2024年石油SS業界重大ニュース
 能登半島地震、石破政権、補助金、暫定税率他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2024年は能登半島地震から
始まりました。そして11月の衆議院選は与党自民党公明党の歴史的敗退で、
国民民主党がキャスティングボートを握り、103万円の壁が議論されるここと
なりました。石油&SS業界においては、トリガー条項凍結解除が三度議論
され、「ガソリン減税検討」と明記されたようです。
そして12月末で終了される予定だった激変緩和措置は、12月19日に消費税
込みで約6円弱。そして1月19日にも6円弱、縮小されるこことなりました。
これは、消費者には合わせて10円以上の値上げとなるのですが、103万円
の壁や電気・都市ガスの補助金復活の方ばかり報道され、ガソリン実質
値上げはほとんど報道されていないように思います。
 今月はこの緊急課題からご説明し、好例の石油SS業界重大ニュース
を解説したいと思います。         2024/12/2文責 垣見裕司

激変緩和措置は大幅縮小し、約11-12円値上げして1月以降も継続
政府は、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」
を令和6年11月22日閣議決定しました。以下要約すると
<燃料油>
2050年のカーボンニュートラル実現を宣言している中、2022 年1月に
緊急措置として開始し今なお継続している燃料油価格の激変緩和事業に
ついて、本経済対策策定後の12月から出口に向けて段階的に対応する。
具体的には12 月から基準価格(168円)と高補助率発動価格(185 円)
の間の補助率を月10分の3ずつ見直し、その後状況を丁寧に見定めながら
185円を上回る価格に対する補助率を段階的に(月の価格変動が5円程度
となるよう、原則月3分の1ずつ)見直す。その上で、燃油価格の急騰への
備えとして、国民生活への急激な影響 を緩和するための対応の在り方に
ついて、引き続き検討する。 とのことです。 詳細は以下リンク
https://nenryo-gekihenkanwa.go.jp/assets/pdf/outline9.pdf
 このリンク先をお読み頂いても私同様まだよく分からないという方は
現在の原油価格や円ドルレートが続いたとすれば、12月19日木曜から
ガソリン仕切り価格が約5.1円 税込み5.65円補助金がカットされ、
値上げとなるのです。更に4週間後の1月16日木曜からは再度5.65円
合計11円以上が実質値上げとなることが決定しております。

しかし大問題なのは、103万円の壁や電気か都市ガスの補助金復活に隠れ
ガソリン他の値上げが、マスコミ等でほとんど報道されていないのです。

ガソリン税トリガー条項廃止検討については玉虫色の先送り?

政府が発表した「総合経済対策」には、前述の燃料油補助を削減して
の継続と、1月から3月まで、冬期対策としての電気(1kWh当たり2.5円)
と都市ガス(1m3当たり10円)への支援が盛り込まれました。
その総合経済対策にはガソリン減税(暫定税率の廃止も含む)について
「自動車関連諸税全体の見直しに向けて検討し結論を得る」と明記
されました。まあ時間が限られているので当然なのかもしれませんが
検討だけなら誰でも出来ますので「結論を得る」に期待したいと思います。
ただしその時期ですが、「2026年4月末のエコカー減税の期限到来時
までに」ということなので、2025年度から減税されるということではない
ようです。今後の国会審議を注視したいと思います。

