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米イスラエルのイラン攻撃から7日間 ホルムズ海峡実質封鎖で原油価格は大暴騰 令和のオイルショックは是非とも回避を |
ホルムズ海峡実質封鎖の影響
今回の戦争でのトランプ氏の最大の誤算は、ホルムズ海峡の封鎖を
防げなかったことだと思います。 ホルムズ海峡の封鎖は大昔から日本は
勿論、特にアジア等のエネルギー他のアキレス腱と言われてきましたが、
事実上の封鎖は今回が初めてでしょう。
「海峡の封鎖」と言っても日露戦争時の旅順港閉塞作戦のように、
物理的に通れなくする必要はありません。また航路に機雷を敷設する
必要もありません。 中国等イランにとって特定の友好国のタンカーの
通行を許可するのなら機雷の敷設はしない方が良いのです。
従って封鎖を宣言し、それでも通るタンカー等に攻撃するぞと脅すだけで
いいし、3月9日現在約10隻のイラン敵対国のタンカーが実際に攻撃されて
いるのでそれで十分なのです。
日本の大手船舶会社は、3月1日までにホルムズ海峡の航行停止を決定。
日本船だけでも40数隻が安全な海域で待機中です。米国はこれらの船舶
を護衛すると発表しましたが、具体案はありません。
Marine Traffic の3月3日のホルムズ海峡の船舶通行状況
下記の地図をご覧下さい。これは世界の海で今どの船がどこを航行して
いるか分かる Marine Traffic というソフトの地図で、白いところが海、
グレーが陸地で3月3日の画像です。ホルムズ海峡手前で多くの船が
足止めされていることが分かるとともに、一番狭いホルムズ海峡には、
船影がほとんど見えないことが分かります。
原油や製品備蓄は254日
石油連盟HPの情報ライブラリーの統計資料リストで「石油備蓄日数」
をエクセルファイルで入手可能です。 2025年12月末現在、民間備蓄が
原油で1372万KL、製品で1545万KL。合わせて2848万KLで
101日分。国家備蓄が、原油で4179万KL、製品で143万KL。
合計4112万KLで146日。 この他産油国共同備蓄が207万KLあり
7日分です。全て合わせると7157万KLで、254日となります。
ちなみに日本の2025年の製品需要は13200万KLです。 しかし
中東地域から輸入するナフサやエチレン等個別製品となると話は別で
某元売は3月6日エチレン生産停止の可能性の通知報道がありました。
心配なのはLNG
しかし私が本当に心配なのはLNGです。2025年の総輸入量は
6498万トンです。輸入先と構成比は以下の通り(財務省+AI調べ)
豪州 約2600万トン(約40%) マレーシア 約845万トン(約13%)
ロシア 約585万トン(約9%) ロシアのウクライナ侵攻時に輸入を
止めるべきとの遺憾な新聞社説がありましたが、必要なのです。
アメリカ 約455万トン(約7%)
パプアニューギニア: 約326万トン(シェア約5%)
オマーン 約322万トン5% カタール 約281万トン4%
UAE 約83万トン 中東割合は686万トンで、約10.5%。しかし
オマーンは中東産でもホルムズ海峡の外にあるので出荷可能です。
LNGの備蓄数量
原油や石油の備蓄は254日もあるので、価格は非常に高騰するかも
しれないが数量的には大丈夫と申し上げました。
では今や日本の火力発電の約半分を占めるLNGの備蓄はどのくらい
あるのでしょうか。 実はLNGにはそもそも備蓄義務がありません。
マイナス163度にしなくては液体状態を保てず、備蓄に多大なる
コストがかかるのが一つの理由です。
しかし私は石油備蓄法が出来た1975年当時、LNGは1969年から
輸入され始めたばかりでその数量は微量。油さえあれば何とか出来た
ので備蓄義務化されなかったと思います。
従って今あるのは、備蓄ではなく「流通在庫」でそれは約20日と
いわれています。中東依存度は約1割。ホルムズ依存度は約5%。
従って完全に止まったら、その流通在庫は、毎日1日ずつ減って
いくのでしょうか。
電力関係者に聞いてみた
実は電力関係者に聞いてみましたが、実に冷静な答えが返ってきました。
某電力会社は以前カタールから年間550万トンも輸入していましたが、
その長期契約は2021年に終了した。 また上記の通り中東依存度は
1割程度ありますが、オマーンは出荷基地がホルムズ海峡の外にあり
