これからの石油販売業について
 エネ庁石油流通課、石油流通研究会に委員として参加して
拝啓 あなたは2月企画 番目のお客様です。
2002年1月、資源エネルギー庁資源燃料部石油流通課の主催により、平成13年2月から7月の間
延べ10回も開催された「石油流通研究会」における議論や検討の内容が発表されました。
ぜんせき新聞1/10号以降の連載、燃料油脂新聞1/30号6-9面に全文、また1/10、1/19、1/22に
関連記事が出て
おりますが、その反響の大きさにも私も驚いております。。
そんな中、委員であった私のコメントがほしいとのご依頼を両新聞様より頂いておりました。しかし
一委員の私が、勝手なコメントを出してよいものかと、エネ庁様にお伺いを立てておりましたところ、
「この報告書はいわゆる審議会のような記載内容をもって最終結論とするということではなく、
 問題提起を行い各方面の議論のたたき台として活用してもらいたい」とお言葉を頂いただけでなく
このHPの読者様にも内容が読めるよう、RDFファイルによる全文掲載のお許しまで頂きました。
そんな訳でエネ庁様のご了解の元2/7にぜんせき新聞様、燃料油脂様に私のコメント記事を
載せて頂くとともに、弊社HPに掲載するご了解を頂きましたので、2月企画とさせて頂きます。
最後に、原則非公開、報告書も作成しないという当初のご方針であったからこそ、オフレコもあり
有意義な会となりましたが、その多くが報告書として発表されたことを大変嬉しく思っております。
そして機会を与えて頂いたエネ庁様、まとめ役となられて三菱総研様、大学教授様や有識者の方々
そしてご同業の委員の皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。文責  垣見裕司、2002/2/7 NO4
   報告書全文(白黒)pdf ファイル240KB       ご覧になるには、が必要です
   報告書プレゼン用カラーpdfファイル249KB  

最初のきっかけは。 
2001年2月エネ庁の課長補佐様からお電話を頂いたのが始まりでした。 本HPでも何度か申し上げておりますとおり、マスコミ様や各種研究所様、 エネ庁様や公取様などのご当局様からのお問い合わせを頂くのはめずらしいことではないのですが、研究会の委員の要請には驚きました。と言うのも OO審議会のように会議で発表した内容が、翌日の業界新聞に載るような会議は
「お前が出席しておきながらあの会結論はなんだ!」と各方面からお叱りを頂いた先輩の経験を聞いていたもので、最初はご辞退しようかと思いました。しかし「垣見さんがそう言うだろうと思って、あくまで課長補佐クラスの勉強会で、原則非公開で正規報告書も作りませんから」 と先に逃げ道を塞がれてしまいお引き受けすることになりました。 しかし弊社も元売傘下の一特約店、 しかるべき方に一応ご相談したところ、「多いに語ってこい」とのお許しを頂きました。
エネ庁は、身近な存在です。
ところで業界の皆様は、エネ庁のキャリア課長補佐様にどのようなイメージをお持ちですか?
元売様から聞いた範囲では「机の上に足でも乗っけながら自分の都合で民間会社のトップも呼びつける。」なんていうことを勝手にイメージしてしまいましたが、トンでもありません。
エネ庁様からお話があるときは、全て弊社にお越しになりましたし、キャリア職を全く感じさせない腰の低さは、むしろ私自身が若気の至りを改めなくてはいけないなと思うほどです。
とは言えその「年」さえも私より遥かにお若いことも間違いありません。
そんな訳で、業界の方で我こそはと思う方は、臆することなく、エネ庁様にお話を聞いてもらうのもよろしいのではないでしょうか。ただ一つだけ注意しなくてはいけないのは、恐ろしく忙しい方々ばかりなので、 特に国会開会期間中などは、「出したメールが返ってこないから無視された」などと思わないで、気長にアプローチして見るのがよいでしょう。

研究会の詳細は
研究会は2月より月2回程度のペースで7月まで計10回程開催されました。
場所は三菱総研様のご本社で、午後6時から9時まで約3時間という感じです。
毎回、総研様から、前回までの議事録やそれを受けた調査結果や基調講演的な発表が30分程度あり、その後は有識者委員から他業界例や手法事例などのご説明が30分ぐらい頂いたこともありましたが、基本的にはたっぷり2時間、委員相互のフリートーキングという感じです。
非公開だし報告書も無いだけに、逆に本音が出て大変参考になる議論が多かったと思います。
メンバーは、約20名。エネ庁流通課様、7名、三菱総研様、3名、大学教授、3名、経営コンサルタント 1名、協会理事 1名、そして石油業界若手?経営者 3名 またオブザーバーとして組合関係者、2名という構成です。
勉強会の名称は「流通経営と石油製品販売業界への応用等に関する勉強会」です。
すなわち一般業界の成功例、失敗例、すなわち栄枯盛衰を学ぶことによって、石油製品販売業界の先を行く業界を検証し、その成功を学ぶとともに、 将来の失敗が予想出来るならそれを改めようという これも大変興味のある切り口でした

