祝 田辺石油(弊社販売店様)エネ庁長官賞受賞
 表彰方針の大幅変更に見る、今後のSS業界のあるべき姿
2月並びにエネ庁関連企画番目のお客様です。実は、新年に嬉しいニュースが入りました。
弊社の取引先である有限会社 田辺石油さんが「資源エネルギー庁長官賞に内定した」という話です。
しかし田辺石油さんは、映画「男はつらいよ」のお団子屋さんの様なイメージの老舗販売店さんです。
この庶民派販売店の代表ともいえる田辺石油さんに、いやむしろ資源エネルギー庁長官賞に、一体
何が起こったのでしょうか。1/19の表彰式に同席させて頂きましたので、写真を添えてご報告する共に
この賞がどう変わったのか、そして今後のSSのあるべき姿も考えてみたいと思います。文責 垣見裕司

資源エネルギー庁長官賞の昨年までのイメージは
資源エネルギー庁長官賞は、昭和49年、SS業界の振興を目的として発足し、今年で30年目
になります。(それ以前は、通商産業省鉱山局長賞として8年間実施されていたそうです。)
実は弊社も昭和58年に本社に隣接する 麹町SSが資源エネルギー庁長官賞を頂きました。
その時以来、そして昨年まで、あくまで私個人のエネ庁受賞SSの勝手なイメージですが、
 @ガソリン月間販売量 2-3百KL以上、A洗車収益 2-3百万円以上 B高い油外収益
 C昨今で言う損益分岐点ガソリン粗利も低く、2-3円以下、人件費比率も100%以上
 Eそして元売の全国表彰の常連SS
と言うものでした。しかしそれを全てクリヤーしたとしても表彰数は、せいぜい50SSですから
全国5万SSの僅か 0.1%。従って過去表彰して頂いた弊社が申し上げるのも大変失礼なの
ですが、一般のSSとしては、目指すべき、目標というよりは、限りなく雲の上の、そして
縁遠い存在だった、というのが偽らざる印象だと思います。
またこれも私の勝手な推測ですが、自薦他薦というよりは、各元売が自社系列から候補SSを
選んで、場合によっては優先順位をつけて、推薦していたでしょうから、良い悪いは別として
どうしても元売という絶対的フィルターにかかっていたことは、間違いないでしょう。
今年度から3部門の表彰になった
早速、調査したところ、表彰制度の基本方針が大幅に変わっていることが分かりました。
それは従来の応募SSを一括して比較する「総合評価方式」から、共通の評価基準でもって
比較する「相対評価方式」への変更されるとともに、下記の3部門が新たに設定されました。

(1)SSビジネス部門 
  
@石油製品販売経営分野 
   
従来型のビジネス展開であっても、そのSSの地道かつ健全な経営方針に関して
   周辺地域や消費者が好感を持っている場合
  A新ビジネスアイデア分野
   
SSを核に開発された新ビジネスアイデア、商品や創意工夫による独自の接客手法
   などを通じて、消費者サービスの向上に貢献しているSSを相対評価
   
(2)地域社会貢献部門 
  @レスキュー活動分野
   SSが自主的かつ独自に、普段から取り組んでいるレスキュー活動(防犯、防災、交通安全)
   の結果として、消費者や地域住民に対して実益が、もたらされたケース。
  A社会福祉貢献分野
   SSが自主的かつ独自に、普段から取り組んでいる社会福祉対策の結果、社会的弱者を
   始め、消費者や地域住民に対して、もたらされる利益の大きさを評価。
  B地域活性化対策分野 
   同様に、地域活性化における当該SSの貢献度の大きさを評価

(3)環境・品質貢献部門
   
地域の環境保全に効果がある対策について、手法の独創性と環境上の利益
   末端流通における品質確保対策について、消費者利益の保護に対する貢献度
産業振興から消費者視点に
しかし私は、上記の他にもう2つ大きな変更点があると思います。
一つはその推薦方法です。従来は、自薦他薦があったにしても、その多くは、各元売から
候補SSを推薦していたので「元売推薦方式」といえるかもしれません。
しかし
今回からは、新聞等を通じて本気で広く公募するとともに、全石連推薦や、新聞記者等
から推薦も含め、多くの推薦方法があり、開かれた表彰制度になったことではないでしょうか。

もう一つは、誰が何の為に誰を表彰しているのかが、明確になったのではないかと思います。
極端に申し上げる失礼をお許し頂けるなら、従来は、恐らく「産業振興」という基本方針のもの
日本の為に石油業界に強い元売を育てる、多くの優秀なSSを育てる、その為の良いSSを
表彰するという、ことではないでしょうか。しかし、今年からは、その日本のためというのは、
消費者や更には地域住民から見て良いSSを、消費者や地域住民の視点にたって、資源
エネルギー庁が表彰する、ということに大きく変化し始めたということではないでしょうか。

