イスラエルvsパレスチナ問題
 一問一答、3000年の確執の歴史、両国の概要
あなたは中東問題の 番目のお客様です。
 先月第1次石油危機(オイルショック)から50年を書いたばかりなのですが、
ユダヤ教の休日の最後の日である10月7日早朝、パレスチナ自治区のガザ
地区を実効支配するイスラム主義組織・ハマスの軍事部門カッサーム部隊が
大都市テルアビブを含むイスラエル各地に向けてロケット弾を数千発発射。
 同時にガザ地区に隣接するイスラエル南部各地に戦闘員を侵入させて、
イスラエル人やイスラエル滞在中の外国人多数を殺傷し、また多数を拉致し
ガザ地区内へ連行しました。
 これに対しイスラエルは正式にハマスに対して宣戦布告し、戦闘機、
ドローン等でガザ地区を空爆・ 砲撃しています。これにより18日現在双方の
死者は5000人を超えているようです。
 私も中東問題は決して詳しくはありませんが、エネルギー価格が高騰しない
なら日本人は無関心ということではいけないと思い纏めてみました。あくまで
マスコミ情報を取捨選択し、私はこう思うという程度なので、正しいかどうかは
皆様がご判断下さい。
             2023/10/19 初掲載  更新 文責 垣見裕司

Q1ハマスとイスラエルでは圧倒的な戦力差があるのに何故攻撃したのか
まずイスラエルやパレスチナの大きさをイメージするためには地図が
必要ですが、日本の外務省HPから下記地図を引用させて頂きました。

イスラエルの国土面積はエルサレムとゴラン高原を含んで22000km2
四国とほぼ同じ面積に728万人が暮らしています。ハマスが実効支配
するガザ地区は365km2の種子島程度の大きさでそこに142万人
(直近では220万人とのデータもあります)が住んでいます。
しかし別名天井のない牢獄とも言われ検問所を通らないとイスラエル
やエジプトとは行き来が出来ないようです。ヨルダン側西岸地区は
5655km2あり三重県とほぼ同じ広さでここには241万人が居住し、
ファタハと呼ばれる穏健派が支配しています。

従ってイスラエルとハマスでは圧倒的な軍事力の差があります。
イスラエルが本気で地上侵攻と戦争状態になれば、1ヶ月で終わるかも
しれません。その後はゲリラやテロ攻撃は永遠に続くとは思いますが
ハマスに勝ち目がないのに何故ミサイル攻撃をしたのでしょうか。
外務省発表のイスラエル及びその周辺地区の地図

A1 圧倒的軍事力の差がありながらハマスがイスラエルを攻撃した理由
まずは2020 年にUAE などアラブ諸国4 国が一気にイスラエルと国交を
樹立したので、イスラエルと国交を持つアラブ諸国は、エジプトとヨルダン
に加えて計 6 国に増えました。そして盟主であるサウジアラビアも、イスラ
エルとの国交樹立を目指していることが明らかとなり、今年 9 月 26 日、
イスラエルの閣僚が史上初めてサウジアラビアを公式訪問したのです。
 従ってハマスは、このままではサウジ他アラブ諸国に見捨てられるとの
危機感を強めたのではないかというのが私の考える第一の理由です。
逆に言えば、ヨルダン川西岸地区を実効支配するファタハは、イスラエル
への攻撃は行っていません。ハマスとファタハはむしろ険悪な関係に
なっていると思います。
更には一番の被害者であるガザ地区北部の一般住民が100%、ハマスを
支持しているとも思えません。
もう一つの事情としては、イスラエルも連立政権ですが、パレスチナ人を
全て追い出せという強行派が台頭して来たこともあるかもしれません。
Q2第5次中東戦争に発展するのか A2 第4次との違いを考えればNO
 第4次中東戦争は、エジプトとシリアがイスラエルに攻撃を仕掛けた
ことから始まりました。戦争そのものは1ヶ月で終わりましたが、構図は
イスラエル対全アラブでした。今回は、ヨルダン川西岸地区のファタハ
すら参戦していないので、第5次中東戦争までは発展しないと思います。
 それを見越すように、原油価格は多少の乱高下はありますが、一応
許容範囲内の変化に留まっている。これが市場の見方の様に思います。
 イスラエル軍が地上侵攻をすれば、大規模な戦闘は1ヶ月以内に終わる
という見方が多いようです。但し大規模戦闘は終わっても、小規模なテロ
攻撃は、過去の歴史を考えれば分かるように半永久的に続くと思います。
過去3000年前からの歴史と第一次世界大戦まで
今から約3000年前この地にはイスラエル王国がありましたが、ユダヤ人
とアラブ人は共存していました。その後この地はローマ帝国支配を受け
ユダヤ人は世界中に分散していき、アラブ人はここに住み続けました。
1099年にはキリスト教徒率いる十字軍が襲来。エルサレム王国を建国
しますが、その後、数々の戦いが続きました。

