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ガソリン税暫定税率 遂に廃止か 2008年4月の反省も含めスムーズな移行を考える |
もう若くはない私として、昨日の事のように覚えているのが2008年の
ガソリン税暫定税率の1ヶ月間の廃止と、5月1日からの復活です。
一体何が起こったのか、簡単におさらいをしておきす。詳細は当時の
HPをどうぞ。2008年2月NO1、3月NO2、4月NO3、5月NO4です。
2005年、平成17年9月11日(小泉首相) 衆議院の通称郵政解散では、
自民が圧勝し、与党327 野党・他153となりました。
2007年平成19年7月29日(安倍首相)参議院選では 自民党は37議席と
歴史的な大敗、民主党は過去最高の60議席を獲得し、参議院で第1党、
非改選議席と合わせて137議席を得て、参議院の安定多数を確保しました。
この結果として後日安部総理は体調不良で辞任、福田政権が誕生しました。
これがいわゆる衆参ねじれ国会です。こんな時ガソリン税暫定税率問題が
浮上。与野党対立が解けぬまま2007年度末で期限切れで失効したのです。
しかし4月。衆議院では多数を握る与党自民党は、何の議論もないまま
5月1日からその暫定税率を復活させました。 その後2009年の平成21年
8月30日(麻生首相)衆議院選挙では 自民党は歴史的敗退、民主党は
大勝し308議席を得て非自民の鳩山連立政権が誕生したのです。
2008年3月から5月にSS現場では一体何が起きたのか
SS現場では3月の最終週から、国民の皆様が政治のドタバタを見て
これはもしかすると4月から25円ガソリン価格が下がりそうだという
予想が広がり、ガソリン販売数量が急に減少し始めました。
SS現場の方でも4月から下がるなら、3月末にはタンク在庫は空にして
4月を迎えようと思ったのですが、販売数量が減少したのでかなり高値
在庫を持ったまま4月を迎えました。
そして4月1日。マスコミ受けを狙ったごく一部のSSが、赤字覚悟で
安値販売を始めたのですが、これがテレビで繰り返し放送されました。
その放送を見たお客様が来店されるようになると、高い在庫なので
3月と同値価格で売ることが最悪のような雰囲気となり、結果として
多くのSSが値下げ販売を余儀なくされるようになりました。
一方、3月価格のまま販売するSSは、お客様に厳しいお叱りを頂き
売上げ数量が急減し、いつまで経っても高値在庫がなくならず、結果
として全SSが遅かれ早かれ赤字で販売をしたと言えるでしょう。
これが現実なのに私が怒りを持って今でも覚えているのは時の
M官房長官の4/23の記者会見発言です。
「まあ、4月1日以降、多少の混乱はありましたけれども、元売やSSの
皆さんのご努力で、大きな混乱はなく進められてきたと思います。
5月は連休の直前ですから、どのSSも地下タンク一杯の在庫を抱えて
それが全部使われるのに何日かかるか分かりませんが1週間でしょうか。
しかし4月上旬がそうであったように 5月上旬に大きな混乱が起きるか
といえば、私はそれは起きないんではないかなと思います。」以下略。
要するに 「4月は確かに損をしてしまったかもしれないが、5月1日から
また25円上がるのだから、4月末に満タンにしておければ同じでしょと
責任を回避したのです。
しかし現実はどうでしょう。5月から暫定税率の復活値上げが決定すると
4月中旬から売上数量が急増しました。我々SSがガソリンを元売に注文
してもローリー配送には限りがあるので、満タンにはならず、その日に
販売するのを確保するのがやっとの状態なのです。
そして4月末はお客様が殺到し、ほぼ全てのSSで在庫ゼロになりました。
当然お客様からは、こんな長い時間待って列に並んだのに、在庫切れで
買えないとは何事だと厳しいお叱りを頂きました。
そうなのです、政治の矛盾なのにそれを説明するのは、何の責任も
ないSS:現場なのです。
問題は3つ。見なし還付法案秘訣と元売の対応が分かれたこと
では2008年の大混乱の要因は何か。私は3つあると思います。
第1は2008年3月に期限切れを見越して野党が提出した見なし在庫の
還付法案が与野党対立で成立しなかったことです。
第2、元売にとっても突然の出来事で、準備が出来ず対応が分かれた
ことです。例えばA元売は、高値在庫を按分して4月1日から25円の
内の20円だけを下げた。B元売は、高値在庫を日数按分して4月5日
から下げた。しかし一番無責任な対応は、お叱り覚悟で言えば当時
の新日本石油です。今回の暫定税率は元売が被るべきものではない
として、同じ系列内でも、A製油所出荷地域のSSは即日25円値下げ。
B油槽所出荷のSSは高値在庫がはけた例えば4月5日から。C巨大な
