脱原発と水素社会&水素スタンド
(水素ステーション)の本格普及を考える 
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政府は、9月14日に「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」という「革新的エネルギー環境戦略」を
決めました。米国をはじめ、経済界からも異論が出たため、「閣議決定」にこそ至りませんでしたが
衆議院選挙も近いことから、少なくとも原発依存度が大幅に低下していくことは間違いないでしょう。

私は、この脱原発問題を改めて勉強し、特に脱原発反対派すなわち原発維持派のご意見をじっくり
分析してみると、逆にとんでもないことが分かってきました。そしてその解決には、原発がゼロか15%
かは別として、水素社会の到来を少しでも早めるしかないという結論に達した次第です。

また9月13日には東京都石油商業組合の合同委員会で、10月5日には秋田石商で、更には10月25日
には、ある会社の企画した水素&燃料電池セミナーで講演させて頂きますが、その配布した資料の
ご紹介とともに、脱原発から水素社会、そして水素スタンドの本格普及を考えてみたいと思います。
 合わせて2010年7月の水素スタンド企画も是非ご覧下さい。 9/30 V1文責 垣見裕司

2030年に原発ゼロを目指す 閣議決定こそできなかったが、方向性は決まったのか?

民主党野田政権は、9月14日「2030年代に原発ゼロを可能と目指す」という「革新的
エネルギー 環境戦略」を決めました。例え近い将来の衆議院選挙のためだとしても、
菅総理に比べ原発容認とも受け取れた野田総理が、2030年代というアバウトな表現ながら
原発ゼロに向けての舵を切ろうとしたことは、間違いなかったのでしょう。
しかしその直後から、国内の経済界は、色々な理由を持ち出し反対を発表。
また米国政府においても、何と「核の安全保障問題」まで持ち出して、原発の継続を求めて
おります。そして結果として、この戦略は閣議決定の参考資料に留まり、よく分からない
「柔軟に対応する」という文章のみが閣議決定されました。

一方不可解な矛盾も存在します。原発は止めるはずなのに
1 核燃料サイクル再処理事業は引き続き継続する。
2 高速増殖炉もんじゅは、研究を実行し、成果を確認の上 終了する。 という
原発村で働く多くの方々を考えた発言もあり理解に苦しみます。

原発維持派(脱原発反対派)の主張は

まずは原発を維持すべきというご意見の内容を勉強してみたいと思います。
色々ありますが、下記に大別されるようです。

1 化石燃料の価格上昇で電力料金が上昇し、産業の空洞化が促進、雇用問題で国力低下
2 日本が原発を放棄するとLNG価格が上昇する
3 結果として日本の貿易収支は赤字となり 国力が低下する
4 核燃料リサイクルや使用済み核燃料の対策が決まっていない
5 使用済燃料が原発から持ち出せない以上 危険度は変わらないなら運転継続すべき
 (福島原発4号機は、震災当時運転はしていなかったが、大量の使用済核燃料があり
  その冷却機能が奪われ制御できなくなった)

上記の1から3までの解決策が、原発の維持しかないのかを別にすれば、言いたいことは
よく分かります。私の感想としては、それを水素でやればいいというのが、後半の持論です。
しかし、4と5については、よくよく考えると怒りすら湧いてくるほどです。「止めても使用済み
核燃料を捨て場所はなく、危険性が同じだとしたら運転した方がいい」と言わんばかりです。

その一方、地元自治体の反応もかなり微妙な表現になってきました。安全を考えれば
脱原発だと思いますが、本当にそうなれば、地元の経済発展が全く描けない。
地元住民感情が二分してしまうのも、原発問題の怖いところです。

トイレのないマンション と言われる使用済み核燃料問題

では、原発反対の人の意見を私なりにまとめてみました
1 原発の安全性が低いとともに、万が一の時のリスクが高い
2 使用済み燃料等のリサイクルや核廃棄物処理に全く目途がついていない
3 高速増殖炉に至っては、金食い虫。世界各国で撤退している
4 結果、核廃棄物処理コストが、正しく反映されておらず、結果としてコストは安くない
5 電力消費地である都市には原発を作らず、地方に危険を押し付けている
6 上記すべてを通じ、原発利権で生きている人の発表を、もはや信頼出来ない

