近未来自動車の主流は何か 
 PHV vs EV vs FCV 徹底分析
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昨今 世の中の変化が激しすぎます。海外から北朝鮮vs米国トランプ問題。
国内なら「予感」程度にしか感じられなかった解散風が、まだ出来たばかりの
「小池希望の党」が、野党第1党の民進党を解体しただけでなく、踏み絵付き
救済ならぬ「一部排除」など都知事選前には考えられなかったことでしょう。

 石油業界だけを見てもJXTGが事前の予想より早い段階で Esso Mobil ゼネラル
マークの使用を2019年度中でやめ、すべてENEOSマークに一本化するという発表。
 またJXTGと東京ガスが、当たり前と思われていた川崎天然ガスの増強計画の
検討中止を7月に発表。その僅か2ヶ月後、電気では宿敵であるはずのJXTGと
東京電力、それに大阪ガスも加わり子会社を設立し、LNGから家庭用天然ガス
を製造(規格に合わせる)ための熱量調整設備を作って都市ガス事業に参入する。
それぞれ個別の話題でも、1ヶ月の4ページの企画に十分な重要案件です。

ただ今月はSS業界へ直接的に影響を与えるであろうEV化について考えます。
7月頃、欧米各国に加え中国からも、脱ガソリンエンジン車、脱軽油エンジン車、
そしてEVシフトへの流れが相次いで発表されました。
2040年等まだ20年も先の話と言えばそれまでですが、HVが普及するだろう
(或いは普及させたい)と願ったトヨタの戦略とは裏腹に、EV化への流れは
加速し始めたように思います。今月は、EVの流れやその環境性能など、
EVの本当の実力を、私の知る限りのデータを使って解説したいと思います。
                          
                              2017年9月29日文責 垣見裕司

世界各国と各メーカーの発表は

英国とフランス 2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止。
 HVがこれに含まれるかは未定。
中国 NEV規制法を強化。
 2018年までに一定割合でEV、PHVの販売を義務化
米カリフォルニア州
 2018年頃まで「排ガスゼロ車規制」を強化。EVやPHVの販売を義務付け。
 単純HVはエコカーから除外へ。
インド 2030年までに自国販売は全てEVにする目標。
オランダ・ノルウェー。2025年以降の販売禁止を検討。 
ドイツ 2030年での禁止を国会決議。

テスラ(米EVメーカー)
 3万5千ドル(385万円)で買える汎用車モデル3(走行距離は350km)を発表。
 予約台数は50万台を突破。これは現行販売台数の約5倍。日本での発売時期
 は未定。ちなみにテスラの2017年4-6月期の収支はまだ赤字発表ながら、その
 時価総額は8月4日終値で586億ドルとGMの514億円を始めフォードやクライ
 スラー(FCA)など米ビッグ3を上回るほど株式市場からも期待されている。
VW(独) 2025年までに30車種にEVモデルを投入し、新車販売の25%をEVに
ダイムラー(独)  2020年代前半までにEVを10車種以上にする。
ボルボ(スウェーデン) 2019年以降に販売する全車種をEVかHVにする。
日産  10月2日7年ぶりに第二世代のリーフを発売を開始
トヨタ・マツダは資本相互提携。そしてEV子会社設立へ
 トヨタは過去多くの会社に出資してきたがマツダとは異例の500億円相互出資
 豊田社長「グーグル、アップル、アマゾン等新しいプレーヤーが現れ激変する
 FCVは遠い将来の技術とトヨタが語った?(日経8月8日) 

日本で販売中の主なEVとその特徴

日本で2017年3月現在で販売中の主なEVとその特徴を次世代自動車振興
センターが調べたものが下記表です。クリックして拡大版をご覧下さい。
一部筆者が加工。原版はこちらhttp://www.cev-pc.or.jp/chosa/download.html



