2022年エネルギー業界重大ニュース
 ロシアウクライナ侵攻、エネルギー価格高騰、円安、貿易赤字他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2022年も気がつけばもう年末。
今年ほど色々あった年は珍しいでしょう。一番の大事は、環境とは対面にある
化石燃料業界がこれ程注目された年は近年無かったと思います。脱炭素への
流れは一端足踏みするかもしれませんが、それでも方向性は変わらないでしょう。
その判断や舵取りが一番難しいと思います。また弊社の決算も需要並みの数量
減はあるものの前年並み収益は確保出来、皆様に感謝して1年を回顧します。
                      2022/12/1文責 垣見裕司
NO1.ロシア軍のウクライナ侵攻  2022年3月企画
日本国民としていや世界市民として本年最大のニュースはロシア軍の
ウクライナ侵攻でしょう。今回の2022.2.24は、2001.9.11の米国同時
多発テロや1992.8.2のイラクフセイン大統領のクウェート侵攻を上回る
大事です。まだ終結していないので何ともいえませんが、私は1939.9.1
のドイツ軍のポーランド侵攻並の歴史的転換点ではないかと思います。
少なくとも第二次世界大戦後の世界平和秩序は崩壊しました。テロリスト
でもなく、国際感覚のない中東の裸の王様でもなく先進国かつ国連常任
理事国かつ核を保有する世界第2位の軍事国の大統領の暴挙だからです。
そして外交では武力による侵略をもはや止められないことを世界が認識
させられました。今のロシアを許せば、異例の3期目を果たした習近平
主席にもう政敵はいないので本当に台湾侵攻をするかもしれません。
台湾にはNATOもなければ、日米安全保障条約もないのです。
本当に許せないのは核保有国ロシアが核の使用をほのめかして威嚇
していることです。ドイツ他各国は軍事費の増大を発表しましたが、ロシア
中国、北朝鮮に接する日本の平和ぼけはもう許されません。賛否は別と
して岸田総理も防衛比の2027年までのGDP比2%の拡大を発表しました。
NO2.環境問題は平和時に語れる話
前述のロシアのウクライナ侵攻で最も影響を受けたのは、世界の環境
問題でしょう。環境先進国といわれたはずのドイツでさえ、石炭火力発電
の停止を延長するだけでなく脱原発も先送りすると発表しました。要するに
環境問題、脱炭素、SDGs、ESG投資等は世界平和時に語れる話だった
のです。気がつけば今年は、環境活動家のグレタさんをテレビで見なくなり
ました。やはり寒い欧州の冬を乗り切るにはまだまだ化石燃料が必要で、
だからこそ高騰するのです。COP27エジプト会議でも具体的な進展は無く
損失と被害まで踏みこんでしまったことはむしろ混迷を深めると思います。
NO3.資源エネルギー価格は全て高騰
今年の原油、LNG、石炭価格は全て高騰しました。海外のスポット価格は
乱高下が激しいので、一番確実かつ日本経済や国民生活に直結する
日本の輸入CIF価格で見てみましょう。
基準価格は2021年の8月にしてみました。そうです。ロシアのウクライナ
侵攻前から、欧州等の風力発電の不信や過度の環境優先政策の弊害で
1年前以上からじりじり上がっていた事実をお示ししたいと思います。
昨年8月の原油価格は70ドル/Bの自称適正。円レートも110円/$なので
正に基準価格です。その74ドル/Bからピーク117ドル/Bまで、約1.6倍。
また円レートも150円/$まで下落し、結果51円/Lからピーク99円/Lへの
2倍弱の高騰です。LNGは日本においては多くが長期契約なのでスポット
より抑えられているはずですがそれでも58円/kgから167円/kgへ3倍弱の
高騰。石炭もやはり3倍以上です。これでは発電をLNGに頼り、規制
料金で上限価格を抑えられている電力業界の赤字転落は必定でしょう。
そして残念なことにエネルギー価格高騰は、日本経済にとってコストUPで
マイナス要因です。例えば鉄の輸入なら、ビルの柱や車になりその後稼いで
日本経済に貢献しますが、私の暖房費増は経済に貢献していないでしょう。
但し、11月からは少なくとも原油は下落し始め、今現在70ドル/B台。
また円レートも140円前半となり落ち着いて来たことは朗報です。


