近未来自動車と近未来エネルギー
 将来の電力不足は、燃料電池車と水素スタンドが解消する

水素、近未来自動車、震災関連で 番目です
7月1日現在の東京電力の発電能力は、同社の発表によれば 5100万kWh。
6月28日は4880万kWhで94%に達しましたが、僅か2日でこんなに増えたのをどう解釈
すれば、良いのかはやや迷います。しかし静岡県の浜岡原発の全面停止や各地の
原発の定期点検後再稼働が進まない中、今年を夏を節電で、今年の冬は増設した
LNG発電機等で乗り切ったとしても、来年の夏が本当の勝負ではないかと思います。
そんな中で石油業界に出来ることは何か。今月は、現状の電力状況と今後の対策、
そして5年後から10年後には、実現可能なウルトラC案をご紹介したいと思います。
 2011年7月1日
初掲載 2日Ver2更新 メインページはこちら 文責 垣見裕司

不足分1000万kwhをもし石油火力で補うとした時の石油需要計算
実は6月企画をご覧頂いたある業界通の方からDMをもらいました。

質問1  現在の日本の電力会社に石油火力の能力がそれだけあるかは
別としてコスト無視で1000万kWhを軽油なり重油なりで発電した場合の
総使用量は何万kl/月になるのですか
回答1  前提としてその質問者から頂いた「1kWの発電に約0.25L重油等
 が必要」という数値を使うことにしました。
1kW= 860kcal を発電するのに A重油(9300kcal/L)を使うのだから
9300kcal x 0.25l = 2325kcal  燃やして 電気1kWを作る計算なので
860kcal/2325kcal = 36.9% の 熱電変換効率だということになります。
ちなみに最新式のLNG式コンバインド
サイクルという発電システムは
ガスタービン発電機と二次熱エネ
ルギーで蒸気を発生させて発電して
いるので、熱電変換効率 50% を
超えているそうです。
37%という数字は、その電力会社の
石油火力の平均数値なのでしょう。

質問2 100万kWを1時間発電、250KL必要になる計算でよいのですか
回答2 10000kW = 1万kW /h で 0.25L X10000 倍=2500L=2.5KL/h
その100倍の100万kW /h なら 2.5X100=250 kL/hでいいと思います。
また石油火力は負荷追随型なので、ピーク対策で1日8時間使用すると
250KL X 8時間 = 2000kl/日、 月30日なら x30日で  60000kl=6万kl/月
ちなみに中越地震の原発停止http://www.kakimi.co.jp/2k7080.htm
を解説したページに「月間70万KLの増産要請があった」とありますので
1000万kW/hを石油火力で補うなら60万kl/月の重油等で計算あいそうです。
ただ2007年当時と違うのは、一般の大企業のIPPや大型工場の自家発電
がそれなりの数量あること。古い石油火力は、相当数廃止されていること。
緊急で作られている小・中規模の発電機の燃料の多くが、LNG等である
現実を考えると、大山鳴動しても電力用C重油は対して増えないのでは
ないかというの見方も出来ると思います。
中部電力浜岡原発停止の間接的影響は大きい
現在日本の原発は54基ある内、定期点検等も含めて34基が停止中です。
東海、東南海地震等を総合的に勘案すると、浜岡原発の停止は大英断で
やむを得なかったのではないかと思います。その反面、菅政権は、
「浜岡は廃止するもその他は、存続で行こう」と線引きしたのでしょうか。
私も新規の原発は当面見合わせるものの、現在定期点検中の築20年
程度の比較的新しい原発で、津波対策や電源喪失対策が出来たところは、
再開してもよいのではないかと思います。
その一方、現在稼働中の原発も法律により13か月に一度、完全停止して
定期点検を受けなければなれません。こちらは刻々と停止時期か来るので
正に時間との闘いです。
 今年の夏は何とか節電で、冬は灯油ストーブ等で乗り切ったとしても
本当の勝負は、来年の夏のような気がします
もし来年の夏、日本のすべて原発が止まっていたら2009年度の電源構成比
からして、今年倍の30%以上の節電を余儀なくされるでしょう。

