アブダビ国営石油(ADNOC)訪問&ドバイ視察写真報告
 ADNOCの歓迎に驚く & ドバイの繁栄は本物か
あなたは本企画の番目、原油関連ではのお客様です。 08/2/22掲載時、0件
2004年の11月、ベトナムのランドン海上油田を見学させて頂いたことは既にご報告の通りですが、
その時から「いつかは原油メッカである中東に行ってみたい」と思っておりました。そしてこの度、新日石
東京支店傘下の特約店若手経営者が、アブダビ国営石油訪問団を結成、2月5日から3泊6日(機中2泊)
という強行軍でしたが、無事責務を果たして参りました。よって今月は、今回の訪問で頂いた、多く経験
と感動を皆様におすそ分けする企画にさせて頂きます。  Ver3.h.m  文責 垣見裕司

 後半の 「ドバイの繁栄は本物か(バブルではないのか)」 を先に読みたい方はこちら

UAEの概略
国名 アラブ首長国連邦 UAE(United Arab Emirates)
政体 アブダビ首長国、ドバイ首長国の他、合計7つの首長国による連邦国家
    シャルジャ、アジュマン、ラスアルハイマ、ウンムアルカイワイン、フジャイラ
    各首長国は世襲制の絶対君主制に基づき統治されている。
    但し原油等の資源が産出される首長国は、アブダビとドバイのみ
    ドバイ市内のビル等の建築ラッシュで、ドバイの方が産出量が多いと思われがちだが
    全く逆で、その割合はアブダビが9割以上で、圧倒的に多いとのこと。
    従ってUAEの財政もアブダビとドバイに頼る形で、下記の元首の世襲制に繋がっている。
元首(大統領) ハリーファ・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン(アブダビ首長)
首相      ムハンマド・ビン・ラシード・アール・マクトゥーム(ドバイ首長)
   元首や首相は連邦最高評議会により選出されるが、それぞれ元首はアブダビ首長、
   首相はドバイ首長が、世襲により継ぐことが慣例化されている。
議会 一院制の連邦国民評議会で定数40。議員は連邦を構成する各首長が任命。
    一般国民には従来選挙権がなかったが、2005年12月から定数の半数に対する
    参政権が認められた
建国 1968年 英国がスエズ運河以東からの軍事撤退を発表。
    その後1971年に7つの首長国がUAE結成の協定に調印し、UAEが誕生した。
民族 アラブ人(UAE国籍)20%弱、その他は外国籍住民で、欧米系、南アジア系、東アジア系他。
    その多くは、石油収入によって豊かなUAEに出稼ぎとしてやってきた人々である。
宗教 イスラム教(スンニー派80% シーア派20%)
首都 アブダビ、 人口432万人(2004年) 面積83,600km2
    ドバイ首長国の人口は現在約130万人。内UAE国籍20%のみ。欧米系他、1部屋数億円の
    マンションを老後や投資の為に買える豊かな外国人もいる反面、建設工事等に従事する
    低所得者層の外国人も少なくない。


日本とUAEの関係は
日本の最大の原油輸入相手国は、一般的にサウジアラビアと思いがちですが、それは2005年
以降の話でそれ以前は下記の通りUAEがトップでした。2006年の3位はイラン(12.7%)、4位は
カタール(9.6%)ですから、UAEとサウジの二国に、非常に多く依存していることが分かります。
ちなみに、近年サウジ比率が増大している理由は、サウジの昭和シェル石油への資本参加が
影響しているものと思われます。
 年 万B/D 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000
UAE 106.3 103.4 106.3 100.2 96.6 102.5 108.7
比率 % 25.4 24.4 25.3 24.5 23.8 24.1 25.2
サウジ 125.6 122.7 103.0 97.7 91.6 94.8 91.5
比率 % 30.0 29.0 24.5 23.9 22.6 22.3 21.2
中東計 373.6 379.3 372.4 372.5 349.0 376.5 370.2
比率 % 89.2 89.6 88.8 90.9 86.0 88.4 85.7
輸入計 419.0 423.1 419.6 409.5 406.4 425.8 431.8
UAEは原油だけでなく天然ガスも多く産出され、2006年の産出量は474億m3です。
その天然ガスの確認埋蔵量も6兆m3と非常に多く、その可採年数は100年以上です。
またUAEから見ても日本は非常に重要な輸出相手国で、同国の日本大使館HPによれば
原油の総輸出量の60%、天然ガスに至っては、80%を日本に輸出しているそうです。
UAEから見た国別輸入金額は、インド、中国、米国に続き、日本は第4位(2005年)です。
従って日本とUAEは経済的にも、とても親密的な国と言えるのではないでしょうか。

