実用化 大型用将来 高効率試験段階 試験段階
問題点 温度水分管理 長寿命化 耐熱材料 耐熱材料 純水素利用

どんな用途があるのか。

自動車は昨年企画でお話しましたので今年は定置式について考えてみます。
一言で言えば24時間、電気と熱エネルギーとしてのお湯を使うところです。
例えば病院やホテル、温水プールを伴うスポーツ施設、低騒音の特徴から
郊外や住宅地の中のニーズにも対応出来ると思います。その意味では
24時間営業でお湯をだっぷり使い、近隣騒音には気を配らなければならない
その手のL系ホテルには、最も喜んで頂けるでしょう。
また燃料電池が非常に安定した直流電源であるという特徴を生かして、
精密機器の製造工場や重要な計算センターの安定化電源や非常用電源
などの代替としても有効だと思います。一方水素供給源となるものが廃棄されて
いたり、格安で入手出来る場合も非常に有効です。
1.家畜糞尿から出るメタンガスを利用して水素を得るケース
2.ビール工場や食品工場等から出る有機性排水から出るメタンガスを利用
3.半導体洗浄に使用されたメタノール廃液を改質してから水素を得るケース

などの具体的な例は特に有効で既に実用レベルで運転されているものもあります。

目から鱗が落ちるFC自動販売機(右写真東芝製)

大型でなくても、飲料用自動販売機の様なすばらしい試作例もあります。
お湯でコーヒー等を暖めると共に、電気でコンプレッサーを回しジュース
を冷やす。そしてイベント会場や電気の来ていないところでもLPGで
大丈夫という点は、正に目から鱗が落ちるような例だと思います。
従って24時間稼動でなくても、お湯の用途が少なくても、環境対策を
重視の企業様には、工業用や業務用の電力として、イメージアップ
戦略の一環としてもご利用頂けるのではないかと信じております。

期待される家庭小型用

上記に実用事例を色々申し上げてきましたが、やはり
エネルギー革命とまで言われるには、やはり中小規模
集合住宅や一般家庭に普及し始めてこそ、燃料電池が
本当に認知されたと言えるのではないでしょうか。
さて右図は一般家庭で最も電気消費量が多いといわれる
8月平日の150平方メートルの時刻別消費パターンと
一般的な太陽光発電の時間パターンです。個人的感想は
1.昼が以外に低い。平日は外出が多い為。
2.家族が帰宅したあとの後の夜間冷房需要が多い。
3.太陽光発電と家庭用需給は合っていない。
4.時間帯平均で見ると一般電力が1kw未満、冷房を含めても2kW未満である。

上記の通りですが、電子レンジやドライヤー等、1kWぐらい使用する機器が思い浮かび
ましたが、時間帯で平均してしまうと意外に低かったのには正直驚きました。
従ってベース電力を得意とする燃料電池にとって必要な容量はせいぜい1kwでこれは
現在開発されているPEFC型の燃料電池能力の範囲であることはうれしいことです。

キーワードはベストミックス

上記の時間帯別電気需要に加え「お湯需要」を考える場合
朝昼夜の食事時間の前後と夜の入浴時間帯への集中は
容易に想像出来きますので「電気を主に給湯を従」に考え
瞬時の給湯能力不足分は貯湯槽や追い炊きシステムで
補う方法が有効とだと考えられます。またイニシャルコスト
の問題もありますが、電気の方も電子レンジやドライヤー
の短時間の高需要にはコンデンサーやバッテリーの設置
が有効でしょう。
ちなみに私は大学で経営工学でシュミレーションを専攻しておりました。そして線形モデル等では、答えが1つ=点ではなく、線やある範囲の面積でことがよくありますが、これを優しく言えば「ベストミックス」でしょう。それぞれの長所を取り入れて最適な使用バランスにおいて需要を担う。更に視点を広げれば、1家庭内だけで収支を合わせるのではなく、地域の総合需要も考慮して、例えば太陽光発電は売電し、昼の工場の需要を満たす等複合的に考えていけば、原子力発電所の設置難問題も解決していけるのではないでしょうか。
その意味では現在の電気供給は、ほとんどが大型発電所からの送電供給システムですが、送電ロスが多いことや発電時の熱の二次利用が、難しいことを考えれば、燃料電池のような分散型電源の発想を多くとりいれ、大規模発電所と分散型電源のベストミックスも今後は検討すべきでしょう。
ちなみにLPガス業界の燃料電池の第一人者である日石ガスの大森栄治先生によれば、一般家庭においては、0.75kwのLPガス燃料電池、2−4kwの太陽光発電、貯湯槽は300−400Lが最適バランスであると力説されておられます。
私ごとですが、昨年建てたマイホームの、最も居住時間の長い居間と食堂には、電気エアコンとガス(給湯式)床暖房、そしてガスファンヒーターをミックスした暖房システムにして、快適さと低ランニングコストを両立したつもりです。

実用段階はいつなのか。固定式燃料電池は2005年?

