2017年の石油業界重大ニュース
 出光と昭和シェル、JXと東燃、原油安、電気自由化、トランプ他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2017年も気がつけばもう年末。
月日の過ぎるのがこんなに早いと思うのは、いよいよ歳のせいでしょうか。
さて年末恒例の業界重大ニュースをお送りします。重要度順番というよりは、話の
流れ順ですが皆様のご参考になれば幸いです。2017/11/29文責 垣見裕司

NO1 シェアー50%JXTG誕生 4月企画参照
その発表は、1年以上前なのですが、国内シェアー50%の元売が、万難を
排して、無事誕生にこぎ着けたことを、やはり今年の最大のニュースに
したいと思います。合併前のJXの臨時株主総会。そしてJXTGになって
からのTG系の株主も参加した株主総会も出席させて頂きました。 
その微妙な空気の違い、例えば「特に物言う株主」がいらっしゃることを
ひしひしと感じました。その意味では、旧TG経営者は、よく株主を納得させ
られたなあと思った次第です。
NO2 合併効果は早くも現れる 5月企画
この話題は敢えてNO1とは分けました。JXTGが誕生したからと言って、
元売業績に連動する卸売り市況やSS業績に直結する末端市況がよくなる
かは、必ずしも保証されていなかったからです。
しかし業転市場は間違いなく改善しました。また末端市況も、PBや一部
元売の安値に対し、JXTGの子会社特約店がしっかりとした値取りをして
いるので、業界改善への方向に間違いなく進んでいるものと思います。
まだ安いとの声ももちろんありますが、一度は素直に感謝したいと思います。
NO3 ENEOSへのマーク統合
重大ニュースの三番目かどうかは別として、話の流れとしてJXTG内の
Esso、Mobil、ゼネラルのマークの2019年度中のENEOSへの統合が
新会社誕生から僅か5か月で発表されたことはやはり大きなニュースです。
私の率直な感想としては、半年早かったと思います。
折しも10月からは、仕切価格体系、担保等の信用条件、元売所有SSの
賃貸料金の一本化も始まりましたので、旧TG系特約店の一部の方々から
「こんなはずではなかった」という声も聞かないではありません。
しかし今更JXTG特約店を離脱するという話は、私の近くでは聞かないのが
現状です。
 その意味では、JXTGの各主要支店で始まったJX+TG各特約店の発足
式は、元売支店関係者の万全のフォロー体制で、粛々と立ち上がっています
ので、統合は表向きは順調に進んでいるようです。
NO4.出光の増資は成功したが
会社としての出光と創業家との確執は、会社側の発行済み株式数に対し、
約3割、金額で1200億円増資発表と、創業家の「会社側の増資は議決権
比率を下げるのが狙いで不公正」という差し止め請求で泥沼化しました。
そして注目された裁判所の決定は7月19日「新株発行は著しく不公正な
方法により行われたとはいえない」とし、創業家側の抗告を棄却しました。
その結果、増資は7月20日に国内外にて粛々と実行され、増資前は、出光
文化福祉財団7.75%、出光美術館5.0%、創業家21.17%を加えた最大
33.9%の持ち分が、増資後は約26%にまで低下したと言われています。
あとは例えば来年4月の合併を目指した臨時株主総会をいつやるかです。
残り74%の株主や新たに増資した株主の意向確認をして、進める訳け
ですが、そう簡単にはいかないようです。
NO5.安値販売が目立つ昭和シェル
出光は、2016年末現在で、昭和シェル株の約32%を保有し、筆頭株主となり、
事実上子会社化しているのですが、その昭和シェルは、安値販売を継続する
どころか更に加速させているように思います。
ガソリン価格情報サイトのgogoGSで、10月の東京の現金フリーで価格検索を
してみると、上位40SSの安値の約半分が昭和シェルマークなのです。
昭和シェルのSS数シェアーは約10%なので、それが約半分を占めてしまう
というのは、とんでもない高確率です。
SSの経営者の判断というよりは、明らかに元売販売部や支店方針と思われる
ので極めて遺憾です。中にはPBよりも安く販売しているSSもあり、長年培って
きた由緒ある昭和シェマークのブランド価値が、ある意味マイナスだと世間に
自ら口外しているようなものです。同様にSSの運営者としても安くしないと売れ
ないサービスしか、していないと思っているのでしょうか。
 業界人が何かの研修会等で集まれば、懇親会では、昭和シェルSSの安値販売
姿勢に対する憤りが必ずと言ってよいほど出てきます。
その輪の中に昭和シェル系のSS経営者の方がいたとしても、それがプロパー
特約店の方の場合は、話はむしろ盛り上がります。
「超安値は、元売子会社と特定の大手特約店だけなんですよ。最大の被害者は、
同じ昭和シェルマークを揚げる我々普通のSSなんですが、この苦悩分かります?」
その本音は実に、的を射ていると思います。