1291年にエジプトのイスラム教国であるマムルーク朝が占領しました。
ただマムルーク朝は、異教徒に寛容で、キリスト教徒のエルサレムへの
巡礼を認めていました。しかし1571年にオスマン帝国の支配となりました。
そして1914年。第1次世界大戦が勃発します。このときは、イギリス、
フランス、ロシア対オスマン帝国、ドイツ、オーストリアハンガリー帝国
の構図となりました。
この時イギリスはオスマン帝国にいるアラブ人に、オスマン帝国の打倒を
呼びかけ、成功すればアラブを建国していいと約束しました。
これが1915年の「フサインマクマホン協定」です。
その一方で、イギリス、フランスとロシアは戦争が終わったらこのオス
マン帝国の地を3分割して統治しよう密約しました。これが1916年の
「サイクスピコ協定」です。

一方戦争継続には莫大な資金が必要でした。ユダヤ人にはロスチャイ
ルドのような大富豪が多かったため、戦争支援を要請。その勝利の後に
イスラエルの建国を約束。これが1917年の「バルフォア宣言」です。
この時のイギリスがアラブ人を支援してオスマン帝国と戦争をさせる話が
映画「アラビアのロレンス」として有名です。第1次世界大戦後、パレス
チナの地はイギリスとフランスが分割統治することとなりました。
ユダヤ人は騙されたと思いつつこの地に戻って来ましたが、人数は
まだ多くなかったのでアラブ人とは何とか共存していました。

ナチスドイツの迫害とイスラエル回帰のシオニズム運動

1939年からは第二次世界大戦が起こります。またドイツにナチス党が
誕生した1933年からユダヤ人の迫害を始めます。1945年の終戦までに
600万人のユダヤ人が虐殺されましたが、これが有名なホロコーストです。
その結果、生き延びたユダヤ人がこの地に戻ってくるようになりました。
このユダヤ人が故郷に戻ることを「シオニズム運動」といいます。
そして1945年第二次世界大戦が終わりました。ロシア人もユダヤ人に
国内から出て行ってほしいのでこれに賛成。実はアメリカも同様でした。
そして1947年。国連の名の下にパレスチナの分割案が示されました。
最初はイスラエル56.5%、パレスチナ43.5%の土地配分でしたが、
ユダヤ人の方が遙かに豊かな土地が割り当てられたのです。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとっての聖地エルサレムは国連が
統治することになりました。この国連決議に賛成した国は33ヶ国。
反対は13ヶ国。棄権は10ヶ国です。3枚舌のイギリスは棄権しました。