 単なる反対ではなく、冷静に分析してみると、事は深刻であることがわかります。
今や使用済み燃料は、リサイクルなどせずそのまま廃棄した方が、低コストなのは
世界も認めているところです。しかし地震国日本にとって、地下深くに埋めたとしても
活断層があるので絶対安全とは言えません。海洋投棄も同様で周辺国の理解は
得られないでしょう。ましてはアフリカ等にごみを輸出するなどという話は、国際法で
禁じられていたはずです。
 そんな訳で、日本には核廃棄物の最終処分場や保管室施設はありません。
青森県の六ヶ所村でさえ、原発ゼロとなれば、なし崩し的に六ヶ所村にすべての
核廃棄物が集められてしまうのではないかと、心配しているのです。
 広い土地のある一戸建てなら、庭の片隅に人間の出した排泄物を捨てれば
いつかは土にかえりますが、マンションならそんなことは出来ません。
ましてやそれが、半減期の長いプルトニウムだったら、、、
 福島第一原発四号機には、何と1590本の核燃料が保管されていました。
内使用済み核燃料は、1331本。これはプルトニウムで、核兵器の原料にもなる
訳ですが、ネットでは余りの多さに、4号機では他国の核兵器を作っていたのではないか
という疑いをかけられているほどです。

即刻見直すべきは、核燃料サイクルと高速増殖炉計画  「19兆円の請求書

さてここまで勉強した以上、最後の禁断の聖域?。核燃料リサイクル問題にも踏み込んで
おきたいと思います。核燃料リサイクルとは、使用済みの核燃料をそのまま廃棄する
のではなく、再処理して、軽水炉型にはMOX燃料として、そして究極には、もんじゅのような
高速増殖炉型の原発で使用することを前提としてきました。その理由としては

1 核廃棄物の体積が減る 軽水炉で 0.22倍 高速炉で0.15倍
2 潜在的有害度 天然ウランなみになるまでの期間が 通常は 10万年のところ
  軽水炉なら 8千年。 高速炉なら300年
3 処分費用は、直接処分が 1-1.13円 軽水炉は1.43-2.06円にUP。
* 高速炉については、もんじゅすら完成せず凍結なので、試算なし(=無限大?)です

 そもそも本来は、高速炉用の燃料となるはずでしたが、もんじゅがいつまでたっても
完成しない。そこで軽水炉でも強引にプルトニウムを混ぜた MOX燃料と呼ばれる
ウラン・プルトニウム混合燃料を作って、プルサーマル方式を考え、その金食い虫
事業の存続を諮ったという方が正しいでしょう。しかしそのMOX燃料を使うプルサーマル
計画も、1経済性の欠如 2危険度はプルトニウムを混ぜるので数万倍。再処理をしても
利用できるプルトニウムは、使用済核燃料のぜいぜい2%で、燃え残ったウランは溜まり
続けるのです。
 実は、推進一辺倒だった日本の原子力政策もその本当のコスト面から、見直そうという
議論が実は電力会社から出始めた時がありました。その最後のチャンスが2004年の
原子力委員会新長期計画策定会議だったと言われています。実は、旗振り役のご当局
の中にも、見直しすべきと思う若手官僚有志が匿名で書いた、「19兆円の請求書」という
文書があり、自民党の河野太郎議員他を経て世に出ることになりました。内容は
原発そのものを否定した文書ではなくあくまで核燃料リサイクル事業についてですが
「金がかかるが実現性に乏しい。このままいけば19兆円に膨らむ」というA4 25ページの
PPT文書でした。受け取った河野議員をして「よくできている」と感嘆しただけでなく、
その予想は現実となりつつあり、最悪50兆円になるのだそうです。
今回原文を入手しましたので、興味のある人はこちらからどうぞ。19兆円の請求書

