古くて新しいガソリン税等石油の税金の話 日本国民は何故怒らない?
 ガソリン税と消費税の二重課税やガソリン税の一般財源化問題を考える
2008年5月緊急企画として どうなるガソリン税暫定税率問題NO3 を立ち上げました。是非ご覧下さい
2008年4月 どうなるガソリン税暫定税率問題NO2 を立ち上げました。
2008年2月 どうなるガソリン税暫定税率問題 を立ち上げました
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5月11日の東京大手町、過去には例の無い、業界を超えた一大街頭キャンペーンが行われました。
政府が「骨太の方針2006」に盛り込もうとしている「ガソリン税、軽油引取税など道路特定財源の
一般財源化に反対する運動」です。石油業界からは、元売レベルでの石油連盟と我々SS業界の
総本山である全国石油業商業組合連合会(通称全石連)、自動車業界からは、日本自動車工業会
日本自動車販売協会連合会、日本自動車連盟(通称JAF)、また消費側の代表として、全日本トラック
協会などが一同に会しました。今月はこの古くて新しい石油関連の税金問題を解説したいと思います。
  2006/6/1初掲載  2008/4/14データ更新   文責 垣見裕司


石油に掛かる税金の種類と単価とその総額は一体幾らなのか
石油関連の税金で最初にかかるのが、原油等輸入段階での石油石炭税で1KL当り2040円
これは年間では5210億円となります。次に製品の段階で掛かるのは、ガソリン税53,800円
/KL、同様に年間では 30,647億円(以下カッコ内は年間総額)、軽油引取税32,100/KL
(9,914億円)、ジェット燃料に掛かる航空機燃料税26,000円/KL(1,052億円)、LPガスに掛かる
石油ガス税9,800円/KL(280億円)があり、これらを合計すると47,000億円にもなります。
そして石油製品の購入の段階で支払わされている消費税も忘れてはいけません。
税率は5%でも、その総額は何と約1兆円にもなります。
尚、原油に課せられていた原油関税 (215円/KL)は、平成18年3月末で廃止となりました。
石油関連税の国家予算に占める割合は
では、この石油関連税の国家予算に占める割合はどのくらいなのでしょうか。平成20年度
予算によれば、国税収入の合計は55兆1,399億円。内訳では 所得税の29.5%、法人税30.3%、
消費税19.4%に続き、石油関連税は6.9%という非常に高い割合となっています。
ちなみに税金を飲んでいると言われる酒税は2.8%、タバコ税2.0%、また相続税の2.8%より
遥かに多いことを国民の皆様は、ご存知でしょうか。また自動車関連という意味では、自動車
重量税が1.9%もあるので、石油+自動車では、8.8%も負担しているとも言えるでしょう。

石油の税金は一体何に使われているのか
ではこの47,000億円という税金は一体何に使われているのでしょうか。
まずガソリン税と軽油税と石油ガス税は道路整備に使われその合計は40,600億円です。
航空機燃料税からは、1000億円が空港等の整備に使われています。
石油石炭税の内、2700億円が、燃料安定供給対策とエネルギー需給構造高度化対策に
使われています。以上全部の合計は47,000億円となっています。