一般家庭は、被災地や非難されている方々のご苦労を思い、ひと夏我慢
するのも、国家の非常事態なので高齢者や弱者を除けばよいと思いますが
日本の産業の競争力が著しく低下し、結果的に工場の海外移転等、日本が
空洞化してしまうのは本末転倒で、雇用も減り日本の為にならないと思います。

地元の皆様のに説明し、納得が得られるかどうかが鍵ですが、その最初の
試金石が、九州電力の玄海原発の2号機と3号機の再稼働です。
6月29日の海江田経済産業大臣の地元訪問で、佐賀県知事も態度を軟化、
また地元玄海町の町長も再稼働に前向きのようですが、隣接する唐津市は
まだ難色を示しているようです。その違いの理由はわかりませんが、今や
世界的に有名となった南相馬市長の「南相馬市は一切の補助金をもらって
いません」等の発言を思い出してしまうのは私だけでしょうか。

しかし原発反対の自治体からは「安全というならお台場に原発を作れ」と
言われてしまうと、反論のしようがありません。今回の浜岡停止の理由も
風の方向等で東京が影響を受けるからという話もあるようです。
また今回、原発で被害を受け、ご自宅に住めなくなった方々の補償等が
あれほどまでに遅く不誠実な状況を見ると、原発のある地元住民の方に
「政府を信じて下さい」というだけではその説得も難しいように思います。
東京電力7月1日プレス発表 この夏の最大供給能力NO4 
東電は、3月25日以降4回目の今年の夏の最大供給能力を発表しました。
この内、揚水発電は650万kW分見込んでいるそうです。下記図東電発表

以下、過去3回に亘る最大供給電力の積み増し過程の推移です
ちなみに初回発表時の3/24の能力は3650(内揚水200万)kWhです
前回の5月13日発表との差異は以下の通り
 (1) 震災停止・定期点検等からの復帰【7月+220万kW】
     広野火力1,2,4号機の復旧工程の前倒しを織り込み
 (2) 自家発余剰の購入増 等【+40万kW】
 (3) 電力融通の減【▲100万kW】   以下は初回発表からの推移です。
石油業界として注目すべきは、すでに5月13日に発表された
「長期停止中の横須賀火力以外の全火力の復帰」という表現です。
これで今後新たな石油火力新設もしくは横須賀の復帰発表がない限り
電力用重油の需要増はない、ということでよいでしょう。

(この非常事態にすら復帰が出来ない?間に合わない横須賀火力の意味は不明)   
発表 7月末 8月末   増量内訳(前回発表との差異)
3/25
以下
東電
プレス
リンク
4650
(公表無)
カッコ
内は
揚水
発電
です
1震災による停止からの復旧 【760万kW】
  鹿島火力1〜6号機、常陸那珂火力1号機他
2長期計画停止火力の運転再開 【90万kW】
  横須賀火力3,4号機 1・2号GT
3定期点検からの復帰 【370万kW】
  品川火力1号系列第1軸、横浜火力7号系列第2軸など
4ガスタービン等の設置 【40万kW】
5その他▲260万kW既設火力の大気温上昇による出力減
4/15
リンク
5200
(400)
5070
(400)
1ガスタービン等の設置7月+20万kW(計60万kW)、8月+
 80万kW(計120万kW)千葉火力、袖ヶ浦火力敷地内等
2震災停止・定期点検からの復帰【110万kW】
 鹿島共同火力1,3,4号機、常磐共同火力8,9号機
3その他 【20万kW(7月)、▲170万kW(8月)】
 7月末から8月末への供給力減少(190万kW)は、
 柏崎刈羽1号機7号機の定検停止
5/13
リンク
5520
(650)
5620
(650)
1ガスタービン等の設置 【7月+20万kW(計80万kW)
 8月+30万kW(計150万kW)】
2震災停止・定期点検からの復帰
 【7月+60万kW、8月+280万kW】
 長期計画停止中の横須賀火力5〜8号機(各35万kW)
 を除いた当社全火力発電所の復帰
3その他▲10万kW】自家発余剰の購入増、応援融通の減
 デイリーの最大供給電力と最大需要の推移 出所 東京電力 3月4月5月6月
水素時代は5年早く来る
定期点検後の原発が全く稼働出来ない場合の対策は、私にはありません。
太陽光も決してコストパフォーマンスは良くありません。今最も必要なのは
夏場や冬場のピーク対策ですから、太陽光や風力はそれなりには有効でも
原発の代替となるものではありません。よく言われる話は、原発1基分の
太陽光の面積は、山手線内の全敷地という話ですから納得です。