ではこの夢の燃料電池の市場への本格投入はいつ頃なのでしょうか。
上記にあげた例から言えば中規模業務用は既に始まっていますし、家庭用についてもそう遅くはなさそうです。三洋電機は、昨年12月に開発中の家庭用燃料電池1kwの大きさを従来の半分にしたサイズ(高さ97cm幅90cm奥行き42cm 現行給湯器よりは2回り大きい)の中に、都市ガスのメタンと水蒸気を反応させて水素を取り出す改質装置と燃料電池本体を組み込みました。他に貯湯槽や制御器などが必要ですが、一戸建ての出窓下に置くには十分のサイズになりました。
今後は、製造コストを50万円台に抑え、現在2−3千時間の耐久性を4万時間へ向上し、2003年には市場投入をしたいと発表しています。
現在20号クラス給湯器が20数万円ですが、同等以上の給湯能力を持ち、発電能力も1KWクラスの燃料電池が50万円ならば、私は十分に普及すると思いますし、2005−2007年には我が家でも実使用を開始して見たいと思います。他に参入されている、東芝、松下、富士電機他各社様のご検討ともに、LP業界として今後の技術革新を多いに期待したいと思います。

遅れる自動車用燃料電池の実普及。解決すべきインフラ問題

では自動車業界の方はどうでしょうか。ダイムラークライスラー始め各社2003年から2005年の市場投入を目指すと発表していますが、コストや採算まで考えると本当の意味で市場に認知されるのは、かなり先のような気がします。
まず自動車の方は、耐久性、容量、重量、コスト等の技術的な問題を始め、供給燃料を何にするのか、そしてそのインフラをどう整備するのか、自動車業界、石油業界、そして世界的な標準も含め、一業界では解決の出来ない根本問題が多数山積しています。
もちろん石油業界としては超脱硫ガソリンや灯油が選択されることを期待していますが、メタンやプロパン、DME(ジメチルエーテル)などに比べて簡単に書ける分子式でないため改質がむずかしいことは、正直に申し上げておかなければなりません。
一方インフラ面では既存SSは圧倒的に有利であることは周知の事実ですが、日本の車5000万台に改質器を積むよりは、既存5万SSの仮に2割の1万SSに改質器を設置した方が、水素供給システムにするなら、地球的には良さそうです。
 その場合は車に水素を積載することになる訳ですが、水素吸蔵合金ならまだしも、高圧タンクや液化水素タンクの冷却には、水素自らの気化熱を利用する?、そうなると半年ぶりに車にのったら半年間の積載水素の冷却エネルギーに水素を全部使ってしまった、などという笑い話も解決しなくてはならないでしょう。
 そして定置式の例と比較すると分かる通り、自動車の場合は発生する熱やお湯の二次利用が車内暖房等留まる為、総合的な燃料変換効率が劇的には上がらないこと、莫大な開発費用とあいまって、本当に差し迫った必要があるのか、という疑問をもち始めるとその本格的市場投入は、少しずつ遅くなっていくのではないかと思います。

日産の快挙、通常ガソリンエンジンの巻き返し

ところで皆さんはこの程発売開始となった、日産ブルーバード
シルフィをご存知でしょうか。この車の母体となった2000年型
日産セントラは、世界で最も厳しい米国カリフォルニア州の
排出ガス基準ゼロエミッションをガソリンエンジンで初めてクリヤーした、最もクリーンな排気のガソリン車といってよいでしょう。このカリフォルニア州では2003年以降、自動車の総販売台数の1割をこのゼロエミッションカーにしなくてはならないという大変厳しい法律があります。
ではそのゼロエミッションカーの認定を得ることが如何に難しいかご説明します。そもそも燃料蒸気には環境に悪影響を及ぼす可能性のある成分が含まれており、駐車中でも燃料系統から定常的に漏洩しています。数年前まではこれを0にすることは極めて困難な技術だと思われていましたが、この車は燃料系統から燃料蒸気の発生を防止に成功しました。
またスモッグの主原因とされている地表上の有害オゾンの除去に役立つ技術も採用されています。これはラジエターにエンゲルハルド社(Engelhard Corporation)のPremAirをコーティングし、空気中のオゾンがラジエターを通過すると、オゾン分子が無害な酸素に変換されるのです。従ってこの車が走った後の空気は、車の前方にある空気よりきれい?と言える程です。下記表の通り、昨年ご紹介したハイブリッドカーと比べても、燃費以外の点て排ガス値をいずれも下回っていることにも現われています。


