祝 JXTG誕生記念企画No2
精製公称能力削減と分解装置設備率&マスコミ記事反論
あなたは「JXTG誕生」企画の番目のお客様です。
JXTG誕生から1ヶ月が経過し、JXTG主催の記念披露会が各地で始まりました。
その誕生前の3月末日までに精製元売各社の精製能力の削減も終わりました。
今月は、この削減状況や残渣油処理装置の装備率、またJXTG誕生へのマスコミの
評価やSS市況などをアラカルト的に解説させて頂きたいと思います。
                                2017年5月1日文責 垣見裕司

2008年頃の高度化法前と2014年4月1日、2017年3月末の能力比較



削減割合は、法律施行前比 28%減、残渣油分解設備率も50%超に

日本国内の全精製元売の精製能力は、石油連盟のHPの「統計資料リスト」の
08番の「製油所装置能力」から見ることが出来ます。

今現在は、2017年2月分までが掲載されていますが、私は3月末データに更新
するとともに、3月1日発行の著書の「よくわかる石油業界」でも申し上げましたが、
過去からの比較というか、元売各社の涙ぐましい削減を把握させて頂きました。

2008年を分母とすれば、2014年3月末は約20%減、2017年3月末は約28%減です。
製油所数も28ヶ所から22ヶ所へ6ヶ所減ですが、トッパーだけをみれば、更に多くが
停止もしくは廃止されたことと思います。

マスコミなどは、「早く能力削減をしろ」とか、特に今回は設備廃棄ではなく、「公称
 能力の削減で設備廃棄は少ないので、効果はない」と厳しい論調もありますが
そこで働く社員の皆様や更にご家族もいるわけですので、現場を知る業界人として
軽々なことを申し上げる訳にもいきません。

さてこの2回の法律による削減指導でしたが、もう一つの目的でもあった「残渣油
処理装置の装備率」も確実に上昇しました。この数字は各製油所別ではなく、
グループ会社ごとに纏めさせて頂きました。

分母の大きいJXは51.2%と資源エネルギー庁が目標として来た全体での50%を
何とかクリヤーしましたが、東燃ゼネラルだけでは40.6%と意外と低かったのは
驚きでした。外国資本当時、利益に直結しない投資は、難しかったことの名残で
しょうか。昭和シェルが64.8%(富士石油除き)で最も高かったのは意外でした。
こうなると、稼働率を上げて多く生産し、資金回収をしたい気持ちは分かります。

元売マージンも回復基調か

これはJXTG誕生効果かどうかは分かりませんが、3月から原油輸入CIF価格と
海上・陸上・ガソリン輸入価格と差に明らかな変化が見られるようです。

それを表したのが下記の表です。ガソリン海上業転価格と原油輸入CIF価格と
の差を仮に精製元売のマージンとすれば、2016年10月から2017年2月まで
の5ヶ月間の平均9.4円が、3月単月で12.9円と3.5円も上昇しました。

同様にそれまでの国内のガソリン海上価格は、輸入ガソリン価格より4.4円も
安かったのですが、3月は国内の海上価格の方が1.1円高いので、元売に
とって改善に向けての理想的なスタートとなりましたが、それは合併前の3月
から、その兆候は早くも表れていたようです。


SSマージンは回復したのか

SSマージンは上昇したのか ではSSマージンは改善しているのでしょうか。
本来なら上記表にJXの基準仕切りの行を加えたいところですが、JXTGと直接取引が
ある私としては、第2者として守秘義務があるので、今回は資源エネルギー庁が調査
しているガソリン卸価格で代用させて頂きます。
 4月上旬現在は2月分までしか発表されていないので、原油輸入CIF価格同様、
この二つの3月価格は、筆者の推定とさせて頂きます。
その結果は、SS業界のマージンも10月から2月までの5ヶ月間の平均の10.1円から、
3月は4.2円も回復し、14.3円を確保出来たこととなります。 採用したデータは、石油
情報センターの関東平均価格にさせて頂きました。もちろんこの情報センター価格は
実際よりやや高めに出ると言われていますが、傾向値やその変化という視点では
大いに参考になると思います。

