2012年石油業界重大ニュース
ガソリン6割減、新東燃誕生、製油所再編、商社&フリート 今年も色々ありました
あなたは12月企画の 番目のお客様です。  2012/11/30 掲載時 4800スタート
今年も業界は激動の1年。これを振り返る10大ニュースをアラカルト的に解説します。
その順番ですが、業界にとっての重大度というよりは、私にとっての衝撃度や皆様に
是非お伝えしたいという要素の方が強いかもしれませんので、自己責任でご判断下さい。
今年も1年ありがとうございました。そして来年もよろしくお願いします。 文責 垣見裕司

1.ガソリン6割減の衝撃
 エネ庁の主催した「総合資源エネルギー調査会、基本問題委員会」での2030年の
ガソリン需要予測は、現状比6割減の2100万KLという衝撃的な数字でした。
この6割減は、衝撃的でしたが、その減少理由を以下の3つ上げています。
A 高齢化や経済成長停滞 B 燃費改善や次世代自動車 C 交通流対策
このCは、公共交通の利用促進、モーダルシフト(輸送や交通手段の転換)、カーシェアリング
等を指すそうですが、私は、道路渋滞を最小限に抑えるインテリジェントネットワーク信号
システムが今後普及すると、渋滞の解消や平均速度の向上で燃費は更に良くなると思います。
 本来ならご当局は、自らが管轄する業界の衰退など認めたくないはずですから、民間の
調査機関ではなく、エネ庁の委員会が、この数字を発表したことは、非常に意義深く、その
英断を高く評価したいと思います。これに対し元売の反応は、
「10年後もエネルギーにおける石油の依存度は高くガソリンもそこまで減らないので大丈夫」
との従来の主張を繰り返していますが、私は元売に、月間100KLでもやっていけるビジネス
モデルを構築し、元売販社SSで、それが出来ることを証明してほしいと思います。
  ちなみに私のガソリン需要予測も悲観的で「10年で半減もありうる」です。「必ず半減する
とまでは言わないが、半減してもやってける経営体質に、転換してほしいが真意です。

2.EM撤退、新東燃誕生 関連記事 2月企画後半
2010年10月1日の読売新聞朝刊の一面のエクソンモービル日本徹底報道以来の古くて
新しい話で、昨年の秋以降何度も囁かれていましたので、今年の1月は、「ようやく発表した」
という感じでした。 「EMのマークは今まで通り使用出来るので、資本構成が変わっただけ」
とのEM発表よりは、「新東燃は民族系の会社になりました」という新経営陣の表現が近いと
思います。 しかし米EM本社からみれば、その値段で買ってくれる第三者が現われず、結局
孫会社に買わせたとも言えますし、3千億円の投資でも、販売先が増えるわけでも、精製効率が
上がるわけでもないのでやはり心配してしまいます。
 また私の勝手な推測では、年間100億円以上と言われる本国に支払うブランド使用料は、
今後も続くわけですし、サルファ―フリーを脱硫装置ではなく、触媒技術で乗り切ったので、
そのライセンス費用の支払いや、高い評価のあるMOBIL1の製造権やその付加価値が、
どちらに帰属するのか等、今後の新東燃を一業界人として見守りたいと思います。
3.JX室蘭、コスモ坂出 製油所閉鎖続々発表 関連記事11月企画
本年11月企画は、大好評で、業界誌のみならず、一般紙からも多く取材を受けました。
4.地下タンク工事実施率   来年は大量廃業か 8月企画後半
8月企画で、4786SSの補助金の仮申請が行われたことを既に報告しましたが、本申請は
10月下旬で約75%程度とのこと。 しかしそれ以降の発注では間に合いませんし、工事業者も
限られています。仮に工事の実施率が最終で8割まで上がったとしても、4786SSの2割。
すなわち約1000ヶ所弱のSSが、一般的な毎年の廃業数に加算されて、約2000ヶ所弱の
SSが大量廃業するのではないかと心配しています。 その一方、工事対象であるにも関わらず
消防から実力行使でもされない限りは、運営を続けようと思っている方は、いないと信じます。
私も40年超のタンクを一律に危険としてしまう今回の制度に問題はあるとは思いますが、
少なくとも施行された以上、法治国家に生きる者として、やはり対策は実施すべきと思います。

