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ホルムズ海峡実質封鎖から60日 各油種の現状報告 A重油逼迫原因は何か |
ガソリンについては系列は勿論PBSSも需給改善
ではまず、ガソリンの需給バランスから解説して行きたいと思います。
ガソリンが逼迫しているか否かは、系列仕切り価格とノンブランド製品
(以下業者間転売品を略して業転と称す)の卸価格の差で判断するのが
一番確実だと思います。
ガソリンについては3月中旬に系列卸価格が(補助金込、税抜き価格
運賃前)で例えば100円だとすると、業転価格が+30円の130円という
時期がありました。流石にこの価格差ではPBSSはやっていけないので、
廃業という話も一部マスコミで取り上げられました。
しかし4月27日月曜日以降は、系列より2-3円安い状態になっていますので
ガソリンの需給については問題ないレベルまで回復したと言えるでしょう。
我々系列SSは購入先の選択の自由はほぼなく、系列外の業転を仕入れる
ことは、仮に中身が同じであっても、品質保持契約や、商品表示法的にも
問題はあるので、ほぼ全ての元売マークを上げる系列SSは、「業転を買う」
ことはまずありませんが、こんなに早く 系列安 < 業転高が改善されて
しまったのは複雑な心境です。
軽油について、SS軽油は一部を除き問題なし 大口軽油は価格高騰
次に軽油です。我々一般の系列SSにおいては、ガソリン同様出荷制限
もなく平穏です。但しガソリンの4月出荷が正に平年並みの前年比で
約97%に対して、軽油はSS店頭で実は約103%まで伸びています。
ガソリンは自動車が約14年で完全に廃車になり、乗り換えた新車と廃車
された燃費性能の差を考えるとこの97%というのは 近年の正常値です。
日経新聞5月1日のガソリン市況覧でもこのコメントが掲載されました。
しかし軽油の103%とは約6%もの差があります。これは恐らく後述する
大口インタンク軽油の価格が高騰する一方、バスやトラック等の入札が
4月以降成立せず、単月の随意契約価格が非常に高いと聞いています
ので、このインタンク軽油の一部が、どこでも給油出来るFCカード等で
一般のSSに流れて来ているのではないかと思います
このバスやトラック業界のお客様は、大手様は自家用給油所を所有して
おり、その給油所のタンクに元売等から直接納入する契約:形態を
「インタンク」と呼ばれています。これは極めて遺憾ですが、我々の系列SS
仕切りより安いことが多く 業転価格と連動していると言われています。
ホルムズ海峡封鎖以降、軽油の業転価格は系列比+40円ということも
ありましたまで一時は本当に逼迫していたと言えるでしょう。現在は
少し落ち着き、通常業転価格は系列費+5円程度で推移しています。
一方、軽油の輸入品については系列比+70円等の高値です。実はある
マスコミ情報で実名で掲載されていたのですが、富山県内の一部JASSが
農業向けの需要を確保するため、一般客への給油を1台当たり30Lまでに
制限するSSが16箇所あると報道されていました。
これも筆者の推測ですが、全農エネルギー金沢石油基地への輸入玉が
思うように買えないご苦労ではないかと思っております。
JAcomでも情報公開されておりましたので実名で表記しました
灯油とジェット燃料
灯油については、灯油シーズンがほぼ終わったこともあり、系列と業転
の価格差は、ほぼなくなって正常化しています。
ジェット燃料については、一般の方が買う製品ではないので、価格調査が
されてなく、需給バランスを価格から推測することに無理があります。
しかしジェット燃料単体では各空港で一昨年不足したというニュースが
ありました。あれは品物不足というよりは、物流問題もあったというのが
私の見解です。但し今後は夏休みシーズンまでもし海峡封鎖が続くと
欧州同様、ジェット燃料不足問題も深刻化すると思います。
一番不足しているA重油とその原因
今、一番心配なのがこのA重油でです。戦争前の系列品卸価格が
90円の時、業転価格は85円くらいでしたが、3月中旬には、系列100円
に対して業転140円。更に輸入品に至っては180円から220円と実質
買えない価格になっています。直近の4月末でも系列100円対し、
業転価格はまだ130円、輸入品160円等の異常事態が続いています。
潤滑油
垣見油化の場合ですが、SS関連オイルについては、逼迫を予想し、
3月中旬まで引き取ってしまったので、当分は在庫で対応出来ます。
一方工業用については、その出荷停止、もしくは出荷制限銘柄は
既に約70種類にも及んでおります。これは全く出せないということで
はなく、前年実績がしっかりあれば、個別相談という感じですが、
潤滑油がここまで 早期になくなるのは想定外でした。
また弊社SSは大型トラック等へ給油はスぺ―スの関係でお断りして
いるのてすが、大型の軽油車に必要なアドブルー(尿素)の逼迫も
伝えられてています。
A重油の不足は 複合要因
A重油がナフサなどと同様に逼迫している主な理由について、私は
複合要因だと思います。以下それを要因別に解説します。