 水素社会の到来と水素スタンドの本格普及を考える
  石油元売も 自動車会社も そしてSS業界も 覚悟を決める時

          
      水素スタンド関連の講演等をお引き受けした時の主な内容です
   T. 水素社会の普及は、日本に国富を生み出す


1. 原発停止でLNGの輸入急増  輸出立国だった日本が貿易赤字へ
   正に日本の危機 原発は、設備投資こそ多大だが国内投資。
   輸入核燃料の総発電コストに占める割合は少ないので 資源のない日本にとっては、
   最良のエネルギーのはずだった。しかし原発の大幅削減は決定的。

2. 不足電気の代替はLNG火力が主
   変動の多い太陽光や風力は、補完は出来ても代替は無理。
   エネ庁でも、ようやく水素が注目されるようになった。

3. 水素は、何から作るか。 石油業界は、アピールすべき
   石油業界なら 脱硫ナフサ、ガソリン、灯油、LPG。 都市ガス業界ならLNGと答える。
   例えば エネファームの水素製造反応は、 源燃料をLPGとすれば
    改質器で  C3H8+3H2O→3CO + 7H2
    変成器で  3CO+3H2O→3CO2+ 3H2
    合 計で  C3H8+6H2O→3CO2+10H2
   従って出来た10単位の水素の源燃料は 化石燃料  8 : 12 水 と言える。
   これが製油所なら  CO + H2O = CO2 + H2や C6H12→C6H6(ベンゼン)+3H2
   ベンゼン製造過程の接触改質装置で水素が発生する。これらの水素量を1割とすれば、
   製油所で作る水素の源燃料は、何と7割が「水」とアピール出来る。水は国産資源である
  
   更に、製油所は、現在でも 燃料電池車約500万台分の水素製造能力を既に有している。
   製鉄所で精製する水素は、石油業界に比べ純度が 1桁以上劣るので優位
   ネックはSSまでの輸送。水素タンクローリーorボンベゲージ交換方式
   ライバルは、都市ガスの導管配給オンサイト改質方式。但し改質コストは石油優位
   元売が「水素は石油業界にお任せ」これをアピールし、日本国内に認知していかないと
   精製元売は、都市ガスの単なる下請けになる可能性がある

4. 水素社会が到来すれば、原油輸入数量(2011年度約10兆円)は半分ですむ
  @ガソリンは水素に一部代わり   A灯油も電気に一部代わり
  B電力重油も一部水素になると    原油輸入量は、いずれ現在の約半分になる。

  約5兆円が、水素製造等で毎年国内還流し 経済対策となり、貿易赤字も減少。
  体積当たりのエネルギーが低く、輸送効率の悪い、国産も可能な水素を輸入しては勿体ない。
  CO2削減等 環境面しかアピール出来る点がなかった水素は、早かれ遅かれ必ず大ブレイクする。

5.動く中型発電機としてのFCVのその実力 震災対応に最適 SSの急速充電器にもなる
   FCVは、6kgの水素を高圧(700MP)タンク搭載、一回の充填での走行可能距離は約500km以上
   この水素6kgで 停車時でも最大20kW/h  連続で10kW/h
  累計で160kWの発電が可能で i-MiEVは16kWの10倍以上。
  動く中型発電機。震災時対応 真夏のピーク対策。
  その発電コスト、水素を1千円/kg(ガソリン150円等価)として
  6kg=6千円 160kW=38円/kW。  更にFCVの価格も魅力。
   2015年の発売時の価格を明言してないが、中型車で500万円。
   同格普通車が仮に300万円なら + 200万円で20kW/h発電機。
   SSに配置で 急速充電器+変電器投資が不要となる。
  走る充電器は、 電欠 EVのレスキューにも最適。
  現在の蓄電システムが10kW 約300万円なので、
  首都直下地震対策として初期ニーズは十分ある。