NO4.燃料油激変緩和措置と物価高対策 2月企画6月企画 参照
本年1月24日、全国のガソリン税込平均販売価格が170.2円となり1月
27日から国による燃料価格の抑制が始まりました。オイルショック時、
本来は全油種値上げすべきところ灯油価格を据え置き、その分ガソリン
価格で転嫁する行政指導を行ったことはあっても、燃料油の卸価格に
ついて国が元売等に補助金を出すのは、私が知る限り初めてです。
5円から始まった補助金は3月10日から25円。4月28日から35円。
不足分は1/2支給に拡大されました。もし補助金がなければ末端は
200円突破していたので国民も大歓迎でしょう。当初ガソリン、軽油、
灯油、A重油で開始し、4月27日からはジェット燃料も追加されました。
寒冷地や豪雪地の暖房はエアコンではなく量も多い灯油なので、消費
者は大歓迎でしょう。軽油は、物流業者、バス事業者、建設関係者。
A重油は暖房用燃料を使うハウス農家や漁業関係者に喜ばれています。
その一方、10月には悲しく残念かつ遺憾なニュースもありました。
5500億円支給したものの110億円がSS業界の経営改善に使われた
というのです。もし私が反論するなら、開始時の全国平均は
170.2円。
11月28日が167.6円でマイナス2.6円。一方補助金込み元売仕入累計
はマイナス2.5円。少なくとも直近数値ではしっかり還元されています。
 さて政府は来年1月から電気は7円/kWh。都市ガスは30円/m3、
一般標準家庭で電気は2800円。都市ガスは約900円の補助金支給
を発表。LPガスへの補助が無いのは、前記表の通り、LPG価格の
高騰がそれほどでもないのと、末端価格に占める原料費上昇割合が
少ないからだと思いますが、不公平感は残りるでしょう。
NO5.円安、株安、貿易赤字、財政赤字、物価高の五重苦の日本
この話は一見するとエネルギー問題との関係は薄いかもしれません。
しかし日本のエネルギー自給率は12%。すなわち輸入に頼らざるを
得ない以上、行きすぎた円安はやはりエネルギー問題だと思います。
本年1月は115円/$でしたが10月22日には150円/$を突破しました。
円安の直接的な原因は日米の金利差約4%かも知れませんが、
私は世界からの日本経済の低評価の現れだと思います。
国家税収は約68兆円なのに62兆円の赤字国債を発行し約130兆円
の支出を続ける財政赤字。国債残高は1255兆円、海外投資家は
約14%ですが、日銀が536兆円の国債を持つ日本は世界から信用
されるのか。4〜9月の貿易赤字は11兆円。年率3%の物価高でも
国債残高が多いので金利を上げる選択肢を取れない日本。24年前、
北海道拓殖銀行や山一証券破綻した時並みの低い評価なのです。
NO6.サハリンUは日本の電力のアキレス腱 緊急企画参照
サハリンUはロシア国営ガス会社ガスプロム社50%、英国シェル社
27.5%、三井物産株式会社12.5%、三菱商事10%の4社が出資した
サハリンエナジー社の石油・ガス複合開発事業で、ロシアでは初めての
液化プロジェクトでした。生産量は年間約960万トンですが地理的に近い
こともあり約6割が日本向けで日本の輸入量の約10%に相当します。
  中略  緊急企画参照 下さい。以下は今月更新したお話です。
そんな中、プーチン大統領は6月30日、サハリンエナジー社を再編する
大統領令を発令。ロシア政府が設立した新しい運営会社「サハリン
スカヤ・エネルギヤ」に日本側が出資を継続するかを迫ってきました。
三井物産、三菱商事は政府とも相談、熟慮の上、新会社への出資が
決まり、ロシア側に同意書を提出。ロシア側もこれを受理し、一応サハ
リンUの日本側の権益は維持されることととなりました。
しかし、ドイツへの天然ガスパイプラインが破壊されてしまうご時世です。
少なくともドイツ側が破壊する理由は見当たらないので、やはりロシアが
破壊したのではないかという憶測で、LNGが戦争に使われています。
さて以下は全くの私の考察ですが、サハリンUでは、シェルが事実上の
オペレーターをしていた訳ですが、シェルが撤退した後、その生産量を
継続出来るのでしょうか。関係者に聞いたところ短期的には、可能だが
ガス田は寿命が短いので、新たなガス田を探索し続けるのは難しいのと
開発に要する掘削リグなどは、経済制裁で入手は困難だろうから、中長
期的には現在の生産量を維持することは難しいだろうとのことでした。
何度も申し上げますが、政治的もくは物理的にサハリンUからのLNGの
供給が途絶したら以下の通り冬の電力は重大な局面を迎えると思います。
NO7.電力の危機が表面化 緊急3月企画
真冬ではない3月22日。真夏でもない6月29日。東京電力は2012年の
制度創設以来初めてとなる電力逼迫警報を発令。直接的な原因は福島
地震での老朽火力の停止ですが、根本的かつ構造的な問題が3つある
と思います。一つ目は自由化です。1年で電力逼迫の数日間しか発電しない
発電所のコストを基本料金が支えていましたが、その保証がなくなり効率の
悪い老朽火力発電所が廃止されたので。2つ目は太陽光割合の増大です。
晴れた時は、東電需要の約4割を発電する一方、夜や雨の日はゼロなので
全て火力で補わなくていけない構造的問題です。3つ目はLNG途絶危機で
ドイツへの海底パイプラインの如く、もし日本への供給を政治的に止められ
たら冬の電力は本当に逼迫しますが政府はそれを言わず節電要請に留め
ています。対策は戸建てなら電気レスの灯油ストーブ設置をお薦めします。
NO8.潮目が変わった日産EVサクラ 9月企画参照
9月企画でも報告しましたが、日産EVサクラは売れ続けています。
10月は少し販売台数は減少。11月は更に落ちていますが、実はこれ
重要が減少したのではなく、生産が追いついていないのだそうです。
更に補助金は納車してから支給されるので、その時点で当年度の補助金
が残っているのかも購入者にとっては心配の種だそうです。
では今日産サクラを注文すると納期はどのくらいなのか。答えは何と
10ヶ月とのこと。よって今後の販売台数は生産能力といえるでしょう。

