急増するセルフSSを考える セルフNO5
 SS数も増え、既存セルフも前年比伸びている、そのニーズは本物か
拝啓 あなたはセルフ企画の 番目のお客様です。掲載時 52,250よりスタート。
日本特有の「有人」セルフがスタートして丸8年。当初の予想は98年にNO199年にNO2
その後は2001年にNO3を、2002年にNO4を書きました。インターネットというは、新聞と違って
過去何を書いたか、今も見る事が出来ますので、私としては、ある意味恐ろしいというのが本音です。
さてその頃からは、想像もつかない程、セルフSSが増加し、遂に5000件を突破、全SS数の10%を
超えるまでになりました。何故ここまで増えたのか、お客様のニーズは本当にあったのか、市場、
特に価格に与えた影響は?。そして今後はどうなるのか。激増するセルフの実態を、私なりに解説
してみたいと思います。文責 垣見裕司 2006-10-2 Ver2

各年のセルフ増加数と、減少し続ける一般SS
まずは、セルフSSの増加推移と、一般SSの減少傾向を見てみましょう。
1998年4月に解禁になって、1年後の99年3月末は、僅か85箇所。これをベースにして
比較して見ると、初年度は0.16%だったセルフ比率が、分母である、SS総数の減少により
その比率が加速度的に増しているのが分かると思います。
また1年間の絶対増加数も2002年度=2003年3月末までに1170箇所増えたのをピークに
以降は年間2003年度は900件、2004年度は680件まで落ちましたので、増加のピークは
過ぎたと判断した方も多いと思います。私もそう思いましたが、2005年度は771件と僅かに
増加し、今年2006年度は、6月末の速報だと5.242件と3月比+368件となり、年間ペースでは、
過去最高の伸びとなっています。

各年3月末 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 同6月末
セルフ増加 85 106 231 931 1,170 900 680 771 368
セルフ累計 85 191 422 1,353 2,523 3,423 4,103 4,874 5,242
固定式SS数 54,490 53,307 51,957 51,000 49,768 48,649 47,366 46,371 46,000
セルフ比率% 0.16 0.36 0.81 2.65 5.07 7.04 8.66 10.51 11.39

都道府県、元売別セルフ数と市況に与える影響
全国でセルフが多い県は、愛知367-16.1%、千葉324-16.7%、神奈川305-19.8%、
埼玉287-17.4%、兵庫229-15.5%、福岡220-15.0%、大阪210-12.8%と続きますが、
これ以外にセルフ率が高い県をピックUPしてみると、香川105-19.9%、石川97-18.4%、
岡山142-15.4%等が続いています。

一方元売別セルフ数とその比率は以下の通りです。2006年3月末は、8月企画に記載の
通りですので、ここでは2006年6月末で比較してみたいと思います。

元売会社 新日石 出光 昭シェル コスモ Jomo EMG キグナス 九州石 太陽石 三井石 元売計
3月末数 10,700 5,225 4,668 4,503 3,791 5,751 622 686 386 371 36,703
セルフ数 853 522 484 669 560 969 148 122 102 101 4,530
セルフ率 8.0% 10.0% 10.4% 14.9% 14.8% 16.8% 23.8% 17.8% 26.4% 27.2% 12.3%

上記表を見ると、絶対SS数が少ない元売程、率としては高く、ある意味セルフに依存して
いることが、分かります。大手元売では、EMGが数、率ともにトップとなっています。

その他の傾向としては、東京の様に都心部等最低限の市況を保っているところを除けば
セルフの多いところは、市況は安い。また大都市圏でSS跡地の有効利用が可能な所を
除けば、やはり「セルフ率の高いところは、絶対SS数の減少率も大きい」という傾向が
あるように思います。


元売直系だけでなく、特約店販売店所有セルフが増えたことが最大の特徴
では次に急増しているセルフを分析してみるとやはり一番多いのは、
元売の元売による元売のための量販型セルフ」でしょう。300坪500坪はあたり前で、
中には1000坪の規模を誇るものがあります。発表されている正確な統計はないので、
あまくまで私の主観ですが、必ずしも改造ではなく、新設も相当数あるように思います。
また元売の所有で特約店が運営中のフルサービスSSを、半ば強引にに改造する話も、
未だに聞きますが、こちらは該当物件が少なくなって来たせいか、ピークよりは少なく
なって来たように思います。
さてここ1-2年で増えたのは、元売系列か或いはPBに限らず、特約店や販売店が、
自社所有のSSをセルフに改造する事例が増えて来たこだと思います。
その理由を強いて分ければ二つあるでしょう。

一つ目は、積極的にセルフ転じているケースです。
この例は、お客様のニーズがセルフに移行しつつあると確信し、経営理念や運営方針が
はっきりしているので、数量もさることながら、油外収益もそこそこ取れているように思います。

