日本版?有人セルフを考える
 価格は本当に下がるか、安全性は置き去りにされていないか?
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規制緩和により、SS業界でも4月からセルフSSの開設が解禁となります。
マスコミや消費者などから、更なる値下げが期待されるセルフスタンド解禁
しかしその一方でガソリンの危険性への注意喚起は全くなされておらず
セルフ設備の取り扱いに慣れない日本の消費者が本当に対応出来るのでしょうか。
今月は、その忘れられがちな安全対策も含めて「有人セルフ」を考えてみたいと思います。

日本式?有人セルフとは

最初にセルフSS設置の必要条件を箇条書きして見ました。少し長いので3からでも結構です。
1.下記の安全対策設備の設置が義務づけられました。
 @ 固定給油設備関係は、対車衝突防止措置、立ち上がり配管遮断弁、給油ノズル等安全装置
   (握り続けなくても給油が継続可能なラッチオープンノズルの場合で説明)
   給油開始前のノズルの状態による起動制御、脱落防止、満量停止、可燃性蒸気回収、
   油種違い防止、給油ホース緊急離脱カプラーなどの各装置が必要とされました。
 A 固定消化設備関係
 B コントロールブース関係
   各給油設備を総合管理するコントロールブース、モニター画面、インターホン各装置の設置
ちなみにこれらの設備をSS新設時に工事した場合は、2千万円
これを既存SSを改造した場合は4千万円とも言われております
SSの土地を除く建築費は大型のものでも1億円程度ですから、
セルフ設備がSSの建物コストに占める大きさが分かりますね。
2.運用面では、「監視者の常駐」が義務づけられました。
3.その「監視者の業務」は、以下の通りです。
監視者はコントロールブースから直視により監視するとともに(死角はモニターカメラ)
インターホンにて顧客に確認指示を行い、顧客が火気を使用していないことを確認の上
ポンプ起動スイッチを入れ、顧客に給油を実施させること。
終了時には、ポンプ停止スイッチでポンプを停止状態に保持すること。
 更に給油中でも常に監視し、危険な場合は一斉停止スイッチによりポンプを停止し、
火災の場合には固定消化設備の起動スイッチにより消化するとともに、通報、避難誘導
その他必要な措置を実施すること。

セルフにも関わらず、人員削減が出来ない?

上記3によれば、監視者はスーパーマン的な仕事をし続けることが分かります。
従って本来のセルフとはかなり違いユーザーのセルフ体験設備?に留まっています。
少なくとも、給油の開始や終了後の停止操作も監視者がやるのですから、最終責任は
我々業者にありそうです。従って一人の監視者に同時に把握できるのは、4台程度?
また安全上キャッシャーは別にし、更に現場指導員を置く必要があるので最低3人。
それに食事や休みの交代要員を考えると、4人は必要ですね。
 ところで日本のSSの平均月間販売量は80KLですが、弊社は倍の160KLでも
社員は3人体制で運営しております。あれれ、ちっとも人員削減が出来ませんね。
 更に前記の通り2−4千万円の投資を考えると、現行で3−400KL以上、
人数で5−6人以上でやっている場合でないと人員削減メリットは無さそうです。

だれが教えるガソリンの危険性

 ところで皆さんガソリンのそもそもの性質はどのぐらいご存知でしょうか
引火点はマイナス40度Cちなみに灯油は+40度Cですから違いが分かりますね。
それを表す様に米国での火災発生は1100件で発生率は日本の50倍(東京新聞1/18)
 それに悪意はないのでしょうが、相変わらず多いくわえ煙草で降りてくるお客様。
そういう意味で「自己責任」の概念が薄い日本で、お客様側の責任は「果たせる」
のでしょうか。その辺の安全性の課題をお役所に聞いて見ると、消防庁危険物規制課
「米国と異なり日本では監視員を置くので設備規則を守れば事故は防げるはず」、
資源エネルギー庁石油部流通課、「あくまで事業者の責任」(産経1/20)との事で
万一の際は「業者に指導はしておりましたが」という発表が似合いそうな見解です。
 従って顧客への注意喚起はやはり業界が活動しなければならないとは思いますが、
実際に4月からスタートするのは数件。更に業界にはアンチセルフ派もいますので、
結局はセルフ実施SSが、指導員を増員してでもやる必要がありそうです。
 高齢化社会を迎える日本。その増員した指導員が減らせる日は来るのでしょうか。