新日本石油アブダビ事務所に訪問
関空から約12時間の長い飛行機の旅を終え、2月6日の早朝ドバイ空港についた我々一行は、
まず新日石アブダビ事務所に向かいました。ドバイの街並みに圧倒された話は、後にゆっくり
ご説明するとして、アブダビまでバスで片道約2時間の行程でしたが、全てがアバウトなアラブ?
時間に翻弄され、かなり遅れましたが、新日石アブダビ事務所に無事到着しました。
本来ならそこでゆっくりお茶でも頂きながら、UAEの原油事情等をお伺いし、ADONC社訪問の
打ち合わせをしたいところでしたが、下記の集合写真を一枚だけを撮って、急遽ADNOC社に
向かうこととなりました。

ADNOC社(Abu Dhabi National Oil Company = アブダビ国営石油会社)訪問
今回のメインイベントであるADNOC社は、その名の通りアブダビ首長国の国営の、そして
アブダビ首長であるナヒャーン家が実質支配するアブダビ唯一の原油開発会社です。
その本社は、新日石事務所からバスで15分のところにありました。到着後、素晴らしい玄関や
受付で撮影しようと思ったら、全て事前の許可が要るとのことでまずびっくり。
(この石油関連施設の撮影禁止は、結局最後まで悩まされることになりました)
一同会議室に通され早速、ADNOC社幹部より歓迎の挨拶です。当会からも返礼のご挨拶。
そしてADNOC社からスライドと口頭による原油関連基本方針等のご説明がありました。

その後は、先方が我々の長旅の疲れを考慮して、Snacks & Refreshmentと証したソフトドリンク
と軽食スナックを囲んでの談笑タイムでした。そして一息ついてから今度は、ADNOC社全体の
企業グループ説明等がありました。その後は、彼らにとってお祈り時間だそうで、我々は、
エミレーツパレスという7つ星の高級ホテルを見学させて頂き、13時よりADNOC社の迎賓館とも
言えるADNOC Cornish Club VIP Hallでの昼食会となりました。下記は、その昼食時の写真です。
我々12名と新日石アブダビ事務所から2名の14名に対し、先方は6名もの幹部が、お忙しい中
昼食をご一緒して頂きました。そして雰囲気も和んで来たので、日本から用意して来た色々な
質問をしてみることにしました。 先方より送って頂いた会議室での集合写真はこちら



