どこまで増えるセルフSS NO3
その実態の把握と現状分析、今後の予想と将来への課題
拝啓 あなたはセルフ企画の 番目のお客様です。NO0NO1NO2、もご覧下さい。
98年4月に日本特有の有人セルフがスタートして丸5年。1年目の85SSはいかにも少ないと思いましたが
2000年後半より徐々に、そして2001年後半からは爆発的に増え始め、それは2002年も堅調に増加し
2003年3月末には、2500SSを突破しました。今月は、その実態を冷静かつ正確に分析し、今後の
セルフ数の予想や業界に与える影響、そして将来への課題などを考えて見たいと思います。

セルフSSの四半期別開店数と累計数(98/4-03/03) 
5月の下旬、石油情報センターは2003年3月末のセルフSS数を 2522個所と発表しました。
2002年3月末現在は、1353箇所でしたから、それまでの4年分が、昨年1年間で、爆発的に
増えたことが分かります。同じ時期の全国の固定式SS数を仮に 50,000とすれば、セルフ
SS数の割合は、約5%となり確実に増えているのは、間違いありません。
 一方、昨年企画で「4年間で3件しかなかったセルフSSの撤退も今後は増えるでしょう
と予想しましたが、この1年間で、7SSが撤退またはフルサービスSSに戻しました。
コンビニなど他業界ではスクラップアンドビルドはあたりまえですから、この程度の閉店は
当然というか、石油業界にもちゃんと経済原則が機能している?ことの表れという意味なら
多いに歓迎したいと思います。

今後はどこまで増えるのか
ではこのセルフSS数は、一体何SSまで増えるのでしょうか。
当たらない時の言い訳は、後でゆっくり考えるとして、ずばり予想してみます。
今年と同様のペースで増えるとしたら、あと2-3年で間違いなく飽和状態になるでしょう。
第1に、小規模で消防法の基準を満たせない等の、ハード的な要因です。
第2に、改造すればフルサービス時代の3-4倍は当たり前という事例が過去のものとなり、
もはや数量的増加が見込めないという、市場的な限界があるということです。実際最近の
出店では、改造前の3倍売れなくなったという話は良く聞きます。また販売価格面でも
SSの激戦区では、フルサービスとセルフサービス価格差が無いという事例は、既に市場が
「飽和」し、それが数量でも、市況価格でも、表れていると言えるのかもしれません。
 さて、その限界点の具体的数字は 98年企画 でも予想したとおり私は、今でもせいぜい
4千SSだと思います。もっともその時は固定式SSの総数も4万程度に減っているでしょうから
割合では 10%、販売数量割合にして、30%というレベルが、一応の目安だと思います。
 もし、このレベルを簡単に超えてしまったら、、、SS業界は惨憺たることになるでしょう。
都道府県のセルフ増加数の推移表

都道府県のセルフ増加数の推移
「千葉が207SSで一番多い」等の見れば分かる解説は抜きにして、色々な要因で解説します。

1.前年からの増加率。
 4SSが14SSへと3.5倍になったような分母の小さい県を除けば、最も増加率が大きいのは
神奈川の 71から167の2.4倍、北海道の40から91の2.3倍、兵庫の51から109の2.1倍、
愛知の90から184への2.0倍等があげられます。
 逆に、増加の低い県はどこでしょうか。やはり分母の小さいところを除くと、
新潟23から28で1.2倍、香川の58から73の1.3倍、宮崎の21から29で1.4倍、
愛媛の26から38で1.5倍、徳島の19から29の1.5倍など、
セルフ先進地域?と言われた四国等での増加が低いという傾向が出ています。

2.各都道府県のセルフ化率
 上記の伸び率が、多い県、少ない県の、総SS数に占めるセルフ化率を調べて見ました。
総SS数は、2002年3月末の可般式SSを含む数です。時期的に一致していませんが、傾向は
分かるでしょう。これによれば、セルフ率が高くてその伸びが少なかったのではないとかと
言えるのは、香川県だけのようですが、9.6%にまで達した神奈川が延びているのですから、
10%で頭打ち言うのば、今後を見てみないと分からないのかもしれません。

3.県別のガソリン月間販売量と1SS当たりの販売量
 1SS当たりの販売量が多い県は、セルフ化率が高く、今後も、もう少し高くなる余地がある
という可能性や相関関係はありそうです。但し面積の広い北海道や土地の高い東京は除く、
という例外は考えなくては行けないでしょう。

4.市況要因
市況が低い県は、市場が既に飽和状態になっている すなわち、セルフの新規出店は低い、
ということが考えられますが、昨年度はイラク戦争という特殊要因があったので、前年との
比較で見るのは難しいでしょう。市況は次表に記しました。