暫定税率と一般財源化問題
さてここからが最も問題な話です。本来ガソリン税や軽油税は、道路特定財源で、尚且つ
暫定税率であり、その暫定期間終了時には、税率が下がるはずであるにも関わらず、
これが税制改革の名の下に「一般財源化」されてしまいそうなことです。
では、その経緯を過去に遡って調べてみましょう。現在のガソリン税53.8円/Lは、1974年の
4月以降「緊急かつ計画的な道路整備」のため、本則税率 28.7円/Lに加え、76年7月と
79年6月の二度に渡って上乗せされました。この上乗せ分25.1円は、その期限である2008年
3月末に終了することになっているので、本来なら2年後からはガソリンは大幅に安くなるはず
なのです。小泉改革で道路財源が余るようになったのなら、それ一度国民に返すべきでしょう。
またここ数年の原油高騰で石油価格は、30円近くも高騰しているので、一般消費者はもちろん
価格が上がっても運賃に転嫁出来ない運送業界のためにも、本来の主旨の通り、期限終了時
以降は、上乗せ分のガソリン税25.1円を値下げすべきではないでしょうか。
ガソリン税53.8円にも5%の消費税が上乗せされている事実は意外に知られていない
次に問題なのは、税の二重課税問題です。ガソリン税53.8円にも消費税5%が上乗せされて
いるのです。その額、2.7円。しかし数量がとても多いのでその総額はとんでもない金額になります。
例えば、石油全体の売上総額を約20兆円とすると、その内石油本体の価格は162,000億円、
一方税金分は49,000億円となります。この49,000億円から、消費税が上乗せされない軽油税と
航空税を除く37,000億円には、5%の消費税が課税されてしまうので、その総額は1,900億円にも
なります。これがいわゆる TAXonTAXすなわち、二重に課税されているのです。
超高値圏の原油より高い ガソリン税
原油は高くなりました。以前なら1バーレル20ドル、円レート120円で輸入CIF価格で15円です。
今は70ドル/B、円レート1ドル110円で、輸入CIF価格は48円になり、実に33円も高騰しました。
しかしそれでも1L当り48円です。一方税金は、石油石炭税2.04円、ガソリン税53.8円、そして
消費税は、ガソリン税抜き価格130円として6.5円となり、合計62.34円/Lの税金となります。
日本の国民の皆様は、この事実をご存知でしょうか。ご立腹される方はいませんでしょうか。
実は、日本の高い石油の税金に怒っているのは、日本の国民だけではなく、産油国も怒っている
という話を聞きました。彼らにしてみれば、貴重な有限の資源を切り売りしているにも関わらず
何の資源も無い日本が、原油代より高い62円以上の税金を、何の苦労なもしで徴収している
からなのでしょう。
小泉改革で、土建業界をバックとした旧田中角栄派閥は完全になくなったと言って良いでしょう。
今こそ、読者の皆さんも石油に対する税金を今一度考えて頂き、その答えを皆様なりの方法で
国に伝えてみては如何でしょうか。
         図表提供 石油連盟資料より

今本当に必要なのは、道路ではなく、エネルギーや資源を確保する為の資金(税金)だ
「道路」と「自動車」と「ガソリン」の今後の優先順位。この究極の問題を考えてみましょう。
一度作った道路は、維持費は必要とするものの、急に消失する訳はないし車も同様です。
しかし原油が、過去5年で5倍になったように、ある日手の届かないものになる可能性はあります。
従って、石油などこれからのエネルギーやレアメタル等の資源を獲得するための財源等の確保が
本当は、最も必要なのではないでしょうか。
原油が20ドル以下の時は、一般経済商品でよかったもしれませんが、30ドルを超えてからは、
国の経済や安全保障的見地から、国が国策として行うべきだったのではないでしようか。すなわち
「国際石油開発株式会社」と「帝国石油」の合弁等、民間会社レベルの話ではありません。
これは私の夢に近い案ですが、元売を含むエネルギー供給会社の税引前利益の半分を
原油等資源開発投資損失引当金」として、損金で、すなわち無税で積み立てておくのです。
その累計は1社で1兆円位。更に、電力会社のウラン確保や都市ガスのLNGも含めるなら
エネルギー業界全体で少なくとも10兆円くらいの財源を「損金で非課税で事前に」積み立てる
必要があると思います。その後5年以内に投資する。投資が成功すれば、それは企業の利益と
なって現れるでしょうから、その時点で課税すればよいのです。また先に損金として計上して
いるので、企業経営者も安心してタイムリーな積極的な投資が出来るようになるでしょう。
実は既に「海外投資等損失準備金制度」はあります。しかしこれは事後、すなわち投資後で
ないと30%なり100%を積み立てられません。予算規模も国全体で年間42億円程度では、単なる
減税制度なので、私の申し上げる「資源エネルギーの国家戦略」とは程遠いものがあります。
 バブル崩壊以降の失われた10年で、国が金融機関に支援したと言われる金額は約70兆円。
産業の血液とも言われるエネルギーの確保ですから、国にも本気で考えてほしいものです。
そしてこの引当金制度案は、企業が利益が出たときの課税を5年先送りして、業界全体で
例えば10兆円くらい貯めていいですよという案なので、一時税収は減るかもしれませんが、
何も今すぐ10兆円を投入して下さいという訳ではありません。そしてこれは前述の通り石油業界
だけでなく、電力業界ならウラン確保、都市ガスならLNG、更には、エネルギーに留まらず、
技術立国日本としての生命線である、精密部品等に不可欠な「レアメタル」のような資源確保に
至るまで、その適用枠を広げても良いような気がします。