2015年の石油業界重大ニュース
 JXと東燃、出光と昭和シェル、原油安、需要縮小、電気自由化他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2015/12/2
昨年末、出光による昭和シェル株の買収ニュースが飛び込んで来てからの早くも1年。
そして今年も11月16日、そして12月2日にも日経とNHKが「JX、東燃ゼネと統合交渉」という
衝撃のニュースが流れました。今月はこの話から恒例の年末重大ニュースをお送りしたい
と思います。
今年も1年ありがとうございました。そして来年もよろしくお願いします。
                                          文責 垣見裕司

重大ニュースNO1 日本経済新聞11月16日号12月2日号とNHKニュースの内容は
JXと東燃ゼネと統合合意 17年メド 石油2強に 2015/12/2 2:00
JX、東燃ゼネと統合交渉 年内合意めざす 2015/11/16 2:00
JX、東燃ゼネと統合交渉 製油所の統廃合が焦点に 2015/11/17 0:45
JXと東燃の経営統合 あすにも協議入り決定 NHK 2015/12/2 04:34

要約すると以下の内容です。(NHKは、12/2ニュースのリンクのみ)
JXホールディングス(HD)は東燃ゼネラル石油と経営統合に向けた交渉に入った。
JXHDは既に水面下で提案を始め、近く交渉を本格化し、年内にも経営統合での
大筋合意をめざす。統合は株式交換を軸に今後詰める。東燃ゼネラル社内では
売上高で約3倍と規模の差があるJXHDとの統合に慎重な意見が広がる可能性も
公正取引委員会との調整も必要。両社の統合について、2017年3月末を期限に
国内製油所の能力削減を求めている監督官庁の経済産業省は「国を挙げて応援
したい」とエールを送る。
注目すべき点は、JX側が主語となっていること
日経新聞や同web頁からは、かなり多くのことが行間に書かれています。既に発表
となっている事や日経の推測を除き、日経がこの記事で言い切ったことのみをピック
Upするとそれは見えて来ます。
まず主語はJXHDであること。これは過去、三菱石油、九州石油、Jomo等の合併や
統合を成功させて来た実績があるので、十分納得出来る話です。
時期は、年内に大筋合意を目指す。これは多少、希望的観測というか、背中を
押している感があります。では誰が背中を押しているのか。それも書いてあります。
経済産業省は「国を挙げて応援したい」。この表現は、場合によっては今回のニュー
スがご当局筋から流されたことを暗示しているかもしれません。というのも、日経と
NHKという、それぞれの分野で、最も信頼の高いと言われるメディアから同時に
流されたことも、それを匂わせていると思います。製油所配置は当HPのこちら。
関係元売各社の売上等決算比較データはは年8月企画をご参照下さい。
私の考える理想の姿は
日本には残念ながら資源はほとんどありません。どう逆立ちしてもエネルギー輸入国
なのです。従って資源開発関連会社には、国内というよりは、対外的に圧倒的な力を
有して頂く必要があります。その意味では、今回の話は大賛成です。少なくとも精製
部門や物流部門の統合は、可及的速やかに行えば、コスト削減に直結します。
製油所配置を見ても、首都圏と関西圏に重複が見られます。これもいつぞや読売
新聞に書かれた「根岸製油所廃止」という話も、地元や労組問題を別にすれば、
大いに検討すべきでしょう。何故根岸なのか。例えば同じ規模の鹿島と比較すると
根岸の方が古いこともありますが、土地の付加価値等、新事業の自由度や可能性
は、根岸の方が遥かに高いと思います。そこまで示せば、地元問題も労組対策も、
自ずと解決出来ると思います。
 一方販売の方は、新日本石油とjomoとの統合の時のように一つのブランドに即刻
統一するメリットは少ないと思います。東燃ゼネラルには ESSO、MOBIL、ゼネラル
の他、EXPRESSというブランドもあります。両社の企業文化もかなり違うので、それは
HDの傘下にJX系の販売元売と東燃系では、EMGマーケティングを残せばよいような
気がしますが、読者のお考えは如何でしょうか。
 最後に公取問題もあります。しかし、出光と昭和シェルの統合があるなら、SS数の
シェアーで JX+東燃43%、出光+昭和シェル21%ですから、航空業界の2トップ体制を
見ても十分許容範囲と思います。
 このシェアーで考えれば、もし東燃が出光+昭和シェルの側に加わってしまうと、
長年維持してきたJXの業界ダントツのNO1の地位が揺らぐので、冒頭に申し上げた
「JXからのアプローチ」というのも状況証拠ながら、十分考えられる話だと思います。
重大ニュースNO2  出光による昭和シェル株買収(7月) 基本合意発表(11月)
最初の発表は7月30日でした。下記公式発表と弊社8月企画をご参照下さい
ロイヤル・ダッチ・シェルからの昭和シェル石油株式会社の株式(33.3%議決権比率)
の取得に関するお知らせ(PDF:259 KB)
2015/7/30
http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/150730.pdf