5.ガソリン大量輸入続く  揺らぐ消費地精製主義 6月企画後半 ガソリン価格ページ参照
詳しくは、6月企画後半、11月企画、またガソリン価格ページの 
 ガソリン海上価格 陸上価格、TOCOM価格 輸入推定価格 輸入数量推移表
が参考になると思います。また月刊ガソリンスタンド6月号、同9月号はかなり深い内容です。
ガソリン輸入数量割合はたかが「6%」ではないかとのご意見もありますが、かつてエッソは、
その6%のシェアーで日本の安値プライスのリーダーと言われてきました。今35%のJXでも
市況は上げられませんが、下げる方は6%もあれば十分ということがお分かり頂けるでしょう。

 ガソリン輸入数量推移表 2010-2012年 4-9月推移表とガソリン販売に占める割合
ガソリンKL 4月 5月 6月 7月 8月 9月 半期合計
2010年輸入 99,356 181,297 115,643 64,999 135,355 84,132 680,782
2011年輸入 306,750 138,078 274,096 325,138 479,970 317,261 1,841,293
2012年輸入 277,797 293,605 309,847 331,130 194,315 296,776 1,703,470
2011年比% 90.6% 212.6% 113.0% 101.8% 40.5% 93.5% 92.5%
2010年比% 279.6% 161.9% 267.9% 509.4% 143.6% 352.8% 250.2%
2012年販売 4,468,243 4,576,575 4,435,254 4,996,759 5,434,358 4,750,394 28,661,583
輸入割合% 6.2% 6.4% 7.0% 6.6% 3.6% 6.2% 5.9%
6.コスモによる 双日エネルギー買収 商社系も多難な時代へ
コスモによる双日エネルギーの買収の話を最初に聞いたのは、数年前でした。「コスモが」
というよりは、双日が双日エネルギーを売りたがっているという方が正確で、私に教えて
くれた方も、買わないかと言われた会社からの情報でした。
既に発表されているコスモと双日エネルギーの話は、双方のプレスリリースを見て頂くとして
商社も大変という話をしたいと思います。下記表は、商社系会社のSSの推移表です。
天下の住友商事系の住商石油でもやっていけなかったというのは、商社ですら大変という
表れだと思います。ちなみに下記表は、上記2011年の各商社系の元売マーク別表です。

年度末 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 増減
伊藤忠商事系 2,132 2,178 2,148 2,157 2,189 2,179 2,174 2,153 2,144 2,157 13
三菱商事系 1,108 1,129 1,152 1,182 1,201 1,189 1,158 1,103 1,074 1,059 -15
丸紅 系 756 767 746 752 758 699 688 667 646 659 13
住友商事系 296 297 291 292 297 263 以降住商石油は出光の子会社
双日系 189 206 199 203 184 204 214 206 208 208 +-0
兼松系 135 132 133 139 135 128 129 118 106 103 -3
三井物産系 684 139 134 130 113 93 以降三井石油としてカウント
合 計 5,300 4,848 4,803 4,855 4,877 4,755 4,363 4,247 4,178 4,186 +8
エネオス 出光 コスモ シェル EM 太陽 キグナス PB その他 合計 シェア
伊藤忠エネクス 870 5 188 335 160 2 28 438 131 2,157 43%
三菱商事石油 498 4 224 24 194 115 1,059 21%
丸紅エネルギー 151 13 29 151 6 1 356 659 13%
双日エネルギー 28 0 45 53 1 1 12 55 13 208 4%
兼松ペトロ 40 14 28 21 103 2%
総合商社小計 1,539 32 266 791 191 4 40 1,323 4,186 84%
三愛石油 121 61 501 49 10 742 15%
国際油化 2 57 8 5 1 73 1%
総 合 計 1,660 32 268 852 749 12 94 1,334 5,001 100%
マーク別シェア 33% 1% 5% 17% 15% 0% 2% 27% 100% ----
伊藤忠は、伊藤忠エネクス、九州エナジー 小倉興産エネルギー含む
三菱商事は、MCオイル、関西MCオイル、ネクステージ、ミヤセキ、センナン、一般店含む
双日エネルギーは、日商鉱油(シェル18含む)各社HP及び月刊ガソリンスタンド別冊号より
変わらぬ仕切り体系   週決めから週中変動も
前述の通り業転価格が、先に透明化していくなかで、益々分からないのが、系列仕切りです。
全石連でのアンケートでは、99%が不満との結果でも、日本の石油業界版ジャスミン革命は
起きず、高いと言われながらも、ブランド料(販売コスト等)は一向に下がらず、変わったのは
10月から週1回の改定に限定されなくなったことです。もっともJXが下げれば、全元売が下げる
ので、単なる元売の利益の吐き出しに終わってしまうのでしょう。
 私の改善提案は、2点。原油輸入価格を参照しているのと同様に、製品輸入価格も一定割合
参考にする。もう一つは、系列SSとしてPBに対抗する意味で、業転市場が上がり、原油輸入
価格と十分な利幅が取れている時は、ブランド料をスライド的に下げ、系列SSもPBと同じ
価格で売れる時もあっていいと思います。