そういえば、数年前、都会出身の代議士が、初めて農水大臣になった時の挨拶で、
「これからの農水省は、農業に従事する人を支援する事と同等以上に、消費者の為の
 農水省を目指す」と抱負を語っていたのを思い出しました。
結果として消費者に支持されない会社やSSは、市場から撤退を余儀なくされることは、
明らかですので、「元売に喜ばれるSSを目指し、表彰してもらった」従来型の賞ではなく、
「消費者に支持されるSS」を目指し、その結果として「資源エネルギー庁長官賞を頂ける」
それはきっと、「元売も大いに喜んで大切にしてくれる」という逆転の発想をして、会社の
基本方針を180度、いや540度切り替えるべき時期が来たのかもしれません。
田辺石油さんのご紹介
設立は昭和30年。今回人命救助した田辺卓丈専務の祖父、田辺道夫社長が開業しました。
所在地、足立区椿2丁目、環状7号線から、鳩ヶ谷街道に入ったところに位置しています。
敷地面積は、450m2、計量器数、ガソリン3基、軽油2基、灯油1基、従業員は5名様です。
お客さまの多くは、常連様で、ほとんどのお客様の顔と名前を把握されているとの事。
昨今の新しい量販型のSSには感じられない昔の油屋さんの本当に暖かみのある雰囲気で、
地域密着型SSの見本と言えるでしょう。また、SS業務の他にプロパンガスの販売も手掛け
地域社会の石油製品の安定供給の場として、半世紀に亘ってご活躍されています。


地元奉仕活動に参加されていた長年の実績があった
昭和30年の開所以来、田辺社長は、消防関係では防災活動、警察関連では交通安全など
積極的に参加し、数多くの表彰状や感謝状を受領されております。そんな社長の影響を受け、
その理念を引き継いだ田辺専務は、地元、西新井消防団第8分団に所属し、従来より
地域社会貢献をされておりました。
そして垣見油化も直営全SSが、いち早く加入した東京都石油商業組合の地域社会貢献事業
である SOS QQ活動へ、田辺石油さんもSSとしても参加を決意。平成13年に救命講習を
受講し、上級救命技能者の認定を受け、救急SS活動を行ってまいりました。
近くのアパートが火災の時、逃げ遅れたお婆さんを救出
そのような背景の中、平成15年7月17日夕方、SSにて給油作業中、近所の民家で火災が発生した事に気づいた田辺専務は、ユニホーム姿のまま、現場に駆けつけました。
火災になった家は、田辺石油のプロパンガスのお客様でもあったため、間取り等を一応把握していた田辺専務は、「中にお婆さんがいる」との近所の人の情報をもとに
消火活動をしながら積極的に屋内に突入し、危機に瀕していた女性を無事に救出されました。
この功績に対し、地元「西新井消防署」を直轄する東京消防庁第六方面本部長より表彰を受けました。これらのすばらしい開所以来の活動と今回の功績が、栄えある資源エネルギー庁長官賞受賞の最終的きっかけであった事は、間違いありません。

全国のQQSS、そして地元消防団に参加している全SSへの表彰ではないか
しかし、東京都石油業組合のQQSSに参加しているSSは、数多くあります。
また、地元の警察、消防と密接な関係をもつていたり、自警団や消防団に参加されている
SS店主や従業、全国レベルで考えれば、本当に数多くいらっしゃるでしょう。
では、田辺石油さんと、多くのSSさんとどこが違ったのでしょうか。

近くで、火災という不幸が発生したこと。
その時、田辺専務がSSにいて、それに気がついたこと。
現場に急行して、逃げ遅れたお婆さんの事を聞き、即座に判断し、果敢に救助出来たこと
この出来事を、西新井消防署は勿論、東京消防庁第六方面本部長が、表彰してくれたこと。
弊社卸担当セールスが、後日その話をお伺いした事。
今回のエネ庁賞の公募の話を私が聞いたとき、これを思い出し、元売に推薦をお願いしたこと。

これらの条件がたまたま重なっただけではないでしょうか。当事者の田辺専務さんも、
「消防団等に参加し、地域社会貢献している多くのSSの皆様への表彰だと思っている」
と照れながらしかし謙虚にお話してされてるとともに、「これから受賞に恥じないSS経営と、
地元社会貢献活動を続けていきたい」とその抱負を語っていらっしゃいました。
喜びの表彰式
資源エネルギー庁長官賞の表彰は、平成16年1月19日、東京プリンスホテルに於いて盛大に
開催されました。表彰は、全国から18SS、新日本石油系列からは、田辺さんを含め僅か
3SSですから、如何に狭き門であったかが分かります。


左写真は、日下長官から表彰状を受ける田辺専務。 右写真は、新日石系列関係者で撮影。
前列右から三番目、渡 新日石社長の左が、井上 田辺石油社長代行、右に田辺専務。
当社も更に頑張って
こうなると当社直営も見習わなくては行けません。
既に加盟している東石商のQQSS活動に、より積極的に
参加して行くために、SS来店客や周辺住民の方々に
我々のQQSS活動をお知らせすることを手助けしてくれる
「キャラバン隊」を要請しました。
そして昨年12月17日、都石から委託を受けたキャラバン隊が、
当社南田無SSに来て頂き、SSの来店客や隣接する
いなげや(垣見ショッピングセンター)の店頭で、
パンフレットやチラシ配布の周知活動を実施しました。
右は、その時の写真です。
これからのSS業界はどうなるのか、まず現状の客観的分析をしてみると
まずメイン商品のガソリンですが、需要は直ぐにピークを迎えやがて減少に転じるでしょう。
詳細理由は、こちら。
仮にSS数が、5万から3万に減ったとしても、閉鎖したSSで販売していた
数量は、一部の勝ち組SSが持って行くので、何もしないSSに、残存者利益が回ってくるとは
思えません。仮に数量が均等に割り振られ、多少伸びたとして、製品そのものに差が無く、
業界経営者のポリシーが上がらなければ、粗利も更に減るでしょう。よって何もしないSSの
利益が、「単なる我慢だけ」によって増えることは、残念ながら期待出来ないでしょう。
また車の整備の方も、車の性能が年々向上し、益々故障しない車が登場して来ます。
「次回車検までメンテナンスフリー」という、カーディーラーの囲い込み策の結果、SSでの整備
が益々減るかも知れないし、更なる規制緩和で車検期間の延長もあるかもしれません。
そしてハイブリット車や将来の燃料電池車に至っては、余程の知識と設備が無い限り、SSでは
全く触わらしてもらえなくなるかもしれません。
ではどうやって生きて行くのか、地域密着、地元社会貢献、顧客中心主義が基本です
本HPで、何度も申し上げて来たとおり、我々SSは、誰に食わせてもらっているかと言えば
それは間違いなくお客様です。元売や特約店は、重要な仕入先ではありますが、企業が
存続してゆくのに必要な利益の源泉は、お客様にあるのです。
しか私の反省も含めて、SS業者は、長年、元売や仕入先ばかりみてきました。
それは二度のオイルショックのトラウマでしょうか。99.7%を輸入に頼る貴重な油を扱う業界に
おいては、原油を確保し輸入することが、その役割の大半で、あとは「売らせてやってやる」
「売ってやる」の発想が、無意識のレベルで組み込まれてしまったのかもしれません。
これをまず改めると現在の販売競争が、「原油備蓄もあり、精製能力もSS数も過剰の中で
ようやく他業界並みの普通の自由競争が始まっただけかもしれない」と思えてきます。

ではSS業界にどんな未来があるのでしょうか。私はSSにまだまだ魅力を感じています。
その来店頻度、その立地、そのハード、地域密着性を最大限に活かし、あと10年、お客様が
ガソリンを入れに来て頂いてる間に、ガソリンの数量や粗利に依存しない経営を、そしてSS
しか出来ない経営者ではなく、SSも出来る経営者を目指して、自らの会社とSSと、そして
経営者として自分自身の能力を客観的に見直せば、自ずと答えは出て来ると思います。

その具体的方法ですか?。生き残るSSが3万SSあるとすれば、それは3万通りあるのです。
そして当社が提唱している「あずかロッカー」という(配送物品受取り代行サービス=最終物流
拠点提供サービス)も間違いなくそのひとつです。車を持たない、それこそガソリンを全く
使わない、今まではお客様だと全く思っていなかった、周辺住民の方々が、新しいSSの
お客様になるのですよ。この他にも沢山の具体的経営改革プランをもっていますが、
これは各地の講演会の時などに直接お話し致しましょう。

追伸 今月も石油協会様のご要請で、2/18に大分石商様、2/24は、全石商近畿支部様に
また1/27と2月下旬には、北海道経済産業局のお招きで札幌にもお邪魔する予定です。
もしHPの読者が参加されていらっしゃいましたら、お気軽にお声をかけて下さい。