油槽所出荷のSSは例えば4月10日から値下げと分かれたのです。
その当時も元売トップには会えましたので、確かに元売のせいでは
ないかもしれないが、結果的に企業規模の小さい特約店や販売店に
負担を押しつけてしまうのはおかしいと大議論をしたのを覚えています。
(最終的には後日、油槽所経由SSの売り負け分の一部補填有り)
第3は、僅か1ヶ月後に25.1円も再値上げされたことです。下がる時だけ
なら何とかなりましたが、4月末の値上げ時に大混乱しました。
垣見の3提案 見なし在庫還付 3段階 EV課税他は後日でいい
2008年時の混乱に学べば、対応は2つで良いと思います。
1点目は最低限、元売や商社、そして輸入権を持つような大手会社の
油槽所等の手持ち在庫を見なし還付が可能なような法制度の作成です。
実は、従来の「燃料油価格激変緩和対策事業」やそれを組み直して
今実施の「燃料油定額の価格引下げ措置」においても参加事業者は
こちらの通り約50社ありますので、例えば11月1日から開始なら、10月
末日の手持ち在庫数量を当局に報告し、還付するのがシンプルです。
本案を都石理事会で報告した際、SS在庫も還付してもらえないのか
とのご意見を頂きましたが、激変緩和事業もスムーズに行きましたし、
SS在庫はある程度調整出来るので、私はこの50社で良いと思います。
2点目は、25円一気に下げるのではなく、3段階で下げる。すなわち
既に定額で10円補助されていますので、あと15円下げれば良いのです。
よって例えば11月1日実施なら、10月10日から5円補助を増額し15円。
10月20日から5円増額し20円に。そして11月1日から5.1円増額して
25.1円の暫定税率を順次値下げすれば混乱は起きません。
自民党では、自動車税全体を見直し、EVの走行課税を検討等の話も
ありましたが、今回は野党8党が纏まりそうなので、自動車重量税や
EV課税とは別に、先にガソリン税の暫定税率廃止をして欲しいと思います。
今回軽油の話がない理由=軽油税が約0.9兆円の地方税だから
今回のガソリン税暫定税率廃止問題で「軽油」についての議論が全く
ないのは何故でしょう。それは軽油引取税が全て地方税だからでしょう。
余談ですが我々SS現場で、軽油税には消費税はかけられておりません。
さて軽油税の本則税率は地方税法で1kLにつき15,000円、これに17100円
の暫定税率が課され全体で32100円と地方税法附則にあります。
一方ガソリン税(揮発油税)は国税部分が24.3円/L、地方は4.4円/Lで
合計28.7円が基本本則税率。そして暫定税率は国税分が24.3円、
地方税が0.8円合計25.1円。この総合計が53.8円です。
従ってガソリン税暫定税率の中の地方税は、0.8円のみ。よって暫定税を
廃止しても地方に与える影響は、ガソリン数量が年間4300万kLとして
年間344億円程度です。一方軽油税は年間約9100億円。安易に軽油も
暫定税率分を下げると地方財政には約5000億円の影響を及ぼすので
与党と野党8党も安易に軽油の暫定税率まで下げるとは言えないのです。
灯油、ジェット燃料、A重油等の補助はどうするのか
石油業界で40年培った私見で申し上げれば、長期的に見て、世界で2つも
戦争継続中での原油70ドル/Bは適正価格でしょう。にも関わらず、日本の
ガソリン等石油製品価格が高く感じるのは円安の影響だと思います。
食料品や建築費高騰等もその多くが円安に起因していると思います。
食料品では消費税減税の話がありますが、その他の輸入品に補助金を
出すのか。答えはNOです。よって私はガソリン税暫定税率以外の補助金は、
選挙も終わったので、一度大幅削減ををした方がいいと思います。
例えば航空燃料への4円の補助は不要です。生活困窮者は飛行機に乗ら
ないし、オーバーツーリズム対策にもなるので即時廃止でいいでしょう。
灯油についても、冬場の寒冷地等の生活困窮者に出せばいいと思います。
脱炭素や脱温暖化対策、EV課税、自動車税の全体見直しは?
ガソリン税暫定税率廃止の話が出る度に、出る反対意見としては
「脱炭素や脱温暖化の流れに反する」が一番多いと思います。また
選挙前の自民党は「自動車重量税やEVの走行課税等、自動車関連税
を総合的に議論する必要」は一応正しいのですか、今の政権は結論を
出せないので、ガソリン税暫定税率を先に下げてから議論して下さい。
とにかくガソリン税の暫定税率分は早期廃止を強く希望します。
以下参考リンクです。
立憲民主党 7/28発表 野党8党で廃止法案早期提出で合意
7/29発表 野党8党 11月1日からの廃止を目指す
石油連盟発行 今日の石油産業2024年 17-18頁
財務省発表 自動車関係諸税・エネルギー関係諸税の概要(令和7年度)