周辺地域にまで戦争が拡大しない限りはまず大丈夫とのこと。
また原発が全て止まっていた2014年度の輸入量は8900万トン。
25年は6498万トン。従って日本の電力会社の調達力があれば、
価格は別としてもLNG不足は補えるとのことでした。
以下私の私見ですが、発電における火力は約70%。その半分が
LNGとしても5%x35%=約2%。更に6月くらいまでは電力需要は
少ないので、数量の問題はないと思います。
50年前の中東戦争との違い
約50数年前に第4次中東戦争がありました。弊社社員からも質問が
ありましたので違いを明確にしたいと思います。
50年前はエジプトとシリアがイスラエルに仕掛けた戦争です。
最初はエジプトが優勢でしたが、米国が支援するイスラエルが
巻き返して来たので、エジプトとシリアをサウジ他ほぼすべての
アラブ湾岸諸国とイラクまでがエジプトを支援しました。
ちなみにその時のイランは親米のパーレビ国王政権なので、
イスラエルを支援していました。 結果は、米軍が直接介入していない
にも関わらわらずイスラエルの勝利です。
時代は流れ現在はNATO加盟国のトルコを始め、イスラム教の戒律が
厳しいサウジ、カタールやクウェート、アラブ首長国連邦、ヨルダンなど
ほぼ全域に米軍基地があるのでイランが軍事的に勝てることはないのです。
ではアメリカの勝利なのでしょうか。実はそうとも言えません。
ホルムズ海峡は封鎖され、エネルギー価格は下記の通り暴投し
世界の株価市場の大幅下落を世界も、そして米国市民もの望んで
いたとは思えません。従ってトランプ氏の最大の目的であったはずの
秋の中間選挙も、非常な苦戦を迫られるでしょう。
原油価格の大暴騰
今回のイラン攻撃でも3月5日頃までは原油価格は想定内の値上がり
でした。昨年6月のイラン攻撃やベネズエラ侵攻のように短期終結を
見込んでいたからだと思います。しかしホルムズ海峡の実質封鎖を許し
戦争終結は「無条件降伏しかない」とのトランプ氏の発言で、戦争の
長期化が確実となったと市場が判断したのでしょう。
日本時間の5日深夜から9日の未明にかけて戦争前の65$/Bから
115$/Bまで 僅か1週間で50$も高騰しました。
ENEOS社 発表のドバイとブレント(北海)原油価格
令和のオイルショックは回避したい
今SS業界は、毎週価格改訂がされています。弊社は毎週水曜日
に仕入先から通知があり、木曜日から即実施されます。
消費者の皆様からは250日の原油備蓄があるなら値上げも250日後
にしてと言われますが、コストの上昇は即価格に反映するシステムで
業界全体が会計処理をしていますので、お許し頂ければと思います
むしろSS業界程、価格体系が透明な業界はないと思います。
原油はほぼ全て輸入しているので、元売や商社の輸入価格は
財務省通関統計、一般的な特約店仕入れは石油情報センターの
卸価格調査で、末端価格も石油情報センターで毎月発表しています。
では原油と末端価格の変動の計算式を示します。
イラン攻撃前の2月27日の価格を65$/B。3月9日以降95$/Bで
30$の値上げで国内市況がどうなるかを予想してみます
1B=1バレルは 159L 1$は157円とした時の計算式は
30$/B ÷ 159L X 157円/$ = 29.6円/L になります。
また元売系列外のノンブランド品や海外からの輸入品は、これ以上に
高騰しているので、3月中で約40円は上がると思います。
250日備蓄がある石油でもこのような価格の影響を受けますが、
備蓄のない個別製品となると、ホルムズ海峡封鎖の影響は即現れます。
読者の皆様。SNS等で不安だけを煽る投稿と、それを見たお客様の
買いだめは避けたいです。正しい情報で冷静なご判断をお願いします。
3月12日からの値上げ通知がありました
仕入れ先より値上げ通知がありました。一応守秘義務がありますので
正確な額はお知らせ出来ませんが、2/26と3/5、そして3/12分も含め
30円超の値上げとなりました。よって、各SSの地域にもよりますが、
2月ボトム比、30円、税込みで33円以上の値上げとなりそうです。
その他 質問等の私のお答えコメント
@ WTIは投機市場です。実需の約500〜1000倍取引されています。
A そのWTIはトランプ氏の火消し発言で85$前後まで下がりました。
B 一方実需に近いドバイ原油は上記ENEOSグラフの通り、余り