NO1.能登半島地震と降雨災害 2月企画参照

今年は能登半島大地震から始まりました。規模こそ東日本大震災の方が
大きいのかもしれませんが、道路が海岸添いの1本しかなく、土砂崩れ等
の寸断で被災地に行けない半島の特殊性は考えさせられる問題でした。
SS業界は自らも被災しているにも関わらず、緊急車両や地元の方々に
残ったタンク在庫の供給に全力を尽くされました。 詳細は2月企画参照。
しかしSSは無事でも電気と水道のインフラ被害は甚大でその復旧は
本当に大変だったと思います。
大地震の復興の兆しが見えてきた中での9月23日、能登半島は大豪雨に
見舞われました。 数日前から天気予報で大雨が降ると警告されていたにも
関わらず、15名の方が亡くなったのは、本当に本当に残念です。
更にお辛いだろうと思うのは、能登半島地震の復興で作られた仮設住宅
(輪島市で5団地、珠洲市で1団地)の合計555世帯の内222世帯が
床上浸水の被害を受けてしまったことです。 でも絶対条件として平地が
少ないので、浸水想定地域に仮設住宅を建設せざるを得ない判断を
攻められません。水害はSSも被害者ですが我々に何が出来るのか
考えさせられる問題です。
NO2.発券SS値付けカードのガソリン軽油の給油代行料値上げ
これは一般のお客様には関係ない話ですが、同系列のA社B社間で、
A社のSSがない地域で、B社で給油した際の元売を介して払う手数料が
ガソリンは10円から12円。軽油は5円から6円に値上げされました。
でも不思議なことに全国一律なのです。例えば土地コストが、地方は1坪
千円。都心は1千万円。1万倍も違うのに同じ1Lで12円はおかしいと、
都心にSSを持つ我々は元売に対し更なる値上げをお願いしています。

NO3.航空燃料不足問題 7月企画参照

これは7月号の通りですがその後進展がありました。 航空燃料供給不足
への対応に向けた官民タスクフォースの9月26日開催の第4回会合で、
週200便以上の燃料供給に目処が立ったそうです。 7月時点で週140便
不足でしたが、9月までに週124便まで供給可能となり、残り16便の不足
まで解消され、今後は冬ダイヤに向け、週63便増に対応していくそうです。
でも私はこの航空燃料不足問題は、本質的には物流業界の2024年問題
だと思います。 あらゆる業界で人員不足の中、ローリー運転手は、資格
無しでも出来る飲食業のアルバイトとは違い、運転免許や大型免許。
場合によっては牽引免許。そして危険物の免許も必要なので、新人が
一人で仕事が出来るようになるまでに数年かかるのです。

この2024年問題。私も改めて勉強し5つのポイントに纏めてみました。
@年間拘束時間216時間減少  
A1ヶ月間の拘束時間の減少
B1日の拘束時間の減少。
会社側としては、この3つは何とか対応出来たとしても、
C休息時間の連続8時間以上が、11時間を基本とし9時間が下限
この縛りが厳しく、東京都内のバスでも一部減便されているのは、朝の
出勤ピークに運転し、昼休んで、夜の帰宅ピークに乗車出来なくなった
からのようです。 改めて物が当たり前に届くことに感謝です



NO4.西部石油操業停止
この話は2022年6月14日に西部石油と事実上の親会社である出光興産
から本年3月末で両社の売買契約を終了し、精製能力が7万BDあった
山口製油所を閉鎖すると発表されていたので確かに驚きはありません。
日本の製油所は西部廃止後でも19箇所311万BDの能力で、韓国の
5箇所330万BDにはコスト他で勝てないとご報告させて頂きました。
その一方、単に小規模製油所を閉鎖していけば、前述の物流分野に大きな
負担をかけることになります。よって私は元売だけでなくむしろ国が
「消費地精製主義」も含めて、日本の製油所業界が世界と戦い、かつ
安定供給を実現する為の「国家戦略」を来年こそお伺いしたいです。