二つ目は、消極的な出店ケース。
昨今景気回復で、社員やアルバイトの採用はとても大変になっています。人員不足は、
他の社員やアルバイトに負担をかけ益々やめていくという悪循環です。妥協して採用すると
サービスの質が落ちてしまう。元売のお客様相談センターにはこのケースに該当する
クレームが、数多く寄せられているそうです。結果最高責任者に負担がかかることになる。
それならばいっそセルフにして、人の悩みから逃れたい。というのが本音のようです。
それに「セルフでも積極的に油外を販売しよう」という方針もないので、セルフシステムの
監視だけならローコストの採用出来るシルバー人材なども活用出来るので、オーナーの
健康的に問題がないから、廃業する前に一度セルフで試してみよう。等のケースです。

また別な特徴として、セルフを始める際に、系列を離脱し、PBで出店するというケースも
多少見られます。
セルフの数量は伸びているのか
一般にセルフは、フルの3倍売れると言われてきました。しかしそれを信じて改造したものの
近年は2倍しか売れなかった、或いはほとんど変わらなかったという話も聞きます。これが
私が「セルフの増加はピークを過ぎた」と思ってしまった最大の理由でした。
ところが、昨今のそのセルフがじわじわ伸びて来ている様に思います。
 エネ庁から発表されるガソリン販売数量は、あくまで全体の数量なので、フルとセルフの
数量割合や各々の伸び率がどうなのかは、全く分からないのですが、同業他社や元売の
担当者の意見を総合してみると、例えば全体のガソリン販売が、前年比95%だとした場合
フルサービスは92%と苦戦しているものの、セルフは110%と善戦しているようです。
これは前年実績のある既存店の比較なので、最近の間違いのない傾向と言えるでしょう。
=====皆さん、その理由は何だと思いますか、ちょっと考えてみて下さい。========
*****(いきなり 私の結論を言わないで 皆様に考えてもらうのか コーチングです)****
セルフSSでの給油増加は、お客様の価格高騰対策表れなのかもしれない
これはあくまで私の推測ですが、原油高騰によるガソリン価格が今年になって高騰し
8月には144円まで上昇したので、お客様も対策上少しでも安いイメージのあるセルフで
給油するようになったのではないでしょうか。「ちゃんとしたサービスしているなら、
一回30Lとして3円差 すなわち100円以内なら、許容範囲」が私の持論でしたが、
ここまで価格があがると、サービス満足感を犠牲にしても、少しでも安い事を優先
し始めたのかもしれません。それを証明するような現象として、8月に高速道路内のSSで
長蛇の列が出来るという事例が一時発生しました。前月の市況価格を繁栄して、当月の
価格を決定するという仕組み上、一般道路では144円なったものの、高速道路内SSでは
138円で買えるという珍事が発生したのです。

マスコミもこれを、大げさに取り上げたものですから、ある高速道路内のSSは3倍。
逆にインターチェンジ近くの一般道路のSSは3割減というの話も聞きました。
 当然一般SSは、同等価格まで値下げをせざるを得なくなりましたが、例え同じ138円の
看板を出しても、テレビ等でやっていた「高速が安い」と暗示のようにすりこまれた印象
とは恐ろしいもので、インターチェンジ近くのSSは、対抗上身銭を切って価格をさげ
看板表示を出しているにもかかわらず、8月一杯減少が続いたという悲痛な話です。
お客様の価格高騰対策のもう一つの表れは?
セルフSSでは、聞かれれば機器操作の説明はするものの、給油時にハイオクガソリンの
お勧め等は、原則的には致しません。よって業界関係者の間では、「セルフにおける
ハイオク販売が、本来のハイオクニーズだ」と言われています。
 これはセルフに限ったことではないのですが、ここ数年ハイオクの販売が減少しています。
まず用語から説明しますと、ガソリン総販売量に占めるハイオクガソリンの販売量の比率を
ハイオク比率とかハイオクレシオと言います。この率は月ごとにかなりばらつきがあります。
5月のゴールデンウィーク等にキャンペーンをやればもちろん伸びますが、冷房需要等で
エンジンに付加がかかる夏場等の需要は正にニーズでしょう。
 その頼みの綱であった夏場でさえも、徐々に、そして着実に落ち始めているのです。
例えば、2003年の8月18.6%をビークに04年8月18.2%、05年8月17.5%、そして今年は7月まで
しか発表されていませんが15.8%まで下落しています。また落ち込みは夏に限ったことではなく、
ここ数年、どの月も、前年より数%確実に落ち続けています。
 その原因はやはりハイオクがレギュラーより約10円高いことが嫌気されたためでしょう。
ハイオクの特性としてレギュラーより燃費が良いことがあげられますが、仮に5%違うとし
費用対効果を検証してみると、140円のレギュラーに対してハイオクが147円で買えるなら、
同コストとなります。従って加速体感性能も数%良いとされていますので、その分だけ「得」
となりますが、10円差の150円では3円高くなり、少しでも安いレギュラーを選んでしまった
結果なのでしょう。
 レギュラー対比+10円高で販売されているハイオクのSS仕入れも、実は10円差なので、
SSにとってハイオク販売の直接的なメリットがいなこと売り手モチベーションがあがらない
最大の理由です。一方元売にとってハイオクの製造コストは、レギュラー比+10円はかからない
でしょうから、ハイオク販売量の減少は、元売の収益にとってかなりの打撃であることは
容易に想像がつきます。

