トランプ相互関税は世界経済戦争か
 ドル安、株安、債券安、原油安
 日本の石油業界に与えた影響
あなたはトランプ相互関税問題の番目のお客様です。
米国トランプ大統領の一連の相互関税で世界経済は翻弄されています。
そして日本経済は勿論、石油業界やSS業界にも影響しています。
世界経済の停滞予測なのか、原油価格は暴落。為替レートも150円台から
142-3円まで下がり、補助金無しでもガソリン価格は落ち着いて来ました。
当然LNG価格も下がるのですが、物価高対策なのか電気やガスの補助金は
7-9月に復活、ガソリン補助金も10円増額が発表され、全国平均で175円を
目指すことになりそうです。これが参議院選挙対策でないことを祈ります。

                2025/4/30 文責 垣見 裕司

トランプ相互関税は経済戦争ではないか
2022年2月、ロシアはウクライナに軍事侵攻しました。ビンラディンの
様なテロリストでもなく、イラクのサダム・フセインの様な中東の裸の
王様でもなく、世界第2位の核を含む軍事大国かつ、国連の安全保障
理事会の拒否権をもつ常任理事国が、外交交渉ではなく、戦争による
問題解決を始めてしまい、第二次世界大戦後の世界の安全保障の
常識はくつがえりました。 2022年3月企画 緊急企画 4月企画参照
その意味から言うと今回のトランプ大統領が始めた根拠のない数字を
相手に交渉なしに押しつける相互関税は、戦後、世界の自由貿易を
推進して来たはずの世界最大の経済大国のアメリカが、バイデン政権
から180度というより一周回って540度の方針転換をし、自国優先主義の
経済戦争を始めたのではないとか私は思います。政権内に、トランプ氏
を諫めるブレーンはいないのでしょうか。 

市場は、米国の株安、ドル安、債券安

しかし唯一トランプ氏を戒めたのは、多くの民意を反映した市場でしょう。
まず最初に反応したのが、米国株式のダウジョーンズの値下げです。
年初後、ピーク45000$まで上昇していた株価は一時38000$割れと
なりました。流石のトランプ氏も動揺したのか、中国以外の第二弾の
相互関税を90日猶予すると発表しました。しかしその数時間前に、
「今、株は買い時だ」と、本来ならインサイダー情報を公然と流して
しまいました。その問題点を指摘するマスコミもありましたが、法的
処分はされないようで、やりたい放題です。

米国株式(上左) ドル円レート(上右) 米国国債(下左) 日経株価(下右) AI作成

米国ダウジョーズ株式 単位ドル     円/ドル 為替レート 単位円/ドル


 
米国国債 先物  単位ドル       東商 日経225平均 単位円

米ドル安と米国債安

ドル安(円高)も上記グラフの通り進みました。トランプ大統領は、「日本は
貿易に有利なように円安誘導をしている」と発言していますが、日本として
は、何度か円買い介入をしている通り、円安は望んでいないでしょう。
まして日本は化石エネルギーのほぼ全て輸入しているので、私は120円/$
くらいが日本国として目指すべき水準ではないかと思います。

もう一つ下がったのが米国債です。上記グラフは年初来の推移ですが一時
120$を突破していたのですが一気に114$まで下落後、乱高下を続けて
います。一般に国債価格と金利は逆の関係にあり、金利が上昇すると
国債価格は下がり、金利が低下すると国債価格は上昇します。
これは、債券の価格が市場金利を反映し、新規に発行される債券の
利回りが高まると、既存の債券の価値が相対的に下がるためです。

またトランプ氏は日本で言う日銀であるFRBのバウエル議長に対し、利下げ
等を決断しないことに対し「遅すぎる男」と酷評し、辞任を求めると発言。
この解任騒動で、世界の基軸通貨であるドルそのものの信用も下落させ
ました。その結果、辞任を求める発言は一夜にして撤回されました。
日本なら「朝令暮改」ですが、トランプ氏は柔軟性と表現していました。