そして11月12日に発表された基本合意の内容です。
昭和シェル石油株式会社と出光興産株式会社の経営統合に関する基本合意書
締結のお知らせ(PDF:502 KB)
 2015/11/12
http://www.idemitsu.co.jp/company/news/2015/151112.pdf

でも熟読させて頂いて分かることは、対等な精神基づく両社の経営統合に関する
基本合意書を締結したとのことですが、実は確たる内容はなく、これから決めていく
というのが実のところのようです。株式上は、出光は昭和シェルの事実上の親会社
となるのですが、昭和シェル及びその特約店や取引先に最大限の敬意を払ったと
私は解釈しています。称号も未定。本社も両社の本社でない第三の場所を本社と
する。両ブランドも当面併用する。基本合意書は法的拘束力を持たない。とのこと
なので、核心的なことはこれから決めるのでしょう。来年も注視したいと思います。
NO3.コスモ石油 HD体制となる 三菱商事エネルギー誕生
このニュースは、3番目に選ぶべきかは考え方次第ですが、業界再編ネタとして
続けて上げてみました。 私の勝手な印象ですが、コスモ石油の場合は、分社化等に
よりどんな要請にも答えられるように受け入れ体制を整えたという感じがします。
  どこか1社とガッチリ組むのは理想ですが、各製油所の所在地等、その地域地域
においてベストパートナーと組むという地域最強連合の方が、現実的だと思います。
  また商社系石油会社についても、三菱商事グループ会社に大きな再編の動きが
ありました。 2015年10月、三菱商事の石油エネルギー部門、三菱商事石油、
エムシー・エネルギーに分散していた国内石油製品販売事業の経営集約を目的
として、これらを統合した三菱商事エネルギーが誕生しました。 これにより、ガソ
リン・灯油・軽油から重油・アスファルト・潤滑油までの供給を担い、石油産業の
ダウンストリームの大部分を網羅する企業となり、迅速化、効率化、省コストを
実現する会社を目指すようです。 これで商社系は伊藤忠エネクスと並んで2トップ
体制が確立しました。
NO4.原油価格 再度の価格下落 その原因は何か
次の大きなニュースは、やはり原油価格の更なる値下がりです。昨年7月からの
最初の暴落は、シェールオイルの増産や中国経済を始めとする世界経済の失速等
需給緩和要因によるものだと思います。 それまでの最大の原油産出国のサウジも
安易に需給調整せず、米国のシェールオイル開発会社潰しの戦略に出ました。
その結果1月に40ドル台となりシェールオイル業者も音をあげて、一時60ドルに
上昇した時は、誰もが「原油価格は底を打った」と思ったことでしょう。
 しかし原油価格は今年も7月から再び値を下げて一時は40ドルを割りました。
今回の下落理由は、需給緩和要因ではなく、世界同時株安に端を発した投機
マネーが、一時的に流出したのだと、当初私は解釈していました。従って株価が
安定してくれば、少なくとも50〜60ドルまでは戻ると思っていたのです。
 ところが下記グラフをご覧下さい。NYNEMEXのWTIの週足期近ものです。
世界同時株安が一段落し、日本の東証も再び2万円台に挑戦しようかというのに
原油価格は一向に戻りません。パリで起こった同時多発テロやシリアでの現状。
更にはトルコによるロシア機撃墜など、地勢的リスクは益々上がっているのに
原油価格は反転の兆しを見せません。日本経済にとっては、良いことですが
中長期的には、暴騰要因となるので心配です。
最近はコストの安くなった米国のシェールガスが、スタビライザー(価格安定機)
役を果たしている(エネ研小山常務理事)との見方もありますが、それにしても
安すぎると思います。この原油価格も併せて注視していきます