その一方より現実的な、新規の原発建設は諦めるも、定期点検後の原発は
再稼働し、例えば30年を経過した原発を順次廃止していく等のソフトラン
ディング型の脱原発ならは、私にも良いアイデアがあり、それはSS業界に
とっても実に夢のある話なので勇気をもってご紹介したいと思います。

本HPの昨年7月でご紹介した通り、燃料電池自動車(以下FCV)は、2015年
から発売開始予定ですが、そのFCVが、新規の原発を建設出来ない為の
不足分の電力を「FCV+水素スタンド」で救えるのではないかという話です。

FCVの発電能力は、現在の定置式家庭用燃料電池の100倍の100kW/h
もあるのです。 この最大出力での連続運転を冷却風が望めない静止状態で
続けるのは高熱となってしまい無理ですが、出力20%の20kW/h程度なら
効率も良く十分可能だそうです。要するにFCVが分散発電の主役になる
可能性が確実にあると思うのです。
FCVが搭載する水素5kgの実力は
FCVは、重さにして僅か5kgの水素を高圧(700MP)タンクに搭載しています。
一回の充填での走行可能距離は約5百kmであることは知られていますが、
今回は発電機なので、この水素5kgで何kWの発電が出来ると思いますか。
例えば、電気自動車のi-MiEVは16kW、日産リーフは24kWのバッテリーを
搭載していますが、それよりどのくらい多い発電が出来ると思いますか。

実は160kWもあるのです。 平均的な家庭は1kW/hですから160時間。
一日16時間なら丸10日。電力が不足する13時から17時の4時間だけなら
40日も持つ計算となります。

心配なのは、ランニングコストですが、本HPの2010年7月でも解説した通り
水素は1千円/kgで販売可能ですから、5kg=5千円で160kW発電した
とすると 単価は5000円÷160kW =33円/kW。
これは、一般の電力会社の24円より高いものの、太陽光発電の買取り
単価の48円より安い、すなわち太陽光発電より安い(注 太陽光は
48円で買い取ってもらったとしてもその投資回収に10年かかりますで
その発電コストは10年で割りかえしても48円以上と私は試算しています)
という非常に魅力的な数字です。

更にFCVの価格も魅力です。某自動車会社は、
2015年の発売時の価格を明言していませんが、
新聞では、中型車で500万円という話が出ています。
同車格の普通車の価格が仮に300万円とすれば
+200万円で20kW/hの発電機を持てるのです。

少なくとも現在の蓄電システムが10kWで約300万円
することを思うと今でも十分採算に合う話です。
2020年以降は、毎月原発1基が出来る計算になる
2015年の発売開始から5年後の2020年。この年のトヨタホンダ日産の
FCVの新車販売台数が、仮に月間5万台とすれば、出力20%としても100万kW。
すなわち原発1基分の分散発電機が都市部に毎月配置されていくのです。
その水素供給を担うのは、やはりSSしか考えられません。
製油所は既存設備でもFCV5百万台分の製造能力をもっていますし、都市部
のSSの近くには、都市ガスの導管も来ていますからから、製油所から運ぶ
オフサイト方式でも、SSで灯油や都市ガスから改質するオンサイト方式も
両方可能です。
 それに電気自動車は家庭で充電出来ても、水素を家庭で充填するのは、
法的にまず無理で、早くても2040年以降でしょう。よって少なくもと20年間は
SSが水素供給の独断場となるのです。
 ITではプロかもしれないソフトバンクの孫さんが、自然エネルギー構想を
提案していますが、東京電力が元気のない今こそ、エネルギーのプロである
我々石油業界が、こういう夢のある提言をしていくべきと思いますが皆さん
如何でしょう。
全てのハイブリッド車に100Vコンセントの設置を
話は変わりまして、私は2007年、アルファードというトヨタの7人の自家用車を
買いました。その時に最後まで迷ったのはハイブリッド車にするかどうかです。
それは燃費ではありません。ハイブリッド車についていた100Vコンセントの
容量が半端でなく大きかったかからです。その容量は何と15A(1500W)。
正に避難所の発電機としては誠に十分な能力だったのです。結果的には、
ガソリン車にも100V 100Wのコンセントがついていたし、自宅用の万一の
バックUP電源は、SSででる廃バッテリーを複数個連結し、最大800Wの
DC-ACインバーターを購入することで備えることにしましたので、ガソリン車
にしましたが、ハイブリッド車の1500Wは、本当に魅力でした。