  U. 最近の水素社会への動き それに気が付いていないのは
1. 最近の水素自動車 や 水素スタンド関連記事
    日経新聞2012/5/27や東京新聞2012/8/19 その発信元(仕掛人)は誰か 

2. 元売の具体的行動   JXは2か所の実証店の発表
   2012年度中に完成予定 名古屋市と海老名市に2か所
   掲載のイラストが本当なら、実はすごいこと。今までは隣接が限界。
   今回はセルフSSのガソリンアイランドと並んで水素計量機の設置。
   大幅な法規制緩和。しかし残念なのは、元売の多くの社員が知らないこと。関連部署のみ?
   本当の普及は販売部等非技術部門に権限が移り、 支店にもその情報が降り、
   更に特約店所有SSへも参加しませんかと説明会が始まった時ではないか
   「水素は石油業界に任せろ」石油業界もSBの孫さんに負けないアピールが必要

3. 2015年 元売子会社を中心に100か所確保へ向けて努力しているが
   実は、その100か所すら JXでもまだ発表2か所という状況。
   2016年以降は更に厳しい。本当に必要な場所は、4大都市圏の中心部
   さすがの元売も500坪超の社有SSは多くない。
   2011年度は、震災で製油所復興対策もあり、元売の水素スタンド普及への行程は遅れた

4.自動車会社も覚悟を決める時   主役は、首都圏のプロパー特約店
   元売任せでは、2020年までの500-1000箇所は、おぼつかない
   200坪超の特有SSに設置できるハードとソフト(ビジネスモデル)を
   自動車会社もしくは、自動車会社が作る投資普及組合が提供できるか
   1000か所の必要資金は国2/3負担なら、3千万円 x 1000ヶ所 = 300億円 は安い
   もし元売がやらないなら、自動車会社が水素スタンドフランチャイズを作り
   SS業界での格安レンタカー的な普及を図ることを検討する必要があるかもしれない
   技術面の規制緩和と同等以上に、SS経営者への本気の呼びかけが必要。
   例えば、トヨタ 東京本社 名古屋本社での説明会。 該当SSの図面募集。
   ある意味、SS業界の寿命を縮める話なので、それなりの覚悟はもってほしい。

5.水素スタンドビジネスモデル検討委員会 垣見提唱のビジネスモデル
  SS業界の投資ゼロ、設置スペースの賃貸料は、最低10万円/月以上。
  これは郊外の最低基準で都心部なら数倍を要請を。天然ガスのエコステの反省を生かす
  最初はオフサイト方式(水素ボンベ持込)でスモール&ローコストスタート
  通称 ハーフコンテナ2.5 X 6.1mのサイズに機能を集約して設置。
  充填作業料は500円/回以上 絶対赤字の出ない仕組みが必要性。
  水素は危険物なので コンビニは無理。SSにしか出来ない。
  立上時からFCVの絶対台数が増え、採算に合うまでの時間がかかることが予想されたが、
  脱原発、FCVの分散発電機としての利用で需要数倍、損益分岐点に達するのは早くなった

6.SS業界も覚悟が必要 
  @ エネ庁も認めた 2030年 ガソリン数量6割減の衝撃 (垣見は10年で半減もありうる)
    その時のガソリン数量は 年2400万KL  月間100kl/1SSまで 平均販売数量は落ちる
  A EV社会も来る。元売も参加。 急速充電は、目標 全国5千、 普通充電200万か所。
  B 好むと好まざるとにかかわらず、水素社会も来る。 しかし元売からの情報は少ない
      2020年 全国のSS数が 25000とすれば、水素スタンドは、最大1000。
      2030年 全国のSS数が 20000とすれば、水素スタンドは、約  2000に拡大?
     水素で生き残れるのは最大1割。よって、9割のSSは、従来型ビジネスで勝ち残りが必要
    EV同様、FCVや水素スタンドの普及→「従来型ガソリンスタンド」の余命は、短縮へ

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      水素スタンド      1位/1440,000      1位/1730,000
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  10位/1,630,000     10位/1,330,000
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