本年 昨年 増加率 総SS数
2002/3
セルフ
率%
ガソリン
月間販売
1SS当り
単位KL
神奈川 167 71 2.4倍 1,738 9.6% 256千KL 147.7KL
北海道 91 40 2.3倍 2,612 3.5% 195千KL 74.7KL
兵庫 109 51 2.1倍 1,611 6.7% 180千KL 111.9KL
愛知 184 90 2.0倍 2,583 7.1% 320千KL 123.9KL
新潟 28 23 1.2倍 1,422 2.0% 103千KL 72.2KL
香川 73 58 1.3倍 596 12.3% 47千KL 80.0KL
宮崎 29 21 1.4倍 798 3.8% 47千KL 59.1KL
愛媛 38 26 1.5倍 893 4.3% 50千KL 56.3KL
徳島 29 19 1.5倍 622 4.7% 32千KL 50.9KL

都道府県別の元売出店数

各都道府県の元売別の出店SS数は、石油情報センターからは、発表されていないので
各元売の個別発表や新設新聞記事、各種業界資料からの当社推計ですので、あくまで
参考ということでご理解下さい。
また表の一番上に、本年3月末(一部昨年12月末)の元売発表のSS数を記述しました。
数では、エクソンモービルが536SSとダントツです。次いで分母の大きい、新日石、Jomo
コスモ、出光と続きます。
また総SS数に占めるセルフSSの割合では、分母こそ多くはないですが、
キグナス13.0%、三井12.2%、太陽10.3%が、10%超で、先行しています。
大手元売では、EMの8.3%、Jomoの7.5%、と続き、新日石が3%としんがり?を務めています。
当社推定、元売別の都道府県別のセルフSS数


元売方針を示しているセルフSSの元売社有比率
下記表の4行目は、全SSの社有比率で、業界全体では約23%ですが、セルフSSを分母とし
その内の元売所有のセルフSSの割合を分析してみると、どうでしょう。
セルフにおいては、元売平均でも約6割、コスモに至っては8割近くが元売所有SSです。
初期のセルフよりローコスト化したとは言え、最低でも300坪以上の広い敷地面積と消防法
対応の為のコストはまだ高額で、プロパー特約店が次々に出店するのは難しいという
一般的な見方もありますが、私は昨年企画でご説明した「ゾンビ型の元売所有セルフ」や
手早く数量を伸ばせる?と思っている元売方針の表れであるという説明が正しいでしょう。


社有SSのセルフ化率
似たような言葉で申し訳けありませんが、元売の意思や方針を即座に反映し易い社有SSを
どのくらいセルフにしたかという率を「社有SSのセルフ化率」と表現してみましょう。
全表の新日石で説明すれば、178/2746 = 6.5% という数字です。これを 6.5% しか
とも考えられますし、今後セルフの可能性のある宝の社有SSが沢山あるとも言えるでしょう。
セルフ化率の高い方は、太陽の32%、キグナス31%、三井の29%、九石の24%と中堅元売が
続きますが、大手ではEMGの23%、コスモ21%、Jomo19%、そしてシェルの12%と続いています。
セルフが=自動販売機だとしても、何故、即、安値になるのか
さて大変語弊のある言い方をお許し頂ければ、元売社有のセルフSSは、元売の元売の為の
元売による 「ガソリン自動販売機」 だとしましょう。でも他業界、例えば、あれだけ激戦の
清涼飲料業界も、300万台以上とあると言われているあの自動販売機では、誠に見事に、
買い手としてはある意味悔しいくらいに価格戦争に巻き込まれずに120円で販売しています。
それも、ちょっと車で走れば、大手量販店やディスカウントショップ等で100円を切った価格は
幾らでもあることを十分承知でも、多くの消費者はその120円に納得して買っているのです。
同じ会社の同じ清涼飲料水でも、その販売形態でその価格の差が認められているのです。
物の価格とは、その製品の価値とともに、その供給方法でもその価値が変わる、ということを
十分認識すべきでしょう。コンビ二には、便利さ、自宅や職場からの近さ、何時でも営業等の
総合的な価値が、価格に入っている訳ですし、社用の文房具の供給で急成長した「アスクル」
も製品そのものではなく、むしろその供給方法の価値が評価されて伸びた代表例だと思います。
顧客中心主義で考えれば
販売価格を決めるのは、SSです。でもその価格で買うかどうかを決めるのは、お客様です。
お一人お一人がそれぞれの価値観においてそれぞれのTPOにおいて、SSやサービスを選択
されています。事前の市場調査では、最低でも5円出来れば10円差がないと、セルフを利用
しないと回答した例が多かったと思います。しかし現実には、セルフとフルサービスが同値に
なっても、セルフを利用されている方が沢山いらっしゃいます。
店員と接するのが煩わしいから自分はセルフを利用したい。このようなニーズもあるでしょう。
でも「押し売りが嫌だからセルフに行く」ということであれば、そればセルフのニーズと言うより
フルサービスの接客を改善すべきだと思います。近い将来、SS業界が他のロードサイド型の
販売業や外食産業と、同等に比べて頂けるようなレベルになった時、セルフがまだ価格のみ
しかアピール出来ない競争をしていたら、古くなり始めたそのハードの優位性も維持出来きず
セルフの利用は確実に減ってくるのかもしれません。 2003/5/30 NO2 文責 垣見裕司