1948年、イスラエルが建国しました。しかしアラブ人や周辺のアラブ
国家はこれを認めません。エジプト、シリア、ヨルダン、レバノン、イラク
などはイスラエル建国直後、イスラエルに攻め込み第1次中東戦争が
没発しました。これは第4次中東戦争まで続きましたが、全ての戦争で
イスラエルが勝利したので、結果としてイスラエルの土地は増えました。
アラブ人達はパレスチナ解放機構(PLO)を作りました。3代目リーダー
は有名なアラファト議長です。そしてアメリカが仲介し、両者が共存する
オスロ合意が誕生します。しかし平和的なイスラエルのラビン首相が
パレスチナ人に暗殺され、またカリスマ力があったアラファトが死んだ
後は、再び小競り合いが続くようになり、今に至っています。

エルサレムは何故3つの宗教の聖地なのか

エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という3つの宗教
の聖地です。 3つの宗教は、なぜ同じ場所を「聖地」としたのでしょう。
それはユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、元をたどれば唯一の
天地創造の神を信じる宗教だからで、3つの宗教の信じる「神」が同じ
ならば、その宗教にとっての「聖地」が重なるのは当然です。
ユダヤ教のシンボルとなる神殿があった場所は、現在、土台だけが
残る「嘆きの壁」です。 この「嘆きの壁」から北西に500メートル、
イエス・キリストが十字架にかけられ処刑された場所には、キリスト教
最大の聖地・聖墳墓教会が建っています。
そしてユダヤ教聖地「嘆きの壁」の上のユダヤ教の神殿跡地に
イスラム教のモスク(岩のドーム)が建っています。これは、7世紀、
エルサレムを占領したイスラム教徒が、「この場所からムハンマドが
天に上った」として記念に建設したもので、イスラム教第3の聖地です。
イスラム教は当初、エルサレムに向かって礼拝していました。しかし
ユダヤ教から反発を受けたため、ムハンマドが生まれたメッカに
変更したのです。  メッカこそイスラム教の第一の聖地です。



ユダヤ教、キリスト教、イスラム教を解説する 

ユダヤ教
ユダヤ民族(イスラエル民族)の宗教の総称がユダヤ教です。天地の
創造者である唯一神ヤハウェ「わが主」を奉じて、この神がユダヤ民族
を自らの選民にしたと信ずる宗教です。その聖典は旧約聖書の一部
である律法(モーセ五書)やタルムード(口伝=注解の集成)です。
世界で2000万人が崇拝するこの宗教は、土曜日は火をおこしたり、
文字を書いたりといった、「仕事」をしてはいけない、など厳しい戒律で
知られています。今から2500年ほど前に成立したといわれ、海や山、
川、世の中の全ての物を作りだしたという天地創造の神「ヤハウェ」
こそ唯一の「神」だと信じています。「旧約聖書」にはこの「ヤハウェ」の
教えがまとめられているのです。

キリスト教
世界でおよそ15億人が信仰する世界最大の宗教がキリスト教です。
日曜日を休日とし、イエスが生まれたクリスマスを祝うなどこの宗教は
2000年前に生を受けたイエスに由来しています。
イエスはユダヤ人であり、ある時、神を自身の父と呼び、神の支配の
到来を福音として宣教を始めました。しかしユダヤ教徒は「神を侮辱
した」として怒り、イエスを訴え、イエスを十字架に磔にして殺しました。
そしてイエスを神の子であり、唯一の救い主として信じるキリスト教が
広まったのです。従ってキリスト教はユダヤ教にとっての新興宗教の
一面もあり、キリスト教の信じる「神」とユダヤ教の神は同じ「ヤハウェ」
なのです。一方キリスト教徒からすれば、イエスを殺したのはユダヤ人
であり、後世ヨーロッパで迫害を受けた一つの要因とも言われています。

