2023年石油業界重大ニュース
 合成燃料、イスラエルパレスチナ、円安、EV全固体電池他
あなたは12月企画の 番目のお客様です。2023年も気がつけばもう年末。
ロシア・ウクライナ戦争が続いている最中に、第4次中東戦争に起因するオイル
ショックから丁度50年のその10月に、パレスチナがイスラエルに勝てるはずは
ないのに大規模攻撃をしかけたことは驚きでした。
 日本人には今一つ理解出来ない中東問題ですが、石油やエネルギー価格が
上がらないなら無関心ということではいけないと思います。今月は好例の
石油エネルギー業界重大ニュースで今年を締めたいと思います。

                      2023/12/1文責 垣見裕司

NO1.合成燃料は2歩前進  2023年7月企画参照
私が今年1年で一番嬉しかったのは、合成燃料問題が1歩も2歩も前進
したことです。昨年末までの国の方針は、2040年からの導入を目指す
というタイムスケジュールでした。
しかし昨年からEVの新車販売割合が、後術の通り2020年度0.74%、
21年度1.30%に対して22年度は2.66%(筆者調べ)に3倍以上に伸びる
とともに、23年は3%を恐らく超えているのではないかと思います。
2040年に合成燃料が完成した時には、新車は全てEVになっていた
では笑えない話です。そんな中、23年のENEOS全国特約店新年会で
齊藤猛社長は2040年から7年前倒しして34年販売を目指すとサプ
ライズ発言をしたのです。この時点では社内の了解が得られていなかった
という話も聞きましたが、6月の中期経営計画の発表の時には、より
具体的な方針が発表されました。
2034年から更に前倒しし2027年に合成燃料だけでなくバイオ燃料も
合わせて10%混ぜた低炭素ハイオクガソリンの発売を発表したのです。
私はレジ袋の例を学ぶべきと思います。環境面から悪者にされていた
にも関わらず、有料化したことで、その消費量は1/3に減った。コンビニ
等販売側も有料で売れる商品になったことから、コストをかけて、バイオ
原料を10〜50%混ぜたら世間からのお叱りは皆無になった。従って
ガソリンも全て合成燃料に置き換えるのではなく、10%でも良いから早く
始めてアピールする事が大事なのです。仮に2027年のガソリン需要を
4千万kLとし、ハイオクは約4百KLなら必要量は年40万KL程度です。
これなら現在もETBE(エチルターシャルブチルエーテル)として既に
使用中なのでかなり具体性があり充分実現可能な数字だと思います。

ENEOS中央技術研究所見学

私は都石商のSS経営革新・新燃料委員会担当副理事長なので
ENEOSにお願いし、正副理事長、新燃料委員会、青年部会正副会長
とともに9月13日。中央技術研究所にお邪魔して勉強してきました。
「最新技術」につき撮影禁止。メモも自粛なので玄関写真とぜんせき
Web記事でお許し下さい。http://zensekiWeb.com/node/91814


NO2.イスラエル・パレスチナ紛争  11月企画参照

年末の忘年会や新年会で業界人として挨拶を頼まれた時、このイス
ラエルパレスチナ門題を、1分で説明を求められた時のために11月
企画を書きました。是非ご参考にされて下さい。
NO3.ロシア・ウクライナ戦争進展なく泥沼化か
前述のイスラエルパレスチナ紛争を一番喜んでいるのはロシアかもしれ
ません。米国の戦力や資金をウクライナ同様、中東にも向ける必要が
あるからです。またウクライナも年初は大規模反転攻勢をかけると意気
込んでいましたが、ひいき目に見ても今は「膠着状態」というのが正しい
表現だと思います。これから冬になるので来年の春以降まではお互い
動けません。私はこのウクライナ戦争は出口が見えないのが心配です。 
西側諸国が本気で参戦すればロシアは劣勢になり追い詰められれば
核を使うかもしれません。よってロシアを追い詰めてはいけないラインが
あるのです。一方ウクライナが負けてロシアの傘下に入れば、次は
ポーランドやフィンランドなので、NATOや西側諸国は負けない程度に
支援する。従ってプーチン政権が崩壊でもしない限り終わらないでしょう。