勉強になった一般業界の栄枯盛衰
三菱総研さまからの基調講演的な内容は、報告書にかなり網羅されておりますので、
私からは特に面白かった内容にスポットをあててご感想を申し上げたいと思います。
最も面白かったのは、、他業界の成功例、失敗例、すなわち栄枯盛衰の検証です。
石油業界はそこそこ研究しているつもりでも、他業界については新聞の読者レベルですから
大変参考になりました。具体名の記述は差し控えますが、
1.家電業界の例、メーカーVS大手量販店、某N社系列ショップの栄枯盛衰VS某S社直売志向
2.医薬品業界、また化粧品業界S社の系列問題
3.酒ビール業界の卸価格小売価格の破壊の過程、系列小売店VS専業量販店VS総合スーパー
4.衣料品業界では昨今話題のF社の成功要因分析
と申し上げれば、何を題材に取り上げ、どのような結論に達したか、皆様にもご推察頂けることと思います。
ただ共通して言えることは、成功した業界でも、自ら変わろうとした会社は少なく
「顧客ニーズの大きな変化の中で変わらざるを得なかった。」(大学教授)とのことです。
それでも変われたところはまだよく、業界全体が守旧的雰囲気があると、衣料品のF社、
証券業界M社のような、革新的なスーパー企業を生む土壌となってしまうのでしょう。
その意味では石油業界の革新的NEWスーパー企業はもう現れているのかもしれません。
石油業界はどうなのか
前項の他業界の勉強のあと石油業界を検証してみると大変面白いことが分かりました。
石油業界にとって「メーカー」とはだれでしょうか。日石三菱系列で申し上げれば、日石三菱精製、興亜石油、東北石油などいわゆる精製会社でしょう。では日石三菱そのものは一体なんでしょうか。商社とは違うようですし持ち株会社とも違います。しかしそれでいて業界では圧倒的な存在と発言力を持つ階層です。では他業界にはその例はあるのでしょうか。実はこれが中々見つからない。強いて言えば建設業界のゼネコンだけではないかとのことでした。
一方コンビニの本部はどうでしょうか。メーカーではありませんが、マーケティング、商品の立案や製品化、仕入、IT戦略の立案とその実行、販売店経営指導等各業務、またそれらにノウハウがあり、価値があるからこそ、決して安くは無いロイヤリティーも払っているのでしょう。
では石油元売の場合、精製以外にも、原油開発、調達、LNG、それにIPP等で多くの業務をしておりますが、それはどちらかというとアップストリームに近く、やはり原油調達なり、精製ハードコストの低減等メーカーとしての精製元売に寄与すべきものだと思います。
従って販売元売単独で考えると、ブランド戦略、POSやITシステム、そして販促活動施策、という事になるのでしょうが、それに価値があるかどうかは、皆様個々に判断が違うと思いますので名言避けましょう。しかし精製元売がもはや3円/L台のコストで成り立っているのに対し、ある販売元売では、見かけ上4円/Lしかし採算油種だけですとなんと8円/Lものコストがかかっている事は意外に知られていません。IT時代とは中抜き現象といわれていますので、精製元売+物流のみでSS届けのコストしか、市場に認められないということがないよう頑張って頂ければと思う次第です。
一般業界で成功したSCMやCRMの手法は使えないのか
SCM=Supply Chain Managementとは、単に生産者重視のプロダクトアウト志向から、
資材調達、生産、流通、販売という全体の流れで管理し、消費者の購買動向を重視した
マーケットイン志向に変えることによって、合理化を推進しようというもので、これは同時に
企業の枠組を超えサプライチェーン全体の最適を図ることに重要な意味があります。
これは「在庫」が極めて重要なコンビニ業界などでは、大変重要な要素です。
例えば弁当を過剰に生産し、過剰在庫を抱えれば、お弁当は腐り在庫ロスが発生する。
一方在庫切れとなれば、期待利益の損失を招く。という説明をすれば、ご納得頂けるでしょう。
しかし、SS業界を考えれば、売りたい主要商品はガソリン、軽油、灯油、オイル、洗車、、、
狭いコンビニでも3000-5000アイテムあるといわれていますが、我々は1/10以下。
そしてガソリンの欠品はまずないし、過剰在庫を抱えたとしても腐るわけでもない。
従ってSS業界においては、SCMにおいて少なくとも物流という意味では、欠品も過剰在庫も
ないので、それなりにうまく行っているのでは、という結論になってしまいました。