NO5.下落する末端市況  しかし需要は復活せず
この原油下落と末端SSの過当競争から市況価格は大幅下落しました。当社が
定点観測しているジョイフル本田の瑞穂店は、本年6月5日の133円から、直近の
11月末日には112円まで下落しました。この価格は残念ながら一般的な系列仕切
価格を大幅に下回るものです。 ではその安値で需要は回復したのでしょうか。
2014年度のエネ庁発表のガソリン販売は95.5%ですが、これは昨年3月の消費税
仮需とその反動がダブルで効いていますので、参考になりません。本年1月から9月
までの累計と前年同月比較でも消費税要因は入ってしまいます。 そこで2015年4月
から9月までの半年で比較してみると、前年同月クリアーは3勝3敗、半年累計では
101.5%でした。 ただこれは夏の一時的な猛暑効果もあるので、需要減は止まった
といえる程の強い数字ではないと思います。
NO6.コストコ新規参入 国内に4店舗 その驚愕の価格は90円
会員制ショッピング専門店のコストコが、かみのやま倉庫店(山形県)、射水倉庫店
(富山県)、岐阜羽島倉庫店(岐阜県)、中部空港倉庫店(愛知県)と国内に4店舗
(セルフ式)がオープンしました。超大型資本の異業種がSS業界に参入して来たの
です。このコストコは外資系だけあってローコスト運営が徹底しています。事前に登録
した会員のみ、支払はプリペイドカードかアメックスカードのみで、現金では一切買え
ないのです。驚くのはその価格です。先にオープンした3店舗は、11月末現在、税込
113円前後のまあ理解出来る下限値ですが、中部空港倉庫店で、消費税込、勿論
ガソリン税53.8円込みで87円という驚愕の安さです。何故ここだけこんなに安いのか
と言えば近くのPBSSが、86.8円という徹底した対抗価格を出しているからです。
税込87円は消費税抜きで80.55円ここからガソリン税53.8円を引くと26.75円です。
ちなみに直近の10月の原油輸入CIF価格はこちらの通り、36.14円なので、日本の
輸入原価すら下回っていることになります。愛知県石商は、不当廉売で訴えることを
検討しているようです。
(11月末日時点で、コストコ109円(税込)までの回復を確認)
No7.石油業界も電力小売自由化の準備始まる
今年の夏以降のニュースとしては、電力の小売り自由化に対し、石油元売も本格
参戦を表明したことでしょう。電力の自由化は既に始まっており、2004年の50kW
以上の自由化に際して、筆者の本社ビル別館ビルは、その電気を当時の新日本
石油から購入するとともに、いわゆるビル一括受電を行い、各テナントへ電気の
販売を始めています。そして来年4月から自由化されるのは一般家庭用です。
石油元売ではJXがいち早く参入を表明。7月に特約店説明会を開催しました。
東燃ゼネラルも参入を発表。10月に取引先向けの説明会を開催したのですが、
予定の3倍の申込みがあったので、急きょ場所の変更をしたそうです。
 実は両者のビジネスモデルには大きな違いがあります。東燃ゼネラルによれば
手数料は先発元売の3倍以上、排他的な契約でもなく、特約店等がLPガスを販売
していれば、電気の債権を譲渡してセット割りも可能なのです。電気も、しばらく目
が離せません。電気小売り自由化に関しては7月企画の参照
NO8.水素社会もジワリと進む 今年も東京水素推進会議 委員を拝命
今年も全国に講演に行きましたが、必ずご要望があるのは、この水素の総括話です。
東京水素戦略会議も今年度は、東京水素推進会議に名前を変えましたが、怱々たる
メンバーの中、今年も都石代表として私も参加させて頂いております。 東京で建築
する場合は中小企業なら全額補助かつ、運営費 も1千万円補助でしたが、国が更に
2千万円上乗せ決定です。私は、水素スタンドへの単独補助ではなく、水素スタンドを
作った場合は、その周りのタクシー会社や場合によってはバス会社等へのFCVタク
シーやFCVバスの購入補助を出せば、最初から花とミツバチ 状態が完成しWinWin
の関係になると提唱しています。
NO9 原発の再稼働始まる 世界的なLNG価格には下落要因
運転上の危険性は、震災前より大幅に減ったので、絶対反対ではありませんが、
使用済み核燃料の処理問題は何ら解決せず、一時保管場所も全く決まっていない
ので長期稼働は反対です。世界各地のLNGプラントが稼働を開始する2019年
までの限定期間に留め、ソフトランディングを図るべきでしょう。
No10 VW排ガス数値偽装問題
横浜のマンション基礎杭偽装問題は、国民的話題ですが、石油業界的にはVWの
排ガス数値偽装問題は重要問題です。リコールとのことですが触媒を通せば出力は
低下し、燃費は悪くなるし、触媒寿命も短縮、車両価値も下落します。その保障を
VWとしてどう対応するのでしょうか。日本でも大昔は、「車検の後は触媒を外した」
なんてことは個人レベルではありました。しかし今はそれに手を貸すSSはもういない
と信じています。
その他SS業界で抑えておくべきニュース
@4月企画でご紹介した系列SSの分析義務軽減問題でしょう。当局から発表され
  た内容とは、随分違った改定後の契約書が出来て戸惑っているSS経営者も
  多いかと思います。これは各SS経営者のご判断で結論を出すしかないでしょう。
A有効求人倍率急上昇、人件費高騰、ますます進む業界人手不足問題。
  これは昨年より一層深刻になったと思います。早期の根本解決が必要です。
弊社 そして私のニュース
弊社としては、全直営3年連続JXトリプルクラウン達成は朗報です。
尚、私ごと恐縮ですが、11月末に開催された弊社株主総会後の取締役会で社長を
拝命しました。今後も、今までにもまして、社業の発展と業界貢献等とささやかな
社会奉仕を続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。