原油暴騰の中、円安も重なり、国内ガソリン価格は大幅値上げ
 しかしお客様の反応は、2008年夏とは何か違うその原因
原油価格並びにガソリン市況企画の番目のお客様です。(更新時 553200件)
ご存じの通り、2月3月はSS業界として、仕入れ価格の高騰に伴い、ガソリン価格他の石油製品
価格を大幅値上げをさせて頂きましたが、2008年の時と違ってお客様反応が全く違うのです。
今月は、値上げの御礼とともに、弊社SSにいらっしゃるお客様の声から、今とこれからの
SS業界を分析してみたいと思います。   文責 垣見裕司  Ver1 (2012/3/30初掲載)

原油暴騰と円安で国内ガソリン価格は 大幅値上げをさせて頂きました
ご存じの通り、イラク核問題やそれに付随するホルムズ海峡の緊迫化の中、原油価格は
こちらのグラフの通り暴騰しています。それでも1月までは、超円高で輸入原油価格も
円/KLベースでは、そんなには上がらなかったのですが、2月からは円安も手伝い
遂に大幅値上げとなってしまいました。
原油価格こそ1月の概ね110ドル/Bドルから3月の123ドル/Bまで12ドルの値上げですが
1月の78円/ドルが、3月には84円/ドルまで円安になり、その結果 輸入CIF価格は
1月の54円から、3月の最終週には66円まで、12円も値上がりしました。
 しかしガソリンスポット市場は更に値上がりしています。1月のガソリン陸上スポットは
64円程度だったのですが、3月最終週には、79円まで15円も上昇しました。
これは、それまで安かった韓国等からの輸入品も国内価格以上に大幅上昇したためと
思われます。弊社も誠に遺憾ながら例えば1月末販売価格の142円から3月末現在では
157円まで15円となる大幅値上げをさせて頂きました。
現在、業界最安値と言われるジョイフルホンダさんも、1月価格から18円も値上げされて
いるので、その価格の高騰ぶりがお分かり頂けると思います。
        北海ブレント ドバイ WTI 各原油価格の推移   $/B

新聞やテレビ等のマスコミが余り報道しない理由
しかしこれほどの大幅値上げにも関わらず、今年は、2008年の暴騰と比較すると、余り
テレビや新聞等で報道されていないように思います。何故でしょうか。
その理由を大手新聞記者に聞いてみましたが、その方もその理由が分からないようでした。
私は、新仕切り体系の導入により、それまでの月1回の値上げが、今は毎週の小刻み値上げ
になっていることが大きな要因だと思います。
以前なら、テレビのニュース等で「3/26日本最大の石油元売である新日本石油は、4/1より
ガソリンの卸価格を10円値上げすると発表しました。これを受けてSS運営会社も、10-12円
程度販売価格を引き上げる予定です。+SS現場の映像」というニュースの「つかみ」となる
見出しも明確で、そのタイミングも元売の価格改定に合わせれば良いのでニュースにし易か
ったのだと思います。しかし現在で新仕切りの導入により、毎週の値上げですから、先週は
0.9円とか今週は2.5円とか、最大でも3円程度。末端もじわじわ、小刻みで、場所によっては
一回の値上げは小幅なので、競争が激しい地区ではその実施がずれこんだりと、ニュース
として取上げるタイミング、値上げ幅としてのインパクトが弱いのだと思います。
お客様の反応は、意外にクレームが少ないのです
しかしニュースにはならなくても、1月末対比では15円以上も上がっていることは事実です。
そんな中、お客様の反応はどうなのか、全直営SSに逐次あげくれるようお願いしました。
しかし意外な事に2008年に比べて「おしかりやクレーム」という声は、非常に少ないのです。
以下弊社直営スタンドから上がって来た代表的なお声です。

やはり「高くなったね」「また上がったね」。「まだまだあがるの?」「いつまで上がるの?」 の
声は多いですが、「なんで値上げするの」というのは皆無に近く、中東でのイラン核問題や
ホルムズ海峡問題等により、原油価格が大幅に上がっていることは、ご存じなのだと思います。

また値上げは、諦めているといった感じも受けます。
「160円になったら、暫定税率一時廃止じゃなかったっけ?」など声もありました。
そうこの値下げ条項は、財源不足他色々な理由から、今は凍結(要するに値下げしない)
なのです。2008年当時の自民党にも、ガソリン値下げ隊以降のコロコロ変わる民主党にも
誠に困ったものです。
2008年の急高騰時に比べ、限定給油の割合は低く、まだ満タン給油が多い
では定額や定量が全くない訳ではありませんが、2008年ともう一つ違うのは、お客様の中には
「ガソリン無くならないよね」の声が意外に多く、満タンにされる方が多いのです。
そう、2008年の時は、3000円とか20Lとか限定給油が増えて来たのに今回は満タンなのです。
それについては、まだ記憶に新しい昨年の状況を皆様が鮮明に記憶しているのだと思います。
洗車のVIP会員のとある奥様に至っては、「私の友人がツイッタ―をやってて「ガソリン 水 
米が無くなる」のようなつぶやきを見て私に言ってきたので、ちょっとしか減ってないけど
満タンにする」とおっしゃっていました。

もう一つは、原油価格や卸価格の上昇分のみ毎週小刻みに値上がりしている現状から
「早め早めに給油しておく」という意識が強くなっているものと思われます。
もっとも「限定給油」は、国道の等の幹線通過地型という、価格に敏感な一見のお客様が
相対的に多いSSでは、確かに多いとは思いますが、弊社SSは、生活道路にある地域に
密着したSSなので、その意味では、少ないのかもしれません。
満タン給油を自信を持ってお勧めする理由。半分と満タンと燃費はどのくらい違うのか
この問題をトヨタの技術の方にお伺いしたところ非常に明確な答えが返ってきました。