CRM=Customer Relationship Managementは、顧客関係性のマネジメントと訳すのでしょうか。
企業が商品を買い続けてもらうために、顧客とのコミュニケーションを最適化していくマーケティングの考え方です。 所謂メーカー志向の作ったものを如何に捌くかではなく、顧客一人一人のニーズを把握しそれにマッチした商品を作る。 ということでしょう。例えば衣料品業界などでは大変役に立つ手法ではないでしょうか。
しかしこれも我々の業界の場合、メイン商品であるガソリンに顧客一人一人のニーズが如何に違うかと考えても、 セルフとか、洗車のバリエーションとか、急いでいるお客様に何々は如何ですかと言わないでスピーディーに作業するとかの範囲です。従ってこれら一般で成功した手法も石油業界では難しいということが、今度の勉強会では委員の皆様には分かって頂いたようです。
成功するモデルを並べて見ても
1995年、石油流通効率化ビジョン研究会が開催されました。 その中の報告の一つに
今後のSSの発展の方向性として4つの分類が明記されました。改めてご紹介します。

 1.サービス充実型*車両関連サービスの充実による固定客の拡大
 2.量販指向型*徹底したコストダウンによる価格指向の顧客獲得、今ならセルフも含まれる
 3.多角経営型*立地特性を活用した多角化による収益基盤の拡大
 4.早期撤退型*合理的判断に基づくSS閉鎖転廃業は経営資源の有効活用

発展の方向性としておきながら早期撤退が入ったので異論もありましたが、私はむしろ
評価したいと思います。そして今回も今後収斂されていくであろう4タイプを提示しました。

 1.サービス高度型 専門店型SS、他に比較して、競争力を有するきめ細かいサービス等
 2.量販特化型 価格で勝負のディスカウンター型、セルフがここに入るでしょう。
 3.SSに新業態型小売店舗付設型 コンビニ併設等ワンストップショッピングの実現です。 
 4.ショッピングセンター等にSSを付設型 3をより大規模にした形でしょう。

そして報告書でも、敷地や資金力を考えると1or2と記載していますが、私はもう一つ
上記の分類以上に重要だと思う、ソフト面を付け加えたいと思います。
成功SSとそうでないSSの違いはどこか
前述の1や2を選択した同じ系列、同じ規模、立地、ハードのSSでも、成功例や失敗例は多々
あることは皆様も実感として感じていらっしゃると思います。では一体何が違うのでしょうか。
実は7月企画でも少し触れましたが、5年前くらいから気がつき、もやもやしていたものが、
目から鱗が落ちるごとく一気に明快となりましたので、その一端をご説明しましよう。