さて改めて今回のEVブームは本物なのか。少し歴史を振り返ってみます。
実は世界初の量産EV自動車を販売したのは日本の三菱自動車です。
世界には過去5回、EV時代になるかという転機があったそうです。
最初は100年以上も前でしたが、T型フォードが量産されて勝負ありです。
第2次は1940年代の世界大戦の石油不足当時だそうですがこれも
戦争終結で勝負あり。第3次は大気汚染とオイルショック時ですが、石油
供給の安定化で終了。第4次は、米国の環境先進州のカリフォルニアでの
ZEV規制ですが、電池価格の高騰とHVが容認され収束。そして第5次が
2010年頃のリチウムイオンの電池性能向上で三菱のi-MiEVやスバルがEV
ステラを発表した時でしたが価格が高いのと走行距離不足で収束しました。
その意味で今回は第6次です。米国のテスラ社の時価総額がトヨタを上回る
評価を受けたり、欧州の新車販売におけるEV比率が10数%と高いなどの
世界環境の中、ようやく日本でもEVが売れ始めた。トヨタはまだ本気を
出していない。来年から中国から安価なEVの進出予定があることなどを
総合すると今回の日本でのEVブームは本物なのではないかと思います。
NO9 米国と欧州で別れたPHV 
米国で環境規制が最も厳しいカリフォルニア州で注目の発表がありました。
2035年新車販売は電動車のみでHVは認められないもののPHVは
OKになったというニュースです。その一方、EUは2035年以降PHVも
認めないというニュースもありました。こうなると欧州はEVかFCVしか
なくなります。フランスは他国と違い原発比率が高いので大丈夫としても
ドイツはその電力を確保するのが大変でしょう。
その一方、FCVは事実上トヨタのみでほとんど売れていません。SS
併設型水素スタンドも規制緩和、特に水素設備と道路の離隔距離の
緩和は1mmも進んでいません。敷地面積250坪の当社八王子SSに
水素スタンドの併設に必要な高さ5.4mのコンクリート擁壁は相変わらず
必要でEV対FCVは勝負ありの感じがします。 
No10 安倍元総理、凶弾に倒れる ENEOS杉森前会長突然辞任 
安倍晋三元総理は、7月8日。奈良県において参議院選挙の応援演説中
に凶弾に倒れ、お亡くなりになりました。私にとっては小学校から大学まで
成蹊学園の近い先輩でもあり、そのご縁で過去2度ほどお会いしたことが
ありました。1度目は最初の総理就任の就任パーティーに、ご招待頂く
ことが出来ました。2度目は、2020年2月1日のやはり成蹊主催の
パーティーでコロナの影が忍び寄ってきた時期でしたがクルーズ船到着前
だったので会は無事実施され幸運にもお写真を一緒に撮って頂きました。
私にしてみればどちらでもいい国葬するか否かでも揉めてしまったのは残念
ですが、武道館で行われた国葬の献花の列は、武道館から半蔵門に伸び
弊社麹町本社前を過ぎ四ッ谷駅まで並び、そこで折り返して再び弊社前
まで列が続いていました。この弔意の人数に嘘はないでしょう。私はこの日
の献花は断念し11月末の成蹊学園主催のお別れの会に出席しました。
もう一つ残念な話はENEOSの杉森前会長の8月12日の突然の辞任です。
実は都石の70周年の記念講演をお受け頂き、矢島理事長をご紹介方々
ご挨拶に参上する直前だったので、その後の対応は本当に大変でした。
私は週刊誌以上の情報は持っていませんが、一日も速く示談が成立して
被害者の心の傷が癒やされることをお祈りします。

垣見油化並びに子会社含め電力のカーボンニュートラル達成 5月企画

弊社は3月末に群馬県のみどり市に700kWの大陽光高圧発電所を完成
させ、その発電を開始したことは、5月企画でご報告した通りですが、
その後もお陰様で開発会社より提出された当初の発電計画を少しだけ
上回る発電量にて順調に推移しております。その発表は、本HPだけ
だったのですが、垣見油化のみならず、垣見油化グループ全体として
少なくとも電力ではカーボンニュートラルがご評価され、以下の新聞で
ご紹介頂いたことは嬉しく思います。
11月29日 日刊油業報知 HELLO  7月13日 燃料油脂新聞社
5月30日 プロパン新聞

個人として和歌山大学講演はまた改めて報告します

大学での講演は本当に久しぶりで、10月21日金曜日にお話しして来ました。
その後、約150人から頂いた学生からの感想文は、正にラブレターです。
機会があれば、講演内容とともご紹介したいと思います。

本年も1年ありがとうございました。来年こそ世界平和と平穏なエネルギー
業界に戻ることを祈念して、年末の挨拶に替えたいと思います。