車名(一部推定) HC CO NOx 10.15m燃費
ブルーバードシルフィ1.8L2WD 0.01 0.33 0.01 16.0km/L
ホンダインサイト1.0L 0.02 0.67 0.02 32-35km/L
トヨタブリウス1.5L 0.03 0.40 0.04 28-30km/L

これで少なくとも環境の点だけでみれば燃料電池の必要性は相対的に低くなったとも言えるかもしれません。この快挙で日産は昨年11月カリフォルニア州知事 環境・経済リーダーシップ大賞を自動車メーカーとして初めて受賞しましたが、私はこの快挙をもっとアピールしてもよいのではないかと思います。

お薦めはLPガスバルク供給燃料電池(右写真は東芝製PC25C)

さて21世紀のエネルギーは何でしょうか。少なくとも2次エネルギーとして電気が一番便利であることは、変わりがないと思います。しかし電気は貯めておくことが出来ません。勿論バッテリーなるものはありますが、コンピューターの非常用電源だけでも数百万円しますから、病院1棟1週間分などということは、バッテリーでは不可能です。そこで重要な施設においては、自家発電設備が必要になる訳ですが、都市ガスの導管供給の場合は地震や災害等でその導管がダウンしたらそこでアウトです。
そこで私は仮に都市ガス供給エリアであっても、重要施設においてはLPガスバルクタンク式の燃料電池を強くお勧めしたいと思います。阪神淡路大震災で最も早く復旧したLPガスの有用性は実証済みですし、燃料電池からは純水もとれますから、本当の非常用としては最適のシステムで大使などにもよいと思います。
 PC25Cの主な性能、出力200KW、発電効率40%、熱回収40%、総合効率80%
 熱は170度蒸気か60度のお湯で供給、純水は1200L/日、LPG消費量1t/日。

電気と都市ガスとLPガスが共存する日

さて電力とガスが共存していてもだれも不思議に思いません。しかし都市ガスエリア内で東京ガスとLPガス供給者としての垣見油化が共納していると皆様やっぱり驚かれます。しかし21世紀はそうした既成概念や過去の常識は、もはやこだわらなくてよいのではないでしょうか。更に供給エリアで別れていて競合しないはずだつた都市ガス同士も、大阪ガスが大手LPガス販売商社に資本参加することにより、都市ガスvsLPガスという競争ながら東京ガスvs大阪ガスという図式が起こらないとは言えなくなりました。
その意味では大阪ガスは大変立派な会社です。そして電力vsガスを上場時価総額というの点から見ると、東京電力10:1東京ガスで話になりませんが、関西電力と大阪ガスは6:4で唯一対等に物が言い安い力関係ですから、売電等の標準規定交渉を是非頑張って頂ければと思う次第です。

21世紀のグローバルエネルギー会社を目指して

さて弊社も昨年10月に創業130年を迎えました。頭髪油、ともし火油、食料油からスタートして、戦前からガソリン、昭和30年代にLPガス、昭和40年代に石油化学(合成樹脂)、昭和50年代に計算センター(OA化推進)、昭和60年代に不動産、そして平成にはIT革命と変化する環境に挑戦し続けて参りました。確かに創業者からそしてお客様から頂いた歴史と伝統そして信用は大変ありがたいことです。しかしそれに甘えず、過去の既存概念に捕らわれず、21世紀もガソリンでもなくLPガスでも灯油でもなく真のグローバルエネルギーを供給出来る会社として、皆様のお役にたって行きたいと考えています。まずは皆様「燃料電池」と聞いてたら是非、垣見油化とLPガスを思い出して下さい。そして本気でお考えなら是非ご連絡下さい。どうぞよろしくお願いします。

尚、今回企画に際し、日石ガス販売部の大森栄治先生には大変お世話になりました。読者の皆様にご報告申し上げるとともに改めて感謝致します。ありがとうございました。