日本国内のEVとPHVの普及台数は

 では現在の日本国内において電動車と称するEVとPHVの普及台数を、まず
調べてました。下記表は次世代自動車振興センター発表の平成27年度末現在
の保有台数とその推移を示しています。
 トヨタは、本年2月、EV走行性能を68kmまで従来型より3倍増やしたPHV
プリウスの発売を開始しました。その販売や予約は絶好調で、月間生産能力が
そのまま月間販売台数のようなので、平成29年度のPHVの保有台数は劇的に
伸びるでしょう。同センターには毎月新しいデータを発表してほしいと思います。

また第2番目の表は日産リーフの新車登録台数です。累計では7万台超ですが
保有台数との乖離は、そのまま中古市場での在庫なのでしょうか。従って新車
販売台数の累計より、保有台数の方が、実態を表す正確な数字だと思います。


日本EV性能はどこまで来たか

EV性能はどこまで来たかのでしょうか。EVに不足している性能の第一は
走行距離ですが、バッテリー容量を増やすと、価格は高くなり、重くなるので
走行距離は伸びても、走行効率は実は落ちるのです。次の表は、販売されて
いるEVのバッテリー搭載容量と走行可能距離の関係ですが、これも次世代
自動車振興センターが調べた下記のグラフがよい資料だと思います。
 縦軸が走行可能距離、横軸が搭載バッテリー容量です。
これを見ると日産リーフは24kWh車の方が、効率は良いことが分かります。
ホンダフィットEVやBMWのi3も、かなり善戦しているバランスの良いEVです。
電池容量を大きくすれば、走行可能距離も伸びますが、その電池の重さは、
効率的には重大なマイナス要因なので、大容量を搭載するテスラのモデルSや
モデルXは、燃費効率ならぬ電池効率は必ずしも良くないことが分かります。
やはりEVの本格普及には、鉛からニッケル水素、そしてリチウムイオン電池
への変化に匹敵するブレイクスルーが必要なのでしょう。
 そんな中、10月2日より発売の新日産リーフは40kwhを積んで400km走るとの
ことなので、40kwhを積んでいる割には平均線の上なので善戦だと思います。
私見ですが、今度のリーフは売れるでしょう。またそれにより益々下がる旧型
リーフは日産がバッテリーを乗せ替え認定中古車として発売ればベストです。

電池容量と走行距離の相関関係グラフ


東京水素戦略会議→推進会議→Tokyoスイソ推進チーム 10月4日発足

EVは本当に環境に良いのでしょうか。日本の電力は、2011.3.11以降、ほぼ
火力で発電されているわけですが、それでも本当に環境によいのか。
それを走行効率だけでなく、Well to Wheel すなわち井戸元からタイヤまでの
総合効率で検証するとどうなるのか。
一方究極の車と言われるFCVとEVはどちらが環境によく効率的なのか。
バッテリーの耐用年数や廃棄問題、リサイクル問題とその必要。そうなれば
車の製造から廃棄までトータルのライフサイクルアセスメントまで考えていか
なくてはなりません。

実は2014年度に舛添都知事の下で始まった東京水素戦略会議は、その後
東京水素推進会議にそして今年度はTokyoスイソ推進チームと再改名し、
10月4日に初会合が開かれます。今年度も委員に選ばれたので、以上の
問題も含めて、来月以降に続編にてご紹介したいと思います。

またSS業界人としては、今後のEVの普及が、ガソリンの需要減少に与える
影響も考えてはいかなくてはならないでしょう。
少なくとも2015年度においては、日本国内ではEV+PHVはまだ14万台です。
仮に2016年度末で18万台まで拡大していたとしましょう。
しかし日本の自動車台数は軽自動車も含めると約8000万台。比率にして
0.2%なので全く無視できるレベルだと思います。
またEVに変わっていく車も、小型車かつ走行距離は余り走らない車である
ことを考えると、今の10倍位の保有台数にならないと、我々SS業界が実感
としての需要減には、ならないと思います。
一応の目安は、全保有台数の1%超。即ち100万台を超えた位だと思います。
但しこの100万台突破時点では、その流れはもう止められません。従って
ガソリン数量に依存しないSS経営は、今から実現しておくことが重要です。