近未来自動車の主流は何か 
 Tokyoスイソ推進チーム発足
あなたは「近未来自動車」企画の番目(297000開始)のお客様です。

昨今新聞を読んでいるとEV関連の記事がない日はない、と言って良いくらい
世界も日本もEV化のニュースであふれています。石油&SS業界の方は、EVの
存在を軽く見る雰囲気がありますが、私は消費者がEVの特徴を良く理解して、
EVを選択するなら大賛成です。いつまでもガソリンの数量やその利益に頼る
気はありません。
 その一方、FCVと水素スタンド社会は本当に到来するのでしょうか。その壁は
決して低くはありませんが、これも突き詰めれば消費者の選択だと思います。
 そんな中、従来の東京水素戦略会議に大きな進展がありましたので、今月は
この話題から始めて、最後はFCVとEVの環境性能やコスト比較。そしてこれらの
FCVやEVの普及が、SS業界の経営に与える影響を考えてみたいと思います。
                          
                              2017年11月2日文責 垣見裕司

東京水素戦略会議→東京水素推進会議→Tokyoスイソ推進チームへ

2014年5月、舛添前東京都知事の肝いりで発足した「東京水素戦略会議」が
一番盛り上がったのは、トヨタから「ミライ」が発売された2014年から2015年頃
でしょう。 小池知事になった時は、小池さんは水素を本気でやるのかと関係者は
気をもんだそうですが、舛添知事に「環境都市東京や水素社会をオリンピックの
目玉にしたらどうですか」と提言したのは元環境大臣の小池さんなので、水素社会
の推進は大丈夫とのお話でした。
  しかし小池知事には、就任後「オリンピック」に加え「豊洲問題」も増えてしまい
ました。その豊洲問題を明らかにしたのは良いとして「何も決めない今の状況は、
豊洲問題をご自身の政治に利用した」と言われても仕方がないでしょう。
 さて話を水素に戻します。 11月1日に「Tokyoスイソ推進チーム」が、都の主導の
下に開始されることとなり、私も小池知事も出席したその発足式に参加してきした。
 読者の皆様も是非東京都環境局のプレス発表をご覧下さい。

また東京水素戦略会議の過去の活動は、東京都の環境局のトップページから
トップページ > エネルギー > 水素社会の実現 > 水素戦略会議(H26)
≪第2回≫
◆ 日時 平成26年7月4日(金曜日) 午後4時から午後6時まで
◆ 議題 ・ 委員からのプレゼンテーション
東京ガス株式会社(2 MB) pdf 垣見油化株式会社(2 MB) pdf で閲覧可です

大きく変わった点は、都の主導であることと「オリンピック」という冠の有無

  11月1日に発表された「Tokyoスイソ推進チーム」の水素推進宣言は
「水素が動かす、東京の未来」です。その他は環境局の公式HPをご覧下さい。
Twitter:@team_suisui Facebook:Tokyoスイソ推進チーム Instagram:team_suisui
 今回のTokyoスイソ推進チームは、ある意味大きな進展があったと思います。
それは今までのような大学の先生に座長を任せる委員会方式から、東京都
環境局の部長クラスが議長となって、トヨタ・ホンダ・日産、JXTG、岩谷、東京電力
東京ガス、川崎重工他20数社の水素関係者で作る水素推進チームのメンバーを
都が責任をもって引っ張って行ってくれることです。  推進チーム名簿はこちら
 またもう一つ大きく変わったことは、「東京オリンピックに向けて」という冠が
入っていないことです。 理由をお伺いすれば「オリンピック」が最終目標ではなく、
その後も見据えて水素社会の普及を続けること。「オリンピック」を入れると
「オリンピック委員会の色々な制約が発生して来る」とのことなので、仕方がない
かなと思った次第です。

水素スタンドはどこまで来たか その普及の現状と現在の拠点数

 ではまず水素スタンドへの参入を考えた場合の補助金がどうなっているのか。
そこからご説明しましょう。実は建設費等のイニシャルコストはかなり手厚い補助が
出ています。我々も含めて普通のSS業者である、資本金1億円以下の会社なら、
天然ガスやLPガスからの改質器まで含め総額5億円まで全額補助が出るのです。
 一方、ランニングコストは、国と都とその他自動車メーカーの推進団体から、
年間合計4200万円まで出るので、何とか赤字は避けられるでしょう。
 従って、不適切な表現とおしかりを頂くかもしれませんが、「補助金が出る内」は
問題ないでしょう。現在は2020年までは約束されているようですが、その先は、
「前向きに検討」で終わっているようです。
現在の普及状況としては、あくまで垣見油化調べですが、2017年9月末現在での
開所済が全国に90ヶ所。2017年度中の開所予定を含めると99ヶ所となっています。
地域別、 北海道・東北地方では 宮城で1
関東では、東京が12 神奈川が12、埼玉が8ヶ所で 関東圏で合計36
中部では 愛知がやはり多く16、で合計23
近畿では、12 中四国では7 九州では11の 全国合計で90ヶ所 (9末現在)です
会社別では、JXが51 内SS併設が18。 岩谷は15で 2社が他を圧倒しています。 

