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続日本のエネルギー問題をアラカルトで考える 物価対策にもなる円高大歓迎 温室効果ガス他 |
まずは為替レートですが、1ドル160円は余りにも安すぎたと思います。
為替は、直接的には基軸通貨であるドルに対しての金利差や貿易収支
(黒字なら円高、赤字なら円安)を大きな要因として決まると思いますが、
間接的には日本経済やその成長性。国の財政収支(現在は大赤字)。
そして国や地方の借金=1200兆円とも言われる赤字国債。 その内
550兆円を日銀が保有している事実や、それを「返さなくてもいい」と
いう安易な楽観論者が多いこと。これらが複合要因となって日本の
信用力の低下が、そのまま超円安になってきたと思います。
私は8月からの円高傾向は大歓迎です。今後の目標は140円を固め
第2目標は120円くらいでしょう。 日本はエネルギーのほぼ全て、食料も
多くを輸入しているので、補助金で物価手当を出すより、円高誘導の方が、
余程国民は喜ぶと思いますし同時に国富の流出も防げると思います。
この急速な円高につられ7月11日に42224円まで上昇した株価は、
8月2日に2217円。5日に4451円下落し、31458円となり1月4日の
33288円の年初価格以下まで下落しました。翌6日はNYが約1000ドル
下げたのにも関わらず3217円高となり、今は適正相場を探しています。
政府が新NISAを推奨し、株式市場を知らない人を参入させてきた
ので、信用取引で追証を払えず、大怪我をしていないことを祈ります。
今回の暴落原因ですが、私は年初の3万3千円から7月の4万2千円
まで僅か7ヶ月での9千円上昇が早すぎたこと。160円という超円安で
日本株が割安に見えて買ってきた外国人の投げ売りがあったと思います。
円高ならエネルギー他輸入業界にとっては、株高となるはずですが
一緒に売られてしまったのも残念です。ただこの1ヶ月で日本の経済や
各企業の業績がそこまで悪化したとは思わないので、為替レートの変動
に左右されない本来の株式市場になるとともに、企業も140円や120円
の円高になっても、黒字の出せる経営体質にしてほしいと思います。
日本の原油CIF価格は、円高のお陰で大幅安
今回の円高で一番喜んでいるのは、石油製品に補助金を出している
日本政府でしょう。末端のガソリン価格は全国平均で175円のままですが
補助金は1ヶ月で33.4円から17.1円まで16.3円の減額となっています。
期 間 日 経 ド バ イ 為 替 レ ー ト 円 建 価 格 補助金単価 $/B 前比 累計 $/円 前比 累計 円/L 前比 累計 単価 累計 7/2-8 86.62 3.0 - 162.35 0.86 - 88.5 3.6 - 9-15 85.40 -1.22 -1.22 161.84 -0.51 -0.51 86.9 -1.6 -1.6 33.4 16-22 84.38 -1.02 -2.24 158.58 -3.26 -3.77 84.2 -2.7 -4.3 32.9 -0.5 23-29 82.08 -2.30 -4.54 155.77 -2.81 -6.58 80.4 -3.8 -8.1 30.8 -2.6 30-8/5 78.74 -3.34 -7.88 151.23 -4.55 -11.13 74.9 -5.5 -13.6 27.1 -6.3 6-12 76.35 -2.39 -10.27 147.47 -3.76 -14.89 70.8 -4.1 -17.6 21.4 -12.0 13-20 79.12 +2.77 -7.5 148.78 1.31 -13.58 74.3 +3.5 -14.1 17.1 -16.3 21-28 ←期間は日経ドバイの算出用。補助金期間とは数日異なる 20.0 -13.4
2023年の電源構成=火力発電は72.4%から66.6%まで大幅低下
経済産業省から電源調査統計が発表されていますが、日本の電力が
何によって発電されているのかが分かります。これは単年度ではなく、
時系列でどう変化しているのかを見るため、2016年から掲載しました。
水力は安定の7%台です。私は誰も反対しないばすの既存ダムの
嵩上げを提唱しています。是非2018年8月企画をご参照下さい。
バイオマスも5.7%まで伸びてきたのは評価出来ます。ただこれは
藻からの発電とかではなく、間伐材等を燃やしての発電だと思います。