NO5.ガソリン需要は95%  SS数は微減

今年度3月末のSS数は昨年の27963SSから27414SSまで
549SS減少しました。その減少率は約2%です。 この2%が多いのか
少ないのかですが、例えば2008年の42090SSの時に1967SSも
減った4.5%減から考えれば微減で収ったと思います。
逆に言えば2008年当時はガソリン数量減よりSS数減の方が
多かったので1SS当たりはむしろ増加したのです。
では今年度のガソリン需要はどうなのでしょうか。2024年1月から
9月のガソリン需要は3210万KLで前年比約95%でした。人口減や
高齢化。免許は持っているけど運転はしなくなった人の増加。
車の燃費向上。新車におけるEV比率が3%に達したことが、
複合的に影響していると思います。 今後需要が増えることはないので
いち早く、ガソリン数量に依存しない経営転換が必要です。
NO6.コストコ出店相次ぐ
読者の皆様は外資系の倉庫型スーパーとでも申しましょうか「コストコ」
をご存じですか。私が調べた範囲では全国に35店あり、その内の25店で
超大型SSが併設されています。
その販売価格は我々一般のSSの仕入れ価格で販売されているので、
近隣より10円は安いようです。これを可能としているのが、大量買いに
よる低価格で仕入れが可能であること。もう一つが年会費5千円を徴収
していること。そして近年の出店は地元自治体から誘致に伴い、数億円
の補助金が出ていることです。
私は、当局がコストコに出した補助金は、中国が国内自動車会社に出した
補助金で、EVを世界で安売りし、反発した欧米が中国製EVに高い関税
をかけて貿易問題になっているのと同じような気がします。
コストコ出店のデメリットは
我々のSS業界の立場では月間1500KLSSが突然誕生すれば、計算上
周辺の約75KLの20SSの経営は、非常に厳しくなり数年の内に撤退に
追い込まれています。
万一の大災害発生時、コストコ1店と周辺20SSの安定供給力を考えれば、
コストコSSが如何に危険かが分かるでしょう。 またコストコは安い業転
価格で買っているでしょうから、災害発生時に安定供給が補償されない
リスクも高いと考えられます。
しかし最後は消費者の選択です。いつ来るか分からない災害の為に
毎月10円高いガソリンを買うより、毎回安いガソリンの方がいいという
ご判断ならそれは仕方の無いことなのかもしれません。
NO7.激変緩和出口戦略見えず 前述に付き省略

NO8.自民大敗 国民党躍進 どうなるトリガー条項復活 省略

NO9.原油価格は何故か安定
イスラエル・パレスチナ紛争は、レバノンやイランにまで拡大し、終戦
どころか停戦の兆しすら見えません。ロシアのウクライナ侵攻も北朝鮮が
特殊部隊を派遣し戦闘間近というニュースまで流れたにもかからず、
原油価格は何故か安定しています。 全面戦争に突入し、イランが
劣勢になり、報復としてホルムズ海峡を封鎖しない限り、原油価格の
暴騰はないと予想されているのでしょうか。
NO10.トランプ大統領再任決定
ご存じの通り11月の米国大統領選でトランプ氏の再選が決定しました。
当初は接戦の予想ですが、蓋を開けてみれば、激戦予想州は、トランプ
氏の圧勝でした。女性初の大統領はNGというガラスの天井なのか、
隠れトランプ支持が予想以上にいたのかは分かりませんが、米国市民の
選択ならそれは尊重されるべきでしょう。
さてトランプ氏の主な主張は、貿易関税問題ですが、中国のみならず、
カナダやメキシコにも拡大しています。そして移民問題をどうするのか。
また世界の米軍駐留費の負担増額要求等は日本にとっても大きな影響
を受けそうです。
そして我々の業界に直接関係する一つ目は化石燃料です。掘って掘って
掘りまくれと発言し、エネルギー価格を下げると豪語しているので、化石
燃料の多くを輸入に頼る日本にはメリットなのかもしれません。

COP29の合意はどうなる

もう一つは地球市民としての環境問題ですが世界の環境対策は大幅に
後退するでしょう。来年の就任式後には再びCOP
(国連気候変動枠組み条約締結国会議)から離脱するかもしれません。
折しもアゼルバイジャンで開かれたCOP29は、会期を延長して一応は
駆け込み合意に至りました。主な合意内容や今後の課題は以下の通り。

先進国から途上国への支援を現在の目標である年1000億ドルから
2035年までに最低年3000億ドルに引き上げる。
(但し途上国は1兆ドルを要求していたので幅は大きい。
またその3000億ドルの負担割合も決まっていない)
国際的な炭素クレジットの売買に関するルールは一応決まった。
一方 化石燃料の脱却への交渉は進展ほぼなし
石炭火力の新設反対の有志連合を欧州を中心に立ち上げるも
日米は不参加。(私は石炭+アンモニアなら新設賛成です)

以上の通りなので、総論は何とか合意したものの各論は全く未知数。
まずはトランプ大統領就任後の離脱するか否か。そして本当に
離脱したら資金負担割合はどうなるのかを注視したいと思います。

今年も1年お世話になりました。来年もよろしくお願いします。

追伸 垣見油化並びに私個人は、SDGsの観点から年賀状での
新年のご挨拶を順次大幅縮小しておりますので、よろしくお願いします。