SSの末端価格は上がったのか

SSの末端価格を知るには二つの方法があります。
その一つは前述の石油情報センターでもう一つはGogoGSでしょう。
平均値なら前者、直近の安値なら間違いなく後者でしょう。そこでGogoGSで
4月27日時点の東京都に限って 過去7日間の投稿されたデータで、現金・
会員・元売クレジットカードの条件で調べて見ました。(プリカは前払いなので除く)。
その結果、安値から上位40SSをマークの多い方から並べてたのが下記表です。
分母の絶対数の違いは、前月企画の通りですが、それにしても昭和シェルが
圧倒的に多いのが分かります。割合ではSS数シェアー約1%のキグナスが多く
なっています。反面、SS数シェアー約30%のJXは、圧倒的に少なく、それまで
安値量販のイメージがあったエッソやモービルが取りあえず様子見の価格で
スタートしたのでないでしょうか。
お客様から見れば安い方がよいということなのかもしれませんが、一歩間違える
と「安くしないと売れない」や「安値以外誇れるものがない」と心配してしまいます。

PBが安いのは分かりますが、それ以上に安いというのは、自らの元売マークの
ブランド価値は、PBよりも低いと考えているのでしょうか。
お客様への還元なのかもしれませんが、持続可能な利益をあげられない経営は
某旅行業者の破綻の例を挙げるまでもなくお客様に迷惑をかけることになります。

過去にはマスコミに大騒ぎをされた大量のプリペイドカードを発行したまま倒産
した柿本石油のことも、同じ業界人として、忘れてはいけないと思います。

元売 昭和シェル PB キグナス コスモ EM 出光 JX 合計
SS数 19 5 4 4 4 2 2 40

某新聞系経済雑誌の記事に感じた私の違和感

JXTG誕生のニュースやその影響を解説する新聞や雑誌は数多くありました。
その中でちょっと気になるというか、違和感を感じた記事がありました。
超大手新聞系の経済雑誌の見出しが「2大再編の副作用」でまず最初の
違和感を感じました。
上記のように業転価格や末端価格が値上がり傾向になったことを言っています。
しかし業界の8割を締める我々系列店からみれば、我々へはブランド料を加算
する一方、業転市場にはブランド料をとらないばかりでなく、更に値引きして
安い製品を供給していることが異常なのです。したがって合併を機に生産調整
をするのはある意味当然のことで、合併の目的でもあります。逆に日本の売上
10兆円を超える企業が赤字を出して、エネルギー輸出国から信用不安で、資源を
売ってもらえないようなことになる方が、よほど国益に反すると思います。

石油業界におけるムーディーズ格付けを考える1998/10企画

実際大昔は、格付け会社から投資不適格の烙印を押された元売もありました。
石油業界におけるムーディーズ格付けを考える
 で述べています。
http://www.kakimi.co.jp/098100.htm 

1998年当時ですが、Ba2はコスモ石油 Ba3はJomo 出光に至ってはB2です。
こんなことにならないよう合併という身を切る覚悟をして実行に移した訳ですので
トヨタのように2兆円稼いでとまで申しませんが、5000億円以上の持続可能な
利益を上げて、世界のメジャーと闘える優良企業を目指してほしいと思います。
一方SS業界としても説明不足で納得いきません。「12月から10円も値上がり」
は事実ですが、原油価格が10月から2月までに10円上がった事に全く触れて
いないのは極めて遺憾です。
そして「再編を促した経済産業省すら問題視する」との表現も少し違います。
ご当局が問題にしているのは、業転価格や市況が値上げ(正常化)ではなく、
同じ系列内で大手の元売販社と零細特約店販売店のとの説明のつかない
仕切格差が問題と言っているので、こちらも論点がずれているように思います。
ではどのような記事が良い記事なのでしょうか。消費者受けする値上げはダメ
ではなく、消費者は勿論「我々業界人」が読んでも、「よくここまで調べた。いい
ところをついていて、問題の解決策まで示している」と思える記事だと思います。

  
  番外編 JXTG合併記念名刺を作りました もちろんジョークです