1 原油から「蒸留」で産出される「重油」は粘度の違いだけだった
原油は「蒸留」という方法で各石油製品を分離し産出していきます。
最初は気体であるLPガスが発生します、その後温度ごとに
30度から180度で、ガソリンやナフサ。
180度から250度で、灯油やジェット燃料。そして
250度から320度で、軽油が出て来ます。そして
350度以上が重油で、粘度によりA B C重油に分けられます。
よってA重油が単独でどんどん出来るという訳ではないのです。
最後に残ったのが残渣油(アスファルト)等です。
2 A重油はブレンド品。関連する中間3品の需給調整役だった。
A重油は単一製品ではなく、軽油留分と残渣油(重い成分)のブレンド
品で、 逆に言えばA重油は軽油約9割、C重油が約1割で出来ています。
そのため軽油が不足するとA重油に回す分が減るという構図があり、
A重油自体が関連する中間留分製品の調整役を担っていた訳です。
3 社会的ニーズは軽油や灯油の方が高い
A重油のニーズとしては、農家のビニールハウスの暖房、環境基準が
厳しくない地域の銭湯等の燃料。中小工場のボイラー。中型発電機。
漁船の燃料等、他に代えがたいニーズで使われています。
しかし日本経済の物流を支えるトラックの軽油。公共交通機関である
バス等の軽油の方が優先されているのは事実だと思います。
4 LNG不足から火力発電用の大型仮需が発生した(筆者推測)
通常、ガソリンや軽油では、需要が倍になるということはまずありませ
んが、普段は天然ガスを使っている火力発電が、LNGの輸入数量不足
から前年実績ゼロから一気に千KL単位で確保する可能性はあります。
5.上記で価格が急騰した結果、中小の需要家を持つ特約店が自社の
タンクに在庫を確保しようと動いて需給を更に悪化させたようです。
6. 公共インフラが4月以降入札の不調ニュースが流れた。
3月中旬や下旬に実施された下水処理場や市バス向けの燃料入札が、
価格高騰と近い将来、その調達不安を理由に業者から辞退され、
「入札不調」となるケースが相次ぎ、これがマスコミに報道された。
実際、4月分の在庫が確保できない、下水処理、農業施設、病院等や
極端な話、火葬場までA重油が不足したのは事実のようです。
7. 同じA重油でも環境規制によって2種類作る必要がある。
A重油は、含まれる硫黄分の割合によって、硫黄分0.5%以下を1号
(LSA重油)、0.5%〜2.0%を2号(HSA重油)と分類されています。
硫黄分の割合が低い方が「品質が高い=価格も高い」のですが、
供給側としてはこの2種類を用意する必要があるのも手間でした。
8.需要家側の問題 タンクが大きくなく元売直送に比べ手間がかかる
A重油の需要家は、数としては零細でタンクが小さく、配送網も細いため、
製油所側での生産カットが末端の「品切れ」として早期に表面化しました。
9.8の需要家の一回の納入は2〜4KL。 タンク容量10KL。この規模では
元売マークの元売直送ローリーではなく、地場特約店による2次配送
で、その多くは業転市場からの仕入れだったと推測されます。
10.一方元売マークの16KLローリー直送顧客には問題が少ないようです
以上が筆者の推測です。これを数字で証明すべく、石油連盟が週次で
発表していた石油製品需要統計を拝見しようと思いました。
各石油製品の 販売 生産 輸入 輸出 在庫 在庫日数
しかし3月中旬以降のその発表が停止されておりました。理由は不明ですが
今まで掲載していたのなら継続して欲しいと思います。以下1-3月需給です。
やはり緊急企画で紹介したナフサが、生産も輸入も落ちた結果、販売が
大幅減少しているのが分かります。灯油はシーズン明けなので問題なし。
軽油は販売増なのに生産が減り、在庫減少が心配です。A重油の3月販売は
少し減少しています。尚3月からは販売は本来の需要を満たしていなことが
考えられるので、3月の在庫日数は余り正確ではないと思います。
4月30日の ドル円相場 160円→155円 当局介入は大賛成
5月1日現在 政府は公式に認めておりませんが、何らかの市場介入に
より円高に誘導したようです。5月1日には157円くらいまで戻してしまい
ましたが、投機筋に円安一辺倒だと損をするということを見せただけでも
効果はあったと思います。私は米国債をじわじわ売るぞという口先介入
をして150円。そして実際に売却して140円を目指して欲しいと思います。
今の物価高は、円安要因がかなりあると思いますので、補助金で各製品の
価格を個別に下げるより、円安是正の方が遥かに効果があると思います。
出光のタンカー 出光丸がイラン側ホルムズ海峡無事通過
今回出光のタンカーでその名もIDEMITSU MARU(出光丸)が
ホルムズ海峡を無事通過したという良いニュースが流れました。
関係者のご苦労をまずは称えたいと思います。小説「海賊と呼ば
れた男」でも有名になった72年前の日章丸事件も検索して下さい。
また今回イラン大使館が、「友情の証」とコメントしていることも
今後に期待が持てそうです。しかしまだ40数隻の日本関係船舶が、
海峡を通過出来ていないことも、重く受け止める必要があるでしょう。