エンジンが同じで車体重量が増えた時の燃費感度は0.5(加速感度は1)。すなわち
      1トンの車が100kg増加した時の燃費悪化は 5%
      2トンの車が100kg増加した時の燃費悪化は 2.5%となるのそうです。
別の言い方をすれば、
燃費は車両重量に反比例、すなわち重量が倍になれば、燃費は半分になるようです。

では車両重量が1000kg、燃費20km/L車で満タン40Lと半分の20Lで比較します。
 20Lの重量差はガソリンの比重を0.75とし、15kgの差で算出します。

ガソリンタンクに半分ガソリンが入った車体重量を1000kg、満タンで1015kgとすると
 1.5%の増加なので、その半分の0.75%燃費が悪くなるとします。 式は、
20km/L x(100%-0.75%)=20km/L x 99.25% = 19.85km/Lとなります。
月間1000km走るとしたら 1000km ÷ 20km/L=  50L  150円 で 7500円
一方満タン車は、     1000km ÷ 19.85km/L=50.38L 150円 で 7557円。
従って月間1000kmを走ったとしても、増えるガソリンの使用量は、僅か0.38L。
単価150円としても 僅か57円の差です。
SSには、倍以上の頻度で行かなくてはいけないことだけを考えても、またいつか来ると
言われている東海、東南海、南海、首都直下型地震等を考えれば、津波がなければ
車は最後の個別避難所ですから、絶対に満タン給油をお勧めしたいと思います。
お客様の対策も色々 「車に乗らない」から「車が大好きだから仕方がない」まで
しかしお客様の声の中には、悲痛な叫びもあります。 値上げの先行きが見えないだけに
「車使うのしばらくやめようかなぁ、これ以上、上がると使用を控えなくっちゃな」
の声も増えてまいりました。
いつもは灯油を車で買いに来る方が、自転車でいらっしゃったりとご使用そのものを控える
というパターンも少なからずあるのも事実です。
その一方、またまだ許容範囲という声も少なくありませんでした。
また防衛策を取らない自分が悪い??とおしゃっる方もいらっしゃいました。
総合するとお客様は、

@価格にかかわらず、「購入すら出来ない」という震災時のご苦労を経験された。
A現在の価格帯は2008年に経験済みで初めてはない。平たく言うと、「慣れた」
B車が好きなので仕方がない。「この車、リッター4Kmなんだよ。バカだよな〜」とか、
 「いまどきこんな車はおかしいけど、好きだから仕方ない」と自ら仰るお客様もいます。

これは、明らかに燃費のいいHB車や軽自動車を比較対象にしているであろう意見です
基本対策は車の買い替え。 ハイブリッド車が特別のものではなくなった
そしてもう一つの現実的な対策が、エコカーや軽自動車に乗りかえるというパターンです。
今、プリウスよりも燃費がいい、でもヴィッツよりは一回り大きいトヨタのアクアが大人気で
半年待ち等の話を聞くとそれもうなづけます。



ハイブリッド車等、経済的自己防衛の選択肢が一般化した。 やはりこの影響が大きいのでは
ないかと思います。 2008年当時と比較すると当然ですが、圧倒的にHB車普及率が向上し
日常生活でも普通に目にします。 また各自動車メーカーも部門を強化し、販売を強化する事で
メディアの露出も増えました。そうなってくると、このガソリン急高騰から自分の身を守るには
「自分もHB車を買えば良い」という意識が生まれる訳であり、これは 「普通の車に乗っている
自分が悪い」となる訳です。
よって上記理由から、今後のハイブリッド車等エコカーの普及が加速する事は明白であり、
石油製品販売業である私達も将来に対する経営戦略の実行を加速させていく必要があります。

以上お客様の対策以下は、2010年に私とともに秋田で洗車の講演をし、2011年には、
資源エネルギー庁長官賞を受賞した、オートジョイ八王子の福所長の分析でした。


追伸 ホルムズ海峡封鎖問題   想定外 VS シミュレーションは危機を煽らないか
今皆様から最も頂く質問は、「ホルムズ海峡が封鎖されたらどうなるのか」です。
本年2月企画でお示しした通り、当社調べでは、2010年の日本の原油輸入量は21436万KL
その内ホルムズ海峡依存度は約80%です。イスラエルが先制攻撃しイランが無差別反撃を
した場合には、海峡封鎖もありうるでしょう。その段階では米軍も出てこざるを得ないでしょう。
戦争そのものは、アメリカが本気を出せば、1週間から最大1か月で終わるとは思いますが、
問題は封鎖が即解除出来るとは思えません。大型船舶を沈めたり、タンカー攻撃をして
火でも着いたら、その再開は、戦争終了後から1週間から1か月かかるでしょう。
原油の備蓄は、官民合わせて180日以上ありますから、その意味では2か月以内で終わるなら
大丈夫でしょう。但し、3月企画でも申し上げた通り、ホルムズ海峡を通過する割合は少ない
LNGですが、その備蓄が2週間分しかないとか、電力会社によっては、ホルムズ依存度が
非常に高い会社があるようなので、5月からは計画停電を開始しますという予告の発表は
即あると思っていた方がいいでしょう。またそれを契機に原発の再稼働のきっかけにもなるかも
しれません。唯一の幸いが、4-5月は、暖冷房需要が最も少ない時期なので、国民全員の
冷静な対応が必要かと思います。
根本的な解決としては、エネルギーを外国に依存しない水素社会を一日でも早く実現すること
でしょう。もはや環境面だけでなくエネルギー戦略として、国内で生産できる水素に改めて
注目すべきと思います。 ご意見等はこちらから  垣見 裕司 2012年4月2日更新 Ver 2