高ES企業SSと一般SSでのSS選択理由の差に答えがあるのではないか
よい表があったので、改めてご紹介します。何か見えてくるものがありそうです。



単に価格が安いというニーズだけなら、セルフビジネスもいつか限界が来る
ここまで考えてみると、何かセルフ全盛?のように思えるかもしれませんが、私はやはり
フルサービス型に期待しています。一昨年行った真の顧客満足でご説明したことを
思い出して下さい。
従業員満足度の特に高くない一般のSSをご利用のお客様のSS選択理由の第一は、
「価格の安さ」です。これはセルフに限ったことではないのです。では、価格の安さを最初に
求める方は、従業員の心からのサービスはどうでもいいのかと言えば、決してそうではなく、
「従業員の雰囲気や態度が良いから」が実は第二位に来ていることを重く受け止める必要が
あるでしょう。更に三番目の「押し売りが無い」にもそれが現れています。4番目は「SSが
綺麗だから」そして5番目は「ポイントがたまるから」ここまで来るとちょっと寂しさえ覚えます。
 一方、従業員満足が高く、心からその会社で働くことを喜びにしているSSでのアンケートは
1位「従業員がいい」、2位「フルサービス」、3位、「押し売りが無い」、4位「洗車がいい」、と
これ程理想的な回答をしてくれると、フルサービス論者としての私としては本当に涙ものです。
そしてやっと5番目に「価格の安さ」が出てきました。
 従って今のセルフのユーザーのニーズは、「価格の安さ」であることは間違いありませんが
本当は、従業員の雰囲気がいい、押し売りではないお客の立場にたった安全点検をしてくれる
SSをお望みの方が多数いらして、本当はフルで気持ちの良いサービスをしてほしいのだけれど
納得がいかないから、仕方なくセルフに来ている人が多数いることを良く認識しておかなければ
ならないでしょう。また「SSが綺麗だから」ということにも注目しなくてはいけません。それは
セルフSSがハード的に新しいからであって、10年もすれば、それなりに汚れて来ます。
そうなれば、新しくはないけれど、心のこもったESの高い従業員が手入れをするフルのハード
の方が、遥かに綺麗になるでしょう。現に、セルフの増加と共に、撤退するセルフも相当数
あることは、実はあまり知られていません。
改めて当社の選択は
誤解の無いように申し上げますが、私は、セルフを否定している訳ではありません。しかし
セルフのみがこれからのSSのあるべき姿だとか、これからの新設はセルフしか作らない
という経営方針には、やはり疑問を感じます。私はどうかと聞かれれば、やはり興味はないと
お答えしたいと思います。またセルフに囲まれてしまった弊社八王子SSで毎年行う自慢の
CSアンケートには、「垣見さんだけはセルフにしないでね」という声が多数寄せられます。
ここまで来るとフルサービスにも残存者利益が出て来るのではないでしょうか。
 セルフは「ガソリン販売に特化する」といえば聞こえはよいのですが、もはや価格安定性や
マージン安定性がなく、商品の差別化も難しい、そしてその需要さえも低下していくことが
明らかなガソリンに、何故特化し、何故ポートフォリオを高めなくてはならないのでしょうか。
 フルサービス型SSのサービスに仮に絶対の自信があっても、お客様から許される価格差は
せいぜい3円でしょう。と言うことは、一社の企業努力だけでガソリンマージンを増やすことは
自ずと限界があるのです。
 またセルフ、特に単純セルフは、悪く表現することをお許し頂けるなら自動販売機です。
百歩譲ってメーカーである元売が人件費の削減出来そうなセルフに走ってしまったことは、
分かる様な気もします。しかし元売が作り売るのは、ガソリンかもしれませんが、我々SSは、
サービス業であり、ガソリンも然ることながら、そのサービス全般に「ご満足」頂くことが、
その「付加価値」であり、その「付加価値」があるこそ、そこに「マージンや利益」が
許されるのではないでしょうか。
 ですからセルフの激増に伴い、無意味な価格競争で下落してしまった市況は、結果として
業界が得ていた付加価値を、業界自らが放棄しているのではないかとも思ってしまいます。
 コンビニがセルフになるでしょうか。カーショップがセルフを目指しているでしょうか。
 お客様の方から月に1-2回必ず来て頂けるのに、それが一般の販売業から見れば涙の
出る程、うらやましいことなのに、 それに気が付かず、IT時代だからこそ必要な「フェイスto
フェイス」、「ハンドinハンド」の機会を何故自ら放棄してしまうのかは、ちょっと残念な気が
しますが皆様は如何でしょうか。  文責 垣見裕司