下がっていません。よって3/19も値上げが予想されます。
C G7等IEAが主導して世界的に原油備蓄放出が検討されています。
備蓄放出はやむを得ませんが、それは数量減を補うもので
価格下落効果はないと私は思います。
D 米一部報道でホルムズ海峡に機雷を敷設したと発表(米軍は否定)
E 米軍が民間タンカーの護衛は出来ないと発表。トランプ発言と相違
F ホルムズ海峡手前のペルシャ湾コンテナ船に危害発生
3月11日夜 高市総理発表の補助金について 私は需要抑制政策を提言します
3月11日夜 高石総理は170円を目指す補助金政策を発表しました。
一個人としては出費が減り嬉しいのですが、国策として考えると、私は
ガソリンや石油製品に補助金を出すことは、国家戦略としてはやはり疑問
です。以下3つがその理由です
1 今回の補助金は3/19より推定30円くらいになります。更に昨年末に25.1円
のガソリン税暫定税率を廃止して頂いているので、ガソリンに限れば55円の
補助金になります。これは国家財政に大きなマイナス影響が出ます。
2 本補助金はナフサ等には出さないのでプラスチックも肥料も結果、食料も
含めほぼ全ての物価が上がります。その中で石油やガスや電気だけに補助金
を出すのは余りにも不公平で経済合理性もないような気がします。
3 しかし補助金疑問の最大の理由は以下の通りです。
ホルムズ海峡が封鎖され実際に原油が入って来ないので、石油のほぼ全てを
輸入に頼り中東依存度が9割の日本経済において、ホルムズ海峡実質封鎖は
工業立国日本としては経済的な存立危機状態です。
原油備蓄は確かに250日ありますが、早くも45日の放出を発表しました。
このままホルムズ海峡の実質封鎖が続けば、毎月毎月27日の備蓄を取り
崩していくことなります。
今必要なのは、ずばり需要抑制です。
50年前、例えば田中角栄さんはガソリン税を大幅に上げて、建設業界に
利益をもたらしましたが、需要抑制の意味もあったのです。従って今は
補助金を出さずにガソリン価格が暫定税率の25円を廃止してもなお200円超
になった時、国民の皆様の不要不急の旅行やレジャーはどのくらい減るのか
という社会実験を備蓄がある内に実施すべきだと思います。
50年前の石油危機では、トイレットペーパーはなくなり、電力需要抑制で
街のネオンは消え、深夜のテレビ放送も全部なくなりました。
一歩間違えたら令和のオイルショックになります。これを未然に防ぐ意味
でも、需要抑制策に方針転換すべきだと思います。
私はこのナフサ逼迫問題を弊社HPで書いてよいものか迷いました。
しかし日曜日のサンデーモーニングで、単にイランのホルムズ海峡問題
だけでなく、ナフサ問題について かなり具体的に報道していたので
私も冷静に事実をご紹介したいと思います。
まずは以下表をご覧下さい。これは資源エネルギー庁発表の資料を元に
石油連盟からダウンロード出来る情報です。
ガソリン、ナフサ、灯油他、色々な燃料油の2024年と2025年の
生産量、販売量、輸入量、輸出量、2026年1月の在庫量を示した表です。
製品備蓄量は、AIによる筆者推定です。
例えばガソリンなら、年間4357万KLの需要があり販売した。
それを製油所で原油から精製して4204万KL生産した。
足りない分は、424万KL輸入し、一部輸出367万KLあり、最終的な
流通在庫は、26年1月で170万KL。年間需要にして14日分が分かります。
しかしあらゆる石油化学製品や合成樹脂製品の源であるナフサは、
かなり事情が違うことが分かります。
2025年ナフサ販売数量=需要が3421万KLもあるのに 原油からの精製=生産は
1313万KLしかありません。その不足を何とガソリンの6倍の2334万KLを輸入
しています。製品在庫は僅かに138万KLしかなく14日分です。
心配なので、製品備蓄数量を調べて見ましたが、筆者推定で215万KL。
これを合わせても37日分しか余裕がありません。
その製品の輸入先ですが、韓国の752万KLと米国の118万KLを除けば
他は全て中東で、中東依存度は約60%もあります。
要するにガソリンと違って、自分の国内の製品需要は、自国で生産する
という「消費地精製主義」を満たしていないことが分かります。
距離的に近い韓国も、資源輸入国ですし、日本と同様に原油を中東から
輸入していますので、2024年 25年の同様の数量は、お金や金額の問題