Tokyoスイソ推進チーム発足式 強く挨拶した小池東京都知事を囲んで


EVを巡る世界の動向

下記表はとあるエネ庁様の研修会で頂いた表です。前月企画の内容と一部
文章的には重複しておりますが、良く纏まっているので掲示したいと思います。

EVは本当に環境に良いのか

EVは本当に環境に良いのでしょうか。SS業界人として、対外的にこの話をすると
ガソリン需要を守りたいからEVを否定していると言われてしまいそうですが、
私の知りうる情報を総合し、今のガソリンHVとEV。そして将来期待されている
FCVをWell to Wheel すなわち井戸元からタイヤまでの総合効率で、検証します。
下記図はある自動車メーカーがFCVの優位性の説明時に使った2012年の資料
です。私はこれを元に、今の市販のトップクラスの車の値で再検証しました。
本来WtoWの検証は、元の化石燃料は同じにすべきとも言われています。
しかし調べた結果、天然ガスと、原油を採掘し日本までタンカーで運び、自家燃
ロスを考慮して精製し、SSに配送し車に給油するまでのガソリンの総合効率も
約85%なので、上段をそのままガソリンエンジンのHV効率と考えてよいでしょう。
そしてこれを2012年当時のプリウスから今は大幅に燃費改善されているので、
プリウスの効率を34%から38%に換えると総合効率は29%から32%になります。
一方FCVは残念ながら、チャンピオンデータというか机上の理想値です。
FCVに充填する段階で56%を実現するのは、かなり先のように思います。

同様にエネ庁研修会で頂いた表も掲示させて頂きます。当たらずとも遠からず。

急速充電機の設置はビジネスにならない 

実は99%、エネ庁様とJX様の補助金で 弊社河辺SSで実証実験を5年間して
おりました。結論から申し上げると、ビジネスにはなりません。
 100〜200万円程度の充電器そのものは補助金が出ると思います。しかし
SSは大抵キュービクル無しでもいける50kWで設計されています。
従って大きめのSSは、エアコンをGHPにするなどして、電気容量を抑えています。
しかし充電ビジネスを始めるとなると、少なくとも300万円はするキュービクルが
必要になるのですが、これは補助金対象外です。
 もう一つの大問題は、電力会社に支払う月額基本料が、大幅に上がってしまう
ことです。例えば月額5万円なら年間60万円出費です。
 また決して広くはない、我々のプロパー特約店運営のSSで、2mx4.5mのスペ
ースを30分取られてしまうというのも、ボディーブローのように辛いことです。
 そしてもう一つ悲しいのは、お客様に喜んで頂けないということです。
要するに家で充電し忘れた時だけ、コストを払って充電しに来る。家まで帰れ
れば、安い深夜電力が待っているのに、家まで帰れないからSSで充填する。
これでは残念です。私にとってのビジネスの原点は、「お客様の感動」なのです。

自宅コンセントのミニ改造で充電は十分?!

EVの普及に懐疑的な人の意見の一つの、「自宅での充電能力が足りない」
ことをあげる方がいますが、私は、全く問題ないと思います。
EVを通勤に使うヘビーユーザーを考えてみましょう。
片道20kmとして1日往復40km。月25日として月間約1000kmとしましょう。
日産新リーフは、40kWhで400km走るのですから、電費は10km/1kwhです
1日40km走って夜ちょっと遅めの22時に帰宅し翌朝6時出発とします。
家庭用の充電コンセントの能力は200V 20Aですが、余裕を見て15Aでも
200V x 15A x 8時間= 24kwh 要するに240km分の充電が出来るのです。
従って 私の結論は、充電さえ忘れなれば、家庭用で十分だと思います。
何も毎日40km分、時間にして13時間もコンセントにつなぐ必要はないのです。
若干コストがかかり、充電効率が落ちてもよいなら、車を定位置に停める
だけで充電を開始してくれる、非接触型の充電システムもあるようです。

EVやFCVの本当の可能性

私は、EVやFCVや或いは日産Note e-Powerのような車が、本当に普及する
のは、上記の電動車に、ホイールインモーターがついた時だと思います。
今は、各社とも慎重な参入姿勢ですから、先月のEV一覧のように、ガソリン
エンジンを積んでいたベース車があり、それにモーターとバッテリーを
乗せているので、外観はガソリン車とほとんど変わらないのです。
 しかし本当のEV専用車でゼロからその設計を考えるなら、ホイールイン
モーターです。その名の通りモーターがタイヤの中に入っているのです。
従来の車の形に全くとらわれない車=2005年愛知万博がそのイメージです。

EVの普及とガソリン需要 

今月の最後に今後のEVの普及が、ガソリンの需要減少に与える影響を考えて
みたいと思います。少なくとも2015年度においては、日本国内ではEV+PHVは
まだ14万台です。仮に2016年度末で18万台まで拡大していたとしましょう。
しかし日本の自動車台数は軽自動車も含めると約8000万台。比率にして
0.2%なので全く無視できるレベルだと思います。またEVに変わっていく車も
小型車かつ距離は余り走らない車であることを考えると、今の10倍位の保有
台数にならないと、我々SS業界が実感としての需要減にはなりません。
その目安は、全保有台数の1%超。即ち100万台を超えた位だと思います。
但しこの100万台突破時点では、その流れはもう止められません。従って
SS業界は、ガソリン数量に依存しない経営を今から実現しておくことです。