セルフで本当にガソリンは安くなるのか

 さて価格ですがご存知の様にガソリン収益はすでに1L当たり10円を切っており
SS経営は、洗車、オイル、タイヤ、その他商品、保険などの人手を必要とする販売
(いわゆる油外収益)で成り立っているといっても過言ではなく、これは、ガソリン
1L当たりに換算すると最低でも10円以上とあると言われています。
 それがセルフになったら人手がない分、当然大幅に減少します。従って人数的には、
300KLSSで合うように見えましたが、油外収益の落ち込みをガソリンで補うには
10円/Lの粗利なら倍の600KL売ることになりますが、ここまではちょっと無理。
従って採算的にはセルフにしても、価格を下げられる余地は全くありません。しかし、
 今の業界は「みんなで渡れば怖くない」という住専的な赤字商売をやっていますので
更なる過当競争による採算度外視の値下げはあるかもしれません。

セルフSSはどこまで、増えるか

 最近は業界紙は勿論一般紙にも「セルフ実験店誕生」という記事をよく見かけます。
では近い将来セルフSSはどのくらいまで増えるのでしょうか。下記表をご覧下さい。

日本のSSの敷地面積と販売数量の分布割合 業界アンケートより
敷地面積100坪以下200坪以下300坪以下400坪以下 500坪以下それ以上
構成割合24%31%23%12% 5%5%
販売数量50KL以下75KL以下100KL以下 150KL以下200KL以下300KL以下それ以上
構成割合41%20%15% 15%5%3%1%

敷地からは、セルフの可能性のある400坪を越えるSSは22%ですが、数量からは
人員削減の可能性が多少は残る200KLを越えるSSはわずか4%しかありません。
またセルフへの取り組みを発表している会社のほとんどが、実験店という表現で赤字が
許される?元売子会社に限られており、自己資本特約店は慎重な姿勢を見せています。
 海外では米国88%ドイツ94%英国74%他欧州50%まで普及したセルフですが
(この中でもフルサービスとの併用があり完全なセルフは20%以下と言われています)
冷静な眼で見ると、日本ではせいぜい5%、全国で3千SS以下ではないでしょうか。

そこで消費者の皆さんへ改めて質問です

 セルフ化が議論されてから業界は、元売や我々の組合もとにかく絶対反対でした。
しかし私はこのホームページでも常々申し上げてきましたが、絶対反対では、消費者や
マスコミに誤解を招くので、業界のスタンスとしては
 「規制緩和は大賛成。くわえ煙草のお客様等安全対策はどうするのですか」という
感じの逆提案をし反対でも業界として議論に参加すべきだと申し上げて来ました。
 しかしその絶対反対の結果、出来てしまった実状に合わない?「有人セルフ」。
でも議論に参加された消費者からも
「総論賛成だけど家の隣には出来てほしくないし、暴走族のたまり場にならない様に」
との声も出始め、少しは理解戴いてきたような気もします。
 そこで、皆さんへ改めて質問です。それでもセルフは必要ですか?
あなたなら、いくら価格差がついたら、セルフSSに行きたいと思いますか。
是非皆様のご意見をお待ちしています。 98/1/30 文責 垣見裕司

最後にマスコミの方へのお願い

 今年に入り一般紙でもこのセルフ問題を大々的にとり上げて戴いております。それは
大変ありがたいのですが、内容の多くが「セルフ解禁で価格が下がる」に終始しており
セルフの危険性やユーザー側の注意喚起の必要性を訴えた内容は、産経新聞のみです。
事故防止の為にも、危険性も含めた両面の報道を心よりお願い申し上げます。