JXが一光を子会社化 11月30日には、JXと鈴与の持ち株会社設立も発表
 JXエネルギーは本年5月30日、トラックステーションで有名な株式会社一光(フリートSS数
134)とその子会社3社の株式を買収し、子会社化すると発表
し、7月より他の元売マーク
だったSSのマーク替えや撤退が、粛々と行われています。
 また11月30日は、JXと鈴与が持ち株会社を設立し、一光と鈴与の持つトラックステーション
も含めて、スケールメリットを出していくと発表
しました。
 
 一光と言えば、宇佐美(フリート数SS410)と並んで、トラックステーションを母体とした販売力
で一昔前は、系列を超えた全国的安値量販店で有名な、大変存在感ある会社でした。
 しかし昨今、人口減や少子高齢化、景気低迷や国内物流の合理化効率化で、絶対需要が
落ち込む中、一般ガソリンスタンドのように洗車やコーティング、車検、保険、車販やレンタカー
ビジネス等油外収益の拡大は難しく、一般論としてその運営はかなり大変だと言われています。
 国内第2位の規模を誇ったコーナンフリート(140)も、2008年に伊藤忠エネクスの子会社に
また2011年には、社名もエネクスフリートに改称し、エネクスグループの一員となりました。
 今回の発表の鈴与エネルギー、業界NO1の宇佐美、JXが買収前の一光他、フリート大手
各社の各元売マークにおけるフリートSS数は以下の通りです。

エネオス 出光 コスモ シェル EM 太陽 三井 キグナス PB 合計 シャア
宇佐美鉱油 132 264 - 9 - - - 1 5 411 41%
エネクスフリート 54 - 43 40 - - - - 3 140 14%
一  光 80 - 42 1 11 - - - - 134 13%
鈴与エネルギー 101 - - - - - - - - 101 10%
太陽鉱油 55 - - 10 - - 5 - - 70 7%
吉田石油店 - - 24 4 10 - - - 38 4%
山文グループ 36 - - - - - - - - 36 4%
キタセキ - 27 - - - - - - 27 3%
西日本フリート 4 - - 18 - - - - 4 26 3%
新出光 3 - 10 9 - - - - - 22 2%
合   計 465 264 122 111 15 10 5 1 12 1,005 100%
SS数シャア―% 46% 26% 12% 11% 1% 1% - - 1% 100% -
各社HP及び月刊ガソリンスタンド6月号より 直営フリートSSを抜粋 一光はJX買収前
9.原発全機停止で、 脱原発への流れも決定か 10月企画参照
SS業界には直接関係ありませんが、日本の原発が一時的にせよ全機停止し、その後、関西
電力大飯3号機4号機が7月に再稼働しました。本HPでは、この原子力問題について、国民の
民意を反映した政府の決定に従うという、中立的な立場をとってきました。しかし最終的には、
高速増殖炉もんじゅや核燃料リサイクルが難しく、核廃棄物が未来永劫溜まり続けることを
思うと、核廃棄物を長期に安全に保管出来る砂漠などが全くない島国日本としては、原発は
ソフトランディングしていくしかない?と、私個人として思っております。