原油価格の交渉は無理でも、LPG価格について一言
読者の皆様もご存知の通り、弊社では、ガソリンスタンドの他にLPGも取り扱っております。
競争相手は、導管で天然ガス(LNG)を配給する都市ガス会社。しかしLNGは長期契約ですから
その仕入価格は、ゆっくり上昇するので、都市ガスの末端価格は、LPG程上がっていません。
これによりLPGユーザーは、都市ガスや更にはオール電化への転換が進みつつあり、将来の
LPGの需要が奪われないか心配しています。ADNOC社も、LNGを販売されていますが、特に
電力会社向けのLPGは、サウジCP連動ではなく LNG連動とお伺いしました。2009年からは、
御社やカタールがLPGを大増産し、LPGの世界需給バランスも変わると予想されていますが、
随伴ガスとしてのLPGの需要を守る意味で、原油連動ではなく、LNGに連動するようなLPGの
価格戦略は、ありえないものでしょうか。
この質問に対し、彼らは何と答えたと思いますか。「LPG価格はサウジのCPに合わせているだけ」
とか「価格は市場が決める」等の冷たい答えを予想していましたが、「今日はLPG担当マネージャー
がいないので軽々しくは答えられない。後日新日石を通じでコメントしたい」という誠に真摯な対応
でしたので、むしろ我々の方が驚いたくらいです。ちなみに一番砕けた質問は、「その民族衣装の
下は何を着ているのですか」ですよ。読者の皆さん知りたいでしょ。実は、、、、
日本国内の石油業界を総合的に解説する英語ページがない
彼らから聞いて改めて気付いたことは、最大の販売先である日本の国内の石油情報が極めて
不足していることでした。「日本国内の石油事情を解説した英語版のHP等はないのか。我々は
日本の生の情報が知りたい」と痛切に話していました。後で調べてみたところ石油連盟が
「今日の石油産業2007」の英語版を連盟のHPに掲載されているだけで、その他日本の石油事情
を英語で解説しているHPは皆無です。事実日本語ページですらYahoo検索しても弊社HPが上位
ということは、他には余りないのでしょう。
「それなら弊社のHPを英訳しておきますので是非ご覧下さい」と申し上げたいところでしたが、
私の貧弱な英語能力とそれに要する時間と費用を瞬時に考え、じっと沈黙していた私でした。
そしてADNOC社を後にした我々はホテルにチェックインし、その後は夕食まで、そして翌日の
午前中も、新日石アブダビ事務所の平野所長と柴田マネージャーを講師にUAEや中東原油の
特に価格決定方式に等について、色々勉強させて頂いた次第です。以下がその研修成果です。
ドバイ原油とオマーン原油は、アジアにおける指標原油
まず「ドバイ原油」ですが、その産出量は日量約40万バレルと言われていましたが、近年は大幅に
低下、具体的には月間4-5カーゴ程度ではないかとのことでした。1カーゴとは50万Bタンカー1隻
なので月間250万B。30日で割れば、8.3万B/Dとなり、産出量は、ここまで落ち込んでいたようです。
またドバイ原油は、オマーン原油とともに中東原油の指標油種でバスケット価格にもなっています。
その理由として、産出量は多くないのですが、ほぼ全量が、定期契約ではなくスポット市場で取引
されるためアジアでの原油相場の指標銘柄として適していたようです。そしてこのドバイ原油と
オマーン原油はアメリカのWTI、英国北海原油のブレントと並んで世界3大ベンチマーク原油です。
ただ、テレビや新聞で報道される時には、地名的にも有名なドバイ原油が多いので、ドバイに
目がいってしまいますが、あくまでもオマーンとの2種の単純平均価格が価格指標です。




