低炭素ハイオク2027年から供給開始VS
 トヨタバッテリーEV革新技術+全固体電池
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ENEOSホールディングス(以下EHD)は5月、2023年3月期の決算と
第3次中期経営計画(23-25年度)を発表しましたが、その中に誠に嬉しい
話がありました。合成燃料の政府の目標は2040年ですが、本年1月、
ENEOSの努力目標として2035年に前倒したいと決意表明をした齊藤社長
でしたが、今回の発表では、バイオ燃料も混入し、更に前倒しした2027年
から、低炭素ハイオクとして発売を開始するという発表です。
 一方トヨタは2027年から全固体電池を搭載したEVを発売開始すると発表。
これはこれで凄いニュースです。
 今月はENEOSの低炭素ハイオクとトヨタの全固体電池を考えてみます。

               2023/6/30 初掲載  更新 文責 垣見裕司

低炭素ハイオクの一部地域での発売開始の6つの要素
大昔は皆様から辛口コメントが多いと言われてこともある私ですが
今回何をご評価したのか。以下6つに分けて説明したいと思います。
@低炭素ハイオクガソリンを
A含有率10%という数字を上げ、
B2027年までと年月を切り、
C一部地域という表現ながら、
Dその地域のSSならば「誰でも買える商品」として販売すると名言
  したこと。そしてこの低炭素ハイオクは、合成燃料だけでなく、
  植物や食料用の廃油等から作る
Eバイオ燃料も「混ぜて作る」ということが私は大きな特徴だと思います。

私は本サイトや月刊ガソリンスタンド等で
 「合成燃料は割合論で勝負する。いきなり100%の合成燃料を発売
 する必要はない」と
持ち帰り用のレジ袋を例にあげ、バイオ原料の含有率10%から20%等
順次改善したことを、世の中は許容してくれた。
また合成燃料も世間から評価の高いSAFもバイオ燃料も使うときに
CO2が出るのは皆同じ。従って合成燃料だけに拘るのではなく、CCS
原油やSAFのようにバイオ燃料でもよいはずと申し上げて来ました。
よって今回の導入発表はENEOSとしてベストアピールだと思います。
6項目の具体的解説1(但しENEOSの公式見解ではありません)
@ハイオクガソリンに限定したこと。
まず合成燃料を順次市場投入するに当たって、合成燃料専用タンクを
新たに設置したり、既存のレギュラータンクの1本を合成燃料に変えるのは
コストが発生したり或いは不便が増大するので適当な策とは言えません。
従ってハイオクに混ぜるというのは大正解だと思います。
また最初の実証段階では、その低炭素ガソリンの「価格を上げる」という
訳にはいかないと思うので、利益率の高いハイオクに混ぜるのも大正解。
またお客様もハイオク仕様車は外車や高級車が多いので、民間企業の
社長車などは環境に良いガソリンを使っているとアピール目的も含めて、
ハイオク比率が上がってくるというおまけがついてくるかもしれません。

A含有率10%の意味
また合成燃料は従来のガソリンと変わらないことをアピールする意味でも
「既存のガソリンに混ぜる」ことも大賛成です。
では何故10%なのか。これは低炭素ハイオクの製造能力とコストの問題
ですが、プラントを設計するには、やはり最初の生産能力決定は大切です。
販売開始の202X年度のガソリンが仮に4000万kLとして、10%混入なら
400万KL必要ですが、その時点のハイオク比率が10%なら、ハイオク
数量は年間400万KL。その10%に混入すればよいのなら必要な低炭素
ガソリンは年間40KLです。これはかなり現実的数量になったと思います。
ちなみに業界人ですらほとんど忘れていますが、ETBE(エチルター
シャルブチルエーテル)と称するバイオ燃料は、今でも年間50万KLを
使用することは確か高度化法の中で、目標化されていたと思います。

