写真で見るベトナム油田視察報告 ランドン油田、ベトナムのSSそして国内の諸々事情 |
- 会社名 日本ベトナム油田株式会社 (JVPC)
- 出資額 225億3000万円
- 出資者 新日本石油開発(株) 53.1% 石油公団 43.9% 三菱商事 3.0
- 設立年 1992年8月21日 以後 94年6月 第1期試掘にて油田発見 98年8月より生産開始
- 場所 ベトナムブンタウより西南西へ136km 15-2鉱区
- 油田名 RANG DONG油田 オペレーター(事業主体)として操業
- 共同事業者 JVPC 46.5% ベトナム国営企業2社 17.5% ConocoPhillips (UK)36.0%
- 年間生産量 約1600万BD(2000年) 約1600万B (2002年) 約2000万BD (2003年予想)
- 直近生産量 約55000B/D 生産規模は有名なバクホ-油田に次ぎベトナムで2-3番目
- 生産油井 29本 水深 約60m
- WHP = Well Head Platform 生産及び試験分離装置付き無人プラットホーム
- FPSO =Floating Production Storage and Offloading System 浮遊式生産貯蔵出荷システム
- 出荷能力 48000B/hour 貯蔵能力 867000B
- 接岸能力 排水量 20000t から 150000t タンカーまで
ランドン油田の全体図。その大きさはどのくらいなのでしょうか
前項は難しい数字が並んでしまいましたので、今度は分かり易い全体図でご説明します。
まず中央にあるのがWHP-N1と呼ばれる中心的なプラットホームです。
WHPとはWell Head Platformの略ですから、直訳では井戸元台ということになりますか。
隣接しているCWI-Nと呼ばれるプラットホームは、原油とともに算出される随伴ガスの出荷や
自噴圧力が減った原油の産出を良くするために、そのガスを再度地下に戻す加圧施設、
そしてそのガスと共に水を注入するための施設です。隣のU/L-Nは人間の居住空間です。
左上のFPSOと呼ばれる物は、一見タンカーのようですが、浮遊式生産貯蔵出荷施設です。
これは原油を86万B貯められるタンク部、原油とガスと海水を分ける簡単な分離装置が
付いています。しかしFPSOの驚きは、前方が海底に固定されているにもかかわらず、
船全体は海水の流れに逆らわず漂っているという優れた技術が隠されていることです。
また東E-1と南S-1にそれぞれ一つずつプラットホームがあります。ところで皆さんは、上記
施設群の全体の大きさはどのくらいあると思いますか。図だけ見ていると数百m程度離れて
いるように感じますが、なんと東京の山の手線の大きさくらいあると言うから驚きです。
それでは「物議?をかもしたヘリコプター」から撮影した写真で各施設をお見せしましょう。
写真で見る圧倒的存在感の各施設
左上写真がWHP-N1と隣接プラットフォーム。そして右上写真はE1S1型プラットフォームです
左下写真の手前がFPSOです。黄色の固定アームやオフガスを燃焼中の煙突、そしてその
後ろには運良く来てくれた、出荷中の通常のタンカーが見えます。
さて右下写真をよくご覧下さい。これはFPSOを横から見た場面ですが、遠くにWHP-N1が
更にその先の遠くにE1のプラットフォームが微かに見えますが、お分かり頂けますか?
前項のイラスト全体図で言えば、左上のFPSO後方すなわち西側から中央部と、そして
東側を見ていることが分かります。左上写真は14:30頃、その他の写真は17時頃です。
太陽を背にして空が赤みがかっていることからも方向感覚はあっていると思います。
海上のことなので、大きさの感覚はあまり分かりませんが、ヘリコプターで飛んで1周するのに
数分かかりましたので山手線の大きさというのも、うなずける気がしました。
今こうして写真でみても再び感動を覚える私ですが、読者の皆様にも、この圧倒的存在感は
お分かり頂けると思います。各写真をクリックしてみて下さい。画面一杯に広がります。
井戸のパイプは10数本、それが斜めにも掘れるの?