ではなく、数量そのものが確保出来ないと思います。
では原油の処理を増やせばよさそうなものですが、ある原油から取れる
各石油製品の得率は決まっており、ナフサに合わせると、その他の製品が
余ってしまい、貯めておくタンクがなくなるので、それも出来ないのです。
またナフサに補助金は出ていないので、全ての石油化学製品、合成樹脂
製品の価格が高騰し、本当にホルムズ海峡が1か月以上封鎖されれば
品不足と価格上昇が同時に進むことになると思います。
我々業界人にとっても3月19日からの補助金が一体幾らになるのか、
全く分からず、固唾を飲んでお待ちしておりましたが、政府から
ガソリンで30.2円の補助金を出すと発表されました。
では何故30.2円なのか。以下が筆者の推定です。
@ 3/10の全国平均価格は190.8円で前週の161.8円から29円上がった
A これは前週のENEOSなら26円値上げの結果である。
B その後の1週間で原油コストは政府試算9.4円上がるので
C 何もしないと末端価格は200.2円となる。
D よって政府は170円を目指して30.2円の補助金を元売に出す
しかし先週から今週にかけての原油の値上げりと円レートを加味した
価格は以下表の3/10〜3/16の通り、円/L換算で31円になるのです。
では何故31円が、9.4円に圧縮されたのか。
これも私の推定ですが、政府が放出する備蓄原油の価格は本来なら
時価すなわち3月直近価格か、或いは入札等のはずなのですが、
「赤沢大臣が2月値上げ前の価格で随意契約する」との一部報道があり
この2月の原油価格によって今週の値上げ幅が薄められたと思います。
しかしこの30日分の原油放出による補助金圧縮効果もあと3週間しか
持ちません。民間備蓄も15日放出しているので、残りは200日です。
従って170円という目標価格は、ホルムズ海峡封鎖の今としては安すぎると
思います。本来なら190..8円+31円=222円になる末端価格を170円にするの
ですから、52円も補助金を出していることになります。
そして忘れていけないのは、昨年末廃止された25.1円の暫定税率の代替
財源も確保出来ていないのです。これを考えると52円+25円=77円の補助金
を出していることになりますが、責任ある積極財政と言えるのでしょうか。
もちろんバス業界とかトラック等物流業界対策は必要ですが、少なくとも
家族旅行に行くときにマイカーにするか電車にするか迷っている方への
77円の補助は必要ないと思います。むしろ備蓄があるうちに、需要抑制策
に転換すべきだと思います。ちなみに激変緩和事業の基金残高は
2800億円と聞いていますが、私の試算では3月末には枯渇します。
石油備蓄日数 25/12 254日 26/1 248日は果たして本当か
資源エネルギー庁より毎月発表されている石油備蓄日数は、
2025年12月末で7157万KLで 254日
2026年1月末で、7006万KLで 248日 です。
しかし私は改めて計算してみました。前述の2025年の石油製品の総需要は
13744万KLです。これに加え、船や飛行機等で、これから海外に出発する
便への給油は、輸出扱いになるので、常識的にはこれも追加する必要が
あります。例えば、日本の羽田や成田に行ったら、帰りの燃料を給油して
もらえないなどということ、絶対にさけなければいれないからです。
従って、総需要に13744KL+ジェット輸出885万KLと重油輸出分750万kLを
加算すると年間必要量は15379KLとなります。
一方原油の7006万KLは全て使い切ることは出来ないのと自家燃料ロスも
あるので90%で見るのが現実的です。よって7006万KLの90%=6305万KL
よって備蓄日数は現実的には 約150日、これが私の結論です。
6305万KL÷15379万KL x 365日=149.6日しかないように思います。
では政府発表の備蓄日数は、どういう計算なのか。AI検索だとIEA基準等
色々出てきてしまうので、この資料を元にしました。
これには、原油、揮発油、灯油(ジェット燃料含む)、軽油、重油とあり
なんとナフサは、割り返すべき数量には入っていなのでナフサを除外
すると 7006万KL ÷ (13744-3421)万KL X 365日 = 247日 です。
ようやく政府発表と合致してきました。どちらが現実に合っているか。
読者の皆様のご判断にお任せします。