こんな経験から私はすべてのハイブリッド車に、高出力の100V電源が必ず
ついているものと思っていましたが、会社で購入したレクサスハイブリッドの
100ひVコンセントの容量を見てびっくり。パソコンレベルの100W(1A)程度の
能力しかなったのです。

もちろん私は、ハイブリッド車を発電機として使おうと思っているわけでは
ありません。あくまで万一の避難所とか、今後あるかもしれない計画停電時等の
短時間対応ですが、ハイブット車を生産する全ての自動車会社には、非常用
としての能力一杯の交流AC100Vコンセントの設置を願いする次第です。

以下当時のカタログから推測する参考値です。
タイプは、ニッケル水素。個数は30個、直列、 6.5Ah(3時間率容量)とありました。
1セルの電圧が1.2V で6セル直列接続で1モジュール 7.2Vとして、これが
30モジュールが直列接続なら 216Vです。(180本のセルが直列で接続です)
216V×6.5Ah=1404Wh。上限80%とすれば1120Wなので、10A使うと
1.1時間しか持たずに、エンジン始動の必要が出てくるでしょう。
FCVと違い、エンジンが回ると排気ガスが出ますし、効率は燃料電池の80%
対して、発電だけならおそらく10%以下でしょう。
あくまでも非常時&自己責任で
さて最後に現実の話をしておきます。
自動車で発電された電気を自動車内で使う分には、バッテリー上がりさえ注意
すれば全く問題ありませんが、自動車のコンセントから、オスオスのプラグを
個人的に作って家庭につなぐというのは、絶対やめて下さい。
弊社も東京都のLPG地区の家庭用燃料電池試験設置第一号として実験した
立場から申し上げると、個人が発電した電気を東京電力から供給される電気
とともに使ったり、まして売電したりというのは、非常に高いハードルがあります。
法律や制度を別にしても、技術的な話では、交流100Vの周波数を合わせ
なければなりません。50hZ 60hZを合わせるという意味ではなく、一秒間に電圧が
50回(関東の場合)振動しているですが、その波形を東京電力から供給されて
いる電力の波形にぴったり合わせる必要があるのです。
 これを「系統連携」と呼びますが、太陽光発電や売電がメジャーになってからは
めずらしくありませんが、太陽光発電なら200V等の直流電力を、パワーコンディ
ショナーという機械で、東京電力から供給される波形に合わせた交流にして
使っているのです。
停電時なら大丈夫だろうと思ったらむしろ危険です。どうしてもという方は
メインブレーカーを落とし、家の電気回路を東京電力から切り離し、単独にして
からなら、大丈夫だとは思いますが、私もやったことはありません。

「水素スタンドビジネスモデル検討委員会」今年も委員拝命しました
今年も某自動車会社の関連調査研究会社から、上記委員会の委員を拝命
しました。7月から毎月1回くらいのペースで開催されると思います。
公の委員会ではないので、その結論をどこまで公開出来るか分かりませんが
昨年並みには、お知らせ出来るよう委員会でお願いして来たいと思います。
被災地(大船渡 陸前高田)支援のご報告とご厚情のお願い
4月18-19日、 5月16日の支援物資の宅配に続き、6月13-14日も支援物資と
最大の目玉=自家用車一台寄付してきました。この報告は東北被災地支援の
個人ページ
を別途作成しました。是非ご覧下さい