B2027年度
早いことに超したことはありませんが、この2027年という開始年も
ベストだと思います。合成燃料に限れば、当初の目標は2040年。
しかしこれでは、新車販売は全てEVになっているでしょう。
国の電動化目標は2035年。東京都小池都知事のアピール表明は
2030年なのでまだ遅すぎます。(但し小池発言に法律的根拠はなく
あくまで努力目標と東京都の事務方からは聞いています)。
従って2027年はその3年前の実験開始なのでアピールには充分だと
思います。EUでもドイツ他の提言で合成燃料を使うならエンジン車も
認める空気になってきましたので、日本市場にHV等エンジン車が
残るか否かの最初で最後のチャンスかもしれません。


6項目の具体的解説1(但しENEOSの公式見解ではありません)
C一部地域の意味
これは二つの理由があります。作るとすれば根岸なので、根岸からの
直送可能地域でしょう。また生産数量は限られているので、官庁街が
あり一番効果の大きい都心5区等のENEOSの直営SSから順次開始
していくのが良いと思います。逆に八王子OT等経由は取り扱いが
煩雑になるので難しいでしょう。
でも完全なる全国展開は2040年でも間に合うかは分かりません。
JXと東燃との合併で物流上の成約からENEOSの「ヴィーゴ」と
名乗れなくなり今は単に「ENEOSハイオク」と称していることからも
分かる通り全国展開は本当に大変です。

Dその地域なら誰でも買える
実証実験等の場合は、通常販売先は限定されたりしますが、今回は
販売しているSSに行けば、誰でも買えるというのは大きなアピールに
なると思います。

Eバイオ燃料を混ぜる意味
今回の低炭素ハイオクガソリンのニュースについて意味が大きいと
思うのは、現在では1L当たり700円とも言われている合成燃料だけに
頼るのではなく、バイオ燃料も含めて低炭素化の将来を見据えたことです。
バイオ燃料の原料が植物系だとして、バイオ燃料を作る段階や、
海外から輸入するならそのタンカーが排出するCO2もあるので、完全な
カーボンフリーとはいえません。しかし原油から作るガソリンよりも7割
から8割程度CO2の排出量が少なくなるのは事実です。
そしてこの色々なものを混ぜるという発想は、既にLPGでは実現して
いるのでCCS原油も時間とコストの問題でしょう。これから作るCCS
ガソリン等も計算上参入出来ると思います。私は合成燃料のみでなく、
メリットデメリットやコストも含めベストミックスが良いと思います。

    化石燃料(左)と合成燃料(右) 全石総会でのENEOSブース展示より
 
トヨタとENEOSの佐藤・齊藤両社長がアピール
そして嬉しいニュースが飛び込んで来ました。ENEOSが製造した合成
燃料を使用した車両の走行デモンストレーション式典を5月28日(日)
ENEOSスーパー耐久シリーズ2023第2戦が行われた富士スピード
ウェイに隣接した、トヨタ交通安全センターモビリタで開催したと発表した
のです。このイベントはトヨタとENEOSのコラボのようです。

トヨタの佐藤社長と
ENEOSの齊藤社長がプリウスPHVとGR86へ
充填し2台の自動車走行デモを行ったのです。
来賓には「CNのための国産バイオ燃料・合成燃料を推進する議員連盟」
の衆議院議員で会長の甘利明様、副会長の山際大志郎様、山本左近様。
経済産業省から、参議院議員での太田房江氏副大臣も来たそうです。
https://www.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20230529_01_01_1080097.pdf

でもENEOSが発表だけでなくテレビも大々的に報道してくれたのが
大きく嬉しいです。特に地元静岡朝日テレビは良く分かる4分の内容なので
是非消されないうちにご覧下さい。
https://m.youtube.com/watch?v=W9bHNZGBxSo
6月8日9日に開催された全石広島総会にも行って来ました。
合成燃料とこの低炭素ハイオクへの期待は昨年より遙かに大きくなって
いたように思います。齊藤猛社長様、頑張って下さい。