地熱には期待しているのですが、0.2%が0.3%に伸びたという程度です。
風力も最近は洋上風力に期待が高まっていますがまだ1%。
太陽光は2016年の4.4%から12.2%まで伸びてきたのはお見事ですが、
九州等では需要より太陽光の発電が上回り買取り制限が発生しています。
需要の多い関東の買取り制限はまだのようです。VREとは変動電源
のことです。夜は発電しないのでLNG火力で補わなくてはいけません。
再生可能エネルギー=自然エネルギーは過去最高の25.7%まで
増えて来たのは日本国民として誇りたいと思います。
火力発電は2016年は83.6%もありましたが、23年は66.6%まで低下
しました。太陽光の伸びと原発の再稼働の賜でしょう。しかし原発は
昼夜の出力調整が出来ないベース電力です。いざという時のみ、年に
数日の1日数時間しか発電しない老朽火力発電の維持費等の問題や
ほとんど使わないけど、廃棄出来ない事実も知ってほしいと思います。
環境省発表 日本の温室効果ガス排出量の推移
化石エネルギーを扱う業界人として、はやりこの数字は定期的に把握
しておきたいです。発表が少し遅いのが気になりますが、2022年度の
日本の温室効果ガスの排出量の過去からの推移をご紹介します。
2021年度はコロナ明けで20年度よりは少し増加しましたが、22年度は
前年比2.5%減、直近ピーク13年度比19.3%減。22年度のGDPが
1.2%であったことを考えれば誠に見事な数字だと思います。
その温室効果ガスの内二酸化炭素は、91.3%の10.37億トンですが
その内のエネルギー起源は、84.9%で9.64億トンとなります。
下記と通り、産業部門3.52億トン、運輸部門1.92億トン、商業部門が
1.79億トン。一般家庭用が1.58億トン。そして発電や石油精製等、
エネルギー転換部門で0.85億トンとなっています。以上の通り、
日本としてもエネルギー業界としても、よくやっていると思います。
日本にはエネルギー国家戦略が必要
今月はアラカルト的な紹介に終始してしまったので、最後に私個人の
意見を披露させて頂きたいと思います。
エネルギー資源輸入国の日本は、経済安全保障も含めてエネルギー
国家戦略が必要だと思いますが、どんな戦略があるのでしょうか。
例えばロシアがウクライナに侵攻した際、サハリンからのLNGの輸入
を止めろと書いた大手新聞の社説に無責任さを感じました。止めた後の
不足分をどうするのかという議論は全くありません。サハリンが単なる
スポット輸入先ならともかく、開発段階から権益を保有し、高騰した
スポット価格に比べて適正価格で買える長期契約なのです。
原発問題をどうするのか。前回の自民党総裁選で高市議員は賛成
でしたが、50年間全く解決していない核廃棄物問題をどうするのか。
河野議員は原発反対でしたが、原発で発電していた電力をどう補う
のか。両議員ともその先の具体的な説明はなかったように思います。
しかし今年の自民党総裁選は、自民党自身の改革問題が論点で
経済安全保障をどうするのか。エネルギー国家戦略をどうするのか。
日本という国家を考えた総裁選にしてほしいと思います
環境政策は、エネルギー問題とセットで考える
環境問題についてお願いしたいのは、エネルギー問題とセットで考え、
コストまで含めて国民にその議論を公開してほしいと思います。
日本国家として2030年の46%削減。2050年にカーボンニュートラル達成。
この方針には多くの日本国民は賛成していると思いますが、その実現の
ために要するコストやそのコストのどのくらいを国民が負担するのか。
国民は全く聞かされていません。
例えば、2030年の電気代は、今の10倍になる。その内国が税金で半分
負担するので、国民は5倍の電気代支払ってほしい。こう説明して国民も
納得して始めて日本の公約にすべきと思いますが、5倍になるなら
私は反対という人がほとんどだと思います。
また世界各国とのバランスもあるでしょう。世界の温室効果ガスは
中国が31%、米国が14%、インド7%。ロシア5%。日本は約3%。
ドイツは2%を排出しています。また日本はピークから既に減少して
いますが、中国は2030年以降減少に転じると言っていますが、これが
本当に公平なのでしょうか。また米国ももしトランプ政権になって、
再びパリ協定から離脱したなら日本はどうするのか。
日本だけが律儀に公約を果たすのはカッコはいいのですが、日本の
経済競争力は間違いなく低下させるので、日本も臨機応変に対応して
よいと思います。 主要国の中長期目標はこちら(環境省HPより)