 昭和シェル石油11月より新価格体系を発表

そんな中、流石にこの状況は良くないと考えたのか、11月より昭和シェルが
新価格体系に移行するとの発表がありました。
私は当事者ではないので、新聞情報程度しか知りませんが、JXTGの仕切体系
に近く、また販促値引き等はもうないとの話です。これが本当なら、昭和シェル
系列の皆様。しっかり値取りをして平均並には売って下さいというメッセージなので
しょうか。もっとも今まで売らせていたのは元売自身なので、本気かどうか、そして
その効果があるかどうか1ヶ月注視させて頂いておりました。
 しかし11月末現在、再度 gogoGSで 東京 7日間 現金 会員 元売クレジット
で検索すると、最安値20店中では、昭和シェルは何と10店、最安値40店中では、
昭和シェルは15店もありますので、残念ながら、その新仕切り体型は、市況改善
にはまだ役だっていないようです。自己調整はなかったのかと気がつくには、
もう少し時間がかかると思うので、今後も注視して行きたいと思います。

 ちなみに一般消費者もご覧頂いている本HPなので、「市況是正と言っても、
結局は垣見油化も値上げ誘導をしているのか」とのおしかりを頂きそうですが、
ピーク時6万あったSSが今は約3万。そして都内もピーク3千が今は900SSしか
ありません。例えば甲州街道の上り線には、環状8号線交差点より西の烏山から
半蔵門まで、そして内堀通りを一周しても、もはや一ヶ所のSSがなく、東京でも
都心はSS過疎が始まっている業界の苦しい現実をお察し頂ければ幸いです。
NO6.コスモ石油とキグナスの資本提携
 コスモ石油は本年2月、キグナス石油と資本業務提携を発表。6月末までに
コスモがキグナスの株式の2割を取得するとともに、2020年を目処に、全国
約500カ所のキグナスSSに製品供給をするようです。
 コスモによれば「単なる製品の売買だけでなく、業務提携を含めた深い関係
を築きたい」とのことですが、私は少し違うと思います。
 キグナスが普通の上場会社で、コスモが20%の筆頭株主になるなら意味は
ありますが、同社は三愛石油の100%子会社です。その三愛から2割を買っても
拒否権すらありません。
以下全くの私見ですが、JXとの統合で、旧東燃ゼネラルから「製品供給を絞り
ます」と言われたところから話は始まり、製品を買う三愛が、コスモの顔を立てた
という程度の話だと思います。但し、業界正常化にはなるので大賛成です。
NO7.第三次高度化法決まる
エネルギー供給構造高度化法は、石油精製後の残油から、ガソリン等付加価値
の高い製品を作る「残油処理装置」の装備率の向上を義務付けており、第一次は、
2013年度末、第二次は2016年度末が期限でした。
しかしその設備投資には莫大な費用がかかるので、実質的には、各社とも精製
能力の削減で対応したのだと思います。
その結果、2010年度当時約490万BDあった精製能力は、本年8月末現在
352万BDまで3割弱削減されるとともに、約10%しかなかった残油処理装置の
装備率は、13年度末の約13% から、16年度末には、装備の定義が拡大された
こともあり、50.5%に拡大されました。
しかし、国内需要の減退は続くので、国際競争力で見ればより一層の削減は
必要です。第三次では、残油処理装置の稼動率や処理量の向上と、製油所間
の連携が求められそうです。
NO8.人手不足は超深刻化 垣見油化も夜間タクシー洗車運営終了
当社HP 7月企画でも申し上げた通り、人手不足は大変深刻です。募集媒体は
何がいいとか、時給はいくらまで上げれば良いかというレベルではありません。
7月号の人口ピラミッドを見れば一目瞭然でしょう。40-45歳の男性の約500
万人に対して20-24歳のこれからSS業界に入って来てほしい若者は300万人
しかいないのです。
 そしてSS業界の年収は過去数年ほとんど上がっていないことに対し、タクシー
ハイヤー業界は、平成26年の302万円が、平成27年で310万円にまで上がった
ことを報告しました。
しかしその後、平成28年のデータを入手して驚きました。全国平均は332万円で
22万円上がっているのですが、東京に限っては393万円から443万円まで何と
50万円も上がり、また僅か1年で平均年齢は2.4歳も若返り、勤続年数も1.3年も
短くなりました
。SS業界も本気で若者の年収UPに取り組む必要がありそうです。
NO9 新電力自由化は大成功 都市ガスの自由化は関西のみ
7月でもお話した通り、電力の自由化はかなり浸透したと思います。末尾表の通り、
従来電力会社から新電力に変えたのは全国で8%、電力会社内のプラン変更も
含めれば、11.5%。首都圏の東京電力管内だけを見れば、11.4%と14.7%ですから、
消費者への恩恵はありました。
東京ガス90万軒(8月末推定)、大阪ガス45万軒(9月9日現在)、KDDIは全国で展開
する中、ENEOS電気が、関東圏だけで推定22万軒というのは立派な数字です。
東燃ゼネラルmyでんきの推定5万軒と合わせた存在感は大善戦だと思います。
 一方都市ガスの自由化は、関西における関西電力と大阪ガスの競争以外は、
余り聞きません。某社のテレビCMは有名ですがコスト割れとの話もあります。
JXTGも東京電力、大阪ガスと提携し、熱量調整装置への投資を発表しましたが
保安問題の対策はこれからです。