NO4.激変緩和出口から再延長

皆様もご存じの通り昨年12月でピーク35円出ていた補助金は5月には
25円となり、6月からは順次削減され、9月末にはゼロとなり、原油価格
も少し安定し、無事卒業出来るはずでした。補助金を出して頂いている
業界に身を置く私が申し上げるのも何ですが、一度は卒業すべきで、
業界も国民も200円超のガソリン価格を体感し、どこまで需要が減るか
という壮大な実験をすべきだったと思います。
そんな中9月になり岸田総理は補助金の延長を発表。それも12月まで
という中途半端な期間です。寒冷地の灯油はどうなるのかとお伺いした
ところ「国民の要請を受けて再度延長したということにしたいので、4月
までは延長される」とのとこでした。実際、国会が始まるとその情報の通り
となりました。
NO5.止まらない円安はコストUP増えない輸出は国力低下
今年の日本経済の大ニュースの一つは円安でしょう。年初1$約130円
でスタートしましたが11月は150円で定着です。
ご存じの通り石油は99.7%、LNGは100%輸入しているので、
円安はそのままエネルギー価格のコストアップです。また食料の自給率
もカロリーベースでは38%しかないそうで、62%は輸入をしていることに
なります。一般論としては円安になれば輸出が増えて貿易黒字になる
はずですが、好調なのは営業利益4兆円弱のトヨタくらいで日本全体の
貿易赤字を解消するまでには至っておりません。更に残念なニュースが
あります。ドルベースで換算することもあるとは思いますが、日本のGDP
はドイツに抜かれて世界第4位になるそうです。
NO6.EV販売好調続く全固体電池報道は本当か
日産の軽自動車EVサクラが牽引役となってEVは売れているようです。
新車販売台数に占めるEV+PHVの割合は、2020年度が0.7%、
21年度は1.3%でしたが、22年度は2.7%と2年で4倍増です。
更には23年の4月から9月の上半期は、筆者推定で3.4%まで伸びて
います。このEVへの流れが本物なのか今後も続くかはやはり全固体
電池にかかっていると思います。
 6月13日の日経新聞の1面に「全固体電池量産化のネックを解消。
2027〜28年に量産化」と大々的に報道されました。しかしこのあと5年
という期間は非常に微妙で、私は陽炎技術と読んでいます。
 というのも日経は2017年にも全固体電池はあと5年と書いている
からです。日本のEV普及は本物なのか。来年も注視していきます。
NO7.コロナ明けでもガソリン微減灯油は大幅減少
資源エネルギー庁発表によれば、今年の1月から9月のガソリン販売
は前年比ほぼ100%ですが、筆者の実感は97-98%くらいです。更に
11月からは数量が伸び悩んでいる気がします。石油製品全体では、
1月から9月累計で約98%。油種別で好調なのはジェット燃料113%。
一方深刻なのは、灯油の90%です。重油計は91%、環境面からの
燃料転換や景気後退から想定の範囲ですが、灯油の減少は、今後
石油業界の特に元売製油所の収益を減少させていくと思います。
NO8.人件費UP3〜5%か最低賃金も全国1000円超
今年の賃上げは何%だったのか。マスコミは大企業の勇ましい数字を
報道しますが、日本の多くを占める中小企業の実態は把握されていま
せん。都石は有志経営者にお願いして無記名でアンケートを採りました。
その結果、概ね3%。頑張った会社で5%という数字が見えてきました。
読者の皆様は是非年末調整で前年の年収と比べて見て下さい。
NO9.不当廉売申告効果有り
9番目は不当廉売申告です。あるSSが不当廉売で公取からの黒判定は
想定内ですが、上場大手会社も不当廉売だったのは驚きました。
NO10.和歌山製油所の閉鎖やビッグモーター事件
10番目は和歌山製油所の閉鎖にしました。そして関連業界ではありますが
ビッグモーター事件は、SS業界も襟を正して経営に当りたいと思います。
個人的なニュースは 
今年も全国で講演しましたが、印象深いのは7月の石油連盟の郡山講演で
講演後の若手二世の方との交流相談会は有意義でした。JA様は毎年。
石油商社様は久しぶりに3販売店会様にお招き頂きました。和歌山大学の
2年連続依頼は講師冥利です。初経験は署員420名を誇る地元麹町警察
の約40名の管理職研修会で、日本のエネルギーや環境問題。そして私の
最も得意とする署員に心からやる気になってもらう方法をお話しました。
また麹町消防署の防火防災協会の会長をお引き受けしました。麹町消防
管内消防団の操法大会の祝辞や千代田区の麹町、丸の内、神田3消防団
の合同点検式挨拶は、千代田区長、消防総監。都議会議員、国会議員の
次で民間人は私一人でした。また千代田区長主催の消防団を如何に活性
化させるかという委員会にも参加し地元貢献も大忙しの一年となりました。
来年もどうぞよろしくお願いします。 3消防署合同消防団点検式挨拶