イスラム教
中東、アフリカ、アジアを中心に現在、世界でおよそ9億人が信仰する
世界第二の宗教です。1日に5回欠かさず礼拝をしラマダンと言われる
月(今年は11月15日頃からの1カ月)には日中何も飲み食いしては
いけないなど厳しい戒律で知られています。この宗教は、ユダヤ教や
キリスト教よりもずっと新しく、今から1400年ほど前に成立しました。
現在のサウジアラビア・メッカという都市に住んでいたムハンマドという
男が、ある日、天使から「神」のメッセージを受けます。
「ムハンマドこそ神が遣わした最後の預言者である」と。
その「神」からのメッセージをまとめたのが、聖典「コーラン」です。
実は、ムハマンドが言っている神、つまりイスラム教にとっての神
「アッラー(唯一の神)」は、実は元をただせばユダヤ教とキリスト教の
信じる、「天地創造の神」と言うことが出来るのです。

私の考える宗教間の心の融和策
日本は12月24日はキリスト教。31日除夜の鐘を聞く仏教。1月1日は
神社=神道でお参りしても、何の違和感もありません。上記宗教は
一神教でありますが、ともすれば「排他教」的にもなります。
この3つ宗教が、平和に暮らす方法はないものか。私の答えは、各宗教
の原点に戻ることです。決して「争いをしろ」とは教えていないのです。
もう一つは宮崎駿のアニメ「千と千尋の神隠し」だと思います。
山には山の神がいて、海には海の神がいて、多神教というか、自然に
対する崇め=神を理解出来るのが、このアニメではないかと思います。
大人気で世界中の言葉に翻訳されているそうなのでこれを子供達に
見てもらえれば、大人になった時に宗教間融和がはかれると思います。

イスラエル基礎データ 外務省HPより

1 面積2.2万平方キロメートル(日本の四国程度)(注1)
  (注1)数字は東エルサレム及びゴラン高原を含むが、右併合は
   日本を含め国際社会の大多数には承認されていない。

2 人口 約950万人(2022年5月 イスラエル中央統計局)
3 首都 エルサレム 日本や国際社会の大多数には否認。テルアビブ
4 民族 ユダヤ人(約74%)、アラブ人(約21%)その他(約5%)
     (2022年5月 イスラエル中央統計局)
5 言語 ヘブライ語(公用語)、アラビア語(特別な地位を有する)
6 宗教 ユダヤ教(約74%)、イスラム教(約18%)、キリスト教
  (約2%)、ドルーズ(約1.6%)(2020年 イスラエル中央統計局)
7 略史  1947年国連総会はパレスチナをアラブ国家とユダヤ国家に分割
  する決議を採択。イスラエルは48年独立を宣言。48年、56年、67年、
  73年と周辺アラブ諸国と4度にわたり戦争。その後、79年にエジプト
  94年にヨルダンと平和条約を締結。2020年にUAE、バーレーン、
  スーダン、モロッコと国交正常化に合意。  
  パレスチナ解放機構(PLO)とは、93年9月、相互承認を行い暫定自治
  原則宣言(オスロ合意)に署名。その後、暫定合意に従い、西岸・ガザ
  ではパレスチナ暫定自治政府による自治が実施されている。
政治体制・内政
 1 政体共和制
 2 元首イツハク・ヘルツォグ大統領(Mr. Isaac Herzog)
 3 議会一院制(120名)(全国1区の完全比例代表選挙制度)
 4 政府首相 ビンヤミン・ネタニヤフ(Mr. Benjamin Netanyafu)
パレスチナ基本情報
 1 面積 約6,020km2(西岸地区5,655km2(三重県と同程度)。
  ガザ地区365km2 (福岡市よりやや広い)。)
 2 人口 約548万人(2023年、パレスチナ中央統計局(PCBS))
   (西岸地区 約325万人、ガザ地区 約222万人)
   (注)パレスチナ難民数:約639万人(2021年、UNRWA)
   (西岸108万人、ガザ164万人、ヨルダン246万人、シリア65万人、
   レバノン54万人)
 3 パレスチナ自治政府所在地 ラマッラ(西岸地区)
 4 人種・民族 アラブ人
 5 言語 アラビア語
 6 宗教 イスラム教(92%)、キリスト教(7%)、その他(1%)