10.ドージマEX誕生 業転市場が透明化
関西で出荷されるガソリンや灯油など石油製品を取引する新たな市場が、本年2月に誕生。
江戸時代にコメ先物取引が始まった大阪・堂島にちなみ名前は「ドージマ・エクスチェンジ」。
石油卸売業者や商社、給油所など多くの業者が参加しています。 また本年10月からは、
取引範囲を、@北海道、A東北、B中京・北陸、C中国・四国、D九州に、既存の関西を加えた
全国6地域に拡大し、このドージマ市場を活用できることになりました。
 市場を開設するのは、シンガポール系のエネルギー取引仲介会社ギンガエナジー・ジャパン。
所定の製油所や貯蔵施設が出荷する石油製品を1KL単位で売り買いできるのです。
 これまでの業者間の取引は、正に相対の交渉で「高い安い」や「損した得した」がありましたが
このドージマ市場では、上場株の取引の如く、売買双方がインターネット上で価格や数量などの
条件を見て取引しているので、その透明性は高まったと言えるでしょう。
 現在、業転価格と言えば、RIM社の発表価格です。これは同社が、業界各社からヒヤリング
して集計するという間接的なものですが、このドージマ価格は、上場株同様の実価格です。
その結果、RIM社も今後この価格を尊重するそうです。 また代金受渡しもトラブル防止のため
エスクローという一度大手銀行等が預かる方式で、安全に取引出来る仕組みになっています。
東京のTOCOMが石油製品の先物市場なら、このドージマ市場は、民間のギンガ社が作った、
現物市場と言えるでしょう。成約件数は2月から9月までの累計で225件、数量は約13000KL。
レギュラーガソリンの取扱数量が多く、今後も増加していくそうです。

その他の重大ニュース
@ホルムズ海峡問題2月企画の最後に追記4月企画の最後に追記 月刊GS 5月号
 日本では、余り騒がれていませんが、世界的には危険度はかなり増しているとの評価です。
A環境税スタート。  一般紙等が注目したのも10月のみ。
 今や業界人にさえ忘れさられてしまったようです。
BAIJ問題石油組合を襲う。  石油関連組合の被害は重大でした。
 10年後に国は年金基金を解散するとの案も出ていますが、不足分は、
 各厚生年金を解散し、掛け金増額と支給額の減額で、乗り切るしかないようです。
Cシェールガス本格化。  価格は、かなり低下したので、今後規制が緩和されれば、
 数年後LNGにして日本への輸出も始まるでしょう。更にその技術を生かし、
 シェールオイルの開発や輸出も楽しみです。
D水素スタンド静かに進む
 例えば、水素スタンドの候補地で考えると、実は、重大ニュースの8でご紹介したフリートSSは
 大型トラックが複数台同時給油出来て、尚且つコンビニや休憩室シャワー室も設置されている
 大型のSSも少なくありませんから、将来の水素スタンドの候補地としては最適だと思います。

 水素スタンドの問題は都心部の適地を如何に確保するかにかかっています。ちなみに今年も
 トヨタ系シンクタンクであるテクノバ主催の「水素スタンドビジネスモデル検討委員会」に参加し
 また2012-13年はメンバーは変わりますが、水素スタンド普及勉強会に参加予定です。
E秋田でシェールオイル。 産出量より観光資源に最適です。

番外編 弊社の重大ニュース
NO1 直営SS 1増 2減 5月企画  8月企画後半
  西八王子と八王子長沼SSを撤退し 吉祥寺SSをオープンしました。

NO2 直営5SS中 4SSが JXの全国表彰基準(トリプルクラウン)を達成しました
NO3 よく分かる石油業界 全面改定版 1月26日発売 絶好調です
  
嬉しいことに、11月29日も 久しぶりにアマゾンでエネルギー業界NO1でした
NO4 講演も各所で行わせて頂きました。伊藤忠エネクス様からご依頼は感激です。
NO5 当社HP 検索サイトも絶好調  身の引き締まる思いです 12月1日現在
検索語 ガソリン価格 原油価格 SS業界 石油業界 近未来自動車 SS跡地
Yahoo 5位/920万 6位/250万 5-6位/760万 4-8位/1510万 1-2位/112万 1位/53万
Google 5位/620万 6位/250万 5-6位/980万 4-8位/1890万 1-2位/141万 1位/58万
最近は絶対アクセス件数もですが、上記をより嬉しく思います。
来年もどうぞよろしくお願いします。気愛を入れ ご縁を大切に 感謝こそすべて 垣見 裕司