解禁1年、セルフSSは浸透したのか
 消防、組合、新聞発表資料をもとに3月末推定数を検証します。
拝啓 あなたは5月企画の及び98/2月企画 番目のお客様です。
日本特有の有人セルフ解禁から1年経過しましたが、皆様給油された経験ありますか。 
「テレビや新聞では見たものの、車で走っていても一度も見たことが無い」という方が
ほとんどではないでしょうか。という訳で今月は98年2月企画 に引き続きセルフ
SSの普及状況とその問題点を解説します。
有人セルフSS数、ずはりその数は88ヶ所 
 正確な数字という意味では、組合、消防庁、それに各業界紙発表のデータから
当社が推計したところ88ヶ所という数が出てきました。その内純粋な新設は
30SS以下で、ほとんどは既存の改修で実験店的な要素が強いようです。
 さてこの88ヶ所というセルフ数ですが、全国にあるSS数は約58000
その内普通の固定SSは56000ですから、あれれ僅か0.16%ですね。
これでは皆様のお目に止まらないのは、当然のようです。

都道府県、元売別セルフSS数表

表から分かる出店特徴は何か 
 顕著な特徴として分かることは、その出店地域です。多い地区から挙げてみると
岡山13、香川9、千葉7、神奈川6、愛媛5、群馬5、福岡4、埼玉4と関東と
中四国に多く、北海道、東北地方は5SSですからかなり地域差があるようです。
 また元売系列別では数でみると日石三菱が14でトップ、そのあとゼネラル10
キグナス9、Jomo8と続きますが、各元売の分母となるSS数が違いますので
この程度の数字でセルフに対し積極的かどうかを判断するのは少々早いと思います。

精算方式の違いにも大きな傾向がある 
また表からは分かりませんが会計精算の方法には顕著な特徴があります。
 1.販売室精算型、(関東に多い)
  給油後、お客様が自ら販売室等まで行って店員と直接決済する方法です。
  また元売実験店的な導入も多いことからコンビニやファーストフード等の併設
  も多く見られ、これらの店舗で購入した物品と同様に精算する形態です。
 2.アイランド精算型、(関西に多い)
  アイランドとは、計量機のある場所を言います。支払いはクレジットカードや
  あらかじめ買ったプリペイドカード、また現金なら自動釣銭機等で決済します。
  給油した近くで自分で支払いを済ませる方法です。とは言っても現場に指導員
  がいてくれますので、お客様にとってそんなに難しい内容ではありません。
  しかしどちらにしても防犯上のセキュリティーはアメリカ等より遥かに低く、
日本が銃を持たない相対的に安全な国であることをただただ嬉しく思うばかりです。
 また解禁当初は1の販売室精算が多く、その後の有力特約店が出店したセルフは
2のアイランド精算が多いという、時期や運営者による傾向の違いもあるようです。
 また有人セルフと言っても従来のフルサービスも併用している「スブリット方式」
を採用してお客様のニーズに答えているケースもあります。

伸びなかった理由は 
 さてこの88SS、セルフ比率0.16%は、読者の皆様はどう思われますか 
「1度体験ぐらいはしてみたい。」と思っておられるお客様にとってはやはり、
「少ない」と言わざるを得ないと思いますが、業績が極度に悪い石油業界だけでなく
商社やスーパーなどの異業種も含めて、こんなに慎重な姿勢は何故なのでしょうか。
98年2月企画の日本版 有人セルフを考えるにも書かせて戴きましたが、
1.設備投資額が大きい。既存SSの変更で2−4千万円かかるといわれている。
2.それでも総合監視員や現場指導員の配置の義務や、安全上、会計精算を兼務
  してはいけないなど、結果的に人員削減が出来ない。
3.業界平均で10−15円/Lと言われている人手に頼る洗車等油外収益が無くなる
4.市況低迷でフルサービスSSとの価格差がつけられないばかりでなく、隣接SSが
  対抗上赤字覚悟のほとんど同じ価格で追随している事例がある。
5.2月企画で説明の通り、セルフ可能な大型敷地の大量販売している既存SSが、
  全体の数%しかない
などがあげられるのではないでしょうか。
実際資源エネルギー庁が昨年に行った業界へのアンケート調査でも、8割の業者が
反対または意志なしと回答、「既に店頭価格が安く、追加投資をしても合わない、
 敷地や立地条件の制約、フルサービスを思考している」等その理由を挙げています。

今後は何が期待されるのか 
 さて以上の状況を見ると「日本版有人セルフ」という方式は、普及率0.16%の
現段階では「まだ正常に機能していない制度」と判断せざるを得ないと思います。
 1.規制緩和を内外にアピールしたい政府。
 2.日本には、ユーザーの自身の自己責任が定着していない環境を心配する業界
 3.火災防止の観点から慎重な立場をとる消防当局
各3者のむずかしい妥協の産物である以上、現状としてはこの程度かとも思います。
 また当初セルフが計画された時期に考えられた、セルフにより可能になる販売価格を
現在の市況は遥かに下回っているで、本当に消費者からのニーズがあるのかは疑問で
私個人としては、今後セルフが大幅に増えるとは考えられませんし、また当社も
セルフSSを導入する計画はありません。
 しかしそれでも導入したい会社はすぐに出来るような現実的規制緩和を期待します。
そして今後挑戦される会社は、実験店という表現で赤字が許されるのは巨大企業だけ?
ですから、自己責任を念頭に頑張って頂ければと思うしだいです。 文責 垣見裕司