オペック総会原油増産?決定
値下り始めた原油価格と日本市場に及ぼす影響
あなたは99年6月原油企画以降、 番目のお客様です。

3月27−29日、オーストリアのウィーンで開かれた第109回のOPEC総会は、
イランイラクを除く加盟9ヶ国が、約145万BDの増産を決めて閉幕しました。
そしてその決定を受けたニューヨークWTI先物は早くも下落を始めました。
しかし145万BDという数字は本当に増産なのか?。需給は緩和され在庫は増えるのか?
そして今後の価格はどこまで下がるのか。それが日本の石油製品市場に及ぼす影響は?
5月まで待てない緊急企画です。文責 垣見裕司4/19.NO2 5/16.NO3 更新

総会で決定した内容

総会では、サウジアラビアの170万BDの増産の主張に対し、イランは120万BD
への圧縮を主張、結局イランを除いて145.2万BDの増枠で決定しました。そして
4月からの生産量は2106.9万BDとなり、99年3月以前の水準に戻りました。
ところでイランが合意に加わらなかったのは何故でしょうか。実はイランは増産余力が
あまりなく増枠効果にメリットが無いことや、今回の総会が価格下落を願うアメリカの
意向を強く受けたものであることに、反発したのではないかと言われています。しかし
合意に加わらなかったイランも26.4万BDを増産すると予想されますので、OPEC
全体としての増産量は約170万BDとなります。また増産後の情勢を判断するため
6月21日の臨時総会を決めて閉幕しました。これも9月には定期総会がありますので
今回の数字は、更に増産するにしても再び減産するにしても暫定的とする見方が一般的
のようです。今後の各国の生産枠と増産量は以下の通りです。単位1千B/day
国名アルジェリインドネシクウェ-トリビア ナイジェリカタールサウジUAEベネズエラ
生産量788128019801323 2033640802321572845
増枠量 57 93144 96 148 47585157125

145万B/Dという数字は本当に増産なのか

ところでこの145(170)万BDという数字は本当に増産なのでしょうか。これは昨年
3月に総会で合意した生産枠に対する増枠で、実際は減産順守率が低下しており、
3月時点では、既に120万BD以上越しているので、実質的には50万BDの増枠
でしかないとの話もあります。
もちろん北半球ではこれから不需要期を向かえますので、更なる上昇はないでしょうが
史上最低レベルまでに達したという原油在庫水準や、前年比102.2%というIEA
(国際エネルギー機関)の2000年の需要予測を考えると、我々消費国にとって
まだ足りない数字であることは、間違いないようです。

早くも動き出した投機筋でWTIは急落、しかしその後再び上昇へ



それではWTIはOPEC総会以降どのような動きを示しているのでしょうか。
実生産や実在庫ベースでは決して緩和とは言えないのですが、投機筋は「売り」と
判断したようで、総会前から図の通り値下げを始め3月8日の最高値34.37$/B
から4月10日の23.70$に31%も急落、しかしその後13日には一転25.96$
に2$以上も上昇し、かなり荒っぽい動きとなっています。
また14−17日のニューヨーク株式乱高下の影響を受け、嫌気した投機資金が
原油市場へ流れて来る可能性もあり、今後も荒っぽい展開が続きそうです。
そして5月に入ると上昇傾向は顕著となり15日には高値で30$を突破しました。

プライスバンドとは何か、その効果はあるのか

しかしまだエネルギーの主役である原油価格が、短期間にこれほど乱高下することは
OPECにとっても消費国にとっても決して好ましいことではないでしょう。
実は今回の総会では正式発表こそされていませんが、ベネズエラ等が提案した
プライスバンドという方式が合意されたといわれています。これは、バスケット価格
(各国指標原油を色々織り交ぜて算出される価格)で22−28$/Bの間に価格を
納めようというもので、この価格が20日以上目標価格圏外で推移した場合は、
OPECは自動的に+−50万BDの範囲で生産調整するというものです。
しかしこの方式は18ヶ月前にベネズエラの鉱業相が提案を始めましたが、今まで
OPEC内の同意が得られなかった事、そして今回も非公式発表に留まっている事、
「価格」ではなく「在庫」で調整すべきだとの声もある事、そもそもOPECの
結束は未知数である事等、その効果を疑問視する声も少なありません。

今後の原油価格はどうなるのでしょうか

日本エネルギー経済研究所は12日OPEC総会終了後の原油価格展望を発表しました。
要約すると4月以降非OPEC諸国も加えると世界の石油供給は100万BDの純増
となるが、低水準に落ち込んでいる石油在庫を回復させるには不十分で、2000年の
需給はタイトな状況で推移する。価格レベルで言えば、WTIで24−26$、
ドバイで21−22$前後で推移する、と予想しました。
しかしその一方で当HPでも何度も申し上げている通り、現在の短期的な原油価格は、
石油産業に直接関係しない投機筋などの非当業者が、取引価格に大きな影響を与えて
いることを認めた上で、市場心理が再び強気に転じれば30$台もある。一方弱気から
先物下落となり弱気スパイラルが発生すれば20$割れもある、と言及しています。
更に申し上げれば、14日にニューヨーク証券市場の暴落をうけて17日の東京市場も
一時1800円近く暴落しました。この証券市場の動きを見て、石油先物市場からも
資金が逃げれば更なる下げも予想される一方、逆に資金が流入すれば更なる暴騰もあり
益々価格の振れが大きくなるのではないかと思います。

コスト転嫁は約半分の国内市況

では国内市況はどうでしょう。原油輸入価格の通り昨年1月輸入価格対比、本年3月の
予想ベースでは約10円/Lも値上がりしました。これを受けて日石三菱は、ガソリン
等代表的な石油製品で通算11.4円も値上げしています。しかし各油種の市況反映は、
石油情報センターの調査で、ガソリンSS店頭現金の全国平均99/4月の91円から
本年4月10日に100円に乗せ+9円となりましたが、軽油は昨年4月の76円から
本年4月の80円と+4円、また業務用のトラック業者様向けのインタンク価格も、
同様に5円程度しか上がっていません。灯油も情報センター調査で41円から44円
と僅か+3円ですから、フォーミラー価格で決定するC重油等産業用燃料を除くと
弊社の印象では卸価格上昇分の約半分というのが切実なる感想です。

今後の業界に与える影響は

この値上げ未転嫁分の数字を年間総需要2億4千万KLの半分の1億2千万KLとして
5円/Lを石油業界で負担しているとすれば、この1年間で総額6000億円が業界から
消えたことになります。ですから来月からは、新聞等で日本への入着原油値下がりの
ニュースが掲載されることと存じますが石油業界としては約半分の取り残し分があり、
値下げどころか今までの値上げ未達分を消費者の皆様にお願いする状況であることを
ご理解頂きたく切にお願いする次第です。
そして連休等を期に再び乱売が始まれば、元売も流通もそれを吸収する余力はもはや
無く、その乱売は元売再編と流通業者の淘汰を益々加速することでしょう。