石油連盟2006 API度 硫黄分& 揮発油分% 灯軽油分% 残渣油分% 残留硫黄分%
ドバイ 30.5 2.10 24.3 21.6 54.1 3.00
オマーン 32.7 1.11 21.5 23.6 55.0 1.62
サウジ AL 33.0 1.89 25.0 27.0 48.0 2.86
サウジ XAL 39.0 1.14 25.5 33.7 39.3 2.10
またUAEの原油算出量は2006年で297万BD。確認埋蔵量は978億バレルで、これはサウジ
イラン、イラク、クウェートに続く中東では4番目の量で、UAEの可採年数は90年もあります。
但しこれはアブダビ首長国のマーバン原油等の話でドバイ原油の可採年数は、近年の
産出量をどのくらいと設定するかにもよりますが15年程度しかないと言われています。
一方オマーンの生産量は74万BD。確認埋蔵量は56億B、可採年数は20年です。よって
UAEとオマーン。またUAEの中でもアブダビとドバイでは、かなり事情は異なるようです。
ドバイやオマーンのスポット価格(通称プラッツ価格やDME価格)は、どのように決まるのか
日本のガソリン現物価格は、RIM社等の情報配信会社が、毎日売買当事者に電話等で
ヒアリングをして独自の基準でその値を発表しています。バウチャー等の裏づけまで全て
取っている訳ではないので、その意味では参考値ですが、売り手からは「もっと高いはずだ」
買い手からは「もっと安いはずだ」とのコメントを聞きますので、当たらずしも遠からずでしょう。
東証株価のように電子市場での取引ではないので1日の取引の平均値が1つ発表されます。
国内で言うこの「RIM社」が、世界でいう「プラッツ社」です。ドバイ、オマーンはじめ中東原油
ミナス、ウィドリなどインドネシア原油、さらにはタピスなどマレーシア原油、つまり中東・アジア
・太平洋地域の原油については、シンガポール時間の午後4時〜4時30分までの間、通称
「Platts' Window Time」に提示されたビッド(買い指値)、オファー(売り指値)や成立した取引を
基に価格を査定してるそうです。このWindow取引では、各企業は、実名でビッド、オファーを
提示し、成立した取引の買い手売り手も実名で表示されますが、参加は事前登録が必要です。
そしてこの価格査定は、Platts自ら定めたAssessment Methodologyに則して行われますが、
これは価格査定会社にとっては憲法みたいなものだそうです。北海原油やアフリカ原油は、
ロンドン時間の午後4時10分〜4時25分、米国原油および米国への輸入原油はNY時間の
午後3時〜3時15分が「Platts' Window Time」となっています。
OSP(Official Selling Price)とDME(Dubai Mercantile Exchange)専門的な話で恐縮です
さてちょっと難しい話になりますが、業界の原油関連資料で見かけるこの意味を勉強しました。
OSPとは、政府発表価格で、DMEは、ドバイ先物取引所、すなわち=NYMEXのイメージです。
昨年の6月からオマーン原油のOSPは、従来のレトロアクティブ方式から、先物市場であるこの
DMEの毎日の終値を平均する方式に変更となりました。
但しDMEのオマーン原油先物価格を使用しているのはオマーンだけで、サウジはじめ他の中東
産油国は、引き続き、プラッツのオマーン/ドバイ原油価格を使っています。
DMEが飛躍するかどうかは、サウジがターム価格の基準にDMEオマーンを採用するかどうかに
かかっていますが、現状では、DMEは、あまり取引数が増えていません。
またDMEには、ドバイ原油そのものは、上場されていません。やはりドバイ原油の生産量や
可採年数が少ないことを配慮してオマーンのみに留めたようです。さて本項目のまとめですが、
肝心なのは「RIMやプラッツが現物」なのに対し、「NYMEXやDMEは先物」だということです。
 本項目は、Yahooで「中東原油価格」や「輸入原油価格」と「ドバイ・オマーン原油価格」で検索
すると、弊社ページが第1位か1桁台でヒットするので、その責任の重さを痛感し記載しました。
残念ながら石油施設の見学は無理 その代わりSS見学
中東原油と言えば砂漠の中の油田や忽然とそびえたつ油井。本当はこれを見学したかった
のですが、その考えは相当甘かったようです。彼らにとって石油施設は軍事施設以上のもの。
従って新日石の現地事務所の方でさえ、1週間以上前に事前申告し、運よく許可が出た場合
でも、施設内に入る時はカメラは勿論、携帯電話まで取り上げられてしまうとのことでした。
またADNOC社で頂いた会社概要にも、石油施設の写真は、皆無に等しい状態でした。
そこで、我々は街中や高速道路沿いのSSを見学させて頂く事にしました。アブダビ首長国内
ではSSはADNOC社の1社だけ。従ってSSは適正?配置されており、どのSSも混んでいました。
給油方式は、フルサービスで、(少なくとも我々はセルフは見かけず)、窓拭きも想像以上に
丁寧にやっているので驚きました。また大きなスタンドには、店内にコンビニのようなドリンクや
スナックの販売スペースがありました。トイレもあるのですが、男性も個室でするので、数は
極端に少ないという印象です。

  

販売されている油種は、軽油1種類、ガソリンが3種類です。気になるその価格ですが、
黄色は、軽油で、一番高く  56円/L    (訪問時概算レート 1ディルハム=30円で計算)
青色は、スーパー ガソリン:98オクタンで 45円/L
緑色は、スペシャルガソリン:95オクタンで 41円/L
赤色は、E-PLUSと称する廉価ガソリン :91オクタンで 38円/L です。
単位は、米ガロン3.785Lではなく、英国の統治下にあったという場所柄、英ガロン4.546Lです。

以下写真は、ドバイ首長国内のSSです。ドバイではSS運営会社は複数あるようです。
 

後半は、「ドバイ経済の繁栄は本物か」と題して、石油以外の諸事情をご報告します。