トヨタは電動化技術-バッテリーEV革新技術を発表(全固体電池も)
トヨタは6月、静岡の研究拠点で開いた説明会で以下の電動化技術や
バッテリーEV革新技術に関する方針を発表しました。マスコミはかなり
大げさに書いているので話半分くらいに考えておりましたが、6月13日
以降、私もその資料を入手したのでご紹介したいと思います。
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/39330299.html
私になりに要約すると。2026年〜次世代EVを発売する。バッテリーは
@次世代電池(パフォーマンス版)
  2026年に導入される次世代BEVでは、航続距離1,000km*1を実現。
 コストは現行bZ4X比で20%減、急速充電20分以下(SOC=10−80%)
A次世代電池(普及版)
  これまでハイブリッド車のアクアやクラウンに搭載してきたバイポーラ
  構造の電池を、今回BEVに適用。材料には安価なリン酸鉄リチウム
  (LFP)を採用し、2026-2027年の実用化を目指す。
  現行bZ4X比で航続距離は20%向上、コスト40%減、急速充電30分以下
  (SOC=10−80%)を目指し、普及価格帯のBEVへの搭載を検討中
Bバイポーラ型リチウムイオン電池(ハイパフォーマンス版)
  Aの普及版電池の開発と並行し、バイポーラ構造にハイニッケル正極を
  組み合わせ、さらなる進化を実現するハイパフォーマンスの電池も、
  2027-2028年の実用化にチャレンジ
  @パフォーマンス版角形電池との比較でも航続距離10%向上、コスト
  10%減、急速充電20分以下(SOC=10−80%)の圧倒的性能を実現


BEV用全固体電池
 課題であった電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見
 したため、従来のHEVへの導入を見直し、期待の高まるBEV用電池
 として開発を加速 現在量産に向けた工法を開発中で、2027-2028年
 の実用化にチャレンジ
 @のパフォーマンス版角形電池と比べても航続距離20%向上*1、
 コストは精査中も、急速充電は10分以下(SOC=10−80%)を目指す
 更に将来を見据えもう一段レベルアップした仕様も同時に研究開発中
 こちらは@と比べて航続距離50%向上を目指す。

未完成稿 頭の整理と思考実験(文責除外です) 

全固体電池は、2017年頃から「実用化にあと5年」と言われ続けて
(例 2017/10/30 日経EV向け本命 「全固体電池」5年で実用化へ)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22800480X21C17A0X90000/
来たので、私はいつまで経ってもあと5年で、なかなか実用化出来ない
「陽炎(かげろう)技術」と表現していました。しかし今回は、マスコミの
推測ではなく、トヨタ自身が発表したので本当なのでしょうか。

今回も日経は6月13日の朝刊1面で大々的に報じています。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08114/
見出し トヨタが全固体電池EV 充電10分で1200km 27年にも投入
しかし冷静に読むと前項の内容ですから、この記事は勇み足のような
気がします。 

2027〜28年に一部高級車に搭載して市場テストして、2030年以降に
量産車に搭載されるのでしょうか。
また従来はHVから搭載を開始するとしていた計画を変更して EVに
特化するとのこと。それだけEVに力を入れる意気込みの表れでしょう。

日経記事によければ、10分充電時間で1200kmの走行を可能。
コストは、既存のリチウムイオンが1kWh当たり14000円とすれば
全固体電池の製造コストは1kWh当たり6〜36万円とのこと。


現行のbZ4Xの航続距離は 71kWhのリチウムイオン1充電で559km
よって1200km走るには計算上152kWh必要 これに10分で充電? 
 家庭用は200V 15A 3kW 3kVA  よって50時間かかる
 10分で充電するには 300倍の充電側の能力が必要
都内最大の当社のLPG充電工場の電力でも150kVA

具体的には、レクサスEVの最上位モデルから搭載か?

以上、纏まりがない文章ですが、よくよく考えると今はまだ2023年
なので、今回の報道の2028年は、5年先ということになります。
従って全固体電池はいつまで経ってもたどりつけない陽炎(かげろう)
技術なのか。それとも今回は本物なのか。今後も全固体電池に
注視していきたいと思います。