しかし驚かされたのは、圧倒的な存在感だけではありません。気になるお値段、そして収支はどうなっているのか
まず油田のパイプの大きさです。最初は、直径70cmある太いパイプで堀り始めるのに、
3千mも彫って行くと、最後の方の直径は、せいぜい15cmくらいになっていること。
従って数量を確保するには、何本ものパイプが必要で、左下の写真からも分かるように、同じ
プラットホームから、10数本のパイプが海底に伸びているのが分かると思います。
しかしその何本ものパイプは途中から曲げながら、すなわち、最初は垂直方向に堀り、そして
途中から斜めに、最後は水平方向に広がって掘られていることを聞いて、また驚きました。
重力がある以上原油は水平に存在していると思っていましたが、それを包み込む岩盤が、
斜めや縦方向に存在しているときは、むしろ横に掘り進んだ方が、原油を発見できる確率が
高くなることをお伺いし、今までの無知や勝手な想像を反省した次第です。
写真左は、通常のプラットフォーム。何本ものパイプが海中に掘られているのが分かります。
右は、FPSOです。タンカーを改造して製作したそうで、先端部の黄色い固定装置には、
大変な技術があるそうです。
ビジネスマンなら、そろそろ気になるのが「どのくらい儲かっているのか」という話でしょう。今回の貴重な経験から学ぶこと
仮に1日60000BD生産したとして、持ち分比の46.5%の販売権があるはずと思っていましたが
世の中はそうは甘くないようです。そなわちベトナムの国営企業2社が、先に利益を取得する
感じ(但し税金を含む)というか、数量、経費、利益等が線形で決まっている複雑な契約で、
46%の出資でも、現状の生産量等では、1/4 の約25%の販売権しかないそうです。
それでは、生産コストはどうなのでしょうか。経費例としてFPSOの1日の用船料は600万円。
井戸は1本10億円。WHP(やぐら等)は1機60億円などを、毎年投資を続けていること。
また全体の契約の関係で、あと17年しか権利がないことから、開発費の償却は、短かく
考えなくてはいけない等、簡単には算出出来ないそうです。
それでもあえてお伺いしたところ、販売価格としては 20$/B以上は、ほしいのとこでした。
それでは、固定費除きというか、最低限のランニングコスト、或いはキャッシュフローベース
の採算価格を無理やりお伺いしたところ、10$/Bを割ったら極めて厳しいとのことでした。
本物件は、旧三石が手がけたものですが、日石との合併時の原油価格は、確か約15$/B。
その時、本原油で儲かっているという話は聞きませんでしたが、今は少なくとも28$/B以上の
国際市況ですから、国内市況が疲弊している今となっては、一朝一夕にまねの出来ない
採算の取れる自主原油を持つ元売とそうでない元売との差は、収益上極めて大きいだけで
なくIRや株価等の観点からも天下の新日本石油にとっても、貴重な存在と言えるでしょう。
さて今回は本当によい経験をさせて頂きました。我々国内の流通販売業者にとって、頭で
分かっていても、製品になった状態のガソリン等を買っている訳ですから、となりのSSに
価格競争力で負けたくない等、ついつい安値販売に走りがちです。しかし99.7%を輸入に
頼る日本において、また、代替エネルギーと言っても今後10-20年以上は間違いなく、
その中心を石油が占めるのは明確な訳ですから、自らの業界を潰すような、或いは顧客
ニーズと関係ないところで繰り広げられる不毛な価格戦争は、絶対に慎まなくてはいけない
のではないでしょうか。
それは高売りをしたいということではなく、空から降ってくる水でさえ、富士山等ブランドの
付加価値が加われば500ccで150円も認めて頂ける訳ですから、化石燃料という限られた
資源にもかかわらず、税抜き価格で40円程度で供給される石油製品のありがたみを、
日本国民として、或いは人類として、感謝して行く必要があるのかもしれません。
そして縁あって石油製品を販売させて頂く生業についた私としては、それを広くお伝えして
いく事も私の使命の一つではないかなあと実感している今日この頃です。
番外編その1の怖いお話、それでも油田を見に行った男達、我等もオイルマン?