No10 欧米中で急速なEV化   FCV&水素スタンドは
欧州や中国、そして米国カリフォルニア州等での、相次ぐEVシフトへのニュースは
正に今年の出来事でしょう。講演などでは必ず聞かれるので私は、「ガソリン数量
は、間違いなく減るので元売は大変でしょう」とお答えしています。
しかし量販SSはともかく、今プロパー特約店販売店のガソリン数量は平均100kl/
月台ですから、私はそんなに心配しなくて良いと思います。
そもそもプリウス1台が月500km走るとしても、燃費20Km
/Lなら毎月25Lのお買い上げで、セルフで5円の粗利なら、今ですら月間125円
しかガソリン収益はないのです。
10年乗ったカローラは汚れていてもHVは綺麗なので洗車需要はむしろあります。
HVはエンジン車より高額なので燃費が良くても、コスト差は回収出来ませんが、
環境に良い車にのっている満足感が購買意欲なのです。
一方、FCVや水素スタンドの方の進展は、Tokyoスイソ推進チームが、都の主導の
元発足したことでしょうか。これについては、10月11月のHPで報告した通りです。
世界の2大ニュースはトランプ大統領VS北朝鮮 サウジのお家騒動?
世界に目をむければ、良くも悪くも米国のトランプ大統領の話題が多かったと
思います。大統領令の乱発。それに対し裁判所から待ったを掛けられたり、
側近がどんどんやめて行ったりと多難な1年目でした。
その不安定なトランプ政権も裏を返せば、何をするか分からない未知数さは、
北朝鮮問題を益々複雑にしていると思います。
北朝鮮の相次ぐ挑発やミサイル発射は困ります。以前のように「人工衛星」と
嘘でもと言ってくれれば良いと思いますが、大陸間弾道弾と明言した飛翔体が、
日本上空を通過するのは、気持ちのよいものではありません。
実は私も8月29日、不気味なJアラートのサイレンを長野で生で聞きた一人ですが
やはり平和が一番だと思いました。しかしこの北朝鮮が結果として安倍政権の
大勝のMVPだとすれば、実に皮肉なことです。

石油業界人として世界のニュースでもう一つ心配なのが、サウジのお家騒動です。
現7代目のサルマン国王の息子 のムハンマド皇太子は、11月4日、国王令として
汚職対策委員会を設置、王子11人閣僚や元閣僚、資産家らが数十人拘束された
そうです。凍結された銀行口座は、1700を越えその総額は8000億ドル(90兆円)と
聞けば、日本の国家予算並なので驚くばかりです。汚職対策を目的としていますが
国王継承のための政敵の粛正の意味もあるわけです。
王子達の浪費には不満を
持っていた国民や、米国トランプ大統領も一応賛同しているようです。この話題は
今後も注視していきたいと思います。
国内は 日本企業の相次ぐ偽装
どこかの経済大国ではあるまいし、日産やスバル、神戸製鋼、そして東レまでも
が、不正をしていたことは、極めて残念です。世界から日本に向けられていた
技術立国日本に対する信頼を大いに失墜するもので、誠に悲しいです。特に
日産はリーフやNote-epowerの出荷が折角好調だっただけに、本当に残念です。
そして神戸製鋼や東レ等の素材産業の強度偽装問題は、両社の経営は勿論
ボディーブローのように日本の産業・経済界に影響を及ぼしてくるでしょう。
風が吹いた都議会議員選挙と 一言で逆風となった衆議院選挙
今年の話題の最後は、やはり選挙です。都議会議員選挙は、小選挙区制度では
なく、中選挙区制度なのに、風が吹いて、都民ファーストが圧勝し、自民党は
歴史的大敗をしたのには、正直驚きました。その一方衆議院は、逆の意味で
驚きでした。都知事選であれだけ風が吹いて直前には、自民党から希望に鞍替
えした議員もまでいたのに、「排除」や「毛頭ない」の一言で台風並みの逆風です。
調子の良いときこと程、おごらず謙虚にしようと、自らの戒めとしたいと思います。
今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。