日本への影響 東商株価の下落も米国ダウほどではないのか

さて日本への影響ですが、東商株価は、ピーク40000円。そして直近高値
38000円から4月7日は史上3番目と言われる2644円の下落幅を記録し、
同日の終値で31136円まで、数日で7千円近く下落しました。しかし
報復関税などかけずに冷静な対応をしたことから、現在は約36000円。
これは米国ダウの下落より、高い回復率なので、ひとまず安堵しています。


日本の対策 「冷静に注視」 は成功か 米国の限界は

トランプの相互関税政策については、中国のように完全に受けて立つ
国もありますが、日本は報復関税はかけずに、冷静に対応しています。
また今のところ米国内の日系自動車会社も米国内での販売価格は上げ
ずに耐え忍んでおります。一部マスコミは日本政府の対応は「無策か」
との批判する声もありますが、私は「冷静に注視」で良いと思います。
その理由としては、米国の製品だとトランプ氏が思っていても、現在の
商品は本当にグローバル化しているからです。
例えばiPhoneは、2024年の中国での生産率は何と約8割にも及んで
います。これに高額関税をかけたら、使用者である米国国民が黙って
いないでしょう。現にiPhone等は相互課税から除外されたようです。
もう一つは、米国航空機メーカーのボーイング社です。第二次世界大戦
の歴史オタクとしては、爆撃機B29をたった2年間で約4000機も生産し
現在でも多くの旅客機を生産しているので米国国内製品で生産している
と思われがちです。しかし代表機の787を例に取れば、機体部品のうち、
約35%が日本メーカーによって製造されています。これはボーイング社が
開発期間の短縮と投資リスクの分散のために、各国の提携メーカーに
製造を委託したことによるものです。具体的には、三菱重工、川崎重工、
SUBARUなどが主翼や胴体などの生産を担当。また炭素繊維は東レが
一手に供給しています。またこのボーイング社にとっては中国は最大
顧客の一つですが、中国政府は今回の騒動で、B社の旅客機の追加納入
を受けないよう中国国内の航空会社に指示したそうです。
今の世界経済は、良くも悪くもグローバル化してしまったのです。
最後は自動車です。米国内で生産(組立て)する場合は、一部還付する
と発表しました。今頃気づいたようですが、課税の事務方は大変です。
貿易赤字は、関税をかけて解決出来るものではありません。米国の自動
車が米国内はもとより世界で売れないとしたら、やはりそれなりの理由が
あるのです。そして米国政府も高関税をかけるという脅しは長くはもたず、
両刃の剣でしょう。正に90日間の猶予期間内での決着しないと、むしろ
米国経済へのマイナスの影響が大きくなると思います。

WTI原油価格の下落もトランプ相互関税の影響か

さて私として意外だったのは、トランプ相互関税騒動で、WTI価格が大幅
に下がったことです。下記は年初からの推移ですが1月は80ドル弱、
2月は70ドル前後から、4月に入って60ドル割れもあり、現在は62-63ドルで
これは資源輸入国の日本にとっては誠にありがたいことです。

ガソリン補助金は終了ではなく 増額して継続

こんな状況ではありますが、政府は激変緩和措置の補助金を廃止ではなく
一律10円を増額して補助することを発表しました。但し今までの補助金は
ガソリンの全国平均価格が185円になるように増加削減がなされており
ましたが今回の補助金は、185円にかかわらず10円支給されます。
その10円も5月22日に5円。その後毎週1円ずつ増えて最大10円です。
製品別では旧暫定税率が加算されているガソリンと軽油は10円。
灯油と重油は5円。航空燃料は4円だそうです。詳細はこちらをご覧下さい。

電力と都市ガス補助金も2025年7-9月も復活か

電力と都市ガスの補助金については2025年1月-3月に一端終了います。
詳細は こちらは https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp/
2025年の7-9月については5月中に具体額の結論を出すとのことです。