上記の写真はブンタオのヘリコプター基地からチャーター便を手配して視察しました。番外編その2、ベトナム国内のSS事情
11月20日の14時にテイクオフして片道40分。そして現地で数回旋回して帰る予定でしたが
何故か一度素通りしただけで帰ってしまい、何か非常に物足りない気分でした。
基地に帰ってその理由を聞いてまずびっくり。何とヘリの調子が悪く(ローター故障?)、
安全のために引き返したとのことで、基地には緊急用の消防車まで待機させていた
ことまで聞いて二度びっくりしました。
そしてヘリの会社がお詫びとして、課金料金なしにもう一度飛ばすという話しがありました。
私は、多少危険をおかしても行きたかったのですが、まさかこの様な話を聞いた後で、
また観光旅行のついでに油田も見に来たというい人も、中にはいらっしゃるはずなので
多分皆行かないのかなあと諦めていました。
「創業以来、事故は起こしたことはない」とのことなので、個々の自己責任で判断することに
なりましたが、「やはりもう一度しっかり見に行きたい」という勇気ある精鋭が、14人中、
なんと10人もいました。皆、若手特約店経営者ですが、販売業者といえども、オイルマン
(約1人ウーマン)の血が流れていることを実感した、誠に嬉しいでした。後でJVPCの福岡
所長様にご報告しましたが、所長様でさえ一日に二度も行ったことはないとのことでした。
左写真は、ホーチミン(旧サイゴン)市の所謂 都市部の比較的綺麗なSSです。番外編その3、ベトナム国民の活力は、日本が繁栄の中で忘れてしまったそのものだ
オクタン価は83と93があり、83のレギュラーガソリンで1Lあたり40円でした。
しかし平均月収1万円程度のベトナムでは、やはり高価品のようです。
右写真は地方都市の一般的なSSです。道路とSSの境目さえはっきりしていない状況ですが
これでも舗装してあるだけ地方としては綺麗な方で、舗装無しの泥だらけのSSもありました。
またオートバイの数には驚かされました。(右上写真)ずばり日本の10倍いや20倍あるでしょう。
新車の値段は、日本円で20万円。中国製でも10万円で、ガソリン以上に超高価品のようです。
ちなみにベトナムでは、オートバイのことを「ホンダ」というそうです。数は少ないですが例えば
ヤマハのバイクは、「ヤマハのホンダ」ということになるそうです。
今回の視察で、ホーチミン市と油田の町ブンタオ、そして最終日の観光でクチを訪問しました。
上記の写真をご覧下さい。左はブンタオ市の郊外ですが、舗装すらされていない状態です。
右は、ホーチミンからクチへ向かう時の国道です。
決して綺麗とは言えませんが、人も街も何か活気を感じませんか?
ちなみにホーチミン市では、我々のバスをバイクで追いかけて来て、Tシャツや帽子等を売る
商魂逞しい?人たちが多数いたので、奉仕?のつもりで買わせて頂きました。
ここまでは香港等でもよくある話なのですが、帰る日に我々のバスを見つけた彼らが、また
追いかけて来るではありませんか。正直申し上げて「逞しいけどしつこいなあ」と思いました。
空港に到着した彼らが近寄って来て言うには、「我々を見送りに来た」とのこと。ベトナムでは
海外に行く人は、親戚中で見送りに行く習慣があるそうですが、ちょっとした商品を買った程度
の縁でも、わざわざ空港まで見送りに来てくれたことに本当に驚かされるとともに、また
「売り込み?」と勘違いしてしまった自分を恥じる想いでした。
活気、逞しさ(たくましさ)、そして感謝の心。日本が過去30年の繁栄の中で、何か置き忘れて
きてしまった大切なものを、今回のベトナム旅行は、改めて教えてくれました。
さて一年間本当にありがとうございました。そして来年もどうぞよろしくお願いします。