社員教育や顧客満足
 X にっこり笑ってこんにちは、机の上で考えたマニュアルを社員にやらせるだけ
 O 君、車好き?、初めて買ったときの気持ちは?、その気持ちでお客様の車も接すればいい
無料安全点検でも。
 X 物を売りたいが為の許可も取らないオープンボンネット
 O お客様の真の安全走行を願うプロとしてのアドバイス
お客様との接し方
 X 先に販売ノルマありなので、会社は社員をお客様と戦わせている。(気が付いていない)
 O プロとして自分の愛車と言う気持ちでの取扱いとアドバイスで、お客様から感謝されている
油外商品販売
 X ニーズがるあかどうか別として先に10円/Lとか15円/Lは販売業者の自己満足
 O 長期期間にわたる心からのアドバイスで、買うならあなたからという信頼の成果
危険物安全管理でも
 X 所長がうるさいから給油中はエンジン停止?
 O 本当に危険だから、所長に言われなくてもエンジン停止!
社風や問題解決への姿勢
 X 出来ない言い訳を先に考える。理路整然と責任を回避する。
 O どうしたら出来るかを先に考える。(やるやらないは別にして)
このような事例が他に30項目近くあり、それぞれ、所長会や社員達と作ったマニュアルが
ありますが、これが弊社の本当の宝かもしれません。
生産者指向から顧客第一主義、そして中心主義へ それを支えるのは社員満足度です。
上記のO企業に共通していることは、生産者指向から顧客第一主義そして顧客中心主義で
ものを考えているかということだと思います。私自身の反省を含め長年販売業界は元売や
仕入先だけを見て来たような気がしますが、それは間違いです。何も縁を切れとか系列を
離脱しろと申し上げているのではなく、我々販売業者はガソリン販売を通じたサービスの
付加価値にたいしてお客様からマージンを頂いていることにまず気が付くべきです。
そして古くから言われているCS活動ですが、例えば私がすべてのお客様と接することは
絶対出来ません。ということはアルバイトも含めたスタッフ全員が実は社長代理なのです。
ということは高いCSレベルを達成するには、社員満足度ESがそれ以前に達成されなくては
なりません。収入のみに目が行きそうですが、正しい絶対相対評価、評価基準の透明性、
公開性、社内情報公開、業務方針等への参画、会社の将来性信頼性等々、やはりこれらの
総合評価を実は会社はされていることにも気が付かなくてはなりません。
ディズニーリゾートが何故あんなにすばらしいのでしょうか。ハード、コンセプト、マニュアル
ここまでは経営側が用意することが出来るでしょう。でも最後は
「ここでディズニーの思想のもとで働けて嬉しい」という満足と育ちつつある自信に満ち
溢れたキャストやスタッフの笑顔に支えられていると思います。
今回の勉強会の私なりの結論は
1、SS業界は好むと好まざるとにかかわらずガソリン利益に依存出来なくなる。
  もはや元売が悪いと言っても始まりません。RIM+2円で仕入れ+3円で外資系スーパー
  マーケットが併設セルフを始めるかもしれません。そのときにあなたはどうするのでしょうか。
2、従って早急にガソリン利益に依存しない経営体質を確立する必要がある。
  残念ながらガソリンが、スーパーマーケットでいう全く儲からない白物3品になってしまった
  ことは、否定出来ないでしょう。ならばもはや割り切り、それでもお客様に価値を認めてもらう
  サービスを構築しなくてはならないのです。
3、その方法は数パターンに分けられるものではなく、生き残るSSが3万あれば、3万通りある。
  元売はガソリンを売っているかもしれない。でも我々流通業者はサービスを売っている。
  この原則に立ち返ってSSの持つ特有の立地やハード、スペース、ネットワーク、サービス
  等でしか出来ないものを自らからが構築すればよいのです。
4、キーワードがあるとすれば顧客第一主義
  もう仕入先をのみを見るのはやめ、顧客第一主義、顧客中心主義で考える。
  それは決して仕入先系列からの離脱や喧嘩別れをせよと申し上げているのではありません。
5、ガソリンに依存しない経営基盤は、系列にも依存しなくてよくなる。
  そしてもしあなたのSSがそれに成功し例えば損益分岐点口銭が7円5円3円と数量増に
  頼ることなく下がっていけば、それはガソリン数量や利益に依存していない経営が出来て
  いることを意味しています。
6、お客様から見て魅力あるSSは、仕入先からも魅力あるSSである。
  お客様に評価されたSSは結局仕入先からも銀行からも魅力ある会社となるでしょう。
  従って今回の研究会に出た4つの収斂パターを選んだから生き残れるのではなく、
  これらの発想とその変化の過程も形以上に重要ではないかと思います。

尚これらは研究会の結論ではなく、私見ですのでくれぐれも誤解の無い様にお願いします。

今こそSS業界がすべきことは。
まず前述のように、経営者の意識改革でしよう。目から鱗を落とした後は、社員満足向上の為
管理職や社員との対話し押し付けではなく一緒になってそのマニュアルを作成する事でしょう。
そして会社全員のベクトル(方向性)を一致させてから、本当の再スタートだと思います。
またSSとしてこれから目指すべき多角化、或いは業態化の決定ですが、これは経営者自らが
決め、そして責任をとって行かなくてはならないでしょう。
具体的にいわれると、結局は1月企画の結論にたどりついてしまうような気がします。
お客様を見つめ、対話するとともに、
 SSが地域の皆様から何を求められているのか、
 SSしか出来ない事は何か。
 そして地域社会の一員としてどのような社会的役割や貢献更には奉仕が出来るのか

を考えてみる。
もう隣のSSとガソリンの販売価格を比べるのではなく、サービスやスパークルを近くのコンビニや外食産業等サービス業と比較し、自身の物販業やサービス業のレベルを確認する。
そして本当にSSにしか出来ないことは何かを考えていく。以前よりHPでも申し上げていますが、
私は生き残るSSが3万件あれば、3万通りの生き方があると思います。
仮にガソリン需要が半分になっても、車が無くなる訳ではないので、
カーケアビジネスは残ります。
でも車検は規制緩和されたら需要は減りますし、整備もハイブリット車となると
SSではなかなか手が出せなくなるでしょう。
でも弊社で成功しているLPGタクシーのお客様が、深夜に「洗車とご休憩」の目的で
ご来店頂いたり、併設店舗への買物のついでに「灯油と洗車」のという注文で
ご来店頂く事は、元売マニュアルにはない、ひとつの例のような気がします。
また特別企画でご提案している 秘書箱サービス はコンビニには出来ないこれからの
SSに求められるひとつのサービスだと思いますが、皆さんは如何お考えでしょうか。