原油価格高騰問題第3弾
増産でもなぜ下がらないのか、欧米ではパニックも、
あなたは99年6月00年5月以降、原油価格高騰問題の 番目のお客様です。

9月10日、オーストリアのウィーンで開かれたOPEC定例総会は、10月1日から80万BDの
追加増産を実施することで合意しました。新生産枠は、現行生産水準の3%UPとなり、一応
アメリカを中心とする消費国に配慮を見せた格好です。しかしそれにもかかわらずニューヨーク
WTI先物は総会前から早くも上昇を始めました。在庫は依然タイトではあるものの実需よりは
生産が上回り始めた今、何故にこれほど上昇するか。そして欧米ではパニックが発生し、G7
としても取り上げられるまでに深刻な問題になりました。本年5月企画に続き、三たび原油価格
問題を取り上げて見たいと思います。文責 垣見裕司NO3 10/10 更新

総会で決定した内容とその背景

総会では、80万BDの増産とともに、12月以降の生産は、11月12日に再度臨時総会を
開いて決めることなどが発表されました。
さて今回の注目される点は、前回同様現状追認形ではあるのですが、インドネシア、イラン、
ナイジェリア、ベネズェラの4カ国では、現行の生産能力を上回っており、更に10カ国合計
の生産能力27650千BDの95%に達し、OPEC全体としても限界に近づきつつある
ことを示しているのではないでしょうか。また後に分かったことですが、サウジアラビアの
増産要求は、100万BDであったこと、これに対して生産余力のない国が反対したこと
イラクとクウェートの盗掘問題等、かなりのしこりもこのっている感があります。(千BD)
国名 アルジェリインドネシイランクウェ-トリビア ナイジェリカタールサウジUAEベネズエラ合 計
生産量 8341359384421011404 215767985122289301926200
増枠量  26 42117 6443 66212597093800

それでも原油は下がらなかった

これに対し市場はどう反応したのでしょうか。増産レベルがさほどではないとの憶測が流れ
総会前から上昇は始まりました。そして800千BDの増産発表をうけても、これを現状
追認程度と判断したようでその後も上昇を続けました。これが反落するには、後で説明する
SPRの放出発表を待つことになりました。以下はWTI当限月週足チャートです。
参考にOPEC総会の減産増産合意と主なニュースを記述しました。


税金問題もからんで欧米ではパニック勃発

これらの原油高騰問題に端を発し、英国、フランス、ドイツ、イタリア、米国などで色々な問題
が発生してきました。英国では輸送業者が、製油所などの石油施設を実力で封鎖する抗議や
ストが発生し、一時英国の9割にあたる1万箇所のSSで在庫がなくなり騒ぎがおきたり、
不安心理からスーパーマーケットでの買いだめも始まったというニュースも入って来ました。
実際欧米諸国の末端価格の値上がりは日本より大きく、2000年6-7月価格は、99年1月を
100として、米国165、ドイツ140、フランス125、英国120、日本は110です。
これには各国に占める税金割合を考慮しなくてはなりませが、フランスやドイツでは税金問題
もからんだストのようなので、エネルギー庁調査の各国の税金も下記表にしました。
  本年3月時点でのガソリン1L円換算。
国名日本アメリカイギリス フランスドイツカナダイタリア
消費税4.83.620.1 18.412.93.418.5
石油諸税56.111.382.4 60.155.219.056.4
税抜価格40.231.032.2 29.125.229.636.0
皆さんのご感想は如何でしょうか。本HPで何度も日本の石油諸税は高いと申し上げて来たのに
他の国も高いじゃないか。というお叱りが聞こえてきそうです。しかし欧州は間接税中心の国
であり所得税などは当然安い訳です。これをもし直接税中心の日本米国加国だけで比較すれば
一目両全のような気がします。「原油の値段を言うまえに自分たち消費国の税金を下げろ」とは
OPEC他産油国の以前からの主張ですが、この税金問題だけは、産油国とトラック業界等と
消費者が息統合しているのは面白い現象です。

原油高騰を肯定的に黙認して来たアメリカの責任

これまでの原油価格の説明で価格を決めているのは、昔メジャー、その後OPEC、今投機資金
と説明してきましたが、もうひとつ付け加えるべきと思うようになってきました。まず昨年来の
原油値上げでもっとも潤うのはOPECを始めとする産油国ですが、次には石油生産の利権を
もっているメジャーです。しかし更に武器輸出大国としての「アメリカ」がいたのです。
 アメリカは湾岸戦争以降、中東地域において多大なる政治的というか、軍事的影響力を保有し
続けています。その力をもって最新兵器の購入やその後も中東に駐留する米軍に毎年300億$を
負担させているといわれてきました。しかし10$割れ原油では産油国にその継続は出来ません。
従って今回の原油値上げは、産油国とその兵器輸出筋の利害が一致し始まったという見方です。
その証拠としてアラブイスラエル和平交渉などの進展でこの地域の危険は以前より遥かに減少
しているにもかかわらず、年間500億$とも言われるその手の金額はむしろ増えている事、
また5億7100万バレルあるといわれる米国のSPRの放出を否定し続けて来た事が、上げ
られると思います。今回のG7でユーロの下落防止とともに原油価格問題が取り上げられ、
ようやく3000万バレルの一時放出を米国エネルギー長官が発表しましたが、やはり遅すぎたと
いわざるを得ないでしょう。もっともアメリカ大統領選挙の年は南部石油地域からの献金を
当てにし、高値市況を維持してきたという見方もありますが、それに反発する消費者の影響を
考えると事の真偽は別としてあまり効果はないように思えます。

SPR(戦略石油備蓄)放出の詳細と市場の反応は

さて前項で記述したSPRとは何でしょうか。これはStategicPetroleumReserveの略で新聞等では
「戦略石油備蓄」と訳されており、その規模は5億7100万バレルあるといわれています。
G7等内外からの圧力を受けて9/22、米リチャードソンエネルギー省長官は、3000万B
放出すると発表しました。SPRの放出は1990年91年の湾岸戦争時以来9年ぶりの2度目です。
30日間で3000万Bを放出とのことですから、単純計算で100万BD増産効果?です。
価格は9/25−27に入札、10/2に発表、スワップ方式を取り2001年には返還される予定です。
単純に説明すれば市場は先安状態が続いていますので、米政府は、現物を例えば35$で売却し
半年先物を仮に32$で買えば、3$x3千万B=9千万$の利益が得られることになります。
さてこの発表を受けた市場は急落、一時37$/Bまで行ったWTIは28日現在30$です。
更に申し上げれば実際の放出は11月に実施されるとのことですからこの急落は需給では説明
がつかず、やっぱり投機筋の思惑で価格が動いているという本HPの説明の証拠であるとともに
「SPRの放出等断固たる決意を持つて市場に介入する」と発表だけでもして頂ければ、今回の
高騰はもっと前で防げたはずですから、アメリカに相応の責任があったことも説明出来るでしょう。

今後はどうなるのか

それが一特約店に分かったら苦労はしませんが、上げ下げ要因を上げてみたいと思います。
上げ要因
1.OPECの生産能力の限界、
2.原油輸入国に転じた中国始めとするアジア地域の需要増、
3.中東特にイラク情勢や、パレスチナ自治政府高官は中東和平交渉での石油切り札発言
4.米国内製品先物逆ざや状態から来る構造的製品在庫不足、
5.共和党Bush候補の放出への反対でSPRの追加放出の困難性
下げ要因
1.原油供給が原油実需を上回って来たこと、
2.SPR放出と今後の追加放出の可能性、
3.投機資金の原油市場からの急速な撤退
株の世界で、もうはまだなり、まだはもうなりという、名言があるそうですが、個人的には
「もう」と思いたいところですが、その「もう」が強気を表す「ブル」の牛の泣き声にならない
よう願うばかりです。しかし投機筋は価格が変動しないと、儲からない仕組みだそうですから
あがるにせよ下がるにせよ、今後も乱高下が続くというのことだけは確かなようです。

国内はとにかく値上げをお願いするしかありません

とにかくWTIを見てもドバイ(こちら参照) を見ても価格は昨年一月比約3倍になりました。
そして大蔵省発表の正に日本の元売の仕入れである 原油通関統計 も13円あがりました。
そして元売から我々特約店へは10月値上げ分も含め総値上げ幅は16円に達しました。
しかし国内市況は、ガソリン10円、軽油6円、灯油5円がせいぜいです。更に申し上げれば
ガソリンの10円もこれは現金購入の場合で、掛売りについては半分以下か、都心においては
未だに0円というところも散見されております。掛売りにつきましては、請求書発行や集金など
現金販売より多くのコストがかかります。現金販売時代とは申しますが、都心部ではまだまだ
掛売りが多く、この地域のSSにおいては本当に死活問題になっておりますので、掛売りの
価格改定にもご理解いただくようお願い申し上げます。また「SPRの放出でWTIは下がり
始めたからこれ以上の値上げはもうない」というのは、あまりにも短絡的すぎると思います。
少なくとも日本入着の原油通関統計 の値上がり分だけは転嫁させて頂きたく、謹んで
お願いする次第です。

軽油輸出でより堅調となる国内市況、10月10日追加

10月4日、パリで開催されたIEA(国際エネルギー機関)の臨時総会は、高騰を続ける原油
問題に対処するため、供給途絶など緊急事態が発生した場合には、加盟国全体で原油備蓄を
放出することを確認するとともに、今回の高騰要因のひとつである米国の暖房用燃料の需給緩和
のため、世界の石油精製各社が暖房用燃料の生産を増やし、国際市場へ放出を求める声明を
発表しました。これを受けて日本では平岩通産大臣が、国内の元売や精製各社に対し、
「海外の暖房油に相当する軽油を国際市場に供給されることを期待する」と発表し、翌日には
岡部石油連盟会長も「国内への安定供給を損なわない範囲で輸出機会を敏速に整え対応する」と
発表しました。輸出規模は各社あわせて30万KL、輸出先の国際市場は、米国ではなく地域的
近いシンガポール等が見込まれています。ちなみに10月4日時点での京浜地区軽油パイプ渡しの
業転価格は28.1円/L、輸入価格は30.9円/Lですからタンカー運賃を勘案しても採算に
合うのではないかと思われます。一方シンガポールではこの日本の発表受け早くも5日には各油種
約1$程度下落しているようです。
 同様に国内の業転価格も10月6日現在税抜きSS届けで約33円前後ですが、今後急速に上昇
し、より系列価格に近づいて来るものと思われます。特にトラックバス等の運送業界の方々には、
輸入品があがり、業転価格まであがったとなると、我々特約店としてはもはや値上げをお願いしな
くてはなりませんので、